テレワーク保険とは?加入の必要性や補償範囲・注意点を解説

テレワークの導入に向けて環境整備などの準備を進めるとき、「テレワーク保険」の加入を検討する担当者もいるでしょう。テレワーク保険は、その名の通りテレワーク中に発生した損害を補償する金融商品です。しかし、その特徴や内容について知っている人はまだまだ少ないかもしれません。

更新日:2022.6.28

テレワークの導入に向けて環境整備などの準備を進めるとき、「テレワーク保険」の加入を検討する担当者もいるでしょう。テレワーク保険は、その名の通りテレワーク中に発生した損害を補償する金融商品です。しかし、その特徴や内容について知っている人はまだまだ少ないかもしれません。

今回は、これからますます注目が集まるテレワーク保険について解説します。企業だけではなく従業員も守ることができるテレワーク保険について、しっかりと知識を身につけていきましょう。

テレワーク保険とは?

テレワーク保険と聞いて、どのような保険かイメージできるでしょうか。日本で初めてテレワーク保険が登場したのは2018年で、まだまだ認知度が低く、内容を知らないという人も多いかもしれません。

そこで、まずは基本となるテレワーク保険の概要について紹介します。

「テレワーク保険」はテレワーク中の損害を補償する金融商品

テレワーク保険とは、テレワーク中に発生したさまざまな損害を補償する金融商品です。たとえば、テレワークのために貸与した端末の盗難や紛失、サイバー攻撃、誤操作などで起きてしまった損害に対応しており、万が一のときに、損害賠償金やお見舞金を請求することができます。

テレワーク中は会社の端末を自宅に持ち出したり、企業の機密情報を自宅で扱ったりすることが増えるため、端末の紛失やセキュリティ面で多くのリスクを伴います。
端末の故障など軽微なトラブルであればそこまで大きな問題にはなりません。しかし、万が一、情報漏洩が起きてしまえば、巨額の損害賠償を支払うことになるでしょう。

従業員一人ひとりがトラブルを未然に防ぐ対策を講ずるのはもちろんのこと、企業側でも保険に加入して、有事に備えておくことが大切です。

テレワーク保険が登場した背景

テレワーク保険が登場したのは、働き方の多様化により、社外から社内ネットワークにアクセスする機会が増えたことが大きく影響しています。

警察庁の発表によると、2020年のサイバー犯罪による検挙件数は前年と比べて増加しており、過去最多とのことです。[注1]
さらに、JNSA(日本ネットワークセキュリティ協会)の「2018年 情報セキュリティインシデントに関する調査結果」によれば、2018年における情報漏洩インシデントの1件あたりの平均想定損害賠償額は、6億3,767万円ということがわかっています。[注2]
このように、万が一、サイバー犯罪に巻き込まれて個人情報の漏洩が生じた場合、企業は巨額な損害賠償を支払わなくてはいけません。

社外で機密情報を取り扱うテレワークは、サイバー犯罪や情報漏洩のリスクと隣り合わせです。そのため、テレワーク保険が登場し、テレワークが普及しつつある現在も新しい保険が開発され続けているのです。

テレワーク保険の補償範囲

テレワーク保険に加入すると、テレワーク中のさまざまなトラブルに対する補償が受けられます。とはいえ、具体的な補償範囲をイメージしにくい人もいるかもしれません。

テレワーク保険はサイバー攻撃や情報漏洩だけではなく、従業員から損害賠償を求められたときや不慮の事故などにも対応しています。ここからはテレワーク保険の5つの補償についてみていきましょう。

1. 情報漏洩やサイバー攻撃

テレワーク保険のもっとも重要な役割が、この情報漏洩やサイバー攻撃に対する補償です。たとえば、以下のようなトラブルが補償の対象です。

画面の盗み見やWi-Fiを経由した情報漏洩
サイバー攻撃によるウイルス感染
会社用のデバイスに届いたフィッシング詐欺の被害

情報漏洩にともなう顧客への損害賠償にかかる費用はもちろん、調査費用やデータ復旧費用などもカバーされます。

2. 財物損害

財物損害とは、テレワークのために社外に持ち出した業務用のPCやタブレット、社用携帯などの紛失や盗難などの損害を補償する保険です。

ただし、各種保険で財物損害に対する条件が設定されているため、利用時は注意しましょう。
以下のように、商品によって細かい規定があります。加入前は、「どのようなケースが対象になり、どのようなケースが対象外になるのか」をしっかりと調べておきましょう。

  • 特定の業務用PCのみ対象で、個人所有のPCは対象外
  • 不注意で落としたときの修理交換費用は対象外
  • テレワーク時以外の持ち出しによる紛失は対象外

3. 従業員からの損害賠償

テレワーク保険は、従業員からの損害賠償にも対応しています。テレワークで働き方が変わると、生活リズムの変化から体調を崩す従業員が出てくるでしょう。こういった場合、労災として従業員から企業へ治療費や休業中の補償が請求されることがあります。

また、テレワーク中であってもハラスメントや差別、不正解雇などで訴えられる危険性があるため、備えておくことが大切です。テレワーク保険は、こうした従業員からの損害賠償請求もきちんとカバーしています。

4. 幼児やペットによる誤操作

自宅で仕事をしているときは、幼児やペットによる誤操作によって損害が生じることもあります。誤ってデータを削除してしまったりプログラムが滅失したりしてしまった場合、テレワーク保険に加入していれば、賠償責任の補償を請求することができます。

ただし、保険商品によってカバーしているトラブルは異なるため、補償内容についてはしっかり確認しておきましょう。

5. 上記損害に対する対応費用

テレワーク保険は、上記のような損害に対する補償だけではなく、それに付随する対応費用も補償の対象です。たとえば、以下のような費用はテレワーク保険の対象内に含まれます。

  • 原因調査費
  • 再発防止費
  • 被害者へのお見舞金
  • お詫び広告掲載費
  • 対応人件費
  • コールセンター設置費

トラブルの原因を調査する費用や再発を防止する費用、その後の顧客への対応費用まで補償されます。テレワークで生じる損害を総合的に補償される点は、保険に加入する大きなメリットです。

テレワーク保険の商品例

テレワーク保険は年々開発が進められており、今後も多くの商品が販売されることが予想されます。そのため、加入時は多くの保険を比較し、自社に合ったものを選ぶことが大切です。

ここでは、参考までにテレワーク保険の一例を掲載します。

テレワーク総合補償プラン|MS&ADインシュアランスグループ

MS&ADインシュアランスグループの三井住友海上火災保険社とあいおいニッセイ同和損害保険社では、テレワークに付随するさまざまなリスクに備える「テレワーク総合補償プラン」を販売しています。この保険商品は、以下の3つの金融商品をセットで販売するものです。

サイバープロテクターサイバー攻撃PCの盗難や紛失情報漏洩
動産総合保険業務用PCやタブレットの破損や盗難
ビジネスJネクスト労災などの「使用者賠償責任」セクハラ訴訟などの「雇用慣行賠償責任」

参考:企業による「働き方改革」の推進をサポート「テレワーク総合補償プラン」の販売開始について|あいおいニッセイ同和損害保険

テレワーク保険|東京海上日動火災保険社

東京海上日動火災保険社では、日本マイクロソフト社と連携したテレワーク保険を提供しています。情報漏洩やPCに対する不正アクセスといったリスクをカバーしており、Windows10搭載デバイスに商品付帯する方式で販売されます。

端末を購入すれば付帯するので、保険会社との契約手続きは不要です。この保険が付帯されたPCは、今後順次PCメーカーや卸売業者(ディストリビュータ)などから展開される予定です。

テレワーク中の各種損害の損害賠償金や原因調査費用などが補償の対象となります。また、ウイルス感染時の調査費用や情報漏洩に伴う損害賠償、各種対応費用なども補償対象です。

参考:東京海上日動と日本マイクロソフト、働き方改革の推進で協業|東京海上日動

テレワーク保険の保険料相場

テレワーク保険に加入すると、どれくらいの保険料がかかるのでしょうか。基本的にテレワーク保険は企業単位で加入する必要がありますが、契約内容によって保険料の相場は大きく異なります。

ここでは、三井住友海上火災保険社の「サイバープロテクター」を例として、2パターンの保険料プランを紹介します。[注3]

業種企業規模保険内容保険料
不動産管理業売上高5億円IT業務特約をセットにしたスタンダードプラン
最大補償額2億円の保険
年間保険料47万3,240円
インターネット付随サービス業者売上高5億円IT業務特約をセットにしたスタンダードプラン
最大補償額2億円の保険
年間保険料182万610円

このように、保険料は会社の規模や業種、補償内容によっても異なります。「大体これくらい」という相場を出すのは難しいので、複数社の保険会社に見積りを依頼し、納得できる保険料の商品に加入することが大切です。

テレワーク保険に加入する必要性

テレワーク保険の補償内容について理解できても、自社にとって必要かどうかを判断することは難しいかもしれません。前項で紹介したように、企業によってはテレワーク保険が高額になることも多く、加入に踏み切れないところも珍しくありません。

そこで、ここからはテレワーク保険の必要性について紹介します。以下2つのポイントを踏まえ、自社にとって最良の選択をしてください。

環境が整わないままテレワークを続けるのは危険

まず、テレワークの環境が十分に整備されていない企業が多い点が、テレワーク保険を導入すべき理由です。
テレワークは感染症対策のため急速に普及しました。しかし、十分な準備ができていないまま導入した企業も多く、いまだに従業員の労働環境の整備やセキュリティ教育ができていないケースも多くみられます。

環境が整っていないままテレワークを続けてしまうと、ワークスタイルの変化による従業員の体調不良や、思わぬ情報漏洩トラブルを引き起こしてしまう恐れがあります。そのため、万が一の備えとして、テレワーク保険に加入しておくべきなのです。

テレワークでの環境整備について、こちらの記事でも詳しく解説をしています。

テレワークを狙ったサイバー攻撃の対策が必要

テレワークを狙ったサイバー攻撃が発生していることも、テレワーク保険を導入すべき一つの理由です。サイバー攻撃の件数は年々増加しており、総務省の「サイバー攻撃の最近の動向等について」の発表では、テレワークが普及した2020年4月以降に「サーバー攻撃が増加した」と感じる企業は33.8%存在していることが判明しています。[注4]

外部から社内ネットワークにアクセスするテレワークでは、どうしてもマルウェアの感染リスクが高まってしまいます。万全のセキュリティ対策を検討するのは当然です。さらに、保険に加入しておくと、有事のときもスムーズに対応できるでしょう。

テレワークでのサイバー攻撃について、こちらの記事でも詳しく解説をしています。

テレワーク保険に加入する際の注意点

テレワーク保険は、企業がリスク管理するためには欠かせない備えの一つです。もちろん、どの保険に加入してもよいというわけではありません。自社が抱えるリスクや予算に合わせて加入しないと、のちのち補償が受けられなかったり保険料が企業会計を圧迫したりしてしまいます。

それでは、保険に加入するときはどのようなポイントに気をつければよいのでしょうか。最後に、テレワーク保険に加入する際の注意点を3つ紹介します。

新しく登場した保険で比較しにくい

テレワーク保険は比較的新しい保険なので、口コミはもちろん、商品自体が少ないです。比較対象や参考にできるデータが蓄積されていないため、どの商品がよい保険なのかがわかりにくいかもしれません。

また、保険料が妥当かどうかの見極めも難しいです。加入するときは契約内容を念入りに把握し、自社に合っているかどうかを判断しなくてはいけません。

補償範囲をしっかりと確認しておく

テレワーク保険は、どのようなリスクにも対応しているわけではありません。たとえば、社内ネットワークに起因した不正アクセスや物理的損害は補償対象外となるケースもあります。また、対象とされるデバイスのモデルが限られていることもあります。そのため、加入する際は補償範囲をしっかりと確認し、自社が抱えるリスクをカバーできるかどうかを見極める必要があるのです。

テレワーク中のリスクは大きな損害につながるものが多いため、しっかり企業で補償範囲を検討してから加入することをおすすめします。

定期的に保険の見直しをおこなう

先述したように、テレワーク保険は比較的新しい保険のため、商品の数は多くありません。今は選択肢がそう多くありませんが、テレワークの浸透とともに新しい保険が数多く登場してくることが予想されます。

もちろん、より好条件な保険が開発される可能性もあります。定期的に保険を見直してよりよいものに変えていくことが大切です。
「もう加入しているから」と安心せず、常にテレワーク保険の情報収集をしておきましょう。

テレワーク保険は企業だけではなく従業員も守ることができる商品

テレワーク保険とは、テレワーク中のサイバー攻撃や情報漏洩、従業員からの損害賠償に備えることができる新しい保険です。とくに、サイバー攻撃のリスクはテレワークが普及してから増加傾向にあるため、セキュリティ対策とセットの備えとして導入することをおすすめします。

ただし、テレワーク保険はまだ新しい商品です。選ぶときは補償範囲をよく比較し、自社にとって最適な商品を選びましょう。

[注1]令和2年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について|警察庁
[注2]2018年情報セキュリティインシデントに関する調査結果|JNSA
[注3]サイバー保険|三井住友海上
[注4]サイバー攻撃の最近の動向等について|総務省

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