離婚したときの年末調整で注意すべきポイントを徹底解説

年末調整手続きでは、まず基礎控除や扶養控除などの各種控除額を計算し、1年間の所得税額(年調年税額)を計算します。
しかし、場合によっては各種控除が受けられなくなるケースがあります。たとえば、従業員が離婚たケースです。この場合、配偶者控除や配偶者特別控除などが利用できなくなる場合があります。

この記事では、離婚したときの年末調整の注意点や、離婚後に利用可能な各種控除を解説します。

更新日:2022.10.24

年末調整手続きでは、まず基礎控除や扶養控除などの各種控除額を計算し、1年間の所得税額(年調年税額)を計算します。
しかし、場合によっては各種控除が受けられなくなるケースがあります。たとえば、従業員が離婚たケースです。この場合、配偶者控除や配偶者特別控除などが利用できなくなる場合があります。

この記事では、離婚したときの年末調整の注意点や、離婚後に利用可能な各種控除を解説します。

離婚した場合の年末調整はどうなる?

もし従業員が離婚した場合、年末調整にどのような影響が出るのでしょうか。そもそも年末調整手続きは、以下の流れでおこなわれます。(※1)

  1. 各種控除額の確認
  2. 年税額の計算
  3. 税額の徴収、納付又は還付

従業員が離婚した場合に影響が出るのが、「各種控除額の確認」のプロセスです。ここでは、従業員に年末調整書類を提出してもらい、基礎控除、扶養控除、配偶者控除、保険料控除、住宅借入金等特別控除などの各種控除額を計算します。
しかし、年末調整で利用可能な所得控除の中には、「生計を一にする配偶者がいること」「生計を一にする親族(年齢16歳以上の子どもなど)がいること」が条件となっているものがあります。そのため、離婚して配偶者がいなくなったり、扶養親族の親権を失ったりした場合、これまでと違って一部の所得控除が利用できなくなります。

(※1)令和3年分年末調整のしかた|国税庁

離婚後の年末調整の注意点

従業員が離婚した場合の年末調整では、以下の2点に注意が必要です。

離婚したとしても、「生計を一にする」と解釈できる場合は扶養控除などが認められる
年末調整の手続き後に離婚した場合、やり直し(再年調)が必要なケースがある

離婚したからといって、必ずしも配偶者控除や扶養控除が利用できなくなるわけではありません。年末調整の各種控除の要件を確認しておきましょう。

「生計を一にする」の考え方

扶養控除や配偶者控除などの所得控除の要件には、「生計を一にする」という表現が出てきます。国税庁のホームページによると、「生計を一にする」とは、以下のような状態を指します。

日常の生活の資を共にすることをいいます。
会社員、公務員などが勤務の都合により家族と別居している又は親族が修学、療養などのために別居している場合でも、①生活費、学資金又は療養費などを常に送金しているときや、②日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には他の親族のもとで起居を共にしているときは、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

引用:生計を一にする|国税庁

つまり、「生計を一にする」とは、必ずしも婚姻関係に基づくものではありません。たとえば、離婚後も元親が養育費の支払いをしている場合、「生計を一にする」とみなされ、扶養控除や配偶者控除の対象となる可能性があります。
国税庁のホームページによると、離婚後も扶養控除や配偶者控除が認められる条件は2つあります。

離婚に伴う養育費の支払が、①扶養義務の履行として、②「成人に達するまで」など一定の年齢に限って行われるものである場合には、その支払われている期間については、原則として「生計を一にしている」ものとして扶養控除の対象として差し支えありません。

引用:生計を一にするかどうかの判定(養育費の負担)|国税庁

従業員が離婚した場合、すぐに扶養控除や配偶者控除の対象外とするのではなく、「生計を一にする」かどうかの確認をおこないましょう。

年末調整後に離婚した場合はやり直し(再年調)が必要

もし年末調整の手続きが終わった後に従業員が離婚した場合、扶養控除や配偶者控除などの計算に影響が出る場合があります。その場合、年末調整のやり直し(再年調)が必要です。

 年末調整が終わった後、子が結婚して控除対象扶養親族の数が減少したり、受給者本人が障害者に該当することとなった場合などには、これらの異動事項の申告を受け、その異動後の控除対象扶養親族の数などを基にして年末調整のやり直しをすることができます。この年末調整のやり直しができるのは、「給与所得の源泉徴収票」を受給者に交付することとなる翌年1月末日までです

引用:令和3年分年末調整のしかた|国税庁

再年調の期限は、源泉徴収票を交付する翌年1月末日とされています。もし従業員の離婚がわかった場合、すみやかに再年調手続きをおこないましょう。

離婚後に受けることができなくなる控除は?

従業員が離婚した場合、受けることができなくなる所得控除は4つあります。

配偶者控除所得税法における控除対象配偶者がいる場合、納税者の合計所得金額と配偶者の年齢に基づいて受けることができる所得控除
配偶者特別控除控除対象配偶者に48万円を超える所得がある場合、条件付きで認められる所得控除
扶養控除所得税法における控除対象扶養親族がいる場合、扶養親族の年齢や同居の有無に基づいて受けることができる所得控除
生命保険料控除生命保険料や介護医療保険料などを支払った場合、年間の支払保険料に基づいて受けることができる所得控除


配偶者控除(配偶者特別控除)や扶養控除は、いずれも「生計を一にする」かどうかが要件となっています。したがって、従業員が離婚した場合は、養育費を支払っているケースなどを除いて所得控除が受けられない可能性があります。
また、生命保険料控除の場合、離婚後は保険料の受取人の変更が必要です。

生命保険料控除を利用するための条件は2つあります。

  • 保険料や掛金を所得者本人が支払っていること
  • 保険金や共済金などの受取人の全てが、所得者本人、配偶者、親族のいずれかであること

つまり、離婚後も保険金の受取人が配偶者や子どものままになっている場合、生命保険料控除の対象とならない場合があります。離婚後も生命保険料控除を受けたい場合は、すみやかに受取人の名義を変更しましょう。

離婚後の年末調整で知っておきたい控除

配偶者控除や扶養控除など、離婚後に受け取れなくなる所得控除がある一方で、ひとり親や寡婦を対象とした所得控除もあります。それが、「ひとり親控除(寡夫控除)」と「寡婦控除」の2つです。
国税庁のホームページによると、それぞれの所得控除の条件や金額は以下の通りです。(※2)(※3)

控除の種類概要控除額対象者
ひとり親控除(寡夫控除)納税者がひとり親の場合に受けることができる所得控除35万円その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと
生計を一にする子がいること
(その年分の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限られます)
合計所得金額が500万円以下であること
寡婦控除納税者が寡婦の場合に受けることができる所得控除27万円夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人
夫と死別した後婚姻をしていない人または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人

※国税庁のホームページをもとに表を作成

(※2)No.1171 ひとり親控除|国税庁
(※3)No.1170 寡婦控除|国税庁

なお、令和元年度まで存在した「寡夫控除」は、令和2年からひとり親控除に変わっています。
ひとり親控除は35万円まで、寡婦控除は27万円まで控除を受けられます。ただし、2つの所得控除を同時に利用することはできません。

ひとり親控除と寡婦控除を申告する方法

ひとり親控除や寡婦控除を受けるためには、「給与所得者の扶養控除等(異動申告書」の提出が必要です。扶養控除等申告書の「C:障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」の項目に、寡婦またはひとり親の項目があるため、チェックを入れましょう。
ただし、令和2年より前の様式では「ひとり親」の項目がないため、最新の様式を国税庁のホームページからダウンロードする必要があります。

離婚した場合は年末調整の手続きも変わる

従業員が離婚したら、年末調整の手続きが変わる可能性があります。たとえば、配偶者控除や配偶者特別控除、扶養控除、生命保険料控除などの所得控除が受けられなくなる場合があるため、各種控除額の修正が必要です。
また、ひとり親控除や寡婦控除など、離婚した後で利用可能な所得控除もあります。

離婚した場合は年末調整の手続きが変わることを念頭に置いて、正しく手続きをおこないましょう。

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