DX推進指標とは?提示された背景や活用のポイントを解説

近年、日本のビジネス界では「DX」がトレンドワードとなっており、各企業が業務のデジタル化およびデータ・デジタル技術を活用した新たな価値の創出に力を注いでいます。

しかし、DXを積極的に推進している企業のほとんどは新規参入者や大手企業で、中小企業を中心とする多くの企業では、実証的な取り組みは行われているものの、実際のビジネス変革に結び付いていないのが実状です。

そこで政府ではDXのための評価指数として、2019年7月に「DX推進指標」を取りまとめ、発表するに至りました。

今回は、そんなDX推進指標の概要と提示された背景、具体的な構成内容、活用のポイントについてわかりやすく解説します。

DX推進指標とは?

DX推進指標とは、経済産業省が企業がDXを推進、自社の課題を自己診断を行うことができる指標のことです。DX推進指標は大きく分けて「定性指標」と「定量指標」の2つあります。前者は全部で9つのキークエスチョンと、26のサブクエスチョンの計35項目で構成されています。

各クエスチョンにひとつずつ回答していくと、自社の課題を把握でき、課題を解決するために押さえるべき事柄を診断できる仕組みになっています。

一方、「定量指標」は22項目から構成されており、自社のDXおよびITシステム構築の取組状況や、DXによる競争力強化の到達度合いを測ることができます。

DX推進指標が提示されるようになった背景

経済産業省がDX推進指標を提示した理由は、多くの日本企業でDXが思うように進んでいないためです。

データやデジタル技術の活用により、これまでにない新たなビジネスモデルを展開する新規参入者が増えている現代では、あらゆる産業において従来の枠組みやルールを大きく変える「ゲームチェンジ」が起こりつつあります。

こうした激動の時代を生き抜くためには、データやデジタル技術を活用して新たな価値を生み出すDXを推進していかなければなりません。

DX推進を実現するためには、経営陣をはじめ、DX部門や事業部門などにおいて「DXによってどんな価値を生み出せるか」「なぜDXが必要なのか」「DX実現のために、どんな経営の変革が必要なのか」といった課題を共有し、DXの方向性を決める必要があります。

しかし、DXそのものの歴史が浅い日本では、参考とする前例や実績が少なく、DX推進のための課題の洗い出しからつまずいている企業もめずらしくありません。

そこで政府では、DXを後押しするための施策として、2018年9月に発表された「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~(DXレポート)」での指摘を踏まえ、経営者や社内関係者がDXの推進に向けて自社の現状や課題を把握できるよう、DX推進指標の策定と公開に踏み切りました。

「DXが自社にどのような変革をもたらすかイメージできない」「何から取り組んでいいかわからない」といった企業は、DX推進指標を活用することで、自社が抱えている課題を洗い出すと共に、DX推進の方向性に必要な材料を得ることができます。

DX推進指標の具体的な構成内容

DX推進指標は、「DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標」と、「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標」の2つから構成されています(※1)。ここでは、それぞれの指標の構成内容をご紹介します。

※1:経済産業省:「DX推進指標」とそのガイダンス

DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標

DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標は、さらに「DX推進の枠組み(定性指標)」と「DX推進の取組状況(定量指標)」の2つに区分されています。

定性指標の項目と主なキークエスチョンは以下の通りです。

項目

主なキークエスチョンの内容

ビジョン

・データやデジタル技術を活用して変化にすばやく対応しつつ、顧客目線でどのような価値を生み出すか、そのビジョンを社内外で共有できているか
・ビジョンの実現の必要性を社内外で共有できているか 等

経営トップのコミットメント

ビジネスモデルや業務プロセス、企業文化を変革するために、経営トップのリーダーシップのもと、組織整備や人材・予算の配分、プロジェクト管理、人事評価の見直しなどの仕組みが確保されているか

仕組み

・トライアンドエラーを継続できる仕組みを構築できているか
・DX専門部の人員と役割が明確になっているか
・DX推進に必要な人材の育成・確保に向けた取組を行っているか 等

事業への落とし込み

経営者自らが率先して、顧客目線での価値創出に向けたビジネスモデルや業務プロセス、企業文化の改革に取り組んでいるか

一方、DX推進の取組状況では、研究開発のスピード感や、新規顧客の獲得割合、支出プロセスにおける効率性、会計・経理の効率性などから「DXによる競争力強化の到達度合い」を算出します。

また、デ企業全体に占めるジタルサービスの割合や利益、投資額、従業員数、DXのためのトライアル数、業務提携の数、業務プロセスのデジタル化率などから、「DXの取組状況」を算出します。

DXを実現する上での基盤となるITシステムの構築

DXを実現する上での基盤となるITシステムの構築は、さらに「ITシステムの構築の枠組み(定性指標)」と、「ITシステム構築の取組状況(定量指標)」の2つに区分されています。

ITシステムの構築の枠組みの項目と主なキークエスチョンの内容は以下の通りです。

項目 主なキークエスチョンの内容
ビジョン実現の基盤としてのITシステムの構築 ビジョン実現のために、既存システムにどのような見直しが必要か認識し、対応策を講じているか・環境変化に迅速に対応できるITシステムになっているか・IT資産の現状について、全体像を把握し、分析・評価できているか・ITシステムの刷新に向けたロードマップを策定できているか 等
ガバナンス・体制 ・IT投資において技術的負債を提言しつつ、価値の創出につながる領域に費用や人材を配分できているか・新規に投資すべきもの、削減すべきものなどを横断的に判断・決定できる体制が整っているか・ベンダーに丸投げせず、自らITシステムの設計やシステム連携基盤の企画、要求定義などを行っているか・各事業部門が主体的にDXで実現したい事業・業務企画を提示し、完成責任を負っているか 等

一方のITシステム構築の取組状況では、予算やDX人材の数、人材育成の研修予算、データの鮮度、サービス改善のリードタイムやスピード、アジャイルプロジェクトの数などから、自社の取組状況を算出します。

DX推進指標から分かることや活用ポイント

DX推進指標のキークエスチョンおよびサブクエスチョンに回答すると、各項目における自社の成熟度を知ることができます。

成熟度は以下のように、レベル0~5まで6段階に区分されています。[注1]

成熟度 意味

レベル0
(未着手)

経営者は無関心か、関心があっても具体的な取組に至っていない状態

レベル1
(一部での散発的実施)

全社戦略が明確でなく、部門単位での試験的導入や実施に留まっている状態

レベル2
(一部での戦略的実施)

全社戦略に基づき、一部の部門で推進されている状態

レベル3
(全社戦略に基づく部門横断的推進)

全社戦略に基づき、部門を横断する形で推進されている状態

レベル4
(全社戦略に基づく持続的実施)

全社戦略に基づき、DXの取組が持続的なものとして定着している状態

レベル5
(グローバル市場におけるデジタル企業)

デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことができるレベルに達している状態

最終的かつ理想的な目標はレベル5への到達ですが、日本企業の成熟度回答比率は、レベル0~1が半数を占めており、レベル2が26%、レベル3が14%、レベル4が4%、そしてレベル5に至っては1%に留まっています。[注2]

まずは成熟度が低い部分から重点的に取り組み、レベルを1段階ずつ上げていくことを目標にしましょう。

以下ではDX推進指標の活用ポイントを2つご紹介します。

[注1]経済産業省:「DX推進指標」とそのガイダンス

[注2]独立行政法人情報処理推進機構:DX推進指標自己診断結果分析レポート(2019年版)

1. DX推進を阻む課題と、解決につながるアクションの共有

DX推進指標の活用によって、自社のDX推進を阻む要素、問題となるポイントが明確になったら、まずは経営陣やDX推進に関わる従業員の間で課題や問題を共有します。

その上で、どのような方法で課題・問題を解決していくべきかを話し合い、必要な手立てを打ち出しましょう。

具体的なアクションを起こしたら、その結果も逐一共有し、DX推進指標と合わせて成果を分析・検討していくことが大切です。

2. 優先的に取り組むべき項目のリストアップ

これまで全くDX推進に着手してこなかった企業は、どの項目でも成熟度が低くなる傾向にあります。

しかし、一度にすべての成熟度を上げるのは予算的にも人材的にも無理がありますので、成熟度が低い項目が多い場合は、優先的に取り組むべき項目をリストアップするとこから始めましょう。

たとえばDX推進の枠組みでは、価値創出の方向性や経営陣の意識がしっかりしていないと仕組みや事業への落とし込みもスムーズに進まなくなりますので、ビジョンや経営トップのコミットメントの改善に優先的に取り組みます。

DX推進指標を活用すれば、自社の課題や取り組むべき項目が見えてくる

経済産業省が取りまとめたDX推進指標を活用すると、自社がDXを実現する上で課題・問題となる要素を明確にすることができます。

成熟度が不足している項目に関しては、経営陣およびDX推進に関わる人材で課題や問題を共有し、然るべき措置を講じましょう。

必要なアクションを行った後に再びDX推進指標を実施すれば、課題が解決できたかどうか確認することも可能になりますので、DX推進の過程で繰り返し活用することをおすすめします。

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