2021年5月12日にデジタル改革関連法が成立し、新たにデジタル庁が創設されるなど、DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた動きが日本全体で加速しました。民間企業もDXを推進するため、最先端のITの導入や、デジタル技術を用いたビジネスモデルの変革に取り組んでいます。しかし、企業の課題となっているのが、DXを推進するための「DX人材」の不足です。経済産業省によると、2018年の時点でIT系人材の需給ギャップはマイナス22万人に達し、2030年にはおよそ45万人の人材不足が発生すると予測されています。(※1)DX人材を確保するには、DX人材に必要なスキルや資格を知り、早い段階からDX人材の育成に取り組むことが大切です。この記事では、DX人材に必要なスキルマップやマインドセット、DX人材のスキルアップの方法をわかりやすく解説します。
目次
DX人材に必要なスキルや資格とは
経済産業省によると、DXの推進にあたって確保すべき「DX人材」とは、次の2つの条件を満たす人材を指します。(※2)
- DX推進部門におけるデジタル技術やデータ活用に精通した人材
- 各事業部門において、業務内容に精通しつつ、デジタルで何ができるかを理解し、DXの取組をリードする人材、その実行を担っていく人材
つまりDXスキルとは、デジタル技術を使いこなす「デジタル知見」だけでなく、デジタル技術をビジネスに活かす「ビジネス知見」も含む概念です。三菱総合研究所によると、DX人材に必要なスキルや資格は次の3点です。(※3)
データサイエンス・エンジニアリング | ITやデータサイエンスといったデジタル技術を駆使し、サービスやアプリケーションの設計から実装までおこなうスキル |
ビジネス・サービス設計 | ビジネスモデルを構築するスキルや、ユーザーへの深い理解に基づいてUX/CXを設計するスキル |
組織・プロジェクト管理 | DX推進に向けて、リーダーシップを発揮しながら組織をマネジメントしていくスキル |
ただし、DX人材がこうしたスキル全てを獲得しなければならないわけではありません。社内のDX人材が持つ多様なスキルセットを組み合わせ、DX推進にむけてチーム全体として機能させていくことが求められます。
(※2)経済産業省:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver. 1.0
(※3)三菱総合研究所:DX成功のカギはデジタル人材の育成(第3回:DX人材に求められるスキルとマインドセット)
DX人材に必要とされる7つの役割
情報処理推進機構(IPA)は、デジタルビジネス推進企業へのアンケートに基づき、DX人材に求められる役割を7つに分けています。(※4)
プロダクトマネージャー | DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材 |
ビジネスデザイナー | DXやデジタルビジネス(マーケティング含む)の企画・立案・推進等を担う人材 |
テックリード(エンジニアリングマネージャー、アーキテクト) | DXやデジタルビジネスに関するシステムの設計から実装ができる人材 |
データサイエンティスト | 事業・業務に精通したデータ解析・分析ができる人材 |
先端技術エンジニア | 機械学習、ブロックチェーンなどの先進的なデジタル技術を担う人材 |
UI/UXデザイナー | DXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを担当する人材 |
エンジニア/プログラマ | システムの実装やインフラ構築・保守等を担う人材 |
DX人材のなかでも、とくに重要な役割が「プロジェクトマネージャー」「ビジネスデザイナー」です。IT企業、ユーザー企業いずれを対象としたアンケート調査でも、70%以上の企業が重要度が高いと回答しています。(※4)プロジェクトマネージャーには、管理職クラスの人材や社内のエース格の人材を任命し、DX推進に向けてチーム全体を引っ張っていくことが求められます。また、ビジネスデザイナーはデジタルビジネスやマーケティングの観点からチームをサポートしていく必要があるため、ビジネスへの造詣が深い人材を任命するのが一般的です。
DX人材に必要なマインドセットを解説
DX人材に求められるのはスキルセットだけではありません。DX人材には現状を変革するため、常に新しい技術を学び、吸収していくマインドセットも必要です。経済産業省のDXレポート2でも、DX人材は「常に新しい技術に敏感になり、学び続けるマインドセットを持つこと」が重要だと述べられています。(※5)また、DX人材に欠かせないのが、「リスクを取り、チャレンジする」「チームの多様な価値観を受け止め、変化を受容する」マインドです。この2点は情報処理推進機構(IPA)の調査において、DXの成果が出ている企業とそれ以外の企業の間でもっとも差が大きく現れたマインドでもあります。(※4)DX人材を育成するときは、スキルセットだけでなく、マインドセットにも目を向けましょう。とくにDX推進チームを引っ張っていくプロジェクトマネージャーやビジネスデザイナーには、チャレンジを恐れず、チームの多様な価値観を受容できるマインドが欠かせません。
(※4)情報処理推進機構:デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査
(※5)経済産業省:DXレポート2
DX人材を育成・確保する方法
DX推進の中核を担う「プロジェクトマネージャー」や「ビジネスデザイナー」は、中途採用も含め、社内で確保する企業が一般的です。しかし、技術の進歩が速い「先端技術エンジニア」や、サービスやソフトウェアのUI/UXを設計する「UI/UXデザイナー」など、専門的な技術が求められるDX人材は外注を検討する企業も少なくありません。ここでは、DX人材を育成・確保するための方法を2つ紹介します。
DX関連のスキルアップが可能な仕組みをつくる
DX人材を継続的に確保するには、社内でDX関連のスキルアップが可能な仕組みをつくり、人材育成をおこなう必要があります。全社的にDX教育を実施すれば、「常に新しい技術を学び、吸収する」「リスクを取り、チャレンジする」「チームの多様な価値観を受け止め、変化を受容する」といったマインドを社内に定着させ、組織風土の醸成も期待できます。
DX人材を外部から獲得する
「先端技術エンジニア」「UI/UXデザイナー」など、専門的な技術に関わるDX人材の場合、社内育成では大きなコストがかかる可能性があります。そのため、DX人材を社外から獲得したり、外部パートナーに業務委託をおこなったりする方法も効果的です。近年は、DX人材がメインの転職サービスが次々とリリースされるなど、DX人材市場が流動化しています。DX人材が不足している場合は、外部から人材登用をおこなうことも検討しましょう。
DX推進にむけて、スキル・資格・マインドセットを育てよう
DXを推進し、デジタル技術を用いてビジネスモデルを変革するために欠かせないのが「DX人材」です。DX人材に求められるのが、「データサイエンス・エンジニアリング」「ビジネス・サービス設計」「組織・プロジェクト管理」といったスキルです。また、DX人材には変化を恐れず、チームメンバーの多様な価値観を受容するマインドセットも欠かせません。DX人材に必要なスキルや資格、役割、マインドセットを知り、DX人材の育成に取り組みましょう。