DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義やメリットを解説
DX
2023.09.01
2023.09.01
DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略で、企業においては、デジタル化によるビジネスモデルの変革や、それによる競争力の向上を意味します。この記事では、DXの定義や、DXが必要とされる背景、DX推進の方法など、DXの基本をわかりやすく解説します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義とは?
DX(ディーエックス)とは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略語で、直訳すると「デジタルによる変革・変容」という意味の言葉です。
提唱者によるDXの定義
DXの提唱者は、スウェーデン・ウメオ大学のエリック・スタートルマン教授であると言われています。エリック・スタートルマン教授によれば、DX(デジタル・トランスフォーメーション)は次のように定義されています。
「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でよりよい方向に変化させる」こと。
引用:「未来IT図解 これからのDX デジタルトランスフォーメーション」内山悟志著、2020年、エムディエヌコーポレーション p.36
このように、提唱者の定義によれば、DXとは「ITの浸透によって人々の生活をよりよくする」という、かなり広い概念であると言えます。
政府(経済産業省)によるDXの定義
次に、日本におけるDXの定義を見てみましょう。経済産業省によれば、DXは次のように定義されています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
引用:「DX 推進指標」とそのガイダンス |経済産業省
このように、経産省によるDXの定義は、「ビジネスモデルや企業の組織・文化を改革し、競争優位性を確立する」という、ビジネスの分野に焦点を当てた定義となっています。
また、2020年に閣議決定された「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」のなかでは、DXは次のように定義されています。
企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること
引用:令和3年度情報通信白書|総務省
DXはデジタルトランスフォーメーションなのになぜXと書く?
「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」は、「DX」と略されることが一般的です。
なぜ「Transformation」を「X」と略すのかといえば、英語圏では習慣として「Trans」を「X」と表記するからです。「Trans」は「越える」「…の向こう側に行く」「別の状態になる」という意味をもつ言葉です。そのため、交差し、変化を表現する「X」という文字が使われています。
DX化とは?
DXについて調べていると、「DX化」という言葉を耳にすることも多いのではないでしょうか。「DX化」とは「DXをおこなうこと」を意味しており、「DX」とほとんど同じ意味と理解して差し支えありません。
なお、「DX」という言葉には、もともと「Transformation(=変化)」の意味が含まれているため「DX化」という言葉は、厳密には誤用と捉えることもあるかもしれません。ただし「DX化」という言葉は現在一般的に用いられているため、「DX」をおこなうことを「DX化」と表現しても問題はないでしょう。
DXとデジタル化の違いとは?
DXに似た概念として、「デジタル化」という言葉もあります。「DX」と「デジタル化」の違いとはどのようなものなのでしょうか。次に、両者の意味や定義、目的の違いについて解説します。
「デジタル化」とは、一言で言えば「アナログからデジタルに変化すること」を意味します。ビジネスにおいて「デジタル化」というと、紙の書類をやめて電子文書にしたり、対面での会議をやめてWeb会議にしたりなど、これまでアナログな手段に頼っていた業務をデジタルに転換することを意味する場合が多いと言えます。
つまり、「DX」がデジタル技術を使ってビジネスモデルの変革や、企業の競争優位性の確立を目的としているのに対して、「デジタル化」は、その一歩手前の段階、すなわちデジタル技術を用いた具体的な業務プロセスの変化を目的としています。この目的や目指す変革の違いが、DXとデジタル化の違いと言えるでしょう。
デジタイゼーション・デジタライゼーションとは
「DX」や「デジタル化」などに似た概念として「デジタイゼーション」や「デジタライゼーション」という言葉があります。経済産業省のレポートによれば、「デジタイゼーション(Digitization)」は、「アナログ・物理データのデジタルデータ化」と定義されます。
一方「デジタライゼーション(Digitalization)」は、「個別の業務・製造プロセスのデジタル化」と定義されています。どちらも、「デジタル化」ではありますが、その対象や範囲の違いによって、このように使い分けられます。
DXとIT化の違いとは?
「IT化」とは、ITツールやシステムを取り入れ、既存の業務プロセスを効率化することを意味します。「IT化」も、「デジタル化」の定義と同様に、その目的が業務プロセスのデジタル化という範囲にとどまっており、その点において「DX」と異なります。

DXとIT化は違う!両者の違いやポイントを解説
近年「DX」という言葉を耳にしますが、「DX」とは何か、「IT化」とどう違うのかがわらないという方は多いのではないでしょうか。この記事では、「DX」と「IT化」との違いや、DXをIT化で終わらせないためのポイントを解説します。
DXと「IoT」の違いや関係
また、DXと関連する言葉として「IoT(Internet of Things)」が挙げられます。IoTは日本語で「モノのインターネット」と呼ばれ、PCやスマートフォンに留まらない身の回りのあらゆるモノをインターネットで接続し、新たな価値を生み出す技術を指します。
IoTとDXは「手段」と「目的」の関係にあります。たとえば、製造業や農業ではIoTを取り入れ、「スマート工場」や「スマート農業」を実現し、競争優位性を確保する取り組みがみられます。DXを推進するため、IoTの活用を検討しましょう。
なぜDXが必要なのか?
ここまで、DXの定義や、そのほかの概念との違いについて解説してきました。ここからは、DXがなぜ注目され、なぜ必要とされているのか、その理由について解説していきます。
ビジネスを変革し、競争優位性を得るため
DXが必要となる一番の理由は「ビジネスモデルの変革」と、それによる「競争優位性の獲得」と言えるでしょう。
現在、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。グローバル化や労働力の減少、価値観の多様化など、さまざまな分野で変化が起きています。また、その中で、破壊的なイノベーションによってこれまでの市場の常識を大きく覆す「ディスラプター」も誕生しています。
このような状況のなかで企業は、従来通りの戦略では生き残ることができない可能性が出てきています。一方で、テクノロジーの発展によって、クラウドサービスの増加や低価格化など、企業がITツールやデジタル技術を活用するハードルは低くなりつつあります。
これらの背景から、ビジネスモデルを転換し、新しい顧客価値を創出する「DX」という取り組みへの注目が集まっています。
参考:「未来IT図解 これからのDX デジタルトランスフォーメーション」内山悟志著、2020年、エムディエヌコーポレーション p.24
事業の継続可能性を高めるため
ビジネスモデルや競争優位性のほかに「事業の継続性」という点も、DXを推進する理由の一つとなります。「事業の継続性」とは、災害やパンデミック、テロなどの緊急事態が発生した場合にも、活動を継続できることを指します(※1)
そして、DXのための取り組みは、この「事業継続性」を高めることにもつながります。たとえば、テレワーク(リモートワーク)の導入は、場所によらず業務をおこなうことができ、有事の際の活動の継続を可能にします。
なお、緊急事態の事業継続をおこなうための方針や手順を定めた計画を「BCP(事業継続計画)」といいます。BCPについては、下記の記事で詳しく解説しているため、気になる方は、こちらもあわせて読んでみてください。
システムの老朽化に対応するため
これまで紹介してきた背景のほかに「老朽化したシステムへの対応」も、DXが必要とされる理由として挙げられます。老朽化したシステムは、「レガシーシステム」と呼ばれ、企業にとって大きな課題となっています。
「レガシーシステム」とは、従来の技術によって構築されたシステムのことを指します。経済産業省の「D X レポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」によれば、企業がレガシーシステムを抱え続けることは大きな経済損失につながることが示唆されています(※2)。この課題は『2025年の崖』と呼ばれています。
※2:経済産業省「D X レポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」

2025年の崖をわかりやすく解説!DX化しない場合の問題点と対策とは
「2025年の崖」とは、2018年に発表された経済産業省の「DXレポート」によって指摘された言葉です。DX化に取り組まず、現状のシステムの問題点を解消しない場合、2025年には約12兆円の経済損失を受ける可能性があると危惧されています。この記事では、2025年の崖」とは何か、なぜ2025年なのかについてわかりやすく解説します。
DXを推進するには何から始めればよい?
ここまで、DXの必要性やその背景について解説してきました。では、実際にDXを推進するにあたっては、どのようなことから始めればよいのでしょうか?ここからは、企業がDXを推進する際の手順やポイントについて解説します。
なお、自治体のDXについては下記の記事で詳しく解説しています。自治体のDX推進について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
DXについての理解を深める
DXを推進するためには、まず、DXについての理解を深め、推進の機運を醸成することが必要があります。とくに、企業の経営者自身が、DXの重要性や自社でDXを推進するべき理由について深く理解していることが重要です。企業のDX担当者は、経営者層にDXについて十分に理解してもらった後、社内でDX推進の機運を醸成していけるように心がけましょう。
DXの戦略を策定する
DX推進の機運が高まったら、自社のDX推進の戦略を立てましょう。企業の状況や抱えている課題、DXしたい範囲の広さによって、おこなうべき施策はさまざまです。まずは自社が何のためにDXを推進するのか、そのためにはどのようなことを実行しなければならないのかを検討しましょう。
たとえば、老朽化したシステムの再構築が主な課題であれば、現在のシステムの状況把握と希望する要件の策定、開発に携わる人員の確保が必要となります。また、競争優位性の確立を目的とする場合には、市場の動向や自社のビジネススキームを見直し、経営方針やビジネスモデル、業務プロセスなどを改善していくことが重要になります。
DX戦略の策定については、こちらの記事でも解説しています。
DXを推進する組織をつくる
DX戦略を作成した後は、その戦略を実行できる組織体制を構築しましょう。DXを推進する組織のパターンは大きく分けて3種類あります。
一つは、情報システム部が主導となってDX推進組織を作るパターン(「IT部門拡張型」)です。二つ目が、経営企画部や事業部などの、経営戦略やビジネスモデル策定をになっている部署が中心となるパターン(「事業部門拡張型」)です。そして、もう一つのパターンが、DX推進に特化した部署を新設するパターン(「専門組織設置型」)です。
自社の状況やDXの目的に応じて、これらの組織体制を構築しましょう。また、DX推進の進行状況に応じて、組織体制を変えていくことも必要です。
参考:「未来IT図解 これからのDX デジタルトランスフォーメーション」内山悟志著、2020年、エムディエヌコーポレーション p.95
また、DX推進組織の作り方については、こちらの記事もご覧ください。
DX人材を確保・育成する
DX推進をおこなう組織体制が決まったら、実際にDXを推進する人材を確保・育成する必要があります。
まず、DXを主体となって推進する人材が必要です。DXをこれから推進しようとする企業では、DX推進の経験や知見を持っている人材が揃っていることは少ないでしょう。多くの場合、DX推進の経験者を外部から登用することが必要です。また、技術者やディレクターなどを中途採用するのも一つの手です。
さらに、中長期的には、社員のDXリテラシーやスキルを向上することも重要です。社内研修などにより、既存の社員がDXに対する知識やスキルを身に付けられるような取り組みをおこないましょう。

DXリテラシーとは?経済産業省のDXリテラシー標準の定義も解説
DXリテラシーとは、デジタル技術によるビジネスモデルの変革を実現する能力のことです。ITリテラシーと混同されやすいですが、ITリテラシーはデジタル技術の活用に留まる野に対して、DXリテラシーは組織やビジネスの変革能力も求められる点が異なります。本記事では経済産業省が定めるDXリテラシー標準についても詳しく解説します。
システムの導入などの施策を実行する
DXを推進する組織を構築し、DXをおこなう人材を確保したら、策定したDXの戦略にしたがって、施策を実施していきましょう。DX推進の方法として、システムの改修や新しいツールの導入をおこなう企業が多いでしょう。システムの構築やツールの導入には、自社のDX戦略やビジネスモデルに適したシステム要件の設定、ツールの選定が重要です。
DXを実現するツールやサービスについては、こちらの記事でもまとめています。
DXを理解して自社のDX推進を成功させよう!
DXとは、データやデジタル技術を活用し、ビジネスモデルの変革によって競争優位性を確保する取り組みを意味します。DXを実現すれば、労働生産性を向上させ、新しい製品やサービスを創出できます。DXの定義や導入メリットを知り、全社的にDXを推進しましょう。
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