テレワークで生産性は上がる?下がる?調査データなどから読み解く
Web会議システム
2023.08.21
2023.08.21
新型コロナウイルス感染防止の観点からテレワークを導入する企業が増えています。日本政府は「世界最先端デジタル国家創造宣言」の中でテレワークを推奨し、「afterコロナ」を見据えた企業が今後もテレワークを導入していくと推測されます。ただ、テレワークで仕事の生産性は上がるのでしょうか。それとも下がるのでしょうか。 本記事では調査データや事例などを交えながら解説していきます。
テレワークで生産性はどうなるか
テレワークとは、在宅勤務を含むオフィス外で働く形態の総称です。ICT(情報通信技術)を駆使して、時間や場所の制限なく柔軟に働くことができます。そのため、テレワークは、オフィスに出社せず自宅・カフェ・レンタルオフィスなどで働くことも含みます。
企業によって導入しているテレワークの形態こそ異なりますが、テレワークが推奨される中で心配されているのが、その生産性です。
電話応対や急な来客対応等によって仕事が中断されず集中できる、気分転換や休憩などが自分のタイミングで適宜取れる、など生産性が上がるという声もあります。一方で、オフィス内のように気軽に相談や連絡ができず仕事がなかなか進まない、プロジェクトやタスク管理が煩雑になる、など生産性が下がるという声があることも事実です。
プログラミングやデザインなど一人で没頭して取り組める職種ではテレワークでも支障ありませんが、製造業や研究開発など専用の装置が必要な場合は、テレワークに向いていません。
このように、テレワーク時の生産性については賛否両論があります。それは、テレワークをしている人の業種や企業規模、テレワーク環境が整えられているかなど、勤務実態により捉え方や見え方が変わるからです。
テレワークは生産性が上がる?
テレワーク総合ポータルサイトによれば、テレワーク時におけるチームの生産性に悪い影響を与えることはないと答えた人が9割近くいたと報告されています。また、同ポータルサイトによると、テレワーク勤務者はオフィス勤務者に比べて、仕事における集中時間が長いという調査報告もあります。
テレワーク勤務の実証実験の調査によると、「テレワーク勤務によってチームの生産性が向上した」と回答した人が29%、「テレワーク勤務によってチームの生産性は変化しない」と回答した人が58%と、9割近くがテレワーク勤務は生産性に悪い影響を与えることはないと考えています。
(中略)
1日のうち「業務に集中できる時間はどれくらいですか?」という設問に6割以上と回答した人の人数は、テレワーク勤務者がオフィス勤務者の1.8倍だったことからも、テレワーク勤務はむしろ生産性を高める効果があります。
引用:テレワークを導入すると生産性が落ちませんか。|テレワーク総合ポータルサイト
以上のことから、テレワークにおけるチーム生産性に悪い影響はなく、勤務時間における集中力の持続にも良い影響を与えることがわかります。
また、総務省が公表している「平成28年通信利用動向調査」においては、テレワークの導入企業と未導入企業とで生産性に1.6倍の差が見られたと報告されています。[注1]
テレワークを導入していない企業の労働生産性は、1社あたり599万円であるのに対して、テレワークを導入している企業の労働生産性は、1社あたり957万円です。1社あたり358万円(1.6倍)の差はとても大きいです。
テレワークで生産性が下がる?
一方、テレワークによって生産性が下がるという意見があることも事実です。ソフトウェア大手のアドビ株式会社が実施した調査によると、回答した日本人のうち、じつに43%が生産性が下がったと答えました。
日本人で「生産性が上がった」のは21%にとどまっていて、逆に「生産性が下がった」のは43%もいることが、アドビの調査で分かった。
引用:「在宅勤務は生産性が下がる」43%、その理由は?(1/2)|IT Media ビジネス ONLINE
こちらの調査は、米国人と日本人に在宅勤務時における生産性について尋ねたものです。日本人で生産性が下がったと回答した人は、その理由を「勤務環境が整っていない」(68%)、「集中しづらい」(46%)、「同僚からの協力が得られにくい」(33%)としています。
また、リクルートキャリアの調査では、テレワーク勤務を経験した労働者のうち、コロナ禍以前にはなかったストレスを感じ、いまだに解消できず抱え込んでいる人が多くいることがわかりました[注4]
これら生産性の低下やストレス増加は、以下のような原因が考えられます。
- 業務進捗が見えにくく、勤務実態がつかめないこと
- 業務終了のタイミングがわかりにくいこと
- 同僚とのコミュニケーション不足やチームメンバーとのやり取りが大きく減ったこと
- 協働していた業務内容が分断され、他者からのフィードバックがなくなったこと
テレワークで生産性を上げる3つのポイント
生産性が下がった大きな要因に、業務進捗や勤務実態の不透明さ、コミュニケーション不足、業務の情報共有不足、などが目立ちました。これらを解決するために具体的なポイントを3つご紹介します。生産性が下がったと感じた人だけではなく、より生産性を上げたい方にも活用いただけます。
ポイント1.勤怠管理システム
テレワークは、いずれも自宅もしくはコワーキングスペースなどオフィス以外で業務開始または終了します。従業員の出勤・退勤の管理を上司へのメールや電話でおこなう企業もありますが、部下を多く持つマネージャーは管理が煩雑で、また、外出先での対応が困難です。そこで、勤怠管理システムを導入し、インターネットを介して出退勤打刻する、PCのログオン・オフで管理できる環境を整えてみましょう。
1.インターネットで出退勤打刻
会社貸与のPCや個人のスマートフォンなどから、インターネットを経由して、勤怠管理システムへ出勤・退勤の打刻をします。労働時間や休憩時間などもテレワーク勤務者が入力する仕組みがあれば、勤怠と給与の労務管理面でも大きな業務効率化が見込めます。
2.PCのログオン・オフで管理
個人ごとにPCが割り当てられていることが前提となりますが、PCのログオン・オフを勤怠システムと連携させることで、労働時間の管理が容易になります。テレワーク勤務者は、PCを立ち上げれば上司へ始業連絡をする必要はありませんし、終業時も同様です。
勤怠管理システム導入のまとめ
以上のように、勤怠管理システムを導入することで、業務の開始・終了のタイミングを明確にし、勤務実態を可視化できます。また、労働時間や休憩時間の管理は労基署調査で客観的な事実を求められた際に役立ちますので、システム導入で解決を図りましょう。
ポイント2.情報共有ツール
同僚とのコミュニケーション不足を解消し、協働業務で互いにフィードバックをするために、情報共有ツールを導入しましょう。気軽に連絡を取れるチャットツールや業務進捗を顔を見ながら報告・相談できるWeb会議ツールを積極的に導入し、円滑なコミュニケーションと情報共有を実現できます。
情報共有ツールを利用する場合でも、コミュニケーションを取るうえで大切なのは意思疎通です。会議室での打ち合わせやオフィス内での立ち話がなくなり、対面時のようなニュアンスや雰囲気が伝わらず、お互いの認識にズレが生じないように工夫する必要があります。
工夫すべきこと1.チャットを活用
チャット機能を存分に活用して、普段の雑談に近い感覚でコミュニケーションを取りましょう。資料や業務引き継ぎにおける、細かいニュアンスの確認をする際に、メールや電話ほどかしこまらずにやり取りすることができます。
個人間の情報共有だけではなく、部・課・プロジェクト単位のグループを作成するなど用途に応じて使い分け、素早くレスポンスすることで一緒に働いているという感覚が得られます。
工夫すべきこと2.積極的にリアクションする
テレワークでは、パソコンの画面だけを見て1日が終わるなど、他者からの反応がないこともあります。そのため、Web会議やオンラインミーティングの際は積極的にリアクションすることで、相手に反応を伝えることができます。例えば、うなずく回数を増やす、笑顔を多めにするなど、事務的なやり取りにならないことが大切です。
工夫すべきことのまとめ
いずれのサービスも利便性が高く多数の企業で採用されています。自社に合う機能や料金などを確認のうえ導入を検討してみましょう。そして、情報共有ツールの導入はコミュニケーション不足を解消する救世主的存在ですが、意思疎通するうえではお互いに認識のズレがないように工夫する点にも留意しましょう。
ポイント3.テレワーク時における習慣づくり
業務終了のタイミングがわからずに残業したり、モチベーションを保つことができない点もテレワークの課題といえます。出勤時はモーニングルーティンが決まっており、出社後もスケジュール通りに仕事を進めますが、テレワーク時は全て自分のペースである反面、オンオフの切り替えが難しいものです。
実際にテレワーク勤務を取り入れるソフトバンク。オン・オフを切り替えるための手段に関するアンケートを実施したところ、以下のような結果が得られたようです。[注5]
1位 服を着替える
2位 PCやスマホなどを片付ける
3位 軽い運動する
いずれも簡単なことだと感じますが、共通するのは「切り替え」です。
つまり、「今から仕事をするぞ」という切り替えの習慣・スイッチこそが重要なのです。
どんなことでも良いので、ご自身のオンとオフを切り替える習慣を作ってみましょう。
テレワークを活用して効率のいい仕事を
テレワークは、限られた時間で集中することでアウトプットできるメリット、コミュニケーションやフィードバックが不足するデメリットを合わせ持っているため、生産性が上がることも下がることも事実です。
デメリットを補えるツールや制度を導入し、メリットを最大限発揮できるようテレワークを活用しましょう。
[注1]平成28年通信利用同行調査「Topic3 ICTと労働生産性」|総務省
[注2]日本航空株式会社|厚生労働省
[注3]株式会社ベネッセホールディング|厚生労働省委託事業 テレワーク宣言応援事業
[注4]新型コロナウイルス禍における働く個人の意識調査|リクルートキャリア
[注5]社員がテレワークで実践中。オンオフ切り替え方法やコミュニケーションのちょっとした工夫を紹介します|ソフトバンクニュース
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