請求書に電子印鑑を使える?請求書における電子印鑑の法的効力を解説
電子契約サービス
2023.07.06
2023.07.06
PDFなどのデジタル文書に押印できる印鑑が「電子印鑑」です。電子契約の普及に伴い、契約書のほかにも納品書や見積書などに電子印鑑を利用するケースが増えています。請求書を発行する際も電子印鑑を使うことはできるのでしょうか。この記事では、請求書における電子印鑑の法的効力や、電子印鑑を利用するメリットとデメリット、電子印鑑の注意点を解説します。
電子印鑑とは?電子文書に押印可能な印鑑のこと
電子印鑑とは、印影をデータ化し、電子文書に押印可能な印鑑のことを指します。電子印鑑には、印影の画像データだけの印鑑と、電子署名やタイムスタンプが付与された印鑑の2種類があります。実物の印鑑の代わりに電子印鑑を利用すれば、担当者が出社しなくても書類にハンコを押し、承認することが可能です。
テレワークやリモートワークの「ハンコ出社」を減らすため、電子印鑑を導入する企業が増えています。JIPDECの調べによると、新型コロナウイルスが流行した以後の電子契約の利用率は67.2%で、今後さらに8割以上の利用が見込まれています。(※1)電子印鑑は契約書だけでなく、納品書や見積書、請求書などの書類に利用することが可能です。
(※1)IT-REPORT 2021 Spring|JIPDEC
請求書に電子印鑑を使うことは可能か?
そもそも、請求書に電子印鑑を押すことは可能なのでしょうか。電子印鑑に関する法律をいくつかみてみましょう。
請求書をはじめとした書類の電子化が認められたのが、2005年4月1日に施行されたe-文書法(電子文書法)です。e-文書法の成立により、納品書や見積書、請求書などのこれまで書面保存が義務づけられていた書類をデジタル化し、電子データで保存できるようになりました。
さらに社会のデジタル化への対応、経理の電子化による生産性の向上などを目的に電子帳簿保存法が改正され、2022年1月より施行されました。
電子帳簿保存法の改正により、請求書を含む国税関係書類を電子データで保存するときのルールが以下の例のように緩和されたことで、電子契約の普及が予想されます。
- スキャナ保存・電子取引でのタイムスタンプの要件緩和
- 帳簿の電子保存の事前申請が不要
請求書などの国税関係帳簿書類を電子文書で作成する場合、印鑑も電子化する必要があります。電子文書への署名やサインの法的効力を定めた法律が、2001年に成立した電子署名法です。電子署名法第3条は、電子文書への署名やサインの効力は「本人による電子署名」が行われた場合に担保されるとしています。(※2)
電子署名法第3条
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
引用:電子署名及び認証業務に関する法律|e-Gov
つまり、電子印鑑を請求書に利用する場合は、「請求書の作成者本人が押したこと(本人性)」がわかる仕組みが必要です。電子印鑑には印影の画像データだけのものと、電子署名やタイムスタンプによって本人性の識別が可能なものの2種類があります。電子署名やタイムスタンプを付与した電子印鑑を利用すれば、書面への記名押印と同様に請求書の法的効力を担保することができます。

電子印鑑の法的効力とは?メリットや注意点も解説
近年、テレワークの拡大によって、PDFなどの電子文書に電子印鑑を使用するケースも増えてきました。しかし、印影を画像として読み取ったものや、WordやExcelで作成したものには認印程度の効力しかありません。法的効力を持たせて電子印鑑を使いたい場合、タイムスタンプや電子署名の付与が必要です。 この記事では、従来の印鑑と電子印鑑の違い、法的効力、利用するメリット、注意点を解説します
そもそも請求書に印鑑は必要?
しかし、そもそも民法上押印がなくても契約が成立するため、発行した請求書に印鑑を押すかどうかは当事者に委ねられています。それでは、なぜ請求書に印鑑を押すビジネス慣習が定着しているのでしょうか。印鑑のない請求書を発行した場合、2つのリスクが発生します。
- 請求書が改ざんされ、不正な請求がおこなわれるリスク
- 請求書の信頼性が低下し、相手方に受け取ってもらえないリスク
印鑑のない請求書は、容易に複製し、偽造することができます。そのため、社名の入った角印などの印鑑を請求書に押すことで、請求書が改ざんされるリスクを低減できます。印鑑のない文書(無印私文書)を偽造するよりも、押印された文書(有印私文書)を偽造する方が刑法上の罪が重くなるため、一定の抑止力が働くのも理由の一つです。
また、印鑑のない請求書はビジネス慣習上信頼性が低いため、相手方に受け取ってもらえないリスクもあります。スムーズに取引を進めるため、請求書にはなるべく押印しましょう。
請求書で電子印鑑を使うメリットとデメリット
紙の請求書に押印する場合と比較して、電子印鑑には「押印業務を効率化できる」「ペーパーレス化を実現できる」といったメリットがあります。しかし、ビジネスシーンによっては、電子印鑑よりも実物の印鑑のほうが望ましい場合もあります。請求書を電子データで作成する前に、電子印鑑のメリットとデメリットを比較しましょう。
電子印鑑を使う2つのメリット
実物の印鑑の代わりに電子印鑑を使うメリットは2つあります。
- 押印業務を効率化できる
- ペーパーレス化を実現できる
実物の印鑑を使用する場合、「書面の請求書を印刷する手間」「捺印をおこなう手間」がかかります。電子印鑑なら電子ファイルにデータを挿入するだけでよいため、押印業務の工数を削減できます。
また、請求書を電子データで作成して交付できるため、ペーパーレス化を実現し、印刷コストや郵送コストを削減できます。
電子印鑑を使う2つのデメリット
一方、電子印鑑には2つのデメリットもあります。
- 電子印鑑の種類によってはセキュリティが低い
- 相手方によっては電子契約に対応していない
電子印鑑のなかでもタイムスタンプや電子署名を付与しない単なる画像データの場合は、法的効力を持ちません。そのため、重要な文書への押印には向いていません。請求書の偽造を防止したい場合、電子印鑑の種類を選ぶ必要があります。
また、取引相手によっては、そもそも電子契約に対応しておらず、請求書の書面交付を求められる可能性もあります。

電子印鑑のセキュリティは安全なのか?リスクと対策方法を紹介
電子印鑑は作成方法によって安全性が大きく変わってきます。印影の画像データであれば、改ざんは容易におこなえます。しかし、改ざんの防止のためにタイムスタンプを付与したり、本人性の担保として電子署名を使えば、容易な改ざんはできません。上記のように、正しいセキュリティ対策を施した電子印鑑は実印と同様の法的効力が認められます。この記事では、電子印鑑のセキュリティリスクや安全に使うための対策を解説します。
請求書で電子印鑑を使う際の注意点
請求書を電子データで発行し、電子印鑑を押す場合の注意点は2つあります。
- なりすましや改ざんへの対策をおこなう
- 電子印鑑を使ってもよいか相手方へ確認をする
改ざんへなりすましを防止するためには、電子署名やタイムスタンプを付与した電子印鑑を使用しましょう。
電子印鑑に電子署名やタイムスタンプを付与したい場合、電子契約サービスの導入が必要です。また、請求書の書面交付から電子交付に切り替える場合、あらかじめ相手方に確認をおこないましょう。相手方が電子契約に対応していない場合は、電子印鑑や電子契約サービスを利用するメリットを説明し、承諾を得る必要があります。
電子印鑑の作成方法
電子印鑑を利用するには、電子契約サービスを導入するか、自分で電子印鑑を作成する必要があります。電子印鑑を作成する方法は次の3点です。
- 実物の角印や認印をスキャンし、そのまま画像データ化する
- WordやExcelの図形機能を利用し、会社名や名字が入った電子印鑑を作成する
- Adobe Acrobat Readerを利用し、タイムスタンプや電子署名入りの電子印鑑を作成する
いずれの方法もコストをかけずに電子印鑑を作成することが可能です。ただし、実物の印鑑をスキャンする場合、電子印鑑のデータが流出し、印影が複製されたり不正利用されたりするリスクがあります。Adobe Acrobat Readerで作成した電子印鑑には、タイムスタンプや電子署名(デジタルID)が付与されます。しかし、いずれも簡易的なもののため、複製やなりすまし対策としては十分ではありません。
このように電子印鑑を自分で作成する場合、セキュリティの点でリスクがあります。重要度の高い請求書を発行する場合は、より安全性の高い電子契約サービスの導入を検討しましょう。

電子印鑑をWordで作成する方法は?手順とメリットやデメリットを紹介!
新型コロナウイルスの流行をきっかけとして、テレワークが急速に普及しました。しかし、はんこ文化が根強く残っている企業が多く、担当者が押印のために出社する「はんこ出社」が課題となっています。そこで役立つのが、PCで簡単に貼り付け可能な「電子印鑑」です。この記事では、電子印鑑をWordで作成する手順やメリットやデメリットを解説します。
電子印鑑は注意点を押さえれば請求書に使える
請求書への押印の代わりに電子印鑑を使うことが可能です。電子印鑑を利用すれば、押印業務の効率化や請求書のペーパーレス化を実現できます。しかし、電子印鑑の種類によっては、請求書の偽造やなりすましのリスクが高まります。
電子印鑑を押した請求書を発行する場合は、シーンに合わせた使い分けが必要です。電子契約は普及しつつあるものの、相手方によっては対応していない場合があります。スムーズな取引のため、請求書を電子データで発行してもいいか事前に確認をとりましょう。
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