データやデジタル技術を取り入れ、ビジネスモデルを変革する取り組みをDX(デジタルトランスフォーメーション)と呼びます。近年、ビジネスの課題を解決するため、DXに取り組む企業が増えてきました。情報処理推進機構(IPA)の調べによると、とくにDXを目指す動きが活発に見られるのが「電気・ガス・熱供給・水道業」「金融業、保険業」「学術研究、専門・技術サービス業」といった業界です。(※1)
近年はさまざまな業種・業態においてDX推進の動きが見られます。この記事では、DXを課題解決に用いる「DXソリューション」の内容や、先行企業の成功事例、DXソリューションを提供するサービスをわかりやすく紹介します。
※1:情報処理推進機構(IPA):デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査
目次
DXソリューションとは?データやデジタル技術を活用し、ビジネス課題を解決
そもそもDXとは、事業環境の変化に対応するため、データやデジタル技術を活用し、ビジネスモデルの変革に取り組むことを意味します。経済産業省の「DX推進指標」でも、DXを次のように定義しています。(※2)
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
経済産業省:「DX 推進指標」とそのガイダンス
DXソリューションは、DXによってビジネスモデルを変革したり、新しい製品やサービスを創出したりすることにより、企業のビジネス課題を解決する取り組みです。営業課題の解決のためのMA(マーケティングオートメーション)・CRM(顧客管理システム)の導入や、バックオフィスの課題解決のためのRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)の導入など、企業のIT活用は今や当たり前のものになりつつあります。「デジタル×ビジネス」の発想で、ビジネスモデルを根本的に転換し、企業のビジネス課題の解決を目指すのがDXソリューションです。
革新的なアイデアでDXを実現した2つの成功事例
DXソリューションを取り入れ、新たなビジネスモデルを生み出した結果、大きな利益を上げた企業も存在します。とくに革新的なアイデアでDXを成し遂げたのが「CtoCフリーマーケットアプリ」「タクシー配車アプリ」「民間宿泊施設紹介サービス」の3つの分野です。ここでは、それぞれの事例でなぜDXがうまくいったのか、DXがどのように課題解決につながったのかを詳しく見ていきます。
CtoCフリーマーケットアプリ
CtoCフリーマーケットアプリは、消費者と消費者(CtoC)がオンラインで手軽に商品を売買できるプラットフォームを提供するサービスです。これまで、CtoCの分野は参加者が特定の会場に集まり、商品を持ち寄るフリーマーケットなど、アナログな取引方法がメインでした。インターネットの普及にともない、新たに誕生したのがメルカリに代表されるCtoCフリーマーケットアプリです。消費者と消費者が、スマホでいつでもどこでも直接商品を売買できるようになったことで、個人間EC(CtoC-EC)と呼ばれる新たな市場が誕生しました。
経済産業省の調べによると、2020年の国内電子商取引市場規模(CtoC-EC)は1兆9,586億円に達し、前年比12.5%の高い伸び率を記録しています。(※3)とくに近年のコロナ禍にあって、非対面でやりとりできるCtoCフリーマーケットアプリは、新しい日常(ニューノーマル)において欠かせない存在になりました。
※3:経済産業省:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました
タクシー配車アプリ
タクシー業界はタクシー需要の低下により、法人タクシー事業者数、法人タクシー車両数がともに年々減少するなど苦境にあります。全国ハイヤー・タクシー連合会によると、1998年から20年間で、法人タクシー事業者数は980社、法人タクシー車両数は27,489台も減少しました。(※4)
しかし、タクシー業界の苦境にもかかわらず、年々利用者が増えているのが「タクシー配車アプリ」です。タクシー配車アプリは、GPSなどの技術を活用し、タクシーと利用者をオンラインでマッチングするサービスです。ICT総研の調べによると、2020年のタクシー配車アプリの利用者(ユニークユーザー数)は858万人にのぼります。2023年には利用者が約2倍の1,573万人にまで増加すると予測しています。(※5)デジタルとビジネスを組み合わせ、ユーザーニーズに合ったビジネスモデルを構築することで、タクシー配車アプリのように新たな市場を生み出すことが可能です。
※4:全国ハイヤー・タクシー連合会:全国の事業者数及び車両数の推移
※5:ICT総研:2021年 タクシー配車アプリ利用動向に関する調査
DXソリューション一覧を紹介!それぞれどんな特徴があるのか?
日本国内でも、さまざまなITベンダーやコンサル企業がDXソリューションを提供しています。ここでは、DXソリューションのパートナーを探す方のため、6つのDXソリューションを取り上げて特徴や違いを比較していきます。
OMOの実現や実店舗のデジタル化に取り組む楽天DXソリューション
楽天社は2021年1月に新会社「楽天DXソリューション」を設立し、ECサイトやフリマアプリを運営する自社の強みを活かして、小売店舗のDXを支援するDXソリューションの提供をスタートしました。(※6)ポイントは「OMO(オンラインとオフラインの融合)の実現」と「実店舗のデジタル化」の2点です。AIの需要予測や、「レジ無し決済」の導入により、今までにない新しい顧客体験の創出をサポートします。
「4領域15適用分野33利用」に対応した富士通のDXソリューション
富士通社のDXソリューションは、「4領域15適用分野33利用」におよぶ広大なシーンに対応しているのが強みです。たとえば、「ものづくり」「保守・保全」「働き方改革」などのテーマのなかから、自社のニーズに合わせて最適なDXソリューションを選べます。DXソリューションの各種利用シーンは、富士通が作成した「デジタル革新 利用シーンレベル全集」で確認できます。(※7)
※7:富士通:ビジネスのデジタル革新
「顧客体験のDX」「働き方のDX」の2つのテーマを実現するNECのDXソリューション
日本電気社(NEC)のDXソリューションは、「顧客体験のDX」「働き方のDX」の2つのテーマに分かれています。「顧客体験のDX」では、顔認証や虹彩認証などの生体認証技術を提供するNEC I:Delight(アイディライト)を通じ、安全で快適な本人確認をあらゆる店舗・サービスで実現します。また、「働き方のDX」では、NEC デジタルワークプレイスをプラットフォームとして提供し、オフィスワークとリモートワークが融合した新しいワークスタイルを提案します。
「5G/IoT」を軸に新しいビジネスを提案するKDDIのDXソリューション
携帯電話事業などを手掛けるKDDI社は、「5G/IoT」を軸に金融・製造・農業・小売などさまざまな分野でDXソリューションを提供しています。たとえば、5Gデバイス向けの超低遅延プラットフォーム「AWS Wavelengh」や、5Gを活用したビジネスモデルを提案する「KDDI 5G ビジネス共創アライアンス」などを通じ、5G時代をリードする企業向けのサポートを行っています。
DXで顧客体験に革命を起こす電通の「クイックDXソリューション」
電通社は、VRや3D空間を活用し、インターネット上の顧客体験に革命を起こす「クイックDXソリューション」を提供しています。新型コロナの影響により、非対面での接客対応の需要が高まりました。クイックDXソリューションは最短約2週間で導入可能です。インターネットでの顧客体験の質が高まり、既存顧客の満足度向上や新規顧客開拓につながります。
製造現場の徹底的な見える化に取り組むNECの「製造業DXソリューション」
NECは製造業のDXをサポートするため、ものづくりIoTプラットフォーム「NEC Industrial IoT」を提供しています。工場内にIoTデバイスを設置し、製造現場の徹底的な見える化を実現可能です。機器の稼働監視や、現場で働く従業員の健康・安全管理、品質や作業量(スループット)の改善など、IoT/AIの力で製造業の革新をサポートします。
自社に合ったDXソリューションを選び、ビジネス課題の解決を
自社のビジネス課題の解決のため、DXソリューションを取り入れ、ビジネスモデルの変革を目指す企業が増えています。日本国内でもさまざまなITベンダーがDXソリューションを提供しています。MAやCRMといったITツールの導入、RPAによる定型業務の自動化といった部分的な「IT化」だけでは、企業の競争力の維持・向上につながりません。競争優位性を確保するには、ビジネス課題の解決のためにDXソリューションを取り入れることが大切です。この記事で紹介したDXの成功事例を参考にして、自社に合ったDXソリューションを選びましょう。