法人クレジットカード利用時の経費精算の方法や注意点を解説
経費精算システム
2024.01.22
2024.01.22
法人カードとは、事業者向けに発行される経費精算用のクレジットカードのことです。法人カードを導入すれば、従業員が出張費や取引先との会食費などを立て替えなくて済むようになり、さらに経理の精算業務も簡略化することが可能です。本記事では、法人クレジットカードで経費精算をする方法やメリット、注意点について解説していきます。
法人クレジットカードの経費精算の有効性
法人クレジットカードを使用した場合でも、経費精算はきちんとおこなえるのでしょうか。ここでは、法人クレジットカードを使用した場合の経費精算の有効性について詳しく紹介します。
クレジットカード利用明細書は領収書の代わりになる
法人クレジットカードで決済をする場合、カード会社から発行される利用明細書を領収書の代わりに経費精算の書類として使用することができます。ただし、明細には必ず以下の項目が記載されているかチェックしておく必要があります。
- 購入した日付
- 購入した店舗名
- 商品やサービスの内容
- 金額
- 購入者の氏名もしくは会社名
法人カードの場合、上記の項目を満たしていれば、利用明細のほか「クレジット売上票」を領収書の代わりとして使用することも可能です。なお、クレジットカード会社の請求明細書は領収書の代わりにできないので注意する必要があります。
クレジットカード会社がそのカードの利用者に交付する請求明細書等は、そのカード利用者である事業者に対して課税資産の譲渡等を行った他の事業者(カード加盟店)が作成・交付する書類ではなく、当該他の事業者(カード加盟店)の氏名又は名称及び登録番号が記載された書類にも該当しないため、消費税法第30条第9項に規定する請求書等には該当しません。
レシートや領収書でも経費精算は可能
店舗が出したレシートや領収書でも、必要項目が記載されていれば経費精算をおこなうことができます。ただし、レシートは感熱紙を使用していることが多く、印字が消えやすいので保管する際は注意が必要です。
また、店舗はクレジットカード払いの場合、領収書を発行する義務はありません。クレジットカード決済は信用取引に該当し、顧客と店舗の間で直接金銭のやりとりが発生しないためです。しかし、領収書が必要であることを伝えれば、サービスで発行してもらえることがほとんどです。領収書が発行してもらえない場合に備えて、クレジットカードの利用明細書や売上票、レシートをきちんと管理しておくことが大切です。
法人クレジットカードの種類
法人クレジットカードは大きく「ビジネスカード」と「コーポレートカード」に分類されますが、クレジットカードの機能に大きな違いはありません。
ここでは、ビジネスカードとコーポレートカードについて詳しく紹介します。
ビジネスカード
ビジネスカードは、個人事業主や従業員20名以下の中小企業向けの法人クレジットカードです。法人カードは、個人向けのクレジットカードと比べて、審査基準が厳しいため、設立して間もない個人事業主や中小企業は、審査に通らない可能性があります。
ビジネスカードの中には、設立時期に関係なく発行できる種類もあります。ただし、発行できる追加カードの枚数に制限があったり、利用上限額が低かったりする場合もあります。
コーポレートカード
コーポレートカードは、従業員20名を超えるような大企業向けの法人クレジットカードです。ビジネスカードよりも利用上限額が大きく、発行できる追加カードの枚数が多い傾向にあります。また、クレジットカードの利用者ごとに利用枠を設定できる場合があります。
このように、「ビジネスカード」と「コーポレートカード」は、会社の規模(従業員数)などに応じて呼び方を変えることがあります。ただし、両方を含めて「法人クレジットカード(法人カード)」と称しているカード会社もあります。ビジネスカードとコーポレートカードの用途は基本的に変わらないことを押さえておきましょう。
法人クレジットカードの経費精算の方法
経費精算には申請や承認、経理業務といった多くのプロセスが必要となります。このようなプロセスにかかる時間や業務負担を削減するために注目されているのが、法人クレジットカードを使った経費精算です。
法人クレジットカードを導入した場合、どのような流れで経費精算を進めていくことになるのでしょうか。まずは、法人クレジットカードを使った経費精算の方法について見ていきましょう。
法人クレジットカードの経費精算をする流れ
法人クレジットカードで経費を精算する際、従業員側と経理側における2つの精算プロセスが必要となります。
【申請者側の経費精算方法】
- 出張や外出などの際の経費を法人カードで支払う
- レシート・領収書とクレジット売上票を保管しておく
- 会社に帰ったら領収書などを経理に提出する
※領収書をデータで保管している企業の場合、写真を送っておく。
【経理側の経費精算方法】
- クレジットカードの利用明細を確認し、記帳や仕訳をする
- 利用明細とともに、従業員から提出されたレシート・領収書もしくはクレジット売上票を保管しておく
法人カードを使用した経費精算の場合、従業員はお金を立て替えていないため、金銭の返還作業は不要です。従業員はクレジットカードでの支払いとレシート・領収書の提出、経理は仕訳・記帳作業をそれぞれおこなえばよいので、経費精算業務が大幅に削減されます。
法人クレジットカードは経費精算システムとセットで使う
法人カードによる経費精算は、それだけでも十分に利便性が高いものです。しかし、さらに精算業務をスムーズにするためには、経費精算システムの導入も検討しましょう。
経費精算システムは、従業員が使用した経費を入力することで精算業務をシステム化するサービスを指します。対応している経費精算システムであれば、法人カードの使用履歴を取り込み、自動で経費を仕訳してくれるものもあります。
また、連携できる会計ソフトを使えば、帳簿の作成も自動化することが可能です。
手作業で日付や金額を入力しなくてもよいため、計上漏れやミスを防いで正確な仕訳をすることができるようになります。業務の効率化を加速させてくれるサービスなので、法人カードの利用を検討の際は、同時に経費精算システムも導入しておきましょう。
法人クレジットカードで経費精算するメリット
ここからは、法人クレジットカードで経費を精算するメリットについて詳しく解説していきます。
経費精算フローが簡略化される
従来の経費精算フローでは「従業員による申請書作成→管理者の承認→経理による仕訳・精算」というプロセスが必要でした。しかし、法人クレジットカードを使用すれば、経理が登録された利用明細を取り込み、仕訳するだけで経費精算業務が完結します。
このように、法人カードを導入することで、経費精算フローがシンプルになり、申請者や経理担当者の業務負担を大きく削減することが可能です。
小口現金の用意が不要になる
法人クレジットカードを導入していない場合、消耗品や備品などを購入するとき、小口現金を従業員に渡して購入してもらわなければならないケースもあります。この場合、小口現金の残高チェックや帳簿記入が必要になり、小口現金担当者や経理担当者の負担が大きくなります。
法人カードで経費精算をおこなえば、小口現金での精算が不要になり、業務が効率化されます。ただし、法人カードが使用できない場合もあるので、仮払金制度を導入するなど、対応を明確にしておくことが大切です。
小口現金と仮払金の違いとは?定義や効率的な管理方法も解説
小口現金と仮払金は仕組みや活用されるシーンなど、似ている部分もあり、違いがわかりにくいかもしれません。しかし、小口現金と仮払金は会計処理が異なるので、正しく理解していないと、仕訳などの会計処理でミスをしてしまう恐れがあります。 当記事では、小口現金と仮払金の違いや仮払金精算の流れ、小口現金のメリット・デメリット、小口現金の管理を効率化させる方法・手順をわかりやすく解説します。
経費の節約になる
法人クレジットカードを使えば、経費を節約することも可能です。事務所の公共料金や定期的に購入している備品などを振り込みで支払っている場合、料金に手数料が加算されてしまいます。法人カードで支払うことでこのような手数料をカットし、経費の節約につなげることが可能です。
ポイント還元や付帯サービスが受けられる
法人クレジットカードでは、個人向けのクレジットカードと同様に、ポイント還元サービスを受けることができます。クレジット払いにすれば公共料金や電話代などの固定費にもポイントが付くようになるため、そのポイントを事務用品などに充てて経費を削減することが可能です。
また、空港ラウンジの使用や保険などの付帯サービスが利用できるのも、法人カードを持つ大きなメリットです。各クレジットカード会社でポイント還元率や付帯サービスは異なるため、よく比較して自社に合ったものを選ぶようにしましょう。
仕訳や記帳が格段に楽になる
法人クレジットカードを使用すると、毎月カード会社から「いつ・誰が・どこで・何に使ったのか」について記載したカード利用明細が送られてきます。
明細の内容を入力すれば経費の計上が完了するため、経理業務がシンプルになり、人件費削減や業務効率化を図ることが可能です。
キャッシュフローに余裕が生まれる
現金での経費精算だと随時経費を精算する必要があるため、資金の動きを把握しづらいです。法人クレジットカードを使用すると、キャッシュフローに余裕が生まれ資金繰りをしやすくなります。
経費精算に法人カードを使用した場合、利用した分の金額が翌月または翌々月に引き落とされます。毎月締日と支払日が統一されているため支出を管理しやすく、引き落とし日までに余裕を持って資金を用意することが可能です。
カード会社によっては、支払いを先送りにできる機能が備わっているものもあり、収支の調整がしやすいのも大きなメリットです。
法人クレジットカード利用時の経費精算における注意点
メリットの多い法人クレジットカードですが、正しく運用するためにはいくつかの注意点に気をつける必要があります。ここでは、法人クレジットカードで経費を精算するときの注意点について詳しく解説していきます。
クレジットカード領収書は税法上の領収書として認められない
クレジットカード決済の領収書は、税法上、正式な領収書に該当しません。これは、クレジットカード決済は「信用取引」であることが理由として挙げられます。
本来領収書は「金銭」または「有価証券」の受領証明として発行されるものだとされています。したがって、金銭のやり取りをしていないクレジットカード決済の場合、領収書を正式な会計処理の書類として使用できません。ただし、先述したように必要項目がきちんと記載されていれば、証拠書類として認められます。
不正利用を防止する
法人クレジットカードとはいえ、カードの使用は持ち主の裁量に任せられます。場合によっては個人的な飲食費などに法人カードを使ってしまう従業員も出てくるかもしれません。
また、クレジットカード決済は非常に手軽なため、ネットなどで備品を購入する際に「安いから」とついつい不要なものまで買ってしまうこともあるでしょう。
このような不正使用や不要な経費への支出は、法人カードを導入するうえで避けては通れない課題です。提出させる領収書には用途や取引先を必ず記載させる、経費を使いすぎないよう上司への事前申請を義務付けるなど、不正使用を防ぐための対策をとっておくようにしましょう。
二重計上を防ぐ
法人クレジットカードでの経費精算と現金での経費精算を併用している企業の場合、経費を二重計上しないように注意する必要があります。とくに、法人カードの領収書として提出されたものを通常の精算時のように計上し、さらに利用明細発行時に間違えて計上してしまうというミスが起こりやすいため気をつけましょう。
このような事態を防ぐためには、経費精算システムの導入により、経費精算のシステム化を図る対策法が有効です。また、法人カードの領収書と現金精算の領収書を別に保管しておくと、二重計上のミスを防ぎやすくなります。
収入印紙の必要性を確認する
領収書は印紙税の課税対象に該当するので、金額が5万円以上の場合は収入印紙の貼付が必要です。しかし、クレジットカード払いの場合、金銭や有価証券の受領事実がないので、印紙税の対象にはなりません。(※1)
そのため、クレジットカード払いの領収書を発行する場合、たとえ金額が5万円以上でも、収入印紙の貼付は不要です。ただし、クレジットカード払いである旨を「領収書」に記載しなければ、通常の領収書と同様で、印紙税の対象になるので注意が必要です。
収入印紙とは?貼り方や領収書と契約書で必要・不要なケースをわかりやすく解説
課税文書を作成したときは、収入印紙の貼付により印紙税の納付が必要です。印紙税額は課税文書に記載された額により決定するため、事前にいくら必要か確認し適切な収入印紙を購入しましょう。本記事では、収入印紙とはなにか、領収書や契約書などに貼付が必要な金額や不要なケース、正しい貼り方、購入できる場所をわかりやすく解説します。
利用明細書の保管期間を把握する
帳簿などの保管期間は青色申告か白色申告かで異なります。(※2)青色申告の場合、クレジットカードの利用明細書は基本的に7年間保管しなければなりません。ただし、前々年分の事業所得および不動産所得の金額が300万円以下の場合は5年間になります。一方、白色申告の場合、クレジットカードの利用明細書は5年間保管する必要があります。なお、起算日は発行日でなく、その年度の確定申告の期限の翌日になるので注意しましょう。
キャッシュバックや分割払い手数料の仕訳に注意する
クレジットカードを利用すると、マイルやポイントを獲得することができます。このマイルやポイントをキャッシュバックとして利用する場合、収入が発生したことになるので、「雑収入」の勘定科目を使って収益を計上する必要があります。たとえば、クレジットカードのポイントを2,000円の現金に換えた場合の仕訳は、下記の通りです。
借方科目 |
借方金額 |
貸方科目 |
貸方金額 |
現金 |
2,000 |
雑収入 |
2,000 |
また、クレジットカードで分割払いを利用すると、手数料が発生する場合もあります。その場合は、「支払利息」や「支払手数料」の費用の勘定科目を使用して処理しましょう。たとえば、5万円の備品をクレジットカードを利用して10回の分割払いで購入したとします。その場合の仕訳は次の通りです。
借方科目 |
借方金額 |
貸方科目 |
貸方金額 |
備品 |
50,000 |
未払金 |
50,000 |
初回の支払いの分割払い手数料が340円だったときの仕訳は、下記の通りです。
借方科目 |
借方金額 |
貸方科目 |
貸方金額 |
未払金 支払利息 |
5,000 340 |
当座預金 |
5,300 |
法人クレジットカードの選び方
ここでは、法人クレジットカードの選び方について詳しく紹介します。
年会費が必要かどうか
法人クレジットカードの年会費は、無料のものから有料のものまであります。コスト削減が目的の場合、年会費無料のものを利用したほうが良いかもしれません。ただし、年会費有料の法人カードの中には、ポイントの還元率が高く、すぐに元が取れるものもあります。そのため、費用対効果をきちんと検証したうえで、自社のニーズにあった法人カードを選ぶことが大切です。
限度額の上限は十分か
法人クレジットカードを使用する金額が大きいのにも関わらず、利用上限額が小さいと、すぐに限度額に達してしまい、一定期間カードが使えなくなる可能性があります。また、急な出費にも対応できるように、できる限り限度額の上限は高いほうがよいといえるでしょう。
追加カードの発行上限枚数は十分か
法人クレジットカードの追加カードを発行する場合、上限が決まっていることがあります。企業の規模によっては、追加カードの枚数が不足してしまう可能性があります。そのため、法人カードを発行する際は、事前にどのくらい追加カードが発行できるのかを確認しておきましょう。
経費精算システムと連携できるか
法人クレジットカードは経費精算システムと連携させることで、利用明細の手作業での転記が不要になるなど、業務の効率化が期待できます。経費精算システムによって連携できる法人カードは決まっています。そのため、導入する法人カードと経費精算システムが連携できるかどうかをきちんと確認しておくことが大切です。
経費精算システムとは?メリットや基本機能、ツール選びのポイントを紹介
経費精算システムを活用すれば、経費の申請や承認に関する業務を効率化することができるため、多くの企業が導入を進めています。この記事では、経費精算システムのメリットとデメリット、ツール選びのポイントなどを解説します。経費精算システムの導入を検討している人はぜひチェックしてください。
法人クレジットカードの導入で経費精算を効率化できる
法人クレジットカードを導入すると現金でのやり取りが減るため、従業員にとっても経理にとっても経費精算の手間が大幅に削減されます。お得な特典の利用ができるケースもあるので、自社における経費の利用目的や事業形態に合った法人カードを探してみてください。
また法人カードは、経費精算システムや会計システムと連動させることで、より経理業務を効率化することができます。従来の経費精算プロセスに課題を感じている企業は、ぜひ法人カードとともに経費精算システムの導入を検討してみましょう。
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