電子帳簿保存法の改正でタイムスタンプは不要?費用や期限についても解説
経費精算システム
2023.09.04
2023.09.04
令和3年の法改正により、電子帳簿保存法の適用要件が一部緩和されました。そのなかには、これまで必須だったタイムスタンプ要件の緩和も盛り込まれています。適用要件の緩和は経理の電子化による生産性の向上などを目的としていますが、この緩和にはどのようなメリットがあるのでしょうか。今回は、電子帳簿保存法におけるタイムスタンプシステムの概要や、要件緩和のメリット、発行にかかる費用や期限などについて解説します。
電子帳簿保存法のタイムスタンプシステムとは
電子帳簿保存法におけるタイムスタンプとは、ある時刻にその電子データが存在していたこと、それ以降にデータが改ざんされていないことを証明するシステムのことです。(※1)現代ではさまざまな電子データや電子文書がインターネットを介してやりとりされていますが、これらの電子情報は紙媒体の書類よりもデータの改ざんが容易という欠点があります。
タイムスタンプは、インターネット上で取引や手続きがおこなわれた時刻および、電子文書が存在した日時を証明することで、安心かつ安全な電子情報の授受を可能にしています。
(※1)タイムスタンプとは?|総務省
タイムスタンプの仕組み
タイムスタンプシステムは、タイムスタンプの要求、発行、検証という3つの過程で構成されています。タイムスタンプの要求では、利用者がタイムスタンプを付与する原本データのハッシュ値を生成し、それをタイムスタンプを発行する時刻認証局(TSA)に送付します。
TSAは、時刻情報を偽造できないよう、ハッシュ値と時刻情報を結合し、利用者にタイムスタンプとして発行します。原本データからハッシュ値を計算し、タイムスタンプに含まれているハッシュ値と比較すれば、タイムスタンプに含まれる時刻情報以降、データが改ざんされていないことを証明することができます。
なお、電子帳簿保存法では、国税関係書類に使用するタイムスタンプについて、以下の要件を満たすことを要件にしています。(※2)
- 国税関係書類の保存期間を通じて、当該データが変更されていないことを確認できること
- 課税期間中の任意の期間を指定し、その期間内に付与されたタイムスタンプをまとめて検証できること
タイムスタンプの要件緩和のメリット
以前までは、電子帳簿保存法に基づいて保存した電子データについて、発行する側と受領する側の両方が、必ずタイムスタンプを付与することが義務づけられていました。
しかし、2020年の電子帳簿保存法の改正により、発行者側がタイムスタンプを付与していれば、受領側のタイムスタンプは不要となりました。(※3)さらに令和3年度の法改正では、一定の要件を満たすことでタイムスタンプを不要とする内容が盛り込まれました。
具体的には、電子データの訂正または削除をおこなった場合、クラウドなどのサービスを利用してその事実や内容の確認が取れれば、タイムスタンプ付与に代えることができるとしています。(※4)
なお、確認に利用するクラウドサービスには、訂正または削除をおこなえる機能がついていなくてもかまいません。このようなタイムスタンプの要件緩和により、以下のようなメリットが期待できます。
(※3)法第4条((国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等))関係|国税庁
(※4)電子帳簿保存法が改正されました|国税庁
業務負担の軽減
電子帳簿保存法の適用および運用の負荷は大幅に軽減されることになりました。前述の通り、タイムスタンプの付与には要求、発行のステップが必要になるため、電子データを授受したり、書類をスキャニングしたりするたび、かなりの手間がかかってしまいます。また、タイムスタンプは電子データを受領後、おおむね3営業日以内にタイムスタンプを付与することが義務づけられていました。(※注5)
そのため、電子データのやりとりが立て続けに発生した場合、経理担当の業務負担はかなり大きくなってしまいます。タイムスタンプが不要になったことで、経理担当者はあわててタイムスタンプを付与する必要がなくなり、経理業務の負担軽減につながっています。
(※5)適用要件【基本的事項】|国税庁
タイムスタンプの発行にかかる費用
タイムスタンプを利用するためには、TSAにタイムスタンプを要求する必要があります。TSAとは「Time-Stamping Authority」の略称で、日本語では時刻認証局という意味です。TSAは利用者からの要求に応じてタイムスタンプを発行する代わりに、その対価として一定の利用料を徴収する仕組みになっています。
TSAは2022年3月現在、全国に5つ存在していますが、それぞれ利用料やプランに違いがあります。
タイムスタンプを付与する際の期限
電子帳簿保存法の施行規則第2条第6項第2号では、タイムスタンプについて以下のように規定しています。
当該国税関係書類の作成又は受領後、速やかに一の入力単位ごとの電磁的記録の記録事項に一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプ(次に掲げる要件を満たすものに限る。以下この号並びに第四条第一項第一号及び第二号において「タイムスタンプ」という。)を付すこと
引用:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則|e-Gov法令検索
しかし、令和3年度の法改正により、タイムスタンプの付与期間は受領の日からその業務の処理にかかる一般的な期間(最長2カ月)を経過した後、おおむね7営業日以内まで延長されることになりました。(※2)
法改正前に比べるとタイムスタンプ付与までの期間にかなりゆとりがあるため、経理担当者がタイムスタンプの付与業務に追われるリスクは大幅に軽減されています。
タイムスタンプを利用する際の手順
電子帳簿保存法に基づいて国税関係の帳簿や書類を保存するにあたって、タイムスタンプを利用する手順は大きく分けて4つあります。タイムスタンプは要求、発行、検証の3つで構成されていると説明しましたが、このうち利用者がおこなうのは「要求」と「検証」の2つのみです。「発行」は利用者から要求を受けたTSAが実施しますので、ここでは「要求」と「検証」の流れを説明します。
1.電子データ化する国税関係の帳簿、書類を用意する
まず、電子帳簿保存法に基づいて保存する帳簿や書類を用意します。電子帳簿保存法が適用されるのは、仕訳帳や総勘定元帳といった国税関係帳簿および領収書や請求書といった国税関係書類です。このうち、自己が最初から一貫してコンピューターで作成したものや、取引先などから受領を受けたものだけが、電子帳簿保存法に基づいた保存を認められています。(※8)
手書きで作成した国税関係帳簿に関しては、スマートフォンなどで撮影して電子データ化しても、正式な書類データとして活用できません。
(※8)電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類及び電子取引関係】
2.国税関係の帳簿や書類をスキャンまたは撮影する
電子帳簿保存法の適用対象となる帳簿や書類を、専用機でスキャンまたはスマートフォンなどで撮影します。なお、スキャンや撮影にあたっては、以下の要件を満たしている必要があります。(※2)
- 一定水準以上(200dpi以上)の解像度による読み取り
- カラー画像による読み取り(赤、緑、青それぞれ256階調)
3.電子データをタイムスタンプシステムにアップロードする
スキャンまたは撮影によって取得した電子データを、タイムスタンプシステムにアップロードします。前述の通り、タイムスタンプを付与するサービスは複数あり、それぞれ特徴や費用などに違いがあります。それぞれのTSAが提供するサービスをよく比較し、自社のニーズや予算に合ったシステムを選ぶようにしましょう。
4.タイムスタンプの付与および検証
電子データをタイムスタンプシステムにアップロードすると、要求を受けたTSAがタイムスタンプの発行手続きをおこないます。 発行されたタイムスタンプに結び付いたハッシュ値と、電子データから生成されたハッシュ値を比較すると、データが改ざんされていないかどうかを検証することができます。
一定の要件を満たしていれば、タイムスタンプは不要になる
令和3年の法改正がおこなわれる前までは、電子帳簿保存法に基づく電子データの保存において、タイムスタンプの付与は必須でした。
令和3年の法改正により、訂正または削除の事実や内容を確認できるクラウドの使用によって入力期間内に保存をおこなったことが確認できる場合は、タイムスタンプは不要となりました。
タイムスタンプの付与には手間と費用がかかるため、電子データについて訂正または削除の事実と内容が確認できるクラウドサービスを利用した方が業務効率の向上とコスト削減につながるでしょう。
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