指向性とは?特性パターン別の仕組みをわかりやすく解説
Web会議システム
2023.06.01
2023.06.01
指向性とは「音の拾いやすさ・聞こえやすさ」のこと
指向性とは、音波、電波などの強さや拾いやすさが方向によって異なる性質のことです。指向性を持つ音響機器は、特定の角度や方向によって音への感受性が変わります。そのため、音響機器の向きや置き場所によって、音の拾いやすさや聞こえやすさが異なります。Web会議やオンライン商談で、自分の声が伝わりにくい、相手の声が聞こえにくい場合は、使用中のマイクやスピーカーの指向性に着目しましょう。
音の指向性が存在するのは人間の耳の構造が原因
そもそも、なぜ音に拾いやすさ、聞こえやすさがあるのでしょうか。機器の指向性について触れる前に、まずは音の集音装置の役割をする外耳(耳介)の構造を知っておく必要があります。
人間の外耳は前方に向けて広がっているため、前方からの音を拾いやすく、逆に後方からの音は拾いにくくなります。この現象をシャドウ効果と呼びます。そのため、指向性を持つスピーカーは、音の進入経路を変えることで、人間の耳への聞こえやすさをコントロールしています。マイクの場合、人間の耳に当たる集音装置への音の進入経路を工夫することで、音の拾いやすさを変化させています。
指向性が影響するのはマイクやスピーカー
前項で述べたように、指向性が大きく関わってくるのは、マイクとスピーカーの2種類です。マイクの場合、指向性によって自分の声の拾いやすさが異なります。感度が低い方向からの音は拾いづらく、また相手にも伝わりにくい反面、特定の方向の音はしっかりと拾われ、相手に伝わりやすくなります。スピーカーはマイクとは逆に、指向性によって相手の声の聞こえやすさが異なります。相手の声が聞こえづらかったり、はっきりしなかったりする場合は、スピーカーの向きや、設置する場所を変えてみることで聞こえやすくなる場合があります。
Web会議やオンライン商談が増加し、指向性がますます重要に
なぜ、音の指向性への関心が高まっているのでしょうか。その背景の一つに、新型コロナウイルスの感染予防対策として、非対面のWeb会議やオンライン商談の需要が増している点があります。
Web会議やオンライン商談では、相手とマイクやスピーカーを通じてコミュニケーションをとります。
しかし、非対面でのやりとりに不慣れな人も多く、「聞き取りやすいように大きな声を出しているのに、なぜか相手に何度も聞き返される」「相手の音声に雑音が混じっていて、声が聞き取りづらい」といったコミュニケーション面のトラブルが多発しています。
音の指向性の基本やパターンを理解することで、音をクリアに伝え、快適にオンラインでコミュニケーションをとることが可能です。
指向性の4つのパターン
音の指向性は、大きく無指向性(全指向性)、単一指向性、超指向性、双指向性に分けられます。
重要なのは、マイクやスピーカーの指向性のパターンによって、正しい利用シーンが異なる点です。
たとえば、周囲の雑音が気になる人や、マイクを正面に置いて話す人は、「単一指向性」のマイクが適しています。ここでは、指向性の4つのパターンと、それぞれに適した利用シーンを解説します。
無指向性(全指向性)
そもそも、特定の指向性を持たないマイクやスピーカーもあります。一般的に、無指向性(全指向性)と呼ばれるものです。無指向性(全指向性)のマイクは、集音した全ての音が、振動板にそのまま進入する構造をしています。そのため、マイクの向きや角度によって音の拾い方が変化せず、純粋に音の大きさによってのみ、相手への聞こえ方が変わります。無指向性(全指向性)のマイクは、主に議事録作成用のマイクやインタビュー用のマイクに多くみられます。
無指向性(全指向性)のスピーカーは、全ての方向に音がフラットに聞こえ、ステレオサウンドのような効果が感じられるのが特徴です。そのため、店舗で流すBGMのように、顧客の邪魔になったり、集中を乱したりしないような場所で採用されています。
単一指向性
無指向性(全指向性)に対し、特定の方向で音の拾いやすさ、聞こえやすさが変わる性質のことを単一指向性と呼びます。単一指向性のマイクは、主に前方からの音が拾いやすいのが特徴です。無指向性(全指向性)のマイクと違い、後方から進入してきた音は、裏側の溝を通って間接音として振動板に到達します。その際、前方から回り込むように進入して振動板に到達した直接音と相殺される仕組みになっています。
そしてスピーカーにおいては、前方からの音は後方からの音に邪魔をされることなく振動板を通じて電気出力されるため、クリアに聞こえる仕組みです。単一指向性のスピーカーは、特定の方向にのみ音を拡散する仕組みになっているため、スピーカーが向いていない方向では音がはっきりと聞こえません。
超指向性
単一指向性よりも、さらに音の拾いやすさ、聞こえやすさの範囲が狭いものを超指向性と呼びます。超指向性のマイクは、指向性の範囲がより狭くなっているため、ターゲットの周辺の音をピンポイントに拾うことができます。
代表的な超指向性マイクの例が、テレビの収録現場などで使われるガンマイク(ショットガンマイクロホン)です。超指向性のマイクには、細長い干渉管を使う干渉管型と、2つの単一指向性マイクユニットを使い、指向性を狭める二次音圧傾度型の2種類があります。
マイクと同様、超指向性のスピーカーも存在します。超指向性スピーカーでは、通常の指向性スピーカーよりもさらに音が直線的に進むため、周囲に雑音が多い場所でもはっきりと音を届かせることができます。
双指向性
双指向性とは、前後で音の拾いやすさ、聞こえやすさが大きく変わらない性質を表します。双指向性のマイクは、ラジオ番組の収録など、お互いが向き合って話すときに採用されます。在宅ワークのように、自分だけがマイクに向かって話す場合、双指向性マイクが使われることはほとんどありません。双指向性のスピーカーは、ダイポール型スピーカーとも呼ばれ、前と後ろに同時に音を出すことのできるスピーカーです。幅広い音を再現できるため、テレビ番組の収録などに使われるケースがあります。
オンライン商談で使用する機材の選び方
ここまで、無指向性(全指向性)、単一指向性、超指向性、双指向性の4つの指向性のパターンについて説明しました。それでは、Web会議やオンライン商談で使う場合、どのパターンの指向性マイクや指向性スピーカーを選べばよいのでしょうか。これから周辺機器をそろえる人や機器の買い替えを考えている人、音声に不満がある人など向けに、具体的なテレワーク環境を想定しながら解説します。
マイク | 周辺環境 |
単一指向性 | 周囲に雑音やノイズが多い マイクを置く場所がなく、正面のスペースしかない |
無指向性 | 周囲が静かで、生活音はほとんどない マイクの場所を自由に選べる |
単一指向性のマイクは、正面の音への感受性が高いという特徴があります。そのため、マイクを口元の近くに置く場合は、自分の音声をクリアに相手へ伝えることができます。さらに、正面以外の音をあまり拾わないため、周囲に雑音やノイズが多い場合も安心です。
逆に、締め切った自室や書斎などで話す場合は、雑音やノイズが発生しづらいため、無指向性のマイクが適しています。無指向性のマイクであれば、正面以外の場所に置いても音を拾ってくれるため、好きな場所にマイクを置いて相手と通話できます。
Web会議やオンライン商談におすすめの指向性スピーカー
Web会議やオンライン商談では、イヤホンやヘッドセットを利用する人が一般的かもしれません。マイク機能がついたイヤホンやヘッドセットを購入する場合は、マイクの指向性を事前にチェックしましょう。長時間イヤホンやヘッドセットを着用する場合は、健康面への悪影響を考慮し、別途スピーカーを用意するのも効果的です。どの方向からでも音が聞こえる無指向性のスピーカーであれば、不自由を感じずに利用できます。しかし、家族や同居人への配慮が必要な場合、指向性スピーカーや超指向性スピーカーの利用も検討しましょう。
音の指向性の特徴を理解し、自分に合ったマイクやスピーカーを
音響機器の指向性によって、特定の角度や方向で音への感受性が変わります。指向性には、無指向性(全指向性)、単一指向性、超指向性、双指向性の4つのパターンがあります。もし、Web会議やオンライン商談で「自分の発言がなかなか伝わらず、相手に何度も聞き返される」「相手が何をいっているのか聞こえにくい」といったトラブルが発生する場合は、まず使っているマイクやスピーカーの指向性を確認しましょう。リモートで相手と話す機会が多い近年、環境に合わせて、最適な音響機器を選ぶことが大切です。
企業のみなさまへ
あなたもDXログにサービスを掲載しませんか?
あなたもDXログに
サービスを掲載しませんか?