領収書はメールで送ることができる?添付データの形式や印紙・印鑑について解説
電子取引の広がりにより、領収書や請求書をメールで送ることが商慣習上認められるようになりました。領収書をメールで送れば、郵送の際の手間やコストを削減できます。また、テレワークやリモートワークの導入企業は、領収書をペーパーレス化することで出社せずに業務を遂行できます。この記事では、領収書をメールで送る方法や、メール自体を領収書代わりにするときのポイント
電子取引の広がりにより、領収書や請求書をメールで送ることが商慣習上認められるようになりました。領収書をメールで送れば、郵送の際の手間やコストを削減できます。また、テレワークやリモートワークの導入企業は、領収書をペーパーレス化することで出社せずに業務を遂行できます。この記事では、領収書をメールで送る方法や、メール自体を領収書代わりにするときのポイント、収入印紙や印鑑の必要性について解説します。
電子化した領収書をメールで送ることは法律的に有効
領収書や請求書はメールで送ることが可能です。商慣習上、「領収書の交付は原本(紙)に限る」というルールを設けている企業も存在します。しかし、1998年に電子帳簿保存法が制定され、領収書を電子データで保管することが認められました。現行の電子帳簿保存法では、たとえばスマホで撮影した領収書のデータも帳簿書類として認められます。これまで紙の領収書を交付してきた企業も、メール交付への切り替えを検討しましょう。
また、メールでの取引を始めとした「電子取引」は、現代では広く認められた取引方法の1つです。たとえば、国税庁の電子帳簿保存法一問一答では、電子取引を次のように定義しています。
「電子取引」とは、取引情報の授受を電磁的方式によりおこなう取引をいいます。なお、この取引情報とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他、これらに準ずる書類に通常記載される事項をいいます。具体的には、いわゆるEDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引、インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引等をいいます。
引用:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】|国税庁
国税庁の一問一答の通り、電子メールを通じ、領収書や見積書などの取引情報を授受する取引は広く認められています。近年の電子帳簿保存法の改正により、電子化した領収書の保管や管理についての規制緩和が進みました。
メールでの取引を始めとした電子取引の導入ハードルは年々低下しています。ただし、取引先が「領収書の交付は原本(紙)に限る」というルールを設けている場合は、紙の領収書の発行も検討しましょう。相手先に合わせ、紙かメールかを判断していくことが大切です。
領収書をメールで送る2つの方法
領収書をメールで送るための方法は、大きく分けて2つあります。
- PDFで作成した領収書を添付してメールで送信する
- 紙の領収書をスキャンしたデータを添付してメールで送信する
以下、それぞれの方法について詳しく解説します。
1. PDFで作成した領収書を添付してメールで送信する
領収書をWordやExcelなどで作成した場合は、相手方がMicrosoft Officeに対応していない可能性があるため、PDFファイルに変換するのがおすすめです。Microsoft Office 2010以降のバージョンであれば、作成したWordやExcelのファイルをPDF形式にエクスポートできます。
2. 紙の領収書をスキャンしたデータを添付してメールで送信する
領収書を紙で作成した場合は複合機やスキャナーを使い、スキャンしたデータをメールで送ることも可能です。なお、領収書をまとめてスキャンすると、作成されるPDFファイルも一つにまとまってしまうことがあります。その際は、Adobe Acrobat DCのページ整理機能などを利用して、領収書のデータを分割しましょう。
また、領収書を電子化したい場合は、経費精算システムを導入すれば、領収書の作成から発行、交付までをワンストップでおこなうことができます。
メールを領収書として使用する際に必要な記載項目
領収書のデータをメールに添付するのではなく、メールそのものを領収書代わりに送ることもできます。メールを領収書として送るときの記載項目は、原則として紙の領収書と同じです。「宛名」「日付」「金額」「但し書き」「発行者」の5点の情報をメール本文に記載しましょう。この5点の情報が記載されていれば、メールであっても「代金が支払われた事実」を証明できます。
宛先 | 相手先の氏名 |
日付 | 代金を受け取った日付 |
金額 | 受け取った金額 |
但し書き | 取引の内容 |
発行者 | 発行者の住所や氏名 |
領収書をメールで送る際は印紙や印鑑が不要
領収書をメールで送る際に気になるのが、「収入印紙や印鑑はどうなるか」という問題です。
結論から述べると、電子データで領収書を交付する場合は収入印紙の貼付が不要です。
また、法律上は領収書への押印も必須ではありません。そのため、電子メールで取引をおこなう場合も、領収書の印鑑は省略することができます。
ここでは、国税庁の見解を参考にしながら、領収書をメールで交付するときの印紙や印鑑の必要性について解説します。
電子データで領収書を交付する場合は収入印紙が不要
紙の領収書を交付する場合は、領収書に記載された金額(税抜)に応じ、規定の金額の収入印紙を貼付する必要があります。
以下は国税庁のホームページを元に作成した表です。たとえば、記載金額が500万円を超える場合、2,000円の印紙税が課税されます。(※2)
記載金額 | 税額 |
5万円未満 | 非課税 |
5万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 600円 |
300万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 2,000円 |
しかし、領収書をメールで送る場合など、電子データで領収書を交付する場合は収入印紙の貼付は不要です。
国税庁の「印紙税の手引き 総則」によれば、印紙税は課税文書の現物を「交付」するときに課税されます。(※3)
項目 | 課税対象 | 具体例 |
相手方に交付する目的で作成される課税文書 | 交付の時 | 手形、株券、出資証券、社債券、預貯金証書、倉庫証券、船荷証券、保険証券、配当金領収証、受取書、請求書、差入書 |
つまり、領収書や請求書のデータをメールで送る場合は、現物が相手側に「交付」されないため、印紙税の課税対象にはなりません。ただし、電子データで作成した領収書を印刷し、書面で相手方に交付する場合は収入印紙の貼付が必要です。
(※3)印紙税の手引き 総則|国税庁
そもそも法律上は領収書の印鑑は必須ではない
商慣習上、領収書への押印を必須としている企業もあります。しかし、そもそも法律上は領収書への押印は必須ではありません。たとえば、2020年6月に内閣府規制改革推進室が経済四団体の要望を受け、行政手続きにおける押印原則の見直しをおこないました。(※4)
見積書、請求書、領収書等については、押印不要とするとともに、eメール等での書類提出を認める。直ちに提出が困難なものについては、後日送付を認める。全府省横断的なルールとして、行政手続きではすでに見積書、請求書、領収書への押印が廃止されています。ただし、領収書に角印を押すことで、領収書の偽造や改ざんを防止する効果は期待できます。
また、相手方が領収書の原本(紙)の発行を求めるケースもあります。法律上は領収書への押印は必須ではありませんが、ビジネスシーンに合わせて押印の有無を判断することが大切です。
(※4)「行政手続における書面主義、押印原則、対面主義の見直しについて(再検討依頼)」の結果概要|内閣府規制改革推進室
領収書を添付してメールを送る場合のテンプレート
領収書を添付してメールを送る場合の文例を2点ご紹介します。メールの文章の作成にお困りの際にはテンプレートとしてご活用ください。
メールテンプレート1:企業間取引の場合
【件名】領収書送付のご連絡【●●●●株式会社】
【本文】
▲▲▲▲株式会社
鈴木 太郎 様
平素よりたいへんお世話になっております。
●●●●株式会社の佐藤です。
先日、ご発注いただきました商品のお支払いに関して、
〇月〇日付でお振込を確認いたしました。
対応いただきましてありがとうございます。
領収書のPDFファイルをメールに1点添付してお送りさせていただきますので、
ご査収くださいませ。
ファイルを開けない等の不備がございましたら、
お手数ですがご連絡いただければと思います。
引き続きよろしくお願いいたします。
――――――――――――――――――――――――――――
#署名
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メールテンプレート2:ECショップなどの商品発送の場合
【件名】ご注文いただいた商品の領収書送付のご連絡
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【本文】
鈴木 様
先日は●●●(商品名)のご注文をいただき誠にありがとうございました。
ご依頼いただきました●●●(商品名)についての領収書のPDFファイルを
本メールに添付してお送りさせていただきますのでご査収ください。
ファイルが開けないなどの不備がございましたら
お手数ですがご連絡いただけますと幸いです。
この度はご注文いただきまして、誠にありがとうございました。
またのご利用、心よりお待ちしております。
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#署名
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領収書はメールで送付可能!印鑑や収入印紙なしで領収書を発行できる
電子取引の広がりにより、領収書や請求書をメールで交付することが広く認められるようになりました
領収書をメールで交付すれば、領収書の発行や郵送に関する手間を大幅に削減できます。「領収書をPDFファイルで作成する」「紙の領収書をスキャンする」のいずれかの方法によって、領収書をメールで交付しましょう。また、メール本文に「宛名」「日付」「金額」「但し書き」「発行者」の5点の情報を記載すれば、メールそのものを領収書代わりに交付することもできます。なお、領収書をメールで送る際は印鑑や収入印紙が不要です。領収書を電子化すれば、収入印紙代を始めとしたコストの削減にもつながります。