テレワークで要注意なリモートハラスメントとは?その実態と対策
Web会議システム
2023.08.22
2023.08.22
近年、テレワークを導入する企業が増え、テレワークは一つの働き方として定着してきたといえるでしょう。そのなかで、リモートハラスメントやテレワークハラスメントなどと呼ばれる新しいハラスメントが生じました。この記事では、リモートハラスメントとは何か、具体的にどんな行為事例か、なぜ起こるのか、どのように対応していけばよいかについて解説します。
テレワーク導入企業で起きるリモートハラスメントとは?
リモートハラスメントとは、在宅勤務などのリモートワーク・テレワーク中に発生するハラスメントのことです。
そもそもハラスメントとは、いじめや嫌がらせなど、相手が嫌がる行為のことを指します。ハラスメントにはさまざまな種類が存在し、代表的なものにパワハラやセクハラ、マタハラなどが挙げられます。
発言や行動の意図に関わらず、相手を傷つけたり、不利益になることをすれば、それはハラスメントに該当します。近年ではテレワークで発生する「リモートハラスメント」と呼ばれる新しい問題が浮上しています。リモートハラスメントは、在宅勤務などのテレワーク中に発生するハラスメントです。
テレワークには在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務などがあります。そのうち在宅勤務においては、私生活の場に業務が入り込んでくることがあります。そして、ハラスメントとみられかねない私生活などに対する不用意な言動が問題になっています。
具体的な類型は次項で説明しますが、テレワークにおいてハラスメント対策は必須です。
2019年に成立した労働施策総合推進法の改正法では、職場におけるハラスメントについて、事業主が防止措置を講じることを義務付けています。[注1]
また、従業員が事業主にハラスメントを相談したことを理由に、不利益な取扱いも禁止しています。
会社は、テレワークの際もオフィスに出勤する場合と同様に、ハラスメントをおこなってはならない旨を労働者に周知啓発するなど、ハラスメント防止対策を講じる必要があるとされています。
リモートハラスメントにあたる具体的な行為の事例
ここでは具体的なハラスメント行為の事例を紹介します。セクハラやパワハラに該当しうる事例のほか、テレワークに特有と思われる行為も問題になってきます。
1. セクハラに該当する事例
社員に「今日すっぴん?メイクしないの?」「テレワークでもその服装はひどくない?」といった、化粧や服装についての不用意な発言などはセクハラに該当します。ほかにも、必要もないのに1対1の打合せを求めるといったことも挙げられます。
2. パワハラに該当する事例
パワハラに該当する事例は以下のような内容です。上司からこれらの対応をされ続ける部下は、当然「信用されていない」と感じ、モチベーションの低下につながるでしょう。
- 日中の業務進捗について頻繁に報告を求め、少しでも報告が遅延すると怒鳴る
- 突然、Web会議を招集し、少しでも遅延すると携帯電話などに「すぐにつなげ」と急がせる
- リモート打合せの場で、ほかの人もいるなか仕事について厳しく叱責する
- 労働時間内に終わりそうもない仕事を命じながら、「テレワークでは残業は禁止だ」などといって時間外業務の申告を拒否する
3. プライベートへの過度な言及
プライベートへの過度な言及は、テレワークにおける固有の問題としてよく指摘されます。たとえば、朝礼やWeb会議などで映った背景を見て「もっと部屋を見せて」「部屋が散らかっているね。ちゃんと片付けたら」といった発言などが該当します。また、「今通った人が奥さん?(ご主人?)ちょっと紹介してよ」といった業務に関係ない発言も、場合によってプライバシーにおける「個の侵害」に該当することがあります。
4. カメラなどでの常時監視を強いる
常時Webカメラの接続を求めたり、業務のログを常時監視し、少し離席しただけで、仕事をさぼっているのかと厳しく叱責するといったことも、リモートハラスメントに該当するでしょう。
本来、Webカメラは業務の打合せなどに活用するものです。プライベートな空間を常に上司の目に晒す必要はありません。
リモートハラスメントが起きる主な2つの原因
上述したようなリモートハラスメントは、なぜ発生するのでしょうか。ここでは、リモートハラスメントが起こってしまう2つの原因を紹介します。
1. テレワークに対する理解不足
テレワークでハラスメントが起こりやすい理由として、以下のことが挙げられます。
- 私生活の場で業務をおこなっており、プライベートとの区別がつきにくい
- 宅配便の受取など、業務の間にプライベートな活動も入り込むことがあるのに理解を得られない
- 上司が職場と違う部下の姿を見て、親しみを込めたつもりでプライベートな問題に立入りがちになる
こういった事態は、上司がテレワークに対する理解が足りていないことによって起こっている可能性が高いです。業務時間であっても、業務に関係ない指示や発言はハラスメントに該当することを理解しておく必要があるでしょう。
2. テレワークの急進展でルールが確立しきれていない
テレワークは、新型コロナウイルスへの対策として、この1年で急進展してきました。そのため、ルールやマナーが十分に検討されないまま、現場で思いつきのような対応が取られてきているとことも主な原因として挙げられるでしょう。
また、企業がテレワークに慣れていないことも、過度な監視や報告を求めるといった行動につながっている可能性が高いです。しかも、オフィスの空間と異なり、周りの人も気がつかないままに問題が放置されているのです。
テリモートハラスメントを防ぐために企業がとるべき対策
リモートハラスメントについて、企業はどのような対策をとるべきでしょうか。人材の流出が起こらぬよう、リモートハラスメントへの対策は確実に取り組む必要があります。
1. ハラスメントへの共通理解をもつ
まずは、ハラスメントとは何かを理解し、社員全員に周知させる必要があります。
ハラスメントとは、相手を不愉快な気持ちにさせる、不利益を与えるといった「嫌がらせ行為」のことをいいます。しかし不快に感じるのは、人それぞれ違うため「そんなつもりはなかった」「考えすぎだ」など、ハラスメントをした側が原因を理解できないケースも多いです。職場でいえば、業務上必要のない不当な差別や、不適切な言動などで労働者の就業環境が害されるものと考えておけば良いでしょう。
要するに、業務上で必要もないのに従業員を差別したり、罵倒したり、暴力をふるったり、職場で孤立させたりするなど、労働者が働く意欲を損なわれる場合に「就業環境が害された」として、ハラスメントが成立します。職場において、このようなハラスメント行為が起きないように、事業主に対して対策が求められるのです。
2. ハラスメント防止研修をおこなう
前項で紹介したように、ハラスメントは加害者の無自覚によることも多いです。その場合の対策としては、まず会社での研修をおこなうことです。
どのような行為がリモートハラスメントに該当するのか、なぜ問題なのか、どうすべきなのかを社内研修などで徹底します。研修は、ケーススタディを用いて、参加者にハラスメント行為に該当するかしないかの判断をさせる方法が効果的でしょう。
できれば参加者がお互いの意見を出し合って、認識を共有し、その会社その職場にふさわしいルールやマナーを自分たちで考えていく機会にすることが望まれます。
3. 社内のルールやマナーを明文化する
リモートハラスメントは就業環境を阻害し、生産性の低下や、最悪の場合は従業員の精神疾患、離職などの重大な問題を引き起こしかねません。「リモートハラスメントは許さない」ということを経営者が明確に宣言し、具体的なルールやマナーを明示しましょう。テレワークをはじめる際は、相談窓口の設置といったことも考えなければなりません。ハラスメントについて厚生労働省の資料があるので、参考にすると良いでしょう。[注2]
4. 技術的な解決策も検討する
リモートハラスメントを事前に回避するために、Webカメラでプライベートな空間が映らないようにバーチャル背景などの使用を許可するといった対応を検討しましょう。ほかにも、希望者にはプライベートな声が入りにくいように指向性の強いマイクやヘッドセットを用意するなどの対策もあります。
リモートハラスメント対策は業務改革にもつながる
リモートハラスメント対策は、テレワークで発生した問題への対処だけにとどまりません。会社の仲間を同じ職業人として、また私生活を持った生活者として尊重しあう風土を醸成することにもつながります。
公私を峻別し、業務に必要なコミュニケーションを取っていくという、社会人としての当たり前の行動を徹底しましょう。さらに「離れた場所で仕事していればさぼってしまう」などというのは、現在の業務管理のあり方が不適切ということにほかなりません。業務の目標や手順を定め、報告のルールも明確にしておけば、テレワークでもオフィスワークでも同じように生産性の高い仕事ができるはずです。
テレワークであっても、ハラスメントの防止策をしっかりと講じ、従業員が安心して働ける環境作りに勤めましょう。
[注1]職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!|厚生労働省
[注2]職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)雇用・労働|厚生労働省
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