領収書の宛名なしは違法?金額のみで宛名が空欄の領収書の経費処理とは
経費精算システム
2023.12.04
2023.12.04
領収書の宛名は、取引の事実を証明するために重要な要素の一つです。領収書の宛名が空欄だったり、「上様」になっていたりする場合、税務調査に影響が出る可能性があります。この記事では、領収書の宛名の必要性や、経理業務や税務調査の観点からみた宛名なしの領収書の扱い、宛名を空欄のままにするリスクについて解説します。
▼領収書の宛名の正しいルールはこちらもチェック!

領収書の宛名ルールBOOK
領収書発行の際、意外と迷うのが「宛名の書き方」です。この資料では、領収書の宛名の正しい書き方や、よくある疑問をQA形式で解説しています。領収書発行業務を担当する方はぜひチェックしてみてください。
領収書発行の際、意外と迷うのが「宛名の書き方」です。この資料では、領収書の宛名の正しい書き方や、よくある疑問をQA形式で解説しています。領収書発行業務を担当する方はぜひチェックしてみてください。
宛名なしの領収書は消費税法に違反する可能性がある
そもそも領収書とは、商品やサービスを購入した際に、売り手が代金を受け取ったことを証明するための書類です。おもに会社の経費精算や法人税の申告をおこなう際に利用されます。
消費税法上の決まりでは、領収書には下記の5項目が必要です。
- 宛名
- 取引日付
- 取引内容(但し書き)
- 金額
- 書類の受取人
また、一般的に商品やサービスの取引額が税込みで5万円以上ので領収書を発行する必要がある場合には、収入印紙が必要になります。
消費税法上は基本的に、上記5項目が記載されている領収書が信憑性のある証憑書類として認められ、仕入税額控除の対象となります。
そのため、仕入税額控除を受けたい場合には宛名が書かれた領収書が必要です。
ただし、仕入税額控除を受けないのであれば、宛名なしの状態でも問題なく経費精算手続きがおこなえるケースもあるため、後ほど詳しく解説します。
なお、領収書の宛名は原則代金を受領した側が記入しますが、その際に印字ではなく手書きの領収書であっても証憑書類としては効力を発揮します。そのため、すぐに修正できないボールペンなどで記載されている領収書であれば、宛名は手書きでも問題ありません。

領収書の宛名を自分で書くとどうなる?宛名なしのリスクや個人名の書き方を解説
今回は、領収書の「宛名」に関する疑問点や注意点について紹介していきます。領収書の書き方について詳しく知りたい方はもちろん、領収書に宛名を記入しなかった場合の税法上の危険性や、領収書の宛名を書き間違ってしまった際の正しい対応方法についてお困りの方は、この記事をしっかり読み、スムーズに業務を進めましょう。
領収書の宛名が空欄の場合でも経費精算は可能
経理業務の観点からは、領収書の宛名が空欄の状態でも問題はないため、通常通り経費精算をすることができます。
経費精算においては、支払の事実が証明される書類であれば証憑書類としてみとめられるため、支払金額や支払日時、商品やサービスの詳細、領収書の発行元などの項目の記載があれば有効とみなされる場合がほとんどです。
国税庁は経費精算の証拠証書として、領収書のほかにも「受取書」、「領収証」、「レシート」、「預り書」などを認めています。(※1)
したがって、手書きの領収書でなく、印字のレシートタイプの領収書でも問題なく経費精算が可能です。
ただし、会社によっては不正な経費申請を防ぐ目的で宛名の記載のある領収書以外の経費精算を認めないという社内規定を設けている場合があるので、そうしたルールが設けられている場合は宛名の記載のある領収書を受け取るようにしましょう。
領収書の宛名の必要性とは?
そもそも、なぜ消費税法上では領収書に宛名が必要なのでしょうか。
実は、消費税の仕入税額控除を受ける場合をのぞいて、領収書に記載すべき項目を定めた法律は存在しません。ここでは、領収書の宛名の必要性や、消費税法における規定について解説します。
消費税法上は領収書に宛名の項目が必要
消費税法上は領収書に宛名の項目が必要です。消費税法第30条9項1号によると、課税事業者が仕入税額控除を受けるためには、次の5つの項目の記載があるものが正式な証憑書類として認められます。(※2)
- 書類の作成者の氏名又は名称(発行者住所氏名)
- 課税資産の譲渡等を行った年月日(日付)
- 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(但し書き)
- 課税資産の譲渡等の対価の額(金額)
- 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称(宛名)
ただし、「小売業」「旅客運送業」「旅行に関する事業」「飲食業」「駐車場業」に該当する業種の場合、事業の特性上、領収書に宛名がなくても消費税の仕入税額控除を受けることができます。
領収書の宛名書きは、消費税の仕入税額控除を受ける場合をのぞいて、企業の商慣習によって左右されるのが現状です。

領収書の宛名ルールBOOK
領収書発行の際、意外と迷うのが「宛名の書き方」です。この資料では、領収書の宛名の正しい書き方や、よくある疑問をQA形式で解説しています。領収書発行業務を担当する方はぜひチェックしてみてください。
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領収書の宛名なしは税務調査でリスクあり
注意が必要なのが、税務調査における宛名の扱いです。原則として、少額の経費精算の場合は、宛名なしの領収証が問題視されるケースはほとんどありません。
しかし、領収書に記載された金額が高額な場合、宛名が空欄または「上様」では税務調査の際、「会社の経費を不当に水増ししているのではないか」との心象を悪化させるリスクがあります。
もし指摘を受けると、経費としての正当性を証明する必要が生じます。支払い金額が高額になる場合などは、領収書を受け取るとき、宛名に正式な会社名を記載してもらうことで、税務調査対応のリスクを避けることができます。
領収書の名前が空欄の場合に起こりうる3つのリスク
領収書の名前が空欄の場合、ほかにどのようなリスクがあるのでしょうか。たとえば、宛名なしの領収書を紛失した場合、第三者が宛名を勝手に書き、不正利用される恐れがあります。
もし不正利用が露見した場合、領収書を紛失した事業者が脱税ほう助の罪に問われるリスクがあります。また、宛名なしの領収書を大量に発行していると、税務署の反面調査がおこなわれる可能性もあります。
1. 紛失の際に悪用されるリスク
もし宛名なしの領収書を紛失した場合、第三者に領収書を悪用されるリスクがあります。宛名の欄が空欄のままのため、拾得者が自身の名義を記載し、経費計上しようとするかもしれません。
領収書を悪用されるリスクを避けるためにも、領収書にはなるべく正式な会社名を記載することをおすすめします。
もし発行された領収書に宛名書きがない場合は、相手方に領収書の再発行を求めましょう。
一般的な商習慣では、領収書の二重発行や不正利用を防止するため、領収書の再発行ができないケースがあります。
しかし、宛名書きや但し書きがないなど、領収書に不備があった場合は、再発行を申し出ることで対応してもらえる可能性があります。
2. 脱税ほう助の罪に問われるリスク
宛名なしの領収書を紛失し、拾得者に悪用された場合、税務署の調査によってすぐに不正が明らかになります。領収書を紛失した経緯によっては、拾得者の不正利用を手助けしたと判断され、脱税ほう助の罪に問われるリスクもあります。
また、領収書の紛失ではなく、領収書を発行する際に宛名を書かなかった場合も注意が必要です。
たとえば、白紙の領収書(空領収書)を多数提供した企業の事例では、法人税逋脱行為の幇助行為などが認められ、実刑判決に至ったケースもあります。領収書を受領する側も発行する側も、脱税ほう助のリスクを回避するため、宛名書きがおこなわれたかどうか必ず確認しましょう。
※参考:https://shop.gyosei.jp/online/archives/cat01/0000002319
3. 税務署の反面調査がおこなわれるリスク
宛名なしの領収書を常習的に受け取っている場合、税務署による反面調査がおこなわれるリスクもあります。反面調査とは、自社ではなく、自社の取引先や取扱金融機関を対象とした税務調査です。
反面調査は文書や電話、訪問などの手段によっておこなわれます。反面調査は国税通則法上の「質問検査権の行使」に当たるため、当事者が拒否することはできません。
反面調査は「調査員に非協力的な態度をとる」「帳簿の不備が常態化している」など、相当の事由がなければ実施されませんが、税務署の反面調査がおこなわれるリスクがあることを知っておきましょう。
宛名なしの領収書は消費税額控除を受けられないため注意
領収書の宛名は消費税法上は必ず記載されている必要があるとされています。そのため、消費税額控除を受けるためには宛名の記入された状態の領収書を受け取るようにしましょう。
ただし、取引金額が高額でない場合の社内での経費精算や小売店など一部の認められた業態の事業者からの領収書で消費税額控除を受ける場合など、宛名の記載がなくても問題なく処理できる場合もあります。
とはいえ、宛名なしの領収書を紛失すると、領収書が第三者に悪用され、領収書の発行者が脱税ほう助の罪に問われるリスクもあります。
また、宛名なしの領収書での高額の経費処理は税務調査の際に指摘を受けるかもしれません。
高額な領収書の発行を受ける時は、宛名を空欄や「上様」にせず、なるべく会社名(正式名称)を記載してもらうようにしましょう。

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