テレワークのルール作りで押さえておくべき7つのポイント
Web会議システム
2023.08.22
2023.08.22
テレワークのルール作り7つのポイント
テレワークを導入するためには、既存のルールを見直し、テレワーク向けのルール作りをしなければいけません。これから解説する7つのポイントを押さえて、テレワークに最適なルールを決めていきましょう。
1. 労働時間
テレワークとは、自宅などのオフィス以外の場所で働ける勤務スタイルのことです。企業にとっては、新型コロナウイルスの感染リスクの回避や交通費の削減などのメリットがあります。しかし、オフィス勤務のときと比べると、勤怠管理が難しいというデメリットがあります。
企業側は、従業員の労働時間や管理方法をあらかじめ決めて、明示しておかなければいけません。テレワーク中の労働時間や業務内容を確認する方法は、おもに勤怠管理、在席管理、業務管理があります。
勤怠管理とは、チャットやメール、ビデオ通話、勤怠管理ツールなどを利用して、従業員の始業時間や終業時間を把握し、管理することです。在席管理には、離席・着席がわかるツールの活用やWebカメラによる在席監視などがあります。ただし、カメラによる監視は、プライバシーや従業員への心理的負荷といった問題からあまり現実的ではないでしょう。
業務管理は、管理ツールなどを使って業務の遂行状況を把握することです。テレワーク下でも適切に業務管理をおこなうことで、進捗状況の管理や共有が可能になり、業務を進めやすくなります。労働時間の確認方法に加えて、深夜労働や休日労働、時間外労働のルールをしっかり決めておくことも大切です。
2. 労働場所
労働基準法施行規則第5条により、事業主は雇用契約時に従業員の就業場所を明らかにしなくてはなりません。[注1]テレワークを導入する際も同様に労働場所を明らかにしておく必要があります。
テレワークを導入する際、労働場所として考えられるのは、従業員の自宅で勤務する在宅勤務、移動先や出張先のホテル、カフェなどで労働するモバイルワーク、本社や支社とは別の場所に設けられたサテライトオフィスの3つがあります。
在宅勤務は、従業員が外出せずに自宅から仕事ができます。新型コロナウイルスの影響で、在宅勤務を推進する企業も増えました。オフィスへの移動がなく仕事ができるというメリットがある一方で、自宅にネット環境が必要となったり、仕事のオンオフがつきにくいというデメリットもあります。
モバイルワークは、移動先や出張先、取引先など場所にとらわれず働くことができるという自由度の高い働き方です。ただ企業側としてはその分従業員管理が難しくなるため、あらかじめルールをしっかり作っておく必要があります。
サテライトオフィスは、小規模なオフィスを本社や支社とは別の場所に設けるものです。一つの企業だけで一つのサテライトオフィスを利用する場合と、いくつか企業でワーキングスペースを共有するシェアオフィスがあります。
モバイルワークやシェアオフィスなどには、通信環境やセキュリティ面での不安もあるので、労働場所として認める場合にはそれなりの対策を講じておく必要があるでしょう。
3. 費用負担
社内でネットワークを利用するのに必要な通信費や端末の費用などは会社が負担することが前提でした。ただテレワークの場合には、発生する通信費や端末の費用を企業が持つのか従業員が持つのか決めておく必要があります。またそれ以外にも業務をおこなううえで発生する印刷費用・用紙代や水道光熱費などの負担もどのようにするのか明確にしておくことが重要です。
4. 評価基準
オフィス勤務での勤務形態では従業員の勤務態度が目に見えていましたが、テレワークではそうはいきません。改めて評価基準を明確にして制度を作り、それを従業員に周知しておく必要があります。
オフィス勤務の従業員とテレワークの従業員がいる場合は、労働形態に関わらず公平に評価ができるような仕組みを作りましょう。たとえば、テレワーク中の従業員に対して、上司とのコミュニケーションの機会を増やす、日報などで進捗状況を共有するといった対策を講じることで、評価への不安や疎外感を解消しやすくなります。テレワークでの評価について、こちらの記事でも詳しく解説をしています。
5. 健康・安全管理
労働安全衛生法第3条によると、事業主には従業員の安全と健康を守る義務があります。[注2]オフィス勤務と比べて、テレワークでは従業員の健康・安全の管理が難しくなります。
たとえば、オンオフの切り替えが難しくなりワーク・ライフバランスが乱れる、周りの社員とのコミュニケーションが減ることでモチベーションが低下する、などの問題が考えられます。社員の勤務時間や休憩時間を確認できる仕組みを作る、Web会議システムなどで社員同士が話す機会を積極的に設ける、といった対策をおこなうことが大切です。
またテレワークでも労災についての確認が必要です。オフィス外であっても、業務によって発生したと認められる疾病や怪我は労災保険の適用対象となります。
6. 給与
テレワークの導入によって、給与や待遇に変化が起きる場合もあります。固定残業代や地域手当など固定支給の給与があった場合は見直しが必要になることもあるでしょう。ただ一方的な変更はトラブルの元になるので、従業員と話し合って合意を得る必要があります。
また、給与ではないものの、テレワークになることで交通費の支給を廃止する企業は多いです。完全テレワークの場合を含め、出社時の交通費や申請方法などについても明確にしておきましょう。
7. セキュリティ
テレワークではオフィス外で働くことになるため、今まで社外への持ち出しを禁止にしていた情報も、社外に持ち出すことが考えられます。情報漏洩を防止するためにも、セキュリティ面の強化やルール作りは必須です。
個人端末の利用制限や文書印刷の制限、データの保存方法などに関するルールを明確にし、従業員一人ひとりにしっかりと周知しましょう。IDやパスワードの変更などを定期的に促すことも重要です。テレワークでのセキュリティについて、こちらの記事でも詳しく解説をしています。
テレワーク用に社内ルールを整備する必要性
今までの社内ルールではなく、テレワーク用に社内ルールを作らなければならないのにはいくつかの理由があります。その必要性を理解しておき、それを踏まえてルール作りをおこないましょう。
1. 社員を管理するため
オフィスでの勤務であれば、これまでにシステムや仕組みをすでに構築しているので社員の管理は容易にできます。ただテレワークでは勤務形態が全く変わるため、今まで通りの方法で社員を管理することは難しいでしょう。既存の社内ルールが該当しない状況も増えるため、テレワークを導入するのであれば、テレワークでも社員管理が可能なようにルールを設定し直す必要があるのです。
2. セキュリティ維持のため
従業員全員がオフィスで働く場合であっても、情報の取り扱い方法などセキュリティ面のルールは必須です。ただ自宅やカフェ、コワーキングスペースなどで働くテレワークでは、これまで以上に細分化されたルールを徹底しないとセキュリティ体制を維持することはできません。
とくにカフェやコワーキングスペースで、公共のWi-Fiなどのネット環境を利用する場合は、ハッキングなどのリスクも生まれてきます。また、今までは社外持ち出し禁止だったデータや文書を持ち出すことになると、それを紛失する可能性も高くなります。
重大な情報漏洩が発生した場合、会社が信用を失うことになりかねません。それを防ぐためにも、テレワーク用のルールを作り、今までと同じレベルでのセキュリティを維持しなければなりません。
3. 待遇格差を生まないため
テレワークは、従業員の実際の勤務態度を見ることができず、業務の遂行状況もオフィス勤務よりはわかりづらくなります。そのため今までのルールでは「オフィス勤務時より生産性を上げているのに評価されていない」と感じる従業員も出てくるかもしれません。
またテレワークの社員とオフィス勤務の社員がいる場合、出社している社員は「テレワークの方が楽ではないのか」と感じて、不満を抱くこともあります。今までの就業規則やルールのままテレワークを導入すると、こういった事態が起きてしまい、社員間での待遇格差が生まれかねません。
誰もが公正公平に働ける環境を作るためにも、テレワーク用のルール作りが必要なのです。
4. 社員のモチベーションを維持するため
オフィス勤務に基づいた人事評価制度のままでは、見えない部分で生産性を上げても企業側は評価がしづらくなります。テレワークのメリットとして生産性の向上がありますが、生産性を向上しても評価が全く変わらなければ、従業員のモチベーションは下がってしまうでしょう。それによって生産性が下がってしまうかもしれず、場合によっては人材を失うことにもなりかねません。働く環境が変わっても社員のモチベーションを今まで通り維持し、生産性をより高めるためにもテレワーク用のルールが必要になってきます。
テレワーク用の社内ルールを作る手順
テレワーク用の社内ルールを作る手順を順番に解説します。必ずしもこの手順でおこなわなければいけないとういうわけではありません。こちらの手順を参考にしながら、抜けがないように社内ルールを決めていきましょう。
1. テレワーク形態の決定
テレワークを導入するためのルールを決定するうえで、まずどのような形態でテレワークをおこなっていくのかを決める必要があります。形態は、主に在宅勤務・モバイルワーク・サテライトオフィスの3つです。形態を決めることによって、企業側が用意しなければならないテレワークに必要な環境、設備、ルールの詳細が決まってきます。
2. テレワーク対象者の選定
テレワークを導入する場合でも、出社せざるを得ない職種が出てくることがあるでしょう。その場合は、特定の社員に負担が偏らないように配慮する必要があります。
もちろん従事している業務内容によって、テレワークの対象外になることは仕方ありません。この場合、企業側は対象者と非対象者で給与や評価などの面で格差が生まれないよう努めなければなりません。
また、テレワーク対象者であっても、テレワークを希望しない従業員が出てくる可能性も十分にあります。とくにテレワークの形態が在宅になる場合は、業務に集中できないことを理由にテレワークを望まない人も多いです。その際は企業側と従業員がしっかり話し合いをおこない、必要であればサテライトオフィスを用意するなど検討をする必要があります。
それから、今後入社してくる新卒社員や中途採用の従業員がテレワーク対象者となる場合のことも検討しておきましょう。入社したばかりの従業員には、業務の進め方や社内のルールなど、わからないことがたくさんあります。テレワークのみで業務を進めるには、不安を感じることが多いでしょう。
オンラインで気軽にコミュニケーションを取れる仕組みを作る、一定の期間はテレワークとオフィス勤務を組み合わせるなど、今後採用する従業員への対応も決定しておきましょう。
3. 既存ルールの見直し
これまで述べてきたように、テレワークを導入するためには、労働時間や労働場所、評価や費用負担など新たなルールを定めなければならない場合が多いです。
完全テレワークではなく、週に1日か2日だけテレワークをするのであれば、ほとんど既存のルールのまま対応することもできるかもしれません。しかし、テレワーク勤務をおこなうのであれば、テレワークの勤務規程を新たに作成することをおすすめします。なお、既存の就業規則を改定する場合や、新しくテレワークのための就業規則を設けた場合は、労働基準監督署に届出が必要です。
4. 他社事例やガイドラインを参考にする
いざポイントを押さえながら、テレワーク向けのルールを新たに作成するとなっても、具体的にどのようなルールが必要になってくるのか不明な点もあるはずです。ルール作りで悩んでしまう場合は、他社での導入事例や日本テレワーク協会のテレワーク導入ガイドラインを参考にしてみることをおすすめします。[注3]日本テレワーク協会のホームページにはテレワーク導入に必要なさまざまな情報が公開されています。
5. ルールのひな形作成
テレワークに関する新しいルールのひな形を作成しましょう。既存のものから変更の必要があるルール、新しく設定しなければならないルールなどを盛り込んで決めていきます。先ほど紹介したテレワークのルール作りで押さえておくべきポイントを重点的に考慮しながらルールを決めていきましょう。
6. ルールブックの作成
ひな形の内容を確認し、問題がなければ、誰もがいつでも確認できるようにルールブックを作成しましょう。せっかく時間をかけてルールを作成しても、誰も見ないという状況になってしまっては意味がありません。ルールブックとして最終稿を作成し、配布もしくはオンライン上で公開するなどの手段を取りましょう。
7. 対象者への労働条件周知
ルールブックの作成が完了したら、テレワークの対象となる従業員全員にルールの周知を徹底する必要があります。既存の社内ルールから変更した点やその目的などを説明し、全てのルールに対し、対象となる従業員から同意を得ましょう。
テレワークでの社内ルール運用で注意すること
テレワーク向けの社内ルールを運用するうえで注意しておきたいことが何点かあります。社内ルールは作成だけでなく、実際に作成した後にどのように運用するかが大切です。
注意点を踏まえて、円滑なルール運用を目指しましょう。
1. 常に誰もが確認できるようにする
手順でも触れましたが、作成したテレワーク用の社内ルールは常に誰もが確認できるような状態にしておく必要があります。ルールを作成しても従業員側がそれを理解・把握しておかなければ意味がありません。テレワークを運用後に改訂をすることもあるので、アップデートされた内容がわかるように、誰もが常にアクセスできるようにしておくことが大切です。
2. 柔軟に修正できるようにする
社内で十分に検討してテレワーク用の社内ルールを作っても、実際に運用してみると不都合や改善点が出てくるはずです。ルールブックの作成後も、従業員からの要望は積極的に受け入れ、改善できる点があればルールを修正していきましょう。
新しくテレワークを導入する場合、企業側も慣れない点が多々あります。従業員の声をしっかりと聞き、常に見直しをすることが大切です。また、修正したルールがあれば、その都度従業員に周知しましょう。
3. 従業員間のコミュニケーション方法を決めておく
社内ルールの運用と合わせて決めておきたいのが従業員間のコミュニケーション方法です。今までオフィスで直接顔を合わせてできていたコミュニケーションは、テレワークを導入することで難しくなってしまいます。
そこで従業員間で遠隔でもしっかりとコミュニケーションが取れるよう、コミュニケーション方法を決めておくことが大切です。近年ではさまざまなコミュニケーションツールがリリースされているので、ニーズに合わせて最適なツールを導入しましょう。メールだけに頼るのではなく、システムがしっかりとしたツールを導入することがおすすめです。
テレワークのルールをしっかり決めて誰にとっても快適な労働環境を
テレワークの導入にあたっては、これまでの社内ルールでは対応できない問題がたくさん出てくるはずです。もちろんそのままルールを活用できるケースもありますが、まずは既存のルールから見直して改訂しなければならない点を洗い出しましょう。
新規で設定するルールは今回紹介したポイントを押さえ、漏れがないように作成していく必要があります。テレワークを新しく導入する場合は企業側も従業員も慣れない点が多く、実際にルールを運用して初めて気づくこともあるので、運用後も柔軟な対応が取れるように心がけましょう。
[注1]労働基準法施行規則|e-Gov法令検索
[注2]労働安全衛生法|厚生労働省
[注3]テレワーク導入ガイドライン|日本テレワーク協会
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