電子契約で印紙が不要なのはなぜ?国税庁の見解をふまえて解説!
電子契約サービス
2023.07.06
2023.07.06
一定の基準を満たした契約書や領収書には印紙税が課されます。しかし、契約書が電子契約で締結される場合には、印紙税の課税対象から除外され、印紙税は不要となります。したがって電子契約を導入することで収入印紙の費用や書類の郵送にかかるコストを削減することができます。 本記事では、電子契約で印紙がいらないのはなぜかを印紙税法の規定や国税庁の見解を交えて解説します。
電子契約では印紙は不要
印紙税の課税対象は、主に商取引で使用される契約書や文書です。印紙税は紙の書類に対して課される税金であるため、電子契約で作成される電子データは印紙税の課税対象とはなりません。したがって、原則として収入印紙を貼付する必要はありません。
電子契約は収入印紙の代金や、書類を郵送する費用がかからないためコスト削減の観点から注目を集めています。ただし、印紙税法に電子契約は非課税であると明記されているわけではないため、「なぜ電子契約では印紙がいらないのか」「どういった場合に印紙税がかかるのか」や「電子契約の印紙税法における扱われ方」について、きちんと理解しておく必要があります。
そもそも印紙税・印紙(収入印紙)とは?
印紙税は印紙税法で定められた契約書などの「課税文書」に対して義務付けられた税金で、それらの課税文書に貼付し、消印を押すことで、印紙税の納付を証明する証票のことを印紙(収入印紙)といいます。
印紙税法により定められた課税文書は、20種類あり、代表的な課税文書は下記の通りです(※1)。
- 請負に関する契約書
- 約束手形、為替手形
- 合併契約書又は吸収分割契約書若しくは新設分割計画書
- 定款
- 継続的取引の基本となる契約書
- 預金証書、貯金証書
- 倉荷証券、船荷証券、複合運送証券
- 保険証券
- 信用状
- 信託行為に関する契約書
- 債務の保証に関する契約書
- 配当金領収証、配当金振込通知書
- 売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書
印紙税額は、契約の内容や金額などによって異なります。課税文書として明記されている種類の書類でも、内容や金額が課税要件に該当しない場合には非課税文書となります。
たとえば、領収書の場合、金額が5万円未満であれば、印紙税はかからず、収入印紙の貼付をおこなう必要はありません。また、営利目的の領収書は課税対象となりますが、営利目的ではない領収書は非課税文書となり、収入印紙は不要です。
※1:国税庁|印紙税額一覧表
電子契約で印紙がいらない理由
ここでは、電子契約で印紙が不要となる根拠について詳しく紹介します。
印紙税が書類の「作成」に対して課税されるから
電子契約で印紙税が非課税である要因として、印紙税が書類の「作成」に対して課される税金であるという理由があります。
印紙税法第3条では印紙税の課税対象を下記のように定めています。
第三条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。
引用:印紙税法3条
また、課税文書の作成については下記のように定義されています。
(作成等の意義)
第44条 法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。
上記のことから、紙の書類の作成を伴わず、電子データの送受信によっておこなわれる電子契約は、印紙税法の定める「課税文書の作成」に該当しないため、収入印紙が不要であると判断できます。
国会答弁や国税庁の見解も紹介します。
見解事例①:国会答弁における見解
参議院の公式ホームページの「参議院議員櫻井充君提出印紙税に関する質問に対する答弁書」によると、印紙税において、電磁的記録により作成されたものについては、課税されないという見解がなされています。
事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである
引用:参議院|参議院議員櫻井充君提出印紙税に関する質問に対する答弁書
見解事例②:国税庁による見解
国税庁の公式ホームページの「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について(別紙1-3)」によると、書類の電子送付について下記のように記載されています。
注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。
引用:国税庁|請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について 別紙1-3
このように、国税庁による見解によると、PDFなどの電子媒体をメールで送信したときは、課税文書を作成したことにはならないため、印紙税はかからず、収入印紙は不要となります。ただし、メール送信後の対応などによっては、課税文書に該当する可能性もあるため、注意が必要です。
印紙税だけではない電子契約のメリット
ここでは、印紙税がかからないことによるコストの削減のほかに、電子契約のメリットについて詳しく紹介します。
契約締結業務の効率化
電子契約では、インターネット上で契約締結業務を進められるため、業務の効率化が期待できます。紙の書類で契約をおこなう場合には、印刷・製本・押印・郵送などのプロセスが必要です。また、紙の契約では、契約書のステータスを管理しづらいというデメリットがあります。
一方、電子契約では、インターネット上で手続きを完結でき、印刷や郵送などの手間は不要となります。また、電子契約サービスのワークフロー機能やリマインド機能を活用すれば、契約書のステータスを適切に管理し、スムーズに契約業務を進めることが可能です。
このように、電子契約では、紙の書類契約と比べて、スピーディーに契約業務を進められるため、業務負担が軽減し、業務効率の向上が期待できます。
コンプライアンスの遵守
電子契約では、電子署名やタイムスタンプ、監視機能、バックアップ機能などを活用することで、コンプライアンスを強化することができます。紙の契約書を使用する場合には、「だれが・いつ・どこで」業務をおこなったのかを把握しづらいため、従業員による契約書の改ざんや破損などが発生し、コンプライアンス違反が生じる可能性もあります。
一方、本人証明の仕組みが適切に構築されている電子契約サービスを活用すれば、従業員による内部不正を防止し、コンプライアンスの遵守を強化することが可能です。また、電子契約では、作業した内容がログとして残るため、不正が発生したら、日付・作業者・IPアドレスなどのログから調査して、原因を突き止めることができます。また、契約書が破損した場合には、バックアップ機能を活用すれば、復元することが可能です。
このように、電子契約を導入すれば、セキュリティ強度を高め、コンプライアンスの遵守を強化することができます。
電子契約を導入して印紙を削減しよう!
電子契約は「課税文書の作成」にあたらないことから、印紙税はかからず、収入印紙は不要とされています。ただし、電子契約の印紙税について、明確に非課税と記載された法令規則はないため、国税庁の見解や国会答弁を通して正しく理解することが大切です。
このように、電子契約では、契約書の郵送にかかる紙やインク、切手等の代金に加え、収入印紙が不要となることから、コストの削減が期待できます。ほかにも電子契約には、業務の効率化やコンプライアンスの強化などのメリットがあるため、契約が多く発生する企業は導入を検討してみると良いでしょう。
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