DXリテラシーとは?経済産業省のDXリテラシー標準の定義やポイントも解説
DX
2023.10.11
2023.10.11
DXリテラシーとは、デジタル技術によるビジネスモデルの変革を実現する能力のことです。ITリテラシーと混同されやすいですが、ITリテラシーはデジタル技術の活用に留まるのに対して、DXリテラシーは組織やビジネスの変革能力も求められる点が異なります。本記事では経済産業省が定めるDXリテラシー標準についても詳しく解説します。
DXリテラシーとは
DXリテラシーとは、DXとリテラシーを掛け合わせた言葉です。DXはデジタルトランスフォーメーションの略で、デジタルを使ってビジネスモデルなど企業全体を大きく変化させ、他社との差別化・優位性を持つことを指します。
リテラシーは、日本語に直訳すると『読み書きができる』という意味を持ち済ますが、ビジネスにおいては『物事を正しく理解し応用する能力』を指します。 DXリテラシーとは、デジタル技術に関する知識や必要性を正しく理解し、企業のDXを推進して、新たなビジネスモデルを創造するために欠くことのできないスキルです。
経済産業省の「DXリテラシー標準」での定義
「DXリテラシー標準」とは、データやデジタル技術を活用して経済状況や社会課題の変化、及び顧客課題に対応するためのスキルとして経済産業省がさだめた「デジタルスキル標準」のうちの1つです。
DXリテラシー標準は全てのビジネスパーソンが心得るべきDXに関する基本的なスキルやマインドについての標準で、2022年3月に公表されました。
デジタルスキル標準のもう一方の「DX推進スキル標準」はDXを推進するための専門性の高い人材を確保するためのガイドラインです。こちらは2022年12月に同じく経済産業省によって定められました。
経済産業省は、以下のように「DXリテラシー標準」策定のねらいを説明しています。
社会環境・ビジネス環境の変化に対応するために、企業・組織を中心に社会全体のDXが加速する中で、人生100年時代を生き抜くためには、組織・年代・職種を問わず、働き手一人ひとりが自身の責任で学び続けることが重要です。「DXリテラシー標準」は、働き手一人ひとりがDXに参画し、その成果を仕事や生活で役立てるうえで必要となるマインド・スタンスや知識・スキルを示す、学びの指針として策定しました。
ここからは、経済産業省の「DXリテラシー標準」について、目的や概要をわかりやすく解説していきます。
DXリテラシーの全体像
また、「DXリテラシー標準」において、経済産業省は、DXリテラシーの獲得のために以下のスキルや知識、マインドセットの獲得を必要としています。「DXリテラシー標準」の全体像は以下の通りです。
このように、DXリテラシーを獲得するには、DXが必要とされる背景の理解に始まり、DXで活用される技術に対する理解や、その実際の活用方法を学ぶことが必要です。
また、これらのスキルの土台となるマインドセットの獲得も重要です。デジタル技術に関する表面的な知識やスキルだけではなく、変化する社会の中で新たな価値を創造するための姿勢や行動などの獲得があってこそ、「DXリテラシー」を身に付けることができます。
項目 | 内容 |
Why(DXの背景) |
DXの重要性を理解するために必要な、社会、顧客・ユーザー、競争環境の変化に関する知識 |
What(DXで活用されるデータ・技術) |
ビジネスの場で活用されているデータやデジタル技術に関する知識 |
How(データ・技術の活用) |
ビジネスの場でデータやデジタル技術を活用する方法や留意点に関する知識 |
マインド・スタンス |
社会変化の中で新たな価値を生み出すために必要な意識・姿勢・行動 |
※経済産業省資料より、編集部作成
DXリテラシーとITリテラシーの違い
DXリテラシーとITリテラシーを同じ意味であると混同される方もいますが、DXリテラシーとITリテラシーは全く持って別の意味を持ちます。DXリテラシーは、情報技術(IT)に関して幅広い知識だけなく、「課題や問題の解決」「業務の効率化」「事業の拡大」など、ビジネスシーンで有効的に活用できるスキルを指します。
DXを推進するために、必要不可欠なのが情報技術(IT)であり、DX推進の一翼を担うのがITリテラシーです。ここでは、ITリテラシーを具体的に紹介します。
ITリテラシーとは
Tリテラシーは、情報技術(IT)を有効活用するために必要なスキルです。
2017年厚生労働省が発表した『平成29年度ITリテラシーの習得カリキュラムに関する調査研究報告書』では、基礎的ITリテラシーに関して以下のように定義しています。
現在入手・利用可能な IT を使いこなして、企業・業務の生産性向上やビジネスチャンスの創出・拡大に結び付けるのに必要な土台となる能力のこと。
いわゆる IT 企業で働く者だけでなく、IT を活用する企業(IT のユーザー企業)で働く者を含め、全てのビジネスパーソンが今後標準的に装備することを期待されるもの。
参考:『平成29年度ITリテラシーの習得カリキュラムに関する調査研究報告書』
ITリテラシーは、大きく分けて以下の3つのスキルを必要とします。
- 情報技術(IT)に関する幅広いスキル…情報技術(IT)の種類・機能・仕組みを理解する、知識や技術
- 情報技術(IT)を活用するスキル…情報技術(IT)が、効力を発揮するシーンを理解し、有効に活用する知識や技術
- 情報技術(IT)を選定するスキル…企業や組織が抱える、課題や問題を解決するために、有効な情報技術(IT)を選定する知識や技術
DXリテラシーはITリテラシーに加えて以下のスキルが必要
DXリテラシーは、上述した「ITリテラシー」に加えて、以下の2つの能力を必要とします。
- 情報技術(IT)を活用して解決するスキル…選定した情報技術(IT)を活用して、必要な情報を収集・分析・結果をアウトプットし、解決へと導く知識や技術
- 情報技術(IT)を活用して推進するスキル…情報技術(IT)や情報を安全に活用するため、セキュリティやコンプライアンスに関する知識や技術
DXリテラシーが求められる理由
DXリテラシーが求められる理由としては、競争力の強化やレガシーシステムからの脱却、変化する消費者ニーズへの対応、事業継続性の確保などが挙げられます。それぞれについて詳しく解説します。
競争力の強化
現在、あらゆる業界で、IoTの活用、AI×ビッグデータなどにより、新たなビジネスやサービスが加速度的に生まれています。ビジネスのデジタル化が急激に進み、市場での企業間競争が激化する中で、武器となるDXリテラシーの必要性が高まっています。
レガシーシステムからの脱却
レガシーシステムとは、時代遅れのITシステムのことです。古いITシステムをその場しのぎで改修し続けると、仕様が複雑化してしまいます。そして複雑化したシステムは管理が属人化しやすくなります。属人管理のシステムを抱えていると、管理者の退職でノウハウが途絶えてしまい、ブラックボックス化するリスクもあります。
また、肥大化した難解なシステムは、維持管理に膨大なコストがかかります。レガシーシステムに掛かるコストを削減するため、

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変化する消費者ニーズへの対応
DXは、デジタル技術を通じて、消費者の生活を変化させてきました。例えば、キャッシュレス決済やネット通販、音楽や動画のサブスクリプションサービスなどがあげられます。いずれもスマートフォンの普及という市場環境にあわせて元々あった方法が変化して生まれた事業です。
今後も、技術の進歩で市場環境が変化し、より便利で快適なサービスが求められていくでしょう。そのため、消費者の細分化されたニーズ・多様化する行動に対応するには、DXが不可欠なのです。
事業継続性の確保
「課題や問題の解決」「業務の効率化」「事業の拡大」など、企業や組織が抱える問題を解消すると、業務に余力が生まれ、企画業務に充てられる時間が増えます。変化の激しい時代において、事業の継続には持続的な成長が不可欠です。デジタル技術を活用して、新しいビジネスモデルに対応していくことが必要になります。
DXリテラシーの教育における課題点
「DXの推進」「DXリテラシーの底上げ」といっても、すべての企業や組織が実績を上げ、成功しているわけではありません。結局のところ、何から始めればよいのか、どこまで突き詰めればよいのか、明確な答えがないのが現状です。ここでは、DXリテラシーの教育における課題点を2つ紹介します。
1. 企業や組織が目指すゴールが明確になっていない
まず、課題として挙げられるのは、企業や組織の目指すゴールが明確になっていないことです。デジタル技術を活用すべく、新しいビジネスモデルに着手したものの、ターゲットとなる分野と技術がぼやけたままでは、ゴールや工程が明確になりません。このようなケースは、検討不足が原因です。戦略と教育が並走するため、教育方針も定まらず、教育内容がブレたりズレたりします。DXリテラシーの教育は、企業や組織のゴールに沿ったものでなければ意味がありません。
2. 企業や組織ごとに課題や問題は異なる
DXのトレンドをすべて教育するには、膨大な時間と人手が必要です。また、他社を真似ても必ずしも成功するとは限りません。DXは最新技術とはいえ、企業によって向き・不向きはあります。企業や組織の抱える課題や問題はそれぞれ異なり、すべてのビジネスモデルに適応するわけではないということを念頭に置く必要があります。それぞれの企業や組織が抱える課題解決にフォーカスしたDXリテラシーの教育を実施しなければ、成功につなげることは難しいでしょう。
DXリテラシーを高めるためのポイント
企業や組織のDXを成功させるには、全員のDXリテラシーを底上げする必要があります。DXリテラシーを高めるため、注力すべきポイント5つについて解説します。
1. 課題・問題を発見するアンテナを張る
業務の効率化や、事業を拡大させるヒントは、日常の業務の中にあります。常日頃から現状を把握し、分析するクセをつけ、課題や問題を発見するアンテナを張りましょう。
2. 情報技術(IT)の情報を収集する
情報技術(IT)について情報収集するクセをつけましょう。どのようなツールがあり、そのツールは何ができて、何ができないか。何が得意で何が不得意か。また、業界のトレンドを把握するのも重要です。自分のスキルとなった情報技術(IT)は、課題や問題を解決する武器になります。
3.DXリテラシー講習など外部の取り組みを活用する
社内で課題を見つけても改善方法がわからなかったり、自社にとって何が最適かを判断できない場合もあるかもしれません。
その場合は、従業員に外部のDXリテラシー講習を受講させるのも手段の一つです。対面の研修だけではなく、オンライン研修やeラーニングを用いた講習など様々な方法の講習があります。
研修内容も、PCやITツールを使ううえでの基本的な心構えを習得するためのものから、技術や資格取得を目的としたものまで幅広く提供されています。民間企業の教育サービスだけでなく、自治体が主導となっておこなっている講習やセミナーもあるため、積極的に活用しましょう。
講習に参加することで、いままで当たり前だと思っていたことを見直し、改善するきっかけを掴む従業員もいるかもしれません。
4. 当事者意識を持ち、人を巻き込む推進力を養う
企業や組織に現存する課題や問題を他人事とせず、常に当事者意識を持つことが大切です。当事者意識を持つことで情報の交流が生まれ、他部署からヒントをもらったり、他部署のフォローができたりします。また、ITリテラシーにしても、DXリテラシーにしても、自分一人では完結しません。常に関係者と情報共有し、人を巻き込みながら進めることが大切です。
5. 柔軟な思考と根気強く取り組むマインドを持つ
DXを推進していると、さまざまな壁にぶつかります。従業員が新しいツールの導入に難色を示したり、慣れないツールの導入で一時的に生産性が落ちたりすることもあるかもしれません。一度や二度の失敗であきらめることなく、発想を転換させる柔軟な思考と、目的を達成するまであきらめない、粘り強いマインドが必要です。
DXリテラシーの成熟度が企業や組織の存続を左右する
デジタルテクノロジーの進化が、消費者の生活やビジネスモデルに、これまでとは比較にならないスピードで変化をもたらします。変化するスピードに対応するため、DXリテラシーの底上げは急務であり、企業や組織の存続を掛けた課題です。DXリテラシーに優れた人材を外部から補完するのか、内部で育て上げるのか、企業や組織の手腕が問われています。

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