電子印鑑の法的効力とは?メリットや注意点も解説
電子契約サービス
2023.07.06
2023.07.06
近年、テレワークの拡大によって、PDFなどの電子文書に電子印鑑を使用するケースも増えてきました。しかし、印影を画像として読み取ったものや、WordやExcelで作成したものには認印程度の効力しかありません。法的効力を持たせて電子印鑑を使いたい場合、タイムスタンプや電子署名の付与が必要です。 この記事では、従来の印鑑と電子印鑑の違い、法的効力、利用するメリット、注意点を解説します
電子印鑑はインターネット上で電子文書に押せる印鑑データ
電子印鑑とは、インターネット上でPDFなどの電子文書に、印鑑データを押せる仕組みのことです。
電子印鑑を用いれば、文書を紙に印刷して署名捺印するなどの手間を省くことができます。
なお、電子印鑑といっても、印影をスキャンして画像データ化しただけのものから、有料サービスと契約し識別情報を付与して重要書類への捺印に対応できるたものまで幅広く存在します。

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電子印鑑の種類や仕組み
電子印鑑といっても、単に印鑑を画像化したものと、本人が押印したことを証明するための識別情報が付与されたものの2種類があります。
種類 | 概要 | メリット |
印鑑を画像化したもの |
印鑑をスキャンしたり、画像データを編集したりして、印影を単に画像化したもの |
PDFファイルなどの電子文書にそのまま貼り付けることで押印できる |
本人が押印したことを証明するための識別情報が付与されたもの |
印鑑のデジタルデータに対し、本人が押印したことを証明するための識別情報を付与したもの |
氏名、所属先、タイムスタンプ(時刻情報)などが識別されるため、いつ誰が押印したかを証明できる |
識別情報が付与された電子印鑑は、電子契約サービスを導入したり、電子印鑑の専門店で作成を依頼したりすることで入手できます。一方、印影を画像化した簡易的な電子印鑑であれば、自分で作成することも可能です。
電子印鑑に法的効力はある?
電子印鑑であっても法的効力を持たせることはできます。ただし、誰でも簡単に利用することができたり、本人性を担保していなかったりすれば、法的効力は極めて低いものとして判断されてしまいます。
そのため、契約書などに電子印鑑を利用したいときは、本人証明や非改ざん証明を担保する仕組みが必要です。
電子署名法では電子印鑑の法的効力を保証している
電子署名法と称される、電子署名及び認証業務に関する法律の第2章第3条では電子印鑑の効力を下記のように定めています。
第二章 電磁的記録の真正な成立の推定
第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
上記より、電子印鑑であっても電磁的記録を付していて、本人性を証明できるものであれば法的効力を持たせることができるといえます。
ただし、「本人だけが行うことができることとなるものに限る」というカッコ書きに注意が必要です。印影を単に画像化した電子印鑑の場合、画像データは容易に複製できるため、「本人による電子署名(電子印鑑)」かどうかがわかりません。
そのため、電子印鑑の種類によっては、十分な法的効力があるとみなされない場合があります。実印とほぼ同等の法的効力が必要な場合は、氏名、所属先、タイムスタンプなどの識別情報が付与された電子印鑑を利用しましょう。
法的効力を付与できる電子印鑑
電子印鑑における電磁的記録とは、原則第三者機関による認証のことを指します。
電子印鑑のなかには、ハッシュ値や個人識別機能の付与により、誰が、いつ、どのような書類に電子印鑑を押したか記録することができるものがあります。時刻情報の付与はタイムスタンプでおこないます。
タイムスタンプは時刻認証局という第三者機関によって電子印鑑に対して時刻情報を付与する仕組みです。タイムスタンプによって時刻情報を付与することで、契約時点で当該文書が存在していたことや改ざんがおこなわれていない書類であることを証明することができます。
また、第三者機関の認証局による電子証明書を用いた電子印鑑もあります。電子証明書とは、電子印鑑が間違いなく本人のものであると証明する手続きで、印鑑証明書の代わりとなる仕組みのことです。
これらの仕組みを整えることで、電子印鑑にも従来の印鑑と同様の法的効力を与えることができます。

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法的効力の認められない電子印鑑
電子印鑑のうち、印影を画像データに変換したものや、WordやExcelで作成した電子印鑑などは、本人以外も簡単に利用できてしまうため、法的効力はほぼないものとみなされます。
とくに、電子データはコピーや複製も容易なため、本人になりすまして電子印鑑を作ることも可能です。
こうした電子印鑑の場合は認印程度の効力にとどまり、重要な契約書において有効性を示すことはできないため注意が必要です。
電子印鑑と従来の印鑑の法的効力の違い
従来の印鑑は民事訴訟法第228条4項の「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」という条文より法的効力が認められています。(※1)
従来の印鑑では、通常、本人の判子を別人が持ち出して押印するとは、まず考えられません。また、仮に別人が押印する場合、委任状などにより本人の意思確認が可能です。そのため、契約書に押印があれば、本人の意思により成立した契約であると判断できます。
さらに、本人性を担保する仕組みとして、個人なら役所に、法人なら法務局に印鑑登録をすれば、間違いなく本人の印鑑であると証明できます。
上記の法文や仕組みにより、従来の印鑑は法的効力が保証されています。
(※1)押印に関するQ&A|経済産業省
電子印鑑と電子サイン、電子署名との違い
電子印鑑と類似するものに、「電子サイン」や「電子署名」、「デジタル署名」といった言葉があります。
厳密に定義されている文書はありませんが、「電子サイン」とは電子データ上でおこなわれる署名や捺印などの行為全般のことを指す言葉としてつかわれることが多いです。
その中で、「電子署名」は電子データをもちいて署名をおこなう行為を指し、「デジタル署名」は電子署名の一種でより強固な法的効力を持ったもののことを指すことが一般的です。
電子印鑑を使うメリット
電子印鑑を使うことで、紙の文書に押印する必要がないため、業務の効率化になります。また、紙の印刷代や郵送代といった細かなコストの削減にもつながります。
これらの書類を電子化して保管すれば、管理の手間も減り、検索が容易になる点も魅力です。
業務の効率化
電子印鑑は時間や場所を問わずに押印できることから、業務の効率化につながります。
また、紙の印刷や押印、郵送などの手間を省ける点も大きなメリットです。担当者や決裁者がどこにいても印鑑を押すことができ、はんこがないため書類の提出を後回しにするといった非効率も排除できます。
コスト削減
WordやExcelに電子印鑑を押すことができれば、紙の文書を印刷する必要がなくなります。そのため、印刷や郵送のコストを削減することが可能です。また、請求書や見積書などは、電子帳簿保存法に則り、電子化して保存することが可能です。
電子印鑑を使う際の3つの注意点
ここまで、電子印鑑のメリットについて説明してきました。次に、電子印鑑を導入する際の注意点について解説していきます。
1. 法的効力を確認する
電子印鑑のなかには、印影を画像データ化しただけのものなどもあります。こうした電子印鑑はセキュリティや改ざんの懸念から公的な文書に利用することはできません。自社で電子印鑑を活用する場合、電子署名やタイムスタンプを付与できる仕組みの導入が必要です。
2. 導入費用と使い勝手を考える
法的効力をもった電子印鑑を導入するためには、有料サービスの契約が必要となります。
サービスによって初期費用や月額利用料、オプション内容などが異なるため注意が必要です。料金の安いサービスであっても、法的効力をもつ電子印鑑を使用するには、追加料金がかかる場合もあります。
利用方法もアプリケーション型からクラウド型まであるため、導入費用と使い勝手を確認のうえ、費用対効果の高いものを選ぶと良いでしょう。
Excelやスキャンなどで無料で作成できるものでも、認印としては利用できるためどの程度の効力を持たせたいのかを明確化しておきましょう。
3. 取引先が非対応の可能性がある
電子印鑑を契約書の締結に活用したい場合、取引相手先にも電子契約に同意してもらう必要があります。そのため、小規模事業者や個人など紙ベースで仕事をしている取引先が多い企業では、電子印鑑を導入してもうまく活用できない可能性があります。
事前に取引先と相談し、電子印鑑の対応が可能かどうか事前に相談しておいたほうがよいでしょう。
電子印鑑は実印同様の法的効力がある!注意点を理解して活用しよう
電子署名法第3条で規定されている通り、実印と同等の法的効力を持つのは、本人が押印したこと(本人性)を証明できる電子印鑑に限られます。
また、印影をスキャンして、画像化した電子印鑑の場合は、法的効力を持たないため、使用する際は注意しましょう。
契約書の重要度に応じて、電子印鑑を使い分けることが大切です。電子印鑑や電子文書を利用したい場合は、電子契約サービスの導入を検討しましょう。
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