電子帳簿保存法のスキャナ保存制度とは?保存機器の要件について解説
経費精算システム
2023.11.15
2023.11.15
電子帳簿保存法に基づいて国税関係帳簿書類を保存する方法はいくつかありますが、紙でやり取りされることが多い請求書や領収書などはスキャナ保存制度を適用して保存されるのが一般的です。ただ、スキャナ保存制度を用いて国税関係帳簿書類を保存するには、一定の要件を満たす必要があります。今回は、スキャナ保存制度の概要や、保存機器の要件、スキャナ保存の承認申請の方法について解説します。
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電子帳簿保存法対応ガイド
この資料では、電子帳簿保存法の保存要件について解説しています。電子帳簿保存法の概要や対応方法、文書の適切な管理方法までをわかりやすく紹介しています。
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電子帳簿保存法のスキャナ保存制度とは
電子帳簿保存法におけるスキャナ保存制度とは、取引先から受け取った請求書や領収書といった国税関係書類をスキャンし、電子データとして保存することを認める制度です。(※1)
平成10年に制定された電子帳簿保存法は、当初、自己が一貫してコンピューターなどで作成した帳簿や書類のみを適用対象としていました。しかし、平成17年に書面での保存が義務づけられている国税関係書類を電子データとして保存することを容認する「e-文書法」が新設されたことに伴い、電子帳簿保存法の改正がおこなわれました。
これにより、電子署名やタイムスタンプの活用、およびスキャン文書の変更履歴を保持できる環境下であれば、スキャンした文書を正式な国税関係書類として保存することが認められました。当初は、契約書等については契約金額または受取金額が3万円未満のものに限ること、入力者等の電子署名を付すること等、さまざまな制約がありました。
しかし、その後たびたび実施された税制改正によって徐々に適用要件が緩和され、現在は多くの企業がスキャナ保存制度を利用した国税関係帳簿書類の保存をおこなっています。
スキャナ保存制度の適用対象
電子帳簿保存法では、国税関係帳簿書類を電子データとして保存することを容認していますが、このうちスキャナ保存制度の適用対象となるのは国税関係書類のみです。ここでいう国税関係書類とは、主に以下のような書類を指します。
- 注文書
- 契約書
- 請求書
- 領収書
- 見積書
- 検収書
- 送り状
- 契約の申込書
なお、スキャナ保存の対象は、電子帳簿保存法施行規則第2条第4項に規定する書類以外の国税関係書類と定められています。(※2)そのため、規則第2条第4項に該当する棚卸し表や貸借対照表、損益計算書などの計算、整理または決算関係書類はスキャナ保存制度の対象外となります。また、売上伝票などの伝票類は、所得税法で定められる保存すべき書類に該当しないため、スキャナ保存制度の適用はありません。
「スキャナ」の意義
スキャナというと、複合機に搭載されているスキャン機能や、単独のスキャナを用いて画像や文書などの情報を読み取る行為をイメージされる方も多いでしょう。
実際、スキャナ保存制度が制定された当初は、スキャナについて原稿台と一体になったものに限定することが保存要件のひとつになっていました。(※3)
しかし、平成28年度の税制改正にて、原稿台と一体になったものに限るという要件が廃止されました。これにともない、スキャナ保存制度では国税関係書類を電磁的記録に変換できる入力装置をまとめて「スキャナ」と定義しています。
現在は専用のスキャナ機器に限らず、スマホやデジタルカメラなどの機器を用いて撮影した画像も保存要件を満たすデータとみなされます。
ただし、どの機器を用いる場合でも、スキャナ保存制度の保存要件を満たしたものであることが前提となります。スキャナ機器にせよスマホやデジカメにせよ、保存要件を満たしていない機器でスキャンまたは撮影したものは正式な国税関係書類とは認められません。
そのため、スキャナ保存制度の利用を検討する際は、使用する機器が保存要件を満たしているかどうか、あらかじめチェックしておく必要があります。

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この資料では、電子帳簿保存法の保存要件について解説しています。電子帳簿保存法の概要や対応方法、文書の適切な管理方法までをわかりやすく紹介しています。
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スキャナ・スマホなど保存する機器の要件
電子帳簿保存法では、スキャナ保存制度で用いるスキャナに一定の要件を設けています。要件を満たさない機器でスキャンまたは撮影した画像は電子帳簿保存法の適用対象外となります。電子帳簿保存法に基づかない方法で電子データ化された書類は、正式な国税関係書類とは認められません。
国税関係書類は確定申告で使用する大切な書類のため、要件をしっかり満たした機器でスキャンまたは撮影することを心がけましょう。ここでは、スキャナ保存制度で求められるスキャナ機器の要件を2つご紹介します。
解像度の要件
スキャナ保存制度を利用するには、スキャニング時に25.4mm(1インチ)あたり200ドット以上で読み取れる性能をそなえている必要があります。(※4)A4用紙のサイズはインチ換算すると縦約11.69インチ、横約8.27インチです。
11.69インチ×200ドット=2,338画素、8.27インチ×200ドット=1,654万画素ですので、総画素は2,338画素×1,654画素=約387万画素となります。
つまり、A4サイズの書類を電子帳簿保存法に基づいて保存するには、約387万画素以上でスキャニングまたは撮影できるスキャナ機器、スマホカメラ、デジタルカメラを使用する必要があります。(※5)
使用する機器によってはA4サイズと縦横比が異なる場合もありますが、それぞれ縦2,338画素、横1,654画素を満たしていれば要件をクリアしているとみなされます。
一方、使用機器によっては解像度を「dpi」で示しているものもあります。dpiとはdots per inchの略称で、1インチあたりのドット数を示す単位のことです。スキャナ保存制度では、1インチあたり200ドット以上を要件としていますので、解像度が「200dpi以上」の機器であれば要件を満たすことができます。
なお、要件を満たしているスマホやデジカメで撮影したにもかかわらず、画像の解像度が72dpiと表示されることがあります。これはデジタルスチルカメラ用画像ファイルフォーマット規格で、画像の解像度が不明な場合、72dpiと記録しなければならないという規定があるためです。
つまり、72dpiと記録されていても、実際には200dpi以上という保存要件を満たしている可能性があります。こうした場合に備え、スマホやデジカメで撮影した場合は、書類サイズにかかわらず、画素数を保存しておくことが大切です。
階調の要件
階調とは、色の濃淡を表すグラデーションの度合いのことです。ディスプレイやプリンタなどの画質を表すときに用いられる単位で、階調数が多いほど色や明るさの変化を美しく、滑らかに表現できるといわれています。
スキャナ保存制度では、データの真実性を確保するため、赤色、緑色および青色の階調がそれぞれ256階調以上(24ビットカラー)であることを要件としています。(※6)ただし、国税関係書類のうち、重要書類以外の一般書類に関しては、白黒階調(グレースケール)での読み取りも可としています。
ここでいう重要書類とは、領収書や契約書のほか、請求書や納品書といった資金や物の流れに直結または連動する書類のことです。それ以外の書類(見積書や注文書など)は「重要度低」の一般書類に区分されます。
書類の重要度は国税庁HPなどで確認できますが、種類に応じてカラーとグレースケールで区分するのはかえって手間がかかります。そのため、国税関係書類は重要度の高低によらず、すべて256階調以上でカラー保存した方がよいでしょう。なお、階調も解像度同様、要件を満たすことがわかる情報が保存されていることが大切です。
たとえば赤と緑および青がそれぞれ256階調の場合、Exifの「Bits Per Sample」のタグに「888」が格納されていること、また、ファイルのプロパティに「24ビット」と表示されていれば、保存要件を満たすとみなされます。
スキャナ保存の承認申請の方法
かつて電子帳簿保存法を利用して国税関係帳簿書類を保存するには、事前に税務署長の承認を受ける必要がありました。しかし、こうした承認作業は事業者の事務負担を増大させることから、令和3年度税制改正によって税務署長の事前承認制度は廃止されました。(※7)令和4年1月1日以降に新しく電子帳簿保存法におけるスキャナ保存制度を利用する場合は、承認申請の必要はありません。
スキャナ保存制度を利用する際は保存機器の要件をチェックしよう
電子帳簿保存法におけるスキャナ保存制度を利用するには、一定の要件を満たしたスキャナ機器やスマホ、デジカメといった保存機器を使用する必要があります。要件を満たさない保存機器でスキャンや撮影した場合、正式な国税関係書類とは認められません。
年度末におこなう確定申告にも大きな影響を及ぼすため、スキャナ保存制度を利用する際はあらかじめ保存機器が要件を満たしているかどうかチェックしておきましょう。

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