取引先と商品やサービスの売買をおこなった際、領収書を発行する機会が多くありますが、このとき、領収書の「控え」はいったいどのように扱うと良いのでしょうか。今回は、領収書の控えが果たす役割と、発行する際の注意点について紹介していきます。領収書の控えは、取引先との関係を円滑に保ち、税務調査をスムーズに終えるためにとても重要な役割を持っています。この記事を読んで、領収書の控えを正しく管理しましょう。
領収書の控えとは?
領収書は、商品やサービスを販売した店舗が代金の支払いを証明する目的で発行します。発行した領収書は購入者に渡してしまうため、販売者側には取引の記録が残りません。販売者側が取引の記録を確認できないと後々不都合が生じる場合があるため、領収書を発行する際は販売者側が控えをとって保管しておくことが多いです。
領収書の控えを捨てた場合
発行者側が領収書の控えを誤って捨ててしまった場合、いったいどのようなデメリットが発生してしまうのでしょうか。
まず考えられるのが、領収書の再発行に対応できないという点です。商品やサービスの購入者が領収書を紛失してしまった場合、販売元に対して再発行を依頼しますが、販売元に取引の記録がなければ応じることができません。
発行した領収書の内容が誤っていて、該当箇所の修正を依頼された場合でも同様です。取引先に迷惑をかけてしまうおそれがあるので、領収書を発行した際は控えを厳重に保管しておくように気をつけましょう。
領収書の控えを渡す際の注意点
ここでは、領収書を発行する際の控えに関する注意点についてまとめています。領収書を発行する機会の多い方は、本項をしっかり読んだうえで正しく控えを管理しましょう。
顧客にはどちらを渡せばよいか
発行した領収書には「正本」と「控え」が存在していますが、商品やサービスの代金を支払った顧客には正本を渡しましょう。記入した内容がカーボンによってそのまま転記できる複写式の領収書の場合、転記された2枚目の用紙が正本となります。複写ができない単票式の領収書の場合は、正本のみとなっているため、記入した用紙をそのまま顧客に渡してください。この際、領収書に記載した内容を別紙に転記し、控えとして保管しておくと良いでしょう。
印鑑はどちらに押せばよいか
一般的に、領収書を発行する際には会社の角印が押印されることが多いですが、これは領収書の偽造防止や商習慣上の目的から押印されているのであり、取引を記録するだけの控えには不要とされています。
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収入印紙はどちらに貼ればよいか
収入印紙は、税込みで5万円以上の支払いをおこなった際に領収書に貼付する必要がありますが、顧客に渡す正本にのみ添付しましょう。領収書に収入印紙を貼付する際は、印紙と書類に印影がかかるように押印する「消印」を忘れないでください。なお、販売元が保管する控えは領収書として使用する目的はないため、収入印紙を貼付する必要もありません。正本に印紙を添付したことを後から確認できるように、控えには「印紙貼付済み」などと記載しておくことをおすすめします。
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連番を記載する
発行した領収書には、正本・控えともに連番を記入しましょう。連番をふっておくことで、顧客から領収書の修正を依頼された際にスムーズに応じることができます。また税務調査が入った際も、発行した領収書が連番になっていることが確認できれば、不都合な取引を取り除いたと疑われることもありません。このとき、税務調査であらぬ疑いをかけられぬよう、書き間違えた領収書は破って捨てることのないように気をつけましょう。
領収書の控えの保管期間や管理方法
最後に、領収書の控えの保管期間や管理方法について紹介します。
7年間の保管が必要
法人税法によると、領収書・レシート・請求書など税務処理で使用する帳簿書類は、すべて7年間保管することが義務付けられています。これは、領収書としての目的で使用されない「控え」についても同様です。
なお、この「7年」とは、発行日からではなく、発行した事業年度の確定申告の提出期限の翌日からとなっているため、誤って処分してしまわないように注意しましょう。
関連記事:領収書の保管期間は何年?押さえておくべき基本ルールを紹介
冊子式領収書の控えの切り離しは極力避ける
冊子式領収書の場合、控えをわざわざ切り離す行為は、税務署から改ざん行為を疑われる原因になるため、なるべく避けたほうが良いでしょう。もし、控えが破れてしまいそうなのであれば、まとめて穴をあけたうえでファイリングしておくと紛失を防ぐことができておすすめです。
未渡しの領収書は控えに貼付する
書き間違えて顧客に渡さなかった領収書は、冊子から切り離さずに控えとともにそのまま保管しておくようにしてください。
書き間違いの領収書を切り取って捨ててしまうと、税務調査が入った際に、不都合な取引を隠蔽しているのではないかと不要な嫌疑をかけられてしまうおそれがあります。領収書を切り離してしまった場合は、控えに貼付しておくと一緒に保管ができて良いでしょう。
領収書の控えの役割を正しく知り、適切に扱おう
今回は、領収書の控えが果たす役割と、発行する際の注意点について紹介しました。
領収書の控えは、主に顧客との取引記録を残しておく目的で保管されており、顧客から領収書の修正依頼が来た場合や税務署による税務調査の際に必要となります。
複写式の領収書であれば、転記した2枚目の「正本」を顧客に渡し、1枚目の控えは切り離さずに7年間保管してください。
また、税務調査の際に領収書の改ざん行為を疑われてしまうおそれがあるため、領収書の控えはなるべく手を付けずにそのまま保管しておくと良いでしょう。