インサイドセールスとは?訪問せずに契約を取る営業のポイント
2023.06.07
2023.06.07
日本の企業でも少しずつ取り入れられているインサイドセールスという営業手法。営業は足で稼ぐという時代は終わり、マーケティング戦略と掛けあわせて売り上げの最大化を目指し、効率よく営業活動をおこなうことが重要です。 今回は、インサイドセールスをおこなうメリットやフィールドセールス(従来の営業スタイル)との違いなどを紹介します。
インサイドセールスとは何か?
インサイドセールスとは、顧客と対面せずに営業活動の全て、もしくはその一部をおこなう営業手法のことを指します。
インサイドセールスと聞くと、日本語では「内勤営業」と置き換えて考える人もいるのではないでしょうか。内勤営業は、一般的に顧客リストに電話をするテレアポインターや来店したお客様を接客するカウンターセールスなどのことを指します。
しかしインサイドセールスは内勤営業が意味するものとは少し異なり、セールスとマーケティングをつなぐ役割を持っています。 Web広告やWebサイトなどから問い合わせを得るための施策をマーケティング担当がおこない、そこで得た問い合わせを営業担当が追いかけて契約に結び付ける、その間の橋渡し的な存在として、インサイドセールスは位置づけられることが多くあります。
なぜ今インサイドセールスが注目されているのか?
では、なぜ今インサイドセールスが注目されているのでしょうか。ここではその背景を2つ紹介します。
デジタルマーケティングの進歩と普及
インサイドセールスが注目されている理由の1つ目にはインターネットサービスが広がり、デジタルマーケティングが発展していることが挙げられます。
インターネットサービスの広がりによって、人々は情報を簡単に入手することができるようになりました。
そのため、従来のように「営業担当に話を聞かないと詳細がわからない」といったことは起こり得ず、顧客は一度インターネットで検索してから、興味があれば問い合わせをするという行動を取るようになってきました。
それに合わせて、マーケティング手法も単にマスに対して広告を展開するだけではなく、どのような人にどのように宣伝すれば販売促進につながるのかを、個々のデータから施策を実行し、仮説検証できるようになってきました。
したがって、これまでのようにさまざまな人に対して一律に同じ施策を打ってマーケティング活動をおこなうとなると、かえって費用が掛かってしまうという状況になっています。 そのため、顧客の受注確度が一程度を超えるまでは少しずつ関係性を構築しつつ、受注につながりそうになれば営業部門へパスをするというつなぎ役としての営業担当という立ち位置が重要性を増してきています。
働き方改革の影響
インサイドセールスが注目されている理由の2つ目に、近年の政府による働き方改革の動きやワークライフバランスの重視が関係しています。
一億総活躍社会実現を目指し、少子高齢化がますます進む日本経済の対策として、誰もが働きやすい環境を作ること、生産性向上させていくことが求められています。
また、労働人口の減少による人手不足という現状もあいまって、今後は少ない人員で多くの業務量をこなしていく必要性に駆られています。 営業という職種に対してもさまざまな角度から働き方の見直しが検討されており、移動時間の削減や受注につながらない営業活動の削減などを通じて、効率の良い働き方への注目がますます高まっています。
インサイドセールスはそのうちの1つの解決策として注目を集めており、近年さまざまな営業組織が導入し始めています。
インサイドセールスとフィールドセールス(従来の営業スタイル)の違い
インサイドセールスとフィールドセールス
インサイドセールスに対してフィールドセールスという営業手法が存在します。フィールドセールスとは、実際に相手先へ訪問して商談や契約をおこなう営業手法です。いわば、従来の営業手法はこのフィールドセールスに当てはまると言えます。
対してインサイドセールスは訪問はおこなわず、メールや電話、Web会議などを営業ツールとして用いて内部で完結させる営業手法のことを指します。
インサイドセールス・フィールドセールスそれぞれの特徴
フィールドセールスの場合、対象となる顧客はもともとその商品を利用する見込みのある顧客や、既存顧客が多いです。
インサイドセールスの場合も同様の顧客が対象になるときはありますが、それに合わせて営業活動地点ではニーズがない顧客も対象としています。 長期的にコミュニケーションをとり、顧客がサービスを必要としたときに自社に問い合わせが入るような関係性を作っておく役割を担うこともできるからです。
またフィールドセールスのみで構成されている営業組織の場合、営業プロセス全てを1人の営業担当がおこなう必要があり、どうしても個人にかかる業務負担が大きくなる傾向がありました。
しかしインサイドセールスを導入する場合は、アポイント取得や顧客の掘り起こしなど営業プロセスごとに役割を分けることが可能で、1人ですべての業務をおこなわず複数の部署が連携して進めることができます。
下記の表は、インサイドセールスとフィールドセールスの違いをまとめたものです。
項目 | インサイドセールス | フィールドセールス |
---|---|---|
顧客接触の方法 | メール、電話、Web会議 | 訪問 |
対象となる顧客 | 潜在顧客、顕在顧客 | 顕在顧客 |
関わり方 | 長期的なコミュニケーション | 短期的なコミュニケーション |
役割 | マーケティングから営業プロセスまで一部 営業プロセスの全て | 営業プロセスの全て |
目的 | アポイントの獲得 顧客の掘り起こし 受注、など | 受注 |
インサイドセールスのメリット
ここでは、営業の新たな手法として注目されているインサイドセールスの導入に関するメリットを紹介します。
社内外問わずどこでも顧客対応が可能
従来の営業職は訪問をすることを前提としていたため、時短勤務や在宅ワークで対応することは難しい職種でした。
しかしインサイドセールスは、商談がある場合でもWeb会議システムで対応ができます。そのため、リモートワークが可能です。 これにより、子どもがいて働ける時間や場所が制限される社員、家族に介護が必要でイレギュラーな残業に対応できない社員、怪我や障がい等の事情で物理的に頻繁な移動が困難な社員でも時短勤務や内勤、在宅ワークで業務ができるようになりました。
リードタイムが短い
従来の訪問を伴う営業の場合、訪問日のセッティングや移動時間など商談をするまでに多くの手間や時間を要していました。
対してインサイドセールスであれば、問い合わせや商談にはWeb会議システムを利用します。そのため、急な問い合わせにも最短でその日のうちに対応することが可能です。顧客の購買意欲が冷めないうちに商談を進められるため、契約率も上がりやすいでしょう。このスピード感は訪問営業では追いつくことはできません。
1人あたりの生産性を上げることができる
営業活動で実際に訪問するとなると交通費や提案書のプリント費用など、一度の訪問でこのような経費が発生します。しかしインサイドセールスの場合は、訪問をしないため営業の交通費や場所代の削減ができます。
ただ、インサイドセールスを推し進めるにあたって、環境構築のためのツール費用は多少かかってしまいます。 しかし、これまでかかっていた営業諸費用や、移動時間といった無駄な時間が発生することによる間接的なコストなども含めると、費用対効果は高いのではないでしょうか。
経費削減につながる
営業活動で実際に訪問するとなると交通費や提案書のプリント費用など、一度の訪問でこのような経費が発生します。しかしインサイドセールスの場合は、訪問をしないため営業の交通費や場所代の削減ができます。よってコストカットに大きく貢献でき、予算を有効活用することができるでしょう。
インサイドセールスの主な役割、活用シーン
生産性の高い営業活動をするために、顧客の状態や提案する商材に合わせてインサイドセールスを導入することが重要なポイントです。やみくもにインサイドセールスを導入してしまうと、結果としてこれまで以上にコストがかかってしまうという事態になりかねません。
したがって、インサイドセールスチームを立ち上げるときに何を目的として、どういう場面で導入するのか考えておく必要があります。基本的にインサイドセールスには一般的に大きく分けて3つの役割があります。 ここではその役割について紹介するので、参考にしてみてください。
アポイントの獲得
成約率の高いアポイントをとること目的として、インサイドセールスを導入するケースです。
一般的に、マーケティング担当が担う役割の一部として、リードジェネレーション(見込み顧客の獲得)やリードナーチャリング(見込み顧客の育成)が挙げられます。アポイントの獲得を目的としてインサイドセールスを導入する場合には、見込みの高い顧客に電話やメールを使用して集中的にアポイントを取っていきます。
場合によっては、インサイドセールスがリードナーチャリングも含めて見込み顧客を創出し、アポイントをとることもあります。その後アポイントを獲得したら、フィールドセールス担当に引き継ぎをしていきます。
顧客の掘り起こし
インサイドセールスを活用して、長期的な顧客のフォローをおこなうことも可能です。現状ではニーズがない顧客でも、どこかのタイミングでサービスが必要になるかもしれません。
その時に自社に問い合わせが入るよう顧客との接点を作っておくことはとても大切です。 そのためには、以前に名刺交換をした顧客や問い合わせがあった顧客など、過去に1回でも接触があった顧客の情報を蓄積しておく必要があります。
過去の接触情報ともとに、メールマガジンや新規商材の案内などメールや電話、イベント開催などで関係性を持ち続け、新たにニーズが生まれたときに問い合わせがくるような関係性を構築しておきます。
営業の全プロセスの完結
国内では上記で紹介した2つのほうがインサイドセールスの役割として浸透していますが、営業活動のすべてをインサイドセールスのみで担当するパターンもあります。この場合はフィールドセールスの担当者は存在しません。 従来の営業職といえば、新規顧客の開拓から契約後のアフターフォローまで1人の営業が時間をかけておこなっているケースが多くみられました。
しかし近年はCRMやSFA、Web会議システムなどのシステムの普及により、インサイドセールスのみで営業の全プロセスをおこなうことが可能になりました。これにより、単位時間あたりの顧客の接触数を増やすことができ、生産性の向上につながります。
ただ、これらのパターンが全ての企業に適用できるわけではありません。 お客様の状態や取り扱う商材によっては訪問が求められる場合もあるということを念頭に置いて、営業全プロセス代替のためのインサイドセールスの活用を考えていきましょう。
インサイドセールスの立ち上げ・導入に向けて
インサイドセールスを立ち上げ、導入するうえであらかじめ押さえておくべきポイントをここでは紹介します。 やみくもにインサイドセールスを導入する前に以下のポイントを参考にしてみてください。
インサイドセールス導入までに押さえておくべき流れ
- インサイドセールスチームの役割を決める
- インサイドセールスチームのオペレーションを策定する
- KPI・KGIを決める
- 必要なツール、システムの導入およびカスタマイズ
インサイドセールスを導入する際には、まず目的を明確にしておく必要があります。アポ獲得のためなのか、営業プロセスを効率化するためなのか、その目的によってインサイドセールスが果たす役割やそのオペレーションが異なります。
したがって、まずは「何のためにインサイドセールスを導入するのか」をきちんと明確にし、かつそれをチームメンバーが理解できるようにしておきましょう。 その後、その目的に沿って適切なKGIやKPIを設定します。
アポ数だけなのか、売上も追うのか、はたまた比重をそれぞれかけて目標を設定するのか、インサイドセールス導入の目的に沿って適切な目標設定を施しましょう。 適切なKGIやKPIを設定した後は、その目標に合ったツールやシステムを導入します。
インサイドセールスを導入して、業務の効率化を実現したいのであればある程度ツールを導入してスムーズに業務を推し進める体制を作り上げることが必要不可欠です。ここでは、SFA、CRM、Web会議システムの、インサイドセールス導入に際して多くの企業が導入している3つのツールを紹介します。
SFA/CRM
SFA(Customer Relationship Management)とは、社内で営業活動における内容が共有ができ、組織の連携を強め、効率よく営業活動をおこなうためのシステムです。営業支援システムとも呼ばれています。
CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客情報を一括で管理し、ニーズの分析を行いながら戦略的に顧客との関係構築をおこなうためのシステムです。 これらの業務システムを用いて顧客管理、営業管理をおこなっている企業は多いです。
基本的に、新たにインサイドセールスを立ち上げる場合、上でも触れたようなあらたなKGIやKPI、オペレーションが必要になります。 それに合わせてシステムのカスタマイズが必要になり、場合によっては、新たなシステムへのリプレイスが必要になるかもしれません。
その点、CRMやSFAを活用することで、案件の共有や管理、ほかのシステムとの連携が容易になるため、効率よくインサイドセールスを推し進めることができます。
しかし、「CRMツールを導入して営業活動の効率化をはかりたい」といっても、世の中にはさまざまなCRMツールがあります。それぞれの機能や特徴、使い方も千差万別で、抱えている課題に応じて適したツールを選定する必要があります。
Web会議システム・オンライン商談ツール
Web会議システムとは、場所を問わずオンラインで会議ができるシステムです。その中でも、さらに商談向けに機能が特化したサービスのことをオンライン商談ツールと呼ぶこともあります。
接続コードを入力すればブラウザ上でWeb会議が開始され、商談を始めることができます。 業務効率化に対応するべくインサイドセールスを導入するといっても、いきなり電話対応になると顧客側も不愛想だなと感じて、悪い印象を受けるかもしれません。
Web会議システムを活用することで、画面上であるとはいえ、対面で顧客とやり取りすることができ、ある程度の信頼性を担保した形で営業活動を推し進めることができます。 システムによって備わっている機能や、料金体系は異なるため、自社の営業活動に合わせて適切な機能を備えたツールをできるだけ安く導入することが鍵だといえるでしょう。
インサイドセールスは各部門の得意を最大限に生かし生産効率を上げる
インサイドセールスとフィールドセールスによる分業制でお互いの得意分野を活かす方法、すべての営業プロセスをインサイドセールスでおこなう方法など、インサイドセールスの登場により、「営業は訪問をするもの」というこれまでの商習慣が変わりつつあります。
とはいえ、フィールドセールスの価値が下がるわけではありません。なぜなら、顧客が意思決定するときに対面での商談が重要となることもあるからです。
大切なのは組織内でどの部門がどういうことを目的としているのか、顧客との最善のコミュニケーションはどのようなものかなど、状況に適した営業手法を判断し、そこに応じた役割配置をすることです。そして分業制をおこなう利点を理解し組織内の連携を怠らないことです。
効率的で生産性向上を図ることができる営業手法として注目されているインサイドセールスですが、いくつかのポイントを抑えたうえで導入することが自社の成長のカギになるのではないでしょうか。
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