DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義やメリットを解説

データやデジタル技術を活用し、ビジネスモデルを変革することをDX(デジタルトランスフォーメーション)と呼びます。DXを推進すれば、事業環境の変化に対応し、競争優位性の低下を防げます。DXの正しい定義やメリットを学びましょう。

新型コロナウイルスの影響により、倒産が続出するなど、事業継続が困難になった企業が生まれました。こうした事業環境の変化に対応し、競争優位性を失わないためには、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が必要です。そもそもDXとは、どういう取り組みを指す言葉なのでしょうか。
この記事では、DXの定義やメリット、DXの現状とこれからについてわかりやすく解説します。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?政府見解を基に解説

そもそもDXとは、2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授が提唱した言葉です。ストルターマン教授は、DXを「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」と定義しました。(※1)その後、時代の変化に合わせ、DXの定義や本質は変化してきました。
ここでは、総務省や経済産業省の見解を基にDXの意味を説明します。

(※1)令和3年度情報通信白書|総務省

DXの定義は?データやデジタル技術を活用し、ビジネスモデルを変革すること

2019年7月に経済産業省が「DX推進指標」を発表し、そのなかでDXを次のように定義しました。(※2)

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

「DX 推進指標」とそのガイダンス |経済産業省

つまり、DXは「データとデジタル技術を活用」することで、事業環境の変化に対応し、新たな「製品やサービス、ビジネスモデル」を生み出して競争優位性を獲得するための取り組みです。
また、2020年に政府が「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」を閣議決定し、DXを次のように定義しました。(※1)

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

令和3年度情報通信白書|総務省

つまり、DXは近年の新型コロナウイルスのような事業環境の変化に対応し、企業文化や組織マインドなどの変革や、最先端のプラットフォームの活用により、新しいビジネス価値の創出を目指すことだと定義されています。

(※1)令和3年度情報通信白書|総務省
(※2)「DX 推進指標」とそのガイダンス |経済産業省

DXの本質は「レガシーシステムの刷新」ではなく「競争優位性の確立」

DXの本質を理解している企業も多いなか、「レガシーシステム(老朽化したシステム)を刷新すること」だと誤解している企業もあるでしょう。しかし、政府のDXの定義が示す通り、レガシーシステムの刷新や高度化はDXの一側面にすぎません。DXの本質はレガシーシステムの刷新といった手段を通じ、デジタルとビジネスを結びつけ、市場における競争優位性の低下を防ぐことにあります。そのため、企業はIT人材だけでなく、デジタルとビジネスの両方に精通した人材の確保が必要です。

DXソリューションとは?DXを通じて社会課題や経営課題を解決すること

DXソリューションとは、DXの実現を通じて、さまざまな社会課題や経営課題を解決することを意味します。単なる人手不足の解消や業務効率化の実現にとどまらず、新たな製品やサービスの創出や、ビジネスモデルを変革することによって課題解決を目指すのがDXソリューションです。
たとえば、金属加工業の事例では、受注増への対応のため、IoTを取り入れた抜本的な業務改革を目指しました。また、企業文化の変革に取り組み、従業員の気づきや主体的行動を促す組織文化を育成した結果、生産性の大幅な向上がみられました。(※1)

このように社会課題や経営課題の解決のため、全社的にDXに取り組むことをDXソリューションと呼びます。

(※1)令和3年度情報通信白書|総務省 P86

DXによって生じる2つの変化

企業がDXを推進することで、「業務プロセス」「ビジネスモデル」の2つが変化します。DXの推進の第一歩として、多くの企業が業務効率化や業務プロセス改革(BPR)に取り組んでいます。しかし、DXの本質は特定部署の業務効率化だけではありません。部分的な取り組みではなく、全社的にDXを推進し、新しいビジネスモデルの創出を目指しましょう。

業務プロセスが変わる

DXを推進し、データやデジタル技術を活用することで、業務プロセス改革を実現できます。単なるレガシーシステムの刷新による業務効率化だけでなく、デジタルデータを用いた業務の可視化や、課題の発見、効果検証の実施により、幅広く業務プロセスを見直すことが可能です。しかし、業務プロセス改革の実現だけでは、DXの部分的な実施にとどまります。ビジネスモデルそのものを根本的に見直し、新たな価値を創出していくのがDXのポイントです。

ビジネスモデルが変わる

DXを全社的に推進すれば、ビジネスモデルの変革や、新たなビジネスモデルの開拓につながります。
実際にJUAS(日本情報システム・ユーザー協会)と野村総合研究所の調べによると、今後のDXの方向性として、「現在のビジネスモデルを継続しつつ、新しいビジネスモデルも開拓する必要がある」「現在のビジネスモデルを抜本的に変革する必要がある(顧客チャネル/サプライチェーンの改革など)」と回答した企業は全体の87.3%であったようです。それに対し、「既存ビジネスにおいて、サービス開発や業務効率化などデジタル化を推進するが、ビジネスモデル自体はこれからもあまり変わらない」と回答した企業は8.2%にとどまります。(※1)
DXを推進すれば、新たな商品やサービスの提供や、ビジネスモデルの変革を実現できます。

DXが社会にもたらす影響は?「デジタル・ディスラプション」への対応を

AI、IoT、データ分析やクラウドなど、最先端のデジタル技術が企業レベルで普及すると、「デジタル・ディスラプション(デジタルによる破壊)」が発生します。デジタル・ディスラプションとは、デジタル技術を早い段階から取り入れ、新たなビジネスモデルを構築したディスラプター(破壊者)が、DXに乗り遅れた既存企業を市場から追い出す現象です。すでにデジタル・ディスラプションは国内外で起こっており、総務省が「令和3年度情報通信白書」で事例をまとめています。(※1)
たとえば、フリマアプリの台頭によって経営悪化に追い込まれた大手リサイクルショップの事例や、インターネット通販やデジタルコンテンツが普及し、競争力を失った大手書店の事例は、デジタル・ディスラプションの典型例です。企業は競争力の低下を防ぐため、データやデジタル技術を積極的に活用し、DXを推進する必要があります。

(※1)令和3年度情報通信白書|総務省 P81

DXリテラシーを高める必要性

DXを推進するときに忘れてはならないのが、従業員のDXリテラシー教育です。DXリテラシーとは、「DXの目的を理解し、デジタルやビジネスの知見を正しく活用する」能力を意味します。データやデジタル技術を活用するITリテラシーだけでなく、ビジネス方面でのスキルや、企業の変革をリードするためのマインドセットも重要です。
とくに従業員のマインドは、DXの成果が出ている企業とそうでない企業で違いがみられます。情報処理推進機構(IPA)の調べによると、DXの成果が出ている企業は、「リスクを取り、チャレンジ」「多様な価値観需要」といった組織文化がより深く根付いていることがわかりました。(※3)DXリテラシーを高めるため、社内研修や社外研修を充実させましょう。

(※1)令和3年度情報通信白書|総務省
(※3)デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査|IPA

関連記事:DXリテラシーの意味や必要性・向上のポイントを徹底解説

DXと「デジタル化(IT化)」の目的の違い

DXとよく混同されるのが「デジタル化(IT化)」です。デジタル化とは、データやデジタル技術を取り入れ、活用することを指します。多くの場合、デジタル化の目的は人手不足の解消や業務効率化の実現など、社内の部分的な課題解決にとどまります。
しかし、DXは前述の通り、データやデジタル技術を手段として、新製品や新サービスの開発や、ビジネスモデルの変革を目指す取り組みです。DXの目的は事業環境の変化に対応し、競争優位性の低下を防ぐ点にあります。DXとデジタル化の違いを理解し、DXの本来の目的を見失わないようにしましょう。

関連記事:DXとデジタル化の違いやそれぞれの定義を分かりやすく解説

DXと「IoT」の違いや関係

また、DXと関連する言葉として「IoT(Internet of Things)」が挙げられます。IoTは日本語で「モノのインターネット」と呼ばれ、PCやスマートフォンに留まらない身の回りのあらゆるモノをインターネットで接続し、新たな価値を生み出す技術を指します。
IoTとDXは「手段」と「目的」の関係にあります。たとえば、製造業や農業ではIoTを取り入れ、「スマート工場」や「スマート農業」を実現し、競争優位性を確保する取り組みがみられます。DXを推進するため、IoTの活用を検討しましょう。

関連記事:DXとIoTの違いは?その関係や導入する際のポイントを解説

企業がDXに取り組む2つのメリット

企業がDXに取り組むメリットは2つあります。日本は米国やEU諸国と比較し、GDPベースの労働生産性が低いことが知られています。DXを推進し、業務プロセスや企業文化を変革することで労働生産性の向上が期待できます。
また、新型コロナウイルスの感染拡大や「2025年の崖」の問題など、企業を取り巻く事業環境に大きな変化がみられます。DXを推進すれば、こうした事業環境の変化に対応し、競争力の低下を防ぐことが可能です。

データやデジタル技術を活用し、労働生産性の向上が期待できる

令和3年度の総務省の情報通信白書によれば、労働生産性はG7各国で最下位であり、これまで早急な改善が必要とされてきました。(※1)
DXを推進し、データやデジタル技術を活用すれば、労働生産性の向上につながります。実際にIPAの調べでは、DXの導入によって得られた成果としてもっとも回答が多かったのが、「業務の効率化による生産性向上(28.3%)」です。(※3)

(※1)令和3年度情報通信白書|総務省
(※3)デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査|IPA

事業環境の変化に対応し、競争力の低下を防ぐ

新型コロナウイルスの感染拡大や、「2025年の崖」のリスクなど、企業を取り巻く事業環境は急速に変化しています。「2025年の崖」とは、企業がレガシーシステムを刷新せず、DXの推進が遅れた場合、2025年より最大12兆円/年の経済損失が発生するというシナリオです。
しかし、データやデジタル技術の活用や、「リスクを取り、チャレンジ」「多様な価値観需要」といったマインドセットを取り入れることで、変化に強い企業組織を構築できます。競争力の低下を防ぐため、DXの推進は欠かせないものになりつつあります。

関連記事:DXと2025年の崖の関係とは?課題や対策についても解説

DX認定制度とは?DXへの取り組みを表彰する制度のこと

DX認定制度とは、2020年5月施行の「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」で設置された制度です。DXの推進に向けて、優れた取り組みをおこなった企業を経済産業省が認定し、認定事業者として対外的に公表します。DX認定制度の認定事業者に選ばれれば、企業価値やブランドイメージの向上が期待できます。
DX認定制度の問い合わせや認定審査事務はIPAがおこなっているため、DX認定制度に興味がある人は、IPAのホームページから申し込みをおこないましょう。

DXの最新トレンドを解説!将来の展望とは

DXはスウェーデン人のエリック・ストルターマン教授によって2004年に提唱されました。
日本では、2018年に経済産業省が「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」を取りまとめたことがきっかけで広がっていきました。(※4)
このガイドラインは、DX実現や基盤となるシステムを構築するために経営者が押さえるべきことが書き記されたものです。
昨今は経済産業省が中心となり、企業レベルでのDXの推進に向けたさまざまな取り組みをおこなっています。

2020年にはデジタルガバナンス・コードを策定し、DX推進の基準を公表しました。また、デジタルガバナンス・コードに基づくDX認定制度も設け、優良企業を「DX銘柄」として公表しています。こうした取り組みの結果、今後もDXはますます加速していくと予想されています。デジタル・ディスラプションを回避し、「2025年の崖」のリスクを解消するためにもDXの推進は必要不可欠です。

(※4)デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)を取りまとめました|経済産業省

関連記事:DX推進ガイドラインとは?担当者がおさえておくべき3つの要点をわかりやすく解説

DXの定義や導入メリットを知り、全社的なDX推進を

DXとは、データやデジタル技術を活用し、ビジネスモデルの変革によって競争優位性を確保する取り組みを意味します。近年の新型コロナウイルスの影響や、「2025年の崖」のリスクを考慮し、DXに向けて取り組む企業が増えています。
DXを実現すれば、労働生産性を向上させ、新しい製品やサービスを創出できます。DXの定義や導入メリットを知り、全社的にDXを推進しましょう。

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