打刻忘れへの正しい対応とは?従業員への対策やペナルティも解説
勤怠管理システム
2023.09.11
2023.09.11
2019年4月1日に労働安全衛生法が改正され、「労働時間の適正な把握」が義務化されました。それに伴い、企業はタイムカードやICカードを用いて、「労働時間の適正な把握」が義務化されました。そこで問題となるのが、従業員の打刻忘れです。この記事では、打刻忘れへの対応や防止方法、従業員への罰則について解説します。

タイムカードのお悩み解決BOOK
この資料では、紙のタイムカード(打刻機)でよくあるお悩みとその解決方法について解説しています。押し忘れの場合の対処法やタイムカードに関する法律についても紹介。勤怠・人事・給与の担当者におすすめです。
この資料では、紙のタイムカード(打刻機)でよくあるお悩みとその解決方法について解説しています。押し忘れの場合の対処法やタイムカードに関する法律についても紹介。勤怠・人事・給与の担当者におすすめです。
打刻忘れが発覚した場合の対応
会社では、タイムカードなどを使って始業時間や終業時間を打刻するのがルールですが、ついうっかり打刻を忘れてしまう従業員も少なくありません。
もし打刻忘れが発生し、修正がされなかった場合、従業員の始業時刻や終業時刻が正確に把握できなくなります。その結果、給与計算業務に遅れが出たり、時間外労働の上限を超えて残業させたりするおそれがあります。
打刻忘れが発生した場合は、すみやかに本人に確認して正確な労働時間を把握することが大切です。2019年4月1日の労働安全衛生法改正により、従業員一人ひとりの労働時間を正確に把握することが義務付けられました。タイムカードの打刻が発覚したら、すみやかに本人に事実確認をおこない、正確な始業時刻や終業時刻を把握しましょう。
打刻を忘れた従業員に確認をおこなう
給与計算や勤務状況の確認などのタイミングで、従業員が打刻を忘れている日があることに気付いた場合、すぐに当該従業員に「何時に出社(退社)したのか」の聞き取り調査をおこないます。
もし本人が不在の場合は、その上長に始業時刻や終業時刻を確認することもできます。厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」では、始業時刻や終業時刻を確認する方法として、「使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること」としています。
ただし、ガイドライン上は「確認した始業時刻や終業時刻については、該当労働者からも確認することが望ましい」ともしています。(※2)
やむを得ない事情がある場合を除いて、なるべく本人に聞き取りをおこなってから始業時刻や終業時刻を把握しましょう。
(※2)労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準|厚生労働省 p3
確認をした上で勤務時間の修正対応をする
打刻忘れに気付いたら、直ぐに記録の修正対応をおこないましょう。時間が経つと従業員の記憶が薄れてしまううえ、修正対応を失念してしまう可能性があります。
打刻に使用しているのがタイムカードであれば、そのまま手書きで時刻を記載しておけば、給与計算の時も正しい時刻で集計できます。
一方、タイムレコーダーを勤怠管理システムと連携している場合は、労働時間をシステム上で管理しているので、タイムカードそのものを修正しても集計に反映されません。その場合は、勤怠管理システムにログインし、手動で当該従業員のデータを修正する必要があります。
もしくは、システム上で従業員側から打刻修正を申請できるものもあるため、自社の運用に合う方を選択しましょう。
データの修正方法はシステムによって異なりますので、初めてデータ修正をおこなう際は、マニュアルを確認した上で作業をおこなう必要があります。
なお、打刻忘れの修正をおこなう場合は、当該従業員にタイムカードまたはデータを修正する旨を伝えると共に、あらかじめ承諾を得ておくと安心です。
打刻を忘れた理由を確認し、注意をうながしたり改善策を講じる
また、ヒアリングによって打刻を忘れた理由を聞き出し、今後打刻忘れが起こらないような対策も考える必要があります。
従業員が打刻を忘れると、法令に違反したり給与計算の対応も滞ってしまったりする可能性があります。打刻を忘れた従業員にはなぜ忘れてしまったのか理由の聞き取りもおこないましょう。
打刻を忘れた理由が打刻機が混み合っていて後回しにしたなど、打刻そのものの方法に問題がありそうだと考えられる場合には、打刻方法の変更なども検討しましょう。
社員がタイムカードの打刻を忘れる理由
そもそも、なぜ打刻忘れや打刻漏れが発生するのでしょうか。打刻忘れが何度も繰り返される場合は、出退勤時の打刻が習慣化されていない可能性があります。
とくにテレワークを導入したケースなど、勤怠管理の方法に変化があった場合は打刻忘れが発生しやすくなります。また、出張や直行直帰が多い仕事の場合も、打刻忘れにつながる可能性があります。
打刻機の設置場所や打刻方法に問題がある
打刻に使うタイムレコーダーやICカードリーダーが出入り口から離れたところに設置されている場合、出勤・退勤時に目に付かず、打刻を忘れやすくなります。
打刻に手間がや時間がかかる打刻方法の場合、手間に感じてさぼる従業員が出てくる可能性があります。例えばタイムカードで出退勤管理をおこなっている場合、出退勤が重なる時間には打刻機周りが混み合い、打刻を後回しにしてそのまま忘れてしまうというケースもあります。打刻方法に課題がないかも確認してみましょう。
出退勤時の打刻が習慣化されていない
「出退勤時に打刻する」という習慣づけが不十分な場合、打刻忘れが頻発します。とくにテレワークを導入し、在宅勤務とオフィス勤務で打刻方法が異なる場合は「出社した際に打刻を忘れてしまう」「在宅勤務時に始業時刻や終業時刻の報告を忘れてしまう」といった打刻に関するミスが起きやすくなります。
出退勤時の打刻を習慣化するには、打刻に関する社内ルールを整備して、周知し、ルールを浸透させることが大切です。
仕事上、出張や直行直帰が多い
営業部門のように出張や直行直帰が多い部署の場合、出社してタイムカードに打刻するのが難しいケースがあります。この場合、出社時に手書きでタイムカードを修正し、始業時刻や終業時刻をまとめて記録するという対応をおこなう場合もあるでしょう。
こうしたケースでは、出張や直行直帰が多い社員でもスムーズに打刻できるような打刻方法にすることが必要です。
始業時刻や終業時刻が一定ではないため
フレックスタイム制やシフト制等、始業時刻や終業時刻が一定ではないと打刻を忘れやすくなります。
同時刻に打刻をおこなう従業員がいないため、従業員が打刻をすることを思い出しやすくなる方法を検討しましょう。
残業に追われている
業務に追われていると打刻をすることを忘れてしまう従業員が増えます。打刻をリマインドすることはもちろん、そもそもの業務状況を改善することも検討すると良いでしょう。
打刻忘れや打刻漏れの対策方法
打刻忘れや打刻漏れを未然に防ぐには、従業員がタイムレコーダーや勤怠管理システムで打刻しやすい職場環境づくりが重要です。タイムレコーダーの設置場所を工夫したり、社員同士の声掛けやアラームの設定などでリマインドをおこなうことで、打刻忘れを防止できます。
また、テレワークの導入企業や、出張や直行直帰が多い企業の場合、勤怠管理システムを導入すれば時間や場所にとらわれず正確に労働時間を把握することが可能です。
タイムレコーダーやタイムカードの設置場所を工夫する
タイムカードの打刻を習慣化するため、タイムレコーダーの設置場所を工夫しましょう。誰もが目につきやすいオフィスの出入口の付近など、社員の動線上にタイムレコーダーがあれば、出退勤時の打刻を忘れにくくなります。
タイムレコーダーの位置が出入口から遠かったり、見えづらかったりする場合は、タイムレコーダーの設置場所を見直しましょう。
声掛けやアラームなどでリマインドをおこなう
打刻忘れが多い場合「社員同士でタイムカードに打刻したかどうか声掛けをおこなう」「始業時刻や終業時刻にアラームを設定し、リマインドをおこなう」といった方法も効果的です。
社員一人ひとりの意識の向上に取り組むことで、打刻忘れを未然に防ぐことができます。打刻忘れが何度も繰り返される場合は、打刻の習慣づけに取り組みましょう。
タイムカードの打刻忘れを警告するポスターを掲示する
壁にタイムカードの打刻忘れを警告するポスターを掲示することも有効な対策です。
入口やタイムレコーダーまでの動線内など従業員が出勤・退勤時に目につきやすい所に掲示することでうっかり打刻を忘れてしまう従業員を減らす効果が期待できます。
勤怠管理システムを導入する
テレワークの導入企業や、出張や直行直帰が多い企業では、タイムレコーダーでの打刻は困難です。その場合、PCやスマートフォンで打刻可能な勤怠管理システムの導入を検討しましょう。
個人のPCやスマートフォンのアプリなどから簡単に打刻できるため、打刻忘れが起きづらくなります。また、勤怠管理システムには、打刻忘れが発生した際にアラートメールを送信し、該当の社員に打刻を促す機能もあります。
打刻忘れが多い場合は、思い切って勤怠管理の方法を見直すのも効果的です。
打刻を忘れた従業員へのペナルティ
就業規則に打刻忘れについての罰則が記載され、社内で広く周知されている場合、打刻を忘れた従業員にペナルティを科すことも可能です。
ただし、打刻を忘れた従業員を欠勤扱いにすることはできません。労働基準法第24条には「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」という規定があります。(※3)
ここでいう「賃金」とは、「労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」を意味しています。タイムカードの打刻の有無にかかわらず、従業員が所定の労働時間通り勤務した場合は、労働契約に従って給与の全額を支払う必要があります。
打刻忘れがあったとしても、その従業員が当該日に出勤し、労働したことは間違いのない事実ですので、欠勤扱いにして労働の対償である賃金を支払わないのは労働基準法に違反します。労働基準法第24条に違反すると、同法第120条の規定により、30万円以下の罰金に処される可能性があります。
一方常習的に打刻忘れがみられる従業員にペナルティを科したい場合、事前に就業規則に記載をおこなっている場合に関しては、減給処分にすることは可能です。
その場合、労働基準法第91条の規定にしたがって「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超え」ない範囲で減給額を設定する必要があります。(※3)
ただし、打刻を忘れたからといっていきなり減給処分にするのではなく、教育指導や始末書の提出、減給警告などの段階を経て減給処分を実施する企業が一般的です。
(※3)労働基準法|e-Gov法令検索
打刻忘れの原因を知って正確な労働時間の把握をおこなおう
打刻を忘れが起こると、労働時間状況を把握するという事業者の責務を果たせなくなるほか、給与計算に支障を来したり、経理担当者に余計な負担をかけたりする原因となります。もし打刻忘れが発覚したら、すみやかに本人に確認し、始業時刻や終業時刻を正確に把握・修正をしましょう。その上で、当該従業員には教育・指導を行い、再発防止に努めることが大切です。
打刻忘れが発生する原因としては「出退勤時の打刻が習慣化されていない」「仕事上、出張や直行直帰が多い」といった理由があります。
タイムレコーダーの設置場所を工夫したり、声掛けやアラームなどでリマインドをおこなうことで、タイムカードの打刻の習慣づけが可能です。
また、勤怠管理システムを導入すれば、出張や直行直帰が多い企業でもPCやスマートフォンから簡単に打刻できます。打刻が行われていない場合のアラート機能があるシステムもあるので打刻忘れの対策として検討してみると良いでしょう。

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