電子署名を導入する際には、コストを抑えたいと考える方は多いでしょう。コストをかけて電子署名を導入してから、運用していくために必要な機能が使用できないと気付くこともあります。電子署名の使い勝手を把握する前に、有料のソフトやサービスを利用するのは、なるべく避けたいところでしょう。 この記事では、無料で電子署名を作成する方法や、おすすめのアプリを紹介します。また、無料で作成する場合のメリット、デメリットについても解説します。コストをかけずに電子署名を導入したい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
目次
電子署名とは
電子署名とは、PC上のデジタル書類へサインの代わりに使用できる署名データです。電子署名には、本人であると証明する電子証明書が付与されています。電子証明書を発行するには第三者機関に認められる必要があるので、なりすましや改ざんの被害を防ぐこともできます。
電子署名に似たものに、電子印鑑というものがあります。電子署名と電子印鑑の両方とも、契約書のような重要書類に利用することができ、有効な契約として認められます。しかし、電子印鑑はハンコの印影画像データのみである場合が多く、契約後に改ざんされても証明できない可能性があります。こうした背景があるため、電子印鑑より電子署名のほうが信用されやすくなっています。
電子署名を無料で作成する方法①|Adobe(アドビ)を利用する
Adobe社が提供している「Adobe Acrobat Reader」の署名機能を利用して、電子署名を作成することができます。Adobe Acrobat ReaderはPDFファイルを閲覧することができるアプリです。無料で利用することが可能で、アプリ内に電子契約をおこなう機能があります。ただし、無料で電子契約をおこなえるのは月2回までです。それより多く電子契約をおこなうには、有料のアプリである「Adobe Acrobat Pro DC」を利用する必要があります。
Adobe Acrobat Readerを起動して、入力と署名ツールを選択すると、電子署名を作成できます。テキスト入力、手書きサイン、画像の3つから作成方法が選べます。一度作成した電子署名は保存され、何度も使用することが可能です。
電子署名を無料で作成する方法②|PDF編集ツールを使う
PDFファイルを編集するアプリやツールのなかには、電子署名を付与する機能をもつものがあります。電子署名よりPDF編集に比重を置いているので、電子署名を利用する際にPDFの編集作業が伴なうのであれば、Adobe Acrobat Readerより便利に電子署名を扱えるでしょう。
ただし、無料で利用できるPDF編集ツールは、機能が少なかったり制限されていたりします。たとえば「PDFelement」は無料プランでの利用でも電子署名を作成することができ、PDFを直接編集することも可能です。しかし、PDFを作成時に透かしが入ってしまい、これを取り除くには有料で利用する必要があります。PDF編集ツールを選ぶ際には、会社での利用に適しているかしっかり確認してください。
電子署名を無料で作成する方法③|電子署名ツールを使う
電子署名ツールを利用することで電子署名を作成できます。電子署名を作成するだけでなく、オンライン上で書類を締結することも可能です。サービスによっては、契約書類を保管する機能も備わっています。電子契約を頻繁に利用するのであれば、この方法で電子署名を導入するのが適しているでしょう。
なお、電子署名ツールを検討する際は、無料のツールだけでなく、有料ツールのフリープランも利用してみましょう。フリープランには月の利用回数が限られているなど、有料利用に比べていくつかの制限があるため、企業の業務へ導入するのは難しいかもしれません。しかし、無料ツールにはない機能やメリットを試すことができます。無料のツールを導入する前に有料ツールのフリープランを利用し、将来的に有料プランの導入を考えてみてもよいでしょう。
無料で使えるおすすめの電子署名アプリ
ここでは、無料で利用できる電子署名アプリを4つ紹介します。
みんなの電子署名

「みんなの電子署名」は、ベクター社が提供している電子署名サービスです。このサービスは基本無料で利用することが可能です。文書を1年以上保管する際には文書数に応じた費用がかかりますが、その機能を利用しないのであれば、お金を支払うことなく全ての機能が使用できます。
基本無料のサービスでありながら機能は充実しており、有料のサービスに引けをとりません。電子証明書やタイムスタンプを付与することが可能で、電子サインをスムーズにおこなえるワークフロー機能や文書管理機能も利用できます。さらに、ユーザー登録数や書類送信数に制限がありません。サーバーへのアクセスを常時監視していたり、保管している書類を暗号化したりと、セキュリティも高水準なので安心して利用できます。
DocuSign

「DocuSign」はDocuSign社が提供している、会社と同名の電子署名サービスです。電子署名を書類に付与する機能のみ利用したいのであれば、DocuSignの無料版で事足りるでしょう。DocuSignは電子署名をおこなう回数に制限はありません。また、マルチデバイス対応でスマートフォンやタブレットから操作することもできるので、外出していても業務に支障をきたしません。さらに、署名した書類はDocuSign上に保管され、必要なときに書類の内容を確認することも可能です。
なおDocuSignには、有料プランの機能が30日間試せる無料トライアルが用意されています。ワークフローやリマインダーといった数多くの機能が揃っているので、気になる機能があれば利用してみましょう。
EサインPDF

「EサインPDF」は、Smallpdf社が提供しているアプリ「Smallpdf」に含まれているPDFツールの一つです。SmallpdfはWEBサイトもしくはスマートフォンのアプリでアクセスできるアプリで、無料で利用できるツールが21種類あります。PDFの編集や分割、圧縮など、多彩なツールが揃っているのが特徴です。
ただし、無料版には署名をおこなえる回数が1日に2回までという制限がかかっています。制限なく利用するには有料プランを購入する必要があります。有料プランであれば、高品質な圧縮機能や、ファイルが保管できるストレージも利用できます。無料トライアルも用意されているので、無料版の回数制限に悩むようになった際には検討してみてください。
Zoho Sign
「Zoho Sign」は、ゾーホージャパン社が提供しているZohoシリーズの電子署名サービスです。ほかのZohoシリーズと連携することで業務効率を上げることができます。Zoho Sign単体でも、外部のクラウドストレージサービスへ文書を出力したり、署名のワークフローを作成したりすることが可能です。
なお、無料版には月に5文書までの制限があります。企業で利用する際は、有料プランをおすすめします。また、はじめてZoho Signを利用する際には14日間の無料お試し期間が設けられており、最上位の有料プランを試すことができます。お試し期間終了後に無料プランへ移行する形式となっているため、お試し期間を通して有料プランの機能を確認しておくとよいでしょう。
電子署名を無料で作成するメリット
電子署名を、無料と有料のどちらで作成するか迷っている方は、無料で作成するメリットをここで確認しておきましょう。ここでは、3つのメリットを解説します。
社内や取引先の反応を確認しながら導入できる
電子署名の使用感は、実際に導入してみなければわかりません。電子署名を使い始めてから必要な機能が足りないことに気付き、別の電子署名サービスを検討しなおす可能性もあります。ほかにも、電子署名を受け付けてくれない取引先企業が多いことも考えられるでしょう。電子署名サービスを一度導入してみなければ、今後も利用し続けるか判断できないのです。
有料の電子署名サービスを利用した場合、導入したあとでサービスを利用停止もしくは変更することになれば無駄なコストがかかります。まずは無料のサービスを試し、周りの反応を確認してから導入に踏み切るとよいでしょう。
業務効率化を推進できる
電子署名を導入することで、PC内の書類を紙に印刷する手間が改善されます。書類をデータのまま扱えるようになれば、遠方の拠点に紙の書類を送る必要がなくなるので、スピーディーに承認業務を済ませることができます。
印鑑を押すためだけに出社する必要がなくなるため、リモートワーク業務も効率よくおこなえます。また、重要な書類をデータで保存できるようになり、検索をかけやすいので、書類を探す時間も抑えることができます。
コストを削減できる
紙の契約書を利用しなければ、印刷費や郵送費だけでなく、印紙税を削減することも可能です。紙の契約書で契約を交わす際は印紙税として収入印紙を貼付しなければなりませんが、電子契約であれば印紙税を払わずに済みます。
また、紙の書類を保管するための物理的なスペースが必要なくなります。もし、紙を保管するためにスペースを借りているのであれば、スペースを借りる金銭的コストも抑えられるでしょう。
電子署名を無料で作成する際の注意点やデメリット
ここでは、無料で電子署名を作成する際に気を付けるべき点を3つ紹介します。
ファイル形式が対応している必要がある
無料の電子署名ツールは、対応しているファイル形式が少ない点に注意しましょう。利用する電子署名ツールが対応していないファイル形式の書類を扱う際には、ファイルを変換する手間がかかります。ファイル形式が対応しているか確認したうえで、利用するツールを選択しましょう。
ただし、さまざまなファイル形式に対応しているツールは、無料利用では機能が制限されるものがほとんどです。扱うファイル形式が幅広いのであれば、はじめから有料プランの利用を視野に入れておいたほうがいいかもしれません。
信頼性や証拠力が担保されなくなる
無料で利用できる電子署名ツールのなかには、電子証明書の発行に用いるデジタルIDを自分で作成するものがあります。しかし、自分で作成したデジタルIDには信頼性がなく、電子ハンコの証拠力と大差ありません。そのため、機密性の高い取引では使用できない可能性があります。
また、無料ではタイムスタンプを付与する機能がないツールも存在します。タイムスタンプは非改ざん性を証明できるうえに、電子署名だけの場合より書類の有効期間を長くすることができます。タイムスタンプの有無で証拠力が大きく変わるため、電子署名ツールを選ぶ際は確認するとよいでしょう。
セキュリティに不安がある
無料ツールではタイムスタンプが利用できないことがあるため、なりすましや文書改ざんの被害を受けやすくなります。また、オンラインで利用するツールのなかには、データの暗号化ができないものがあります。そうしたツールでは、データを盗み見されるなどのトラブル起こりえるでしょう。
このように、無料ツールは有料ツールに比べてセキュリティ性に不安があるといえます。とくにオンラインで利用するツールの利用を検討しているのであれば、セキュリティ機能が充実しているかどうかを確実に確認しておきましょう。
有料の電子署名の検討をおすすめする企業
ここで挙げる3つの特徴に当てはまる企業は、無料よりも有料の電子署名を検討したほうがいいかもしれません。
コンプライアンスの強化を図りたい企業
有料の電子署名サービスには、セキュリティ機能が充実しているものが多く存在します。たとえば、監査ログ機能があれば保管している文書が改ざんされた履歴がないか確認できます。ほかにも、なりすましを防げる二段階認証機能や、署名した人の証明書類を添付する機能のように、高度なセキュリティ対策が施されています。
情報の漏洩は、会社にとって致命傷になりかねません。そのため、よりセキュリティに信頼のおける有料サービスをおすすめします。
法的効力や信頼性を高めたい企業
無料の電子署名サービスではタイムスタンプが付与されない場合がありますが、有料の電子署名サービスではほぼ確実にタイムスタンプの付与機能が備わっています。サービスによっては、タイムスタンプの有効期限をさらに延長する機能が利用できます。書類の法的効力を長期的に維持するには、有料サービスが適しているといえるでしょう。
また、有料サービスを利用すれば書類の信頼性を高める機能が使用できる場合もあります。たとえば、無料ツールのおすすめにも挙げたZoho Signの有料プランでは、署名を依頼するメールに会社のロゴを入れたり、メッセージや色をカスタマイズしたりできる機能が使用できます。
多くの書類に電子署名をおこないたい企業
無料で電子署名サービスを利用すると、多くの場合はユーザー数が制限されています。一方、有料であれば無料に比べて多い人数で電子署名をおこなえます。多くの書類を扱う企業は、より多くの人数が電子署名をおこなえる有料サービスを利用するとよいでしょう。
また、有料サービスには文書の一括署名ができる機能が搭載されているものがあります。一人で電子署名をおこなう場合も、この機能を利用することで大量の書類にかける時間を大幅に短縮することが可能です。
まずは無料の電子署名サービスを導入してみよう!
電子署名のサービスやツールには、周りの反応や利用頻度など、実際に利用しないとわからない部分もあります。有料の電子署名サービスを導入する前に、無料で利用できる電子署名サービスから導入したほうが、無駄なコストが発生するのを防げます。まずは、この記事で紹介した無料サービスを中心に導入を検討するとよいでしょう。