領収書に押す割印の位置は?割印の目的や押すときの注意点について解説
領収書に押す割印は、整合性の確保や再利用の防止が目的です。領収書により押す位置が異なるものの、印影が2つの書類にまたがるように押す必要があります。また、誰が押印したかわかる程度に鮮明であることも求められます。
とくに、収入印紙の割印は押し忘れると過怠税を徴収される恐れもあるため注意しましょう。この記事では、領収書に押す割印の目的や位置、きれいに押す方法と、押す際の注意点を解説します。
領収書に押す割印の目的
領収書に押す割印には次の2つの方法が存在します。それぞれ、異なった目的により割印を押しています。
- 領収書とその控えに押す
- 収入印紙と台紙に押す
領収書とその控えに押す割印は整合性の確認が目的
領収書とその控に割印を押すときは2つの書類の整合性を証明し、不正を防止するのが目的です。
収入印紙と台紙に押す割印(消印)は再利用の防止が目的
収入印紙を貼付するときは、再利用を防止するために割印を押すよう、印紙税法第8条第2項により以下のとおり定められています。(※1)
「課税文書の作成者は、(中略)当該課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければならない。」
(※1)印紙の消印の方法|国税庁
収入印紙とは、国に対し税金や事務手数料を支払うために発行された証票のことです。貼付した収入印紙に割印がないと、過怠税を徴収される恐れもあります。なお、印紙税はあくまでも課税文書を用紙に作成した際にかかる税金のため、電子領収書には収入印紙の貼付は必要ありません。
売上代金別の印紙税額一覧
印紙税額は、領収書の売上代金により貼付する額が異なります。区分は下記のとおりです。(※2)
領収書の受領金額(税抜き) | 印紙税額 |
5万円未満 | 非課税 |
5万円以上、100万円以下 | 200円 |
100万円を超え、200万円以下 | 400円 |
200万円を超え、300万円以下 | 600円 |
300万円を超え、500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え、1,000万円以下 | 2,000円 |
なお、1,000万円を超える受領金額の印紙税額は国税庁のホームページを参照してください。(※3)
(※2)No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書|国税庁
(※3)No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで|国税庁
領収書に押す割印の位置
領収書の割印は控えや収入印紙にまたがるように押します。正しい位置を解説します。
領収書とその控えに押す割印の位置
領収書本体と控えにまたがるように割印します。キリトリ線がある領収書なら、線の上に印影の左右のバランスがよくなるように押しましょう。キリトリ線のない領収書では、2枚の領収書の上部に割印します。方法は、2枚の領収書を重ねて少しずらし、それぞれに印影が残るように押印します。なお、割印は担当者一人分のみ押せばよく、部長や課長など、領収書に関わる全員の分を押す必要はありません。
収入印紙と台紙に押す割印の位置
収入印紙の割印は、印影が印紙と台紙にバランスよくまたがるように押します。割印の位置は印紙のどこでも問題はないものの、右側に押すのが一般的です。印鑑は会社名の入った角印や、氏名の入った丸印など、どれを押しても問題ありません。また、印鑑ではなく、自署でもかまいません。
領収書の割印をきれいに押す方法
割印は誰が押したかわかる程度に、鮮明でなければいけません。かすれやにじみがでないためにも、次の点を意識しましょう。
朱肉と印鑑マットを用意する
朱肉は印鑑ケースのものを使わず、専用のものを用意します。また、固い机の上で押すと、印影がかすれる原因になるため、印鑑マットを準備しましょう。
印鑑の上下を確認して持つ
印鑑は印面を見て、上下を確認してから持ちましょう。もし、印相体のように一目で判断が難しい場合は、一度紙に押して上下を確かめるようにします。
印鑑に3回程度軽く朱肉をつける
朱肉はつけすぎるとにじみの原因となります。印鑑を3回程度、軽く、まんべんなく朱肉につけるようにしましょう。
正しい姿勢で領収書にまっすぐ押す
印鑑を押す際は、姿勢を正すことで印影の歪みやかすれを防止できます。背筋を伸ばし、肩甲骨を広げたら、領収書にまっすぐ印鑑を押しましょう。
「の」の字を描くように押し付ける
印鑑を押した後は、「の」の字を描くように、印面全体を上下左右に押し付けます。以上の手順を意識することで、どの部分も欠けることのない、きれいな割印を押すことができます。
領収書に割印を押す際の注意点
領収書に割印を押す際は、印影が不鮮明になることのないようにします。また、収入印紙の割印漏れなどは、過怠税の対象となるため、とくに注意しましょう。
印影が不鮮明なときは改めて割印を押す
領収書の印影がにじんだり、かけたりして不鮮明なときは、別の場所に改めて割印しましょう。失敗した割印の上にさらに押印すると、不正と取られかねないため、適切な処理とはいえません。また、失敗した割印に二重線などを引く必要もありません。
領収書の控えは割印がなくても有効
領収書の控えには割印がなくても、法律上、問題はありません。そのため、先方に連絡し改めて割印をするなどの処理も必要ありません。
収入印紙の割印がなければ過怠税が徴収される
領収書に収入印紙を貼り忘れたり、収入印紙に割印を押し忘れたりしたときは、ペナルティとして過怠税が追徴されます。過怠税は納付しなかった印税額と、その2倍に相当する額、すなわち印紙税額の3倍の納税が必要です。
収入印紙の割印を忘れたときの対処法
なお、収入印紙の割印忘れに気付いたときは、税務調査などがおこなわれる前に、自主的に不納付を申し出ましょう。そうすれば、過怠税は1.1倍に減額されます。ただし、どちらにしろ、ペナルティが発生するため、収入印紙は割印漏れのないよう、とくに注意しましょう。
収入印紙の割印が無効となるケース
下記のような方法で収入印紙に割印すれば無効となるため注意しましょう。また、誰が割印をしたかわかる程度に鮮明であることも求められます。
- 鉛筆のように消せる筆記具で署名する
- 「印」と表示する
- 印紙に斜線を引く
収入印紙を貼付した領収書を書き損じたら「印紙税還付手続き」を受ける
領収書の書き損じや、印紙税額の間違いなどにより、収入印紙を貼り付けた領収書を使わなかったときは、所管の税務署で「印紙税還付手続き」を受けましょう。書き損じた領収書と申請者の印鑑、身分証明書、還付金を受け取る口座番号のわかる書類を持参し、「印紙税過誤納確認申請書」を提出することで、後日、還付を受けることができます。(※4)
(※4)[手続名]印紙税過誤納[確認申請・充当請求]手続|国税庁
領収書の割印は目的を理解し正しく押そう
領収書の割印には、控えとの整合性の確保と、収入印紙の再利用の防止の役割があります。押す位置は領収書の仕様により異なるものの、どの場合も印鑑の文字がわかる程度に鮮明であることが求められます。また、収入印紙の割印を押し忘れると、過怠税が徴収される恐れもあるため、漏れの無いように充分注意しましょう。もし、収入印紙代を削減し、割印漏れによる過怠税の納付を防止したいときは、電子領収書を導入してもよいでしょう。