領収書を電子化するメリット・デメリットや導入時のポイント

「領収書の電子化をしたいが、何に注意すればよいの?」「領収書を電子化した場合のメリット・デメリットは?」と疑問に感じている人も多いかもしれません。領収書を電子化することで、印紙税や紙運用固有の業務にかかるコスト、監査コストなどを削減できるメリットがあります。一方で、領収書を電子化する場合、電子帳簿保存法の電子取引要件またはスキャナ保存要件、国税関係書類要件のいずれかの要件を満たす必要がある点に注意が必要です。当記事では、領収書の電子化をするうえで確認しなければいけない法律や電子化した場合のメリット・デメリットを紹介します。


当記事では、 SAP認定コンサルタントの西村氏に執筆いただきました。専門家の視点から、領収書の電子化について解説します。

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西村 和史
日系総合コンサルティングファーム、監査法人を経て、現在SaaS企業にて法対応に伴うシステムコンサルティングに従事。ペーパレスDXやIT×法律に強みがある。SAP認定コンサルタント・文書管理マネージャー・基本情報技術者試験資格を中心とした各種資格を有している。電子契約サービスや電子帳簿保存法を紹介するサイトで多数執筆実績あり。

領収書の電子化が進んでいる背景

新型コロナウイルスを背景にリモートワークの推進が進み、同時にペーパレス化が注目されています。

ペーパレス化の一環として、電子化した場合の業務効率化効果が大きいとみなされているのが、業務上取り扱い量の多い領収書です。

また、法対応の観点から、領収書を電子化する場合、保存方法により電子帳簿保存法の各種要件への対応が必要ですが、電子帳簿保存法は2022年1月1日に大幅緩和が見込まれているため、電子化対応が非常に対応しやすい状況が整備されつつあります。

つまり、領収書の電子化需要と税法の電子化への整備環境の拡充が相乗効果となり、領収書の電子化が注目されているといえます。

領収書の電子化に関する法律

領収書を電子化する場合、関連する法律を確認する必要があります。
関連する法律の中には、任意要件ではなく、義務要件があるので注意が必要です。

義務要件への対応が未実施であると税務監査時に指摘を受けた場合、青色申告の承認取り消しや対象文書の経費控除が認められなくなるなどのリスクがあるので、必ず対応をしましょう。

電子取引の要件

電子帳簿保存法は保存対象によって大枠4つに分類されます。
その中で、領収書の電子保存を電子取引に該当する形式で実施する場合、電子帳簿保存法の電子取引要件を満たす必要があるので注意が必要です。

2022年1月1日以降電子帳簿保存法が改正され、たとえば以下の電子取引に該当する方法で文書の送受信をした場合、文書を電子上で保存することが義務化されます。

  • メールに文書を添付しての送受信
  • インターネットFAXを利用した文書の送受信
  • ECサイト上からの領収書のダウンロード
  • 電子契約の送受信
  • EDI取引 など

また、電子帳簿保存法の電子取引要件は2022年1月1日に改正が見込まれているため、改正後の要件に適合するように対応しましょう。

2022年1月1日以降の電子取引要件は大枠で以下4つの要件を満たす必要があります。(※1)

  • 書類の備え付け
    電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備え付けが必要です。
  • 見読可能装置の備え付け
    電磁的記録をディスプレイ上に明瞭かつ速やかに整然とした形式で出力できる必要があります。
  • 検索機能の確保
    主要3項目(取引年月日、取引先名、取引金額)で検索できる必要があります。ただし、電磁的ダウンロードの要件を満たさない場合は範囲指定および2以上の項目での検索もできる必要がある点に注意が必要です。
  • 真実性の確保
    タイムスタンプの付与、訂正削除が考慮されたシステムまたは訂正削除ができないシステム上での文書保存、事務処理規定の作成のいずれかの方法の中で自社の運用に適した方法で真実性を確保する必要があります。

現行法では、対象文書の紙での保存をもって電磁的な記録とみなすことができましたが、改正後は電磁的な記録とみなされず、電子文書は必ず電子上で保管する必要があります。

仮に電子取引要件を遵守せずに電子文書を保管した場合、青色申告承認の取り消しや対象文書の経費控除の対象外になるリスクがあるので注意が必要です。

スキャナ保存の要件

紙の領収書をPDF化して電子保存する場合、電子帳簿保存法スキャナ保存要件を満たす必要があります。

また、電子帳簿保存法スキャナ保存要件は2022年1月1日に改正が見込まれているため、改正後の要件に適合するように対応しましょう。

スキャナ保存要件は保存をする文書が資金や物の流れに直結・連動する度合いにより、以下に分類されます。分類により対応すべき要件が変わる点にご注意ください。(※2)

重要書類 一般書類
定義資金や物の流れに直結・連動する書類資金や物の流れに直結・連動しない書類
契約書、領収書、請求書 など検収書、見積書、注文書 など

印紙税法

書面の領収書は印紙税法に定められる課税文書に該当するため、5万円以上の記載のある領収書には印紙税が課されます。

印紙税法で課税文書として定められる20種類の書面の第17号文書(金銭又は有価証券の受取書)に領収書は該当するため、印紙税の支払いが必要です。

一方で、領収書は電子化すれば印紙税が課されることはありません。
なぜなら、印紙税法第2条および44条に以下の記載があるからです。(※3)

「印紙税法第22条」

文書(略)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある

「印紙税法44条」

法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。

つまり、印紙税法22条から印紙税の課税対象は課税文書を作成したものに限定されることがわかります。また、印紙税44条から、書面への記載をもって課税文書の作成とみなすこともわかります。
したがって、電子文書は書面への記載をせずに発行されるため非課税です。

電子署名法

領収書を電子化した場合、文書の真正性を確保するため、多くの場合は電子文書に電子署名を付与します。
電子署名の法的拘束力を説明した法律が電子署名法です。

電子署名法は全47条から構成されますが、一般ユーザーが理解すべき部分は第2条および第3条です。(※4)
2条3条以外は事業者向けの記載になっているため、必要に応じて目を通しておきましょう。

電子署名法第2条では電子署名としてみなす条件を定義しています。

「電子署名法第2条」

第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

したがって、上記を簡略化すると電子署名としてみなす条件は以下といえます。

  • 電子署名が本人の意思により署名されたと保証できること(本人性)
  • 電子署名が付与した後に改ざんされていないことを保証できること(非改ざん性)

電子署名法第3条では電子署名が法的に有効であることを記載しています。

「電子署名法第3条」

電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する

したがって、電子署名が付与された文書は真正性を保証されるとみなすことができます。

領収書を電子化するメリット

コスト削減や業務効率化の観点から、領収書を電子化するメリットは大きいため、領収書の電子化をおすすめします。
領収書を電子化した場合に得られるメリットは以下の通りです。

印紙税を削減できる

電子文書に対して印紙税が課されないため、印紙税にかかるコストを削減できる点がメリットです。

領収書1通あたり2,000円程度かかる場合もあるため、印紙税が削減できるだけで企業の事務コストを大きく削減できるでしょう。

保管コストを削減できる

書面文書を保存する場合、文書の保管場所や維持管理のために費やす工数が大きくかかる場合がある点が課題です。
領収書は税務会計の観点から最低7年(繰越欠損金がある場合は10年)の保存義務があるため、長期での保管を強いられます。
また、内部統制の観点から、保存文書の定期チェックや文書保存時の相互牽制の仕組みの構築が求められる場合があり、維持管理コストが高くなりがちです。

一方で、領収書を電子化した場合、システム上に領収書や他文書を一元管理できるため、保管コストを大きく削減できます。
また、文書管理ツールなどを導入すれば、訂正削除履歴や追跡記録機能、フォルダ別のアクセス制御、IPアドレス制御、文書の自動削除などの機能を保持している場合が多いため、特別の内部統制的な運用を大きく考えずに済むメリットがあります。

検索性を向上できる

領収書と他文書を電子化し、システム上で一元管理することで、業務の効率化を実現できます。

領収書に監査対応時などに求められやすい主要3項目(取引金額、取引年月日、取引日付)を保持させて保管することで、監査対応時の検索工数を大幅に削減し、監査コストの削減が見込めます。

また、日常業務においても過去の領収書や他文書を検索しやすくなるため、そもそもの日常業務における検索コストを削減できる点がメリットです。

領収書を電子化するデメリット

領収書を電子化するメリットは大きいですが、一部デメリットがあります。
領収書を電子化することによるデメリットは以下の通りです。

多くの場合、新規でシステムの導入が必要

領収書を電子化する場合、システムの導入が必要になる場合が多いです。
ただ領収書を電子化して、ファイルサーバー上に保管すればいいわけではない点に注意してください。

たとえば、領収書とはいえ、証拠力が求められるため、証拠力向上のためタイムスタンプの付与が必要な場合があります。
また、領収書が改ざんされていないことの証明をする目的でもタイムスタンプの導入が必要な場合があるでしょう。

ほかにも電子帳簿保存法で電子文書の保存要件を定めていますが、ファイルサーバーでは要件を満たす場合が難しいことが多いため、新規でシステムの導入が必要な場合が多いです。

電子帳簿保存法に基づいた保存が必要

書面の領収書を電子化し保存する、電子の領収書を保存する、いずれの方法をとる場合でも、電子帳簿保存法の要件に従った保存が必要です。

仮に電子帳簿保存法に基づいた保存がされていない場合、税務監査などの際に指摘を受けた際に、対象文書の経費控除取り消しや青色申告承認の取り消しなどのリスクがあるので、注意が必要です。

電子上で最低7年保管が必要

領収書を電子化して保存する場合であっても、法人税法等にしたがって最低7年の保管(繰越欠損金がある場合は10年)が必要です。
したがって、電子上で保存するためのストレージの確保が必要なため、維持コストがかかる点に留意してください。

ただし、国から電子帳簿保存法対応システムであると認可されたJIIMA認証を取得したシステムであれば、多くの場合、長期保管を効率化する機能(文書の自動削除機能など)が備わっています。

したがって、長期保管をする場合は文書管理ツールを導入することで文書保管のためのコストを大きく削減できます。

領収書の電子化を進めるうえでのポイント

領収書の電子化を進めるうえでは、

  • 社内のルール策定
  • 税務署への経費処理の電子化申請のタイミング
  • 自社のニーズに沿ったシステム選定

という3つがポイントとして挙げられます。

社内ルールの策定は国税庁の定めから逸れないようにする

領収書の電子化に関する社内ルールを定める際は、国税庁の定めから逸れないようにしましょう。

策定すべき内容としては、

  • 経費精算可能な範囲
  • 領収書を撮影する方法
  • 経費精算申請の流れ

などが挙げられます。

税務署への申請は予定日の90日前までに

領収書の電子化をスタートする90日前までには管轄税務署への申請を完了させておきましょう。税務署への申請にあたっては、社内規定、導入予定システムの資料、契約書などが必要書類となります。

申請が承認されてから経費精算の電子化がスタートします。

自社に適したシステム選定はコストだけにとらわれない

システムを選定する際は、コストばかりに目を向けないようにしましょう。導入してからの使いやすさや、サポート体制、セキュリティ対策、クラウド型かオンプレミス型かといった点も確認してからシステムを選ぶことが大切です。

自社に適したシステムを選ぶことで業務の効率化が期待できます。

領収書電子化のメリット・デメリットを把握して業務効率化につなげよう

領収書の電子化をはじめることで、業務の効率化、コストの削減が期待できます。その一方で、電子帳簿保存法の理解やシステム導入費用を支払う必要があります。

領収書の電子化を図る際は、メリットだけでなくデメリットも理解したうえで取り組み、業務の効率化につなげましょう。

(※1) 国税庁|電子帳簿保存法一問一答 【電子取引関係】
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_06.pdf
(※2) 国税庁|電子帳簿保存法一問一答 【スキャナ保存関係】
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_05.pdf
(※3) e-Gov法令検索|印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=342AC0000000023
(※4) e-Gov法令検索|電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC0000000102

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