テレワークの導入が増加している背景や方法を解説
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2023.08.22
2023.08.22
さまざまな企業がテレワークの導入を始め、多くの従業員が自宅からの在宅勤務やサテライトオフィスからの勤務をするようになってきました。テレワークを実現するためには、社員にも企業にも揃えるべき設備やアイテムがあります。当記事では、テレワークで必要な設備やアイテムについて解説します。
テレワーク導入企業の実態
「日本人の働き方とテレワークは相性が悪い」などと言われますが、コロナ禍以降はテレワークを導入する企業も増えたようです。現在、多くの企業はテレワークとどのように向き合っているのでしょうか。テレワークを導入する企業の割合や、企業が利用できる補助金について紹介します。
1. テレワークを導入・実施する企業の割合
総務省が2020年11月に発表した「テレワークの最新動向と総務省の政策展開」によると、緊急事態宣言発令中、企業のテレワーク実施率はおよそ50%という高い数値でした。[注1]ところが宣言が解除されると、早々にテレワークを取りやめる企業が続出し、同年6月末から8月にかけてのテレワーク実施率はおよそ30%まで低下しています。
実際のところ、テレワークを実施した企業のほとんどは「緊急事態宣言発令中だから仕方なく」というのが理由です。さらに総務省委託調査「テレワークセキュリティに関する1次実態調査結果」(2020年7~8月)によると、テレワークを導入した企業は、全体の約37.3%であることがわかりました。[注2]
このうちの22.3%はコロナ禍の影響によりテレワークを導入した企業で、コロナ禍以降もテレワークを導入すると答えた企業は40.5%に留まっています。
2. テレワークを導入する企業の規模
一般に、企業規模が大きいほどテレワーク導入率が高いことがわかっています。総務省委託調査「テレワークセキュリティに関する実態調査結果」によると、従業員が300人以上の企業のうち、76%が「テレワーク導入済み」「コロナ対策で導入」「導入予定」と答えました。[注3]
一方、従業員が10~19人規模の企業では、「導入済み・予定」と「導入予定なし」の割合が真逆に。71.3%の企業が「導入しておらず、今後導入の予定もない」と答えています。導入の予定がない企業の多くは「テレワークに適した仕事がない」「業務の進行が難しい」などを理由に挙げており、企業の業務内容そのものがテレワークに適さないケースが多いようです。
テレワークの普及率を上げるには、いかに中小規模の企業にテレワークを浸透させるかがカギとなるでしょう。
テレワークを導入する企業が使える助成金・補助金
テレワーク導入の際は、国や地方自治体が提供する助成金や補助金を活用できます。このうち、国の助成金や補助金は以下の2つです。
- 助成金(厚生労働省)
- IT導入補助金(経済産業省)
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
1. 人材確保等支援助成金(テレワークコース)
まず、厚生労働省が提供する助成金は、年によって名称が変化します。2020年度は「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」でしたが、2021年度は「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」という名称です。[注4]
その主旨には「良質なテレワークを新規導入・実施することにより、労働者の人材確保や雇用管理改善等の観点から効果をあげた中小企業事業主が助成対象となります。」と明記されています。国が定めた要件をクリアすれば、以下の助成金を受けられます。
助成 | 支給額 |
機器等導入助成 | 1企業あたり、支給対象となる経費の30%※ただし以下のいずれか低い方の金額を上限とする。 ・1企業あたり100万円 ・テレワーク実施対象労働者1人あたり20万円 |
目標達成助成 | 1企業あたり、支給対象となる経費の20%(生産性要件を満たす場合35%)※ただし以下のいずれか低い方の金額を上限とする。 ・1企業あたり100万円 ・テレワーク実施対象労働者1人あたり20万円 |
2. IT導入補助金
IT導入補助金は、もともとはITツール導入推奨のための補助金でしたが、コロナ禍以降はテレワーク環境の整備のための費用も対象となりました。[注5]
「通常枠A・B類型」「体感染リスク型ビジネス枠:C・D類型」があり、C・D類型は非対面化ツールの導入が、また、D類型はクラウド対応されていることが必須です。対象となる経費や補助率・補助額は以下をチェックしてください。
対象経費 | 補助率(最大) | 補助額(最大) |
ソフトウエア費用、テレワーク導入にかかる費用、 デジタルデバイス購入代金など |
A類型:1/2 B類型:1/2 C類型:2/3 D類型:5/3 |
A類型:150万円 B類型:450万円 C類型:450万円 D類型:150万円 |
なお、2021年度の申請は終わっているので、次年度のタイミングを逃さないように注意してください。
また、自治体の補助金については各地方自治体のHPをチェックしてみることをおすすめします。テレワークでの助成金について、こちらの記事でも詳しく解説をしています。
テレワーク導入が求められる背景
2018年に働き方改革法案が成立し、翌2019年より関連法案が順次施行されています。テレワークは、この働き方改革の一翼をになう重要な施策の一つといわれ、政府が積極的に普及を後押ししています。現在テレワークの導入が求められる理由について、コロナ禍以外の背景をみていきましょう。
1. 生産年齢人口の減少
現在少子高齢化が著しい日本では、将来的に生産年齢人口(生産活動の中心にいる年齢層。15歳から65歳未満を指す)が減少していくと予測されています。
総務省が示す「平成29年版 情報白書」によると、2020年に7,341万人いる生産年齢人口は、2050年には5,001万人にまで減少する見込みです。[注6]
この頃には人口も1億人を割り込み、内需の規模も縮小していくと考えられています。労働者が減少すれば、優秀な人材は奪い合いとなり、必要な労働力の確保さえ難しくなるでしょう。企業は早々にテレワークを導入して雇用の門戸を広げ、来たるべき時代に備える必要があるのです。
2. 理想的なワークライフバランスの実現が求められている
現在、政府は働き方改革の一つとして、「個々がそれぞれのライフステージに合わせ必要な働き方を選択できる社会」の実現を目指しています。これは、仕事のために全てを捨てるような生き方ではなく、自分のプライベートと仕事とをきちんと両立させる生き方です。
「子育て中の人は子育てをしながら無理なく働ける」「家族との時間を削らずに働ける」「趣味や興味に没頭する余裕がある」など、こうしたさまざまなニーズや理想は、テレワークで働き方の選択肢を増やすことで実現しやすくなります。
テレワークを導入することによる企業のメリット
テレワークを導入することで、企業は業務上のさまざまな無駄を省けるほか、離職率の低下や雇用促進などのメリットもあるといわれます。テレワーク導入によって得られるメリットのうち、特に重視したい6つのポイントをみていきましょう。
1. 業務効率化
テレワークなら自宅がオフィスとなり、他者に煩わされる心配がありません。突然の来客や上司・部下の相手も必要がなく、社員は自身の仕事を集中してこなせるでしょう。また、テレワーク中は文書の共有や送付などもすべてインターネット上でおこなわれます。いちいちプリントアウトして、ファイルにまとめて・・・、などといった面倒な手間がありません。
デジタルデバイスさえあれば資料にアクセスしたりチームメンバーに質問を飛ばしたりするのも容易で、オフィス勤務のときよりもはるかに業務が効率化します。チーム全体、ひいては企業全体の生産性向上につながるでしょう。
2. コストの削減
社員がオフィスに出社する必要がなくなれば、通勤手当や通勤定期代を支払う必要がありません。企業全体で交通費の負担が軽減され、大幅なコストカットにつながります。
また、テレワークを導入すれば、1度に大人数がオフィスに集まることは少なくなります。オフィスの電気代などを抑えることができ、光熱費の削減につながります。紙や文具などの備品の減少も抑えられ、備品費を過剰に確保する必要もなくなるでしょう。
なお、テレワークを常態化すれば、オフィスの縮小も可能です。現在、賃料の高いところにオフィスを構えている企業は、より省スペースで安価な場所に引っ越してもよいでしょう。
3. 離職率の低下・企業イメージの向上
多くの人がテレワークによって多様な生き方・働き方を選択できるようになれば、仕事とプライベートのバランスを保ちやすくなります。働くことに張り合いや楽しみを感じやすくなり、早期退職をする社員の減少にもつながるでしょう。
また、テレワークを導入して社員に働きやすい環境を提供しているということは、対外的にも好印象です。「社員のことをきちんと考えている企業」というイメージを持たれやすく、企業イメージの向上にもつながります。いわゆる「ホワイト企業」と世間に認知されるのは、企業的にかなり大きなメリットです。
4. 雇用の多様化・優秀な人材の確保に有益
社員を採用する場合、オフィスありきでは居住地が限定されます。また、人によっては決められた時間にオフィスに通うのが難しいこともあるでしょう。オフィス勤務必須や定時勤務にこだわっていると、優秀な人を逃してしまう可能性が高くなります。
ところが、テレワークを導入して労働時間や場所の融通を利かせれば、採用する社員の裾野が広がります。「本当に自社に利益をもたらしてくれる人」「自社に必要なスキルや経験を持っている人」を雇い入れやすくなるでしょう。
5. 不測の事態へのリスク分散
テレワークを導入すれば、災害や地震などが起こっても、全社的なダメージを少なく抑えられます。社員が1カ所にいないことはリスクの分散になり、重要な情報を安全なクラウドサーバーに入れておけばデータの損失も免れます。人的・システム的に負荷分散をおこないやすく、万が一のことがあってもそのまま事業継続、あるいは、短期間での復旧が可能となるでしょう。
テレワークの導入は、企業の事業継続計画(BCP)を考える場合にも非常に重要といえるのです。
テレワークを導入することによる企業のデメリット
テレワークの導入でデメリットと認識されやすいのが、「社員同士が分断される」という点です。一つのオフィスにいれば特に困らなかったことが、テレワークでは煩雑化したり手間がかかったりすることがあります。
また、企業の一体感を得るうえでは、社員同士が離れていることがマイナスになることもあるかもしれません。テレワークを導入でデメリットになり得るポイントを紹介します。
1. セキュリティリスクが高くなる
テレワークの場合、セキュリティ対策は個人の判断に依存しがちです。自宅のPCのセキュリティが甘い場合、マルウェアに感染して大切な情報が奪われたり、インターネット上に流出したりする恐れがあります。また、セキュリティリテラシーが低い社員がいた場合、情報の管理に不安があります。
出先で仕事をして重要な情報を盗み見られたり、データの入った記憶装置を紛失したりするかもしれません。テレワークを導入する際は、セキュリティ対策をどのようにおこなうかが非常に重要なポイントとなります。
2. 勤怠管理が困難
テレワークの課題として、従業員の勤怠管理を挙げる企業も少なくありません。プライベートと仕事の境目が曖昧になりがちなテレワークでは、従業員の勤務状態にを自己申告に頼る部分が多くなります。申告内容の信憑性に不安があるケースもあり、個々の労働時間について企業が正確に把握するのが難しくなるでしょう。ただし、この問題は自社にマッチした勤怠管理システムの導入により、解決しやすくなるはずです。
テレワークを導入する際に企業がおこなうべきこと
テレワーク導入によるメリットを最大限享受するためには、自社にあった導入方法を選択することが大切です。テレワークの運用を安易に考えるのではなく、「どこからどこまで」「どのように」導入するかを厳密に見定めましょう。テレワークを導入する際、企業がおこなっておきたいことを紹介します。
1. テレワーク導入範囲の検討
テレワークが業務効率化につながるとはいえ、全ての業務にテレワークを導入できるわけではありません。まずは、自社の業務を「テレワーク可能なもの」「不可能なもの」に分類する必要があります。具体的には、次のように分類するのがおすすめです。
- すぐにテレワークで対応できる業務
- 何らかの対策を取ればテレワークで対応できる業務
- テレワークでは対応できない業務
自社でおこなわれている全ての業務について精査したら、実際のテレワークの導入範囲を決めましょう。
2. テレワーク形態の選択
たんにテレワークといっても、形態はさまざまあります。
テレワークの形態 | 働き方 |
在宅勤務 | 自宅で仕事をおこなう |
モバイルワーク | 顧客先やそのほかの施設にデジタルデバイスを持ち込んで仕事をおこなう |
サテライトオフィス | テレワーク用のオフィスで仕事をおこなう |
一般に、日本のテレワークは在宅勤務だけというケースはまれです。在宅勤務やオフィス勤務、そのほかの勤務を組み合わせるのが一般的で、業務内容によって適切な組み合わせを考える必要があるでしょう。
3. 通信インフラ・ツールの検討
在宅勤務をメインにテレワークをする場合、その社員のデジタル環境の整備が必要となります。特にテレワークではセキュリティ対策に不安があるため、できるだけ企業側でリスク軽減に努めなければなりません。
例えば、対象社員に、LTE対応ノートパソコンを支給する、会社が認めたモバイルWi-Fiを支給するなどの対策をして、パソコンとネットワークを私用と仕事用で完全に分けてる方法は有効です。
テレワークの導入方法
テレワークは、プロジェクトチーム主導のもと、適切なプロセスに則って導入されるのが理想です。テレワーク導入の目的を全社に共有し、社員に積極的に関わってもらいましょう。ここでは、テレワーク導入の流れを紹介します。
1.テレワーク導入の基本目的・方針の決定
まず、テレワーク導入によってどのような課題を解決したいか、目標をクリアしたいかを検討します。基本的な目的が定まったら、全社に共有しましょう。社員それぞれがテレワークについて理解することが、導入成功の重要なポイントとなります。
ちなみに、総務省がおこなった「平成30年度 通信利用動向調査」によると、企業のテレワーク導入の目的は、定型的業務の効率性(生産性)の向上がトップとなっています。[注7]
2. プロジェクトチームの編成
導入目的がクリアになったら、プロジェクトチームを編成します。メンバーは総務・情報システム・人事など、広範囲の部門から集めるのが理想です。ただし、チームリーダーはテレワーク導入対象部門から選びましょう。実際にテレワーク導入が決まっている部門が主となって動いた方が、導入のプロセスがスムーズになります。
3. 現行業務の分析
現在業務がおこなわれている状況を分析します。ポイントは以下の通りです。
- 業務にかかる時間
- 資料形態(紙か、デジタルかなど)
- 使用中のシステム
- 業務に関わる人数
- 業務をおこなううえで必要なやりとりなど
現状を細かく分析すると、テレワークをどのように取り入れるべきかが見えやすくなります。
4. テレワークを導入するための環境作り
テレワークに必要なツールやシステムを導入したり、社内制度やルールを変更したりすることも必要です。特に、テレワーク中の通信費や光熱費、ICT機器などの費用負担などは、社員が戸惑いやすいポイントとなります。事前に就業規則に盛り込むなどして、明確化しておくとよいでしょう。
5. テレワークの試験導入・効果測定
テレワークに必要な準備が整ったら、試験導入で様子をみます。まずは小規模な範囲でのみ導入し、徐々に範囲を広げていきましょう。このとき必ずおこないたいのが、導入の効果測定です。コスト面や従業員満足度・コミュニケーションについてなど、評価項目を細かく設定して評価をします。試験導入中に問題があればすぐに対応し、テレワーク導入の有効性を高めましょう。
テレワーク導入企業の事例を参考に効率的なテレワークを導入しよう
テレワークを導入すれば、業務効率化や生産性向上などが期待できます。近年はコロナ禍や東京オリンピックの影響により、中小規模の企業でもテレワークを導入するとことが増えてきました。テレワーク導入で成功している企業の事例を参考に、円滑にテレワーク導入を進めてください。ただし、テレワーク導入までには、テレワークの課題や目的を全社的に共有する必要があるほか、プロジェクトチームの策定も必要です。「今すぐやろう」と思ってできるものではないため、事前準備をしっかりとおこない、綿密な計画を立てましょう。
[注1]テレワークの最新動向と総務省の政策展開|総務省
[注2]テレワークセキュリティに関する1次実態調査|総務省
[注3]テレワークセキュリティに係る実態調査(1次実態調査)報告書|総務省
[注4]人材確保等支援助成金(テレワークコース)|厚生労働省
[注5]IT導入補助金について|IT導入補助金2021
[注6]平成29年版 情報白書 第1部特集データ主導経済と社会変革|総務省
[注7]平成30年度 通信利用動向調査|総務省
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