IT導入補助金の要件は?ITツール要件や賃上げ目標を徹底解説
補助金・助成金
2023.08.16
2023.08.16
業務効率化や売上の向上などを助けるITツールの導入費用を補助するIT導入補助金は、一定の条件を満たす中小企業や小規模事業者が申請できます。また、申請する類型(枠)により、賃金の引き上げやITツールにどのような機能が必要かなどの要件が異なるため確認が必要です。 本記事では、IT導入補助金の申請要件や助成金の対象事業者、賃上げ目標の詳細を解説します。
IT導入補助金における申請要件
IT導入補助金はどのようなITツールの導入時でも申請できるわけではなく、事務局に登録し認定を受けたIT導入支援事業者の提供するツールでなければいけません。また、それぞれの申請枠ごとに固定の要件もあるため、事前に確認してから申請が必要です。
通常枠の申請要件
通常枠はA類型とB類型でプロセス要件と賃上げ目標の要件が異なります。(※1)プロセス要件を満たすには、補助金によって導入するITツールが、指定された業務工程と工程数を担えるツールである必要があります。
また、B類型では賃上げ目標の達成が必須要件です。賃上げ目標の詳細は後ほど解説します。通常枠の補助対象はソフトウェア費、クラウド利用費(1年分)、導入関連費です。ITツール要件はいずれも労働生産性の向上に資するITツールで、以下のプロセス要件を満たすものに限ります。
通常枠 |
A類型 |
B類型 |
限度額 |
30万から150万円未満 |
150万から450万円未満 |
補助率 |
1/2以内 |
1/2以内 |
プロセス要件 |
1以上 |
4以上 |
賃上げ目標 |
加点 |
必須 |
必要な業務プロセス
プロセス要件では、以下の業務プロセスから1、または4を満たさなければいけません。
- 顧客対応、販売支援
- 決済、債権債務、資金回収管理
- 調達、供給、在庫、物流
- 会計、財務、経営
- 総務、人事、給与、労務、教育訓練、法務、情シス
- 業種固有プロセス
- 汎用、自動化、分析ツール(B類型のみ化)
セキュリティ対策推進枠の申請要件
セキュリティ対策推進枠では、独立行政法人情報処理推進機構の「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に記載されるサービスの利用が申請条件です。なお、2022年10月31日現在、24のサービスが登録されています。そのなかから選んで利用した場合、最大で2年分のサービス利用料の補助を申請できます。
補助額 |
5万から100万円 |
|
補助率 |
1/2以内 |
|
機能要件 |
「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に記載されるサービス |
デジタル化基盤導入枠の申請要件
会計、受発注、決済、ECのいずれかの機能を指定された数だけ備えるITツールの導入が申請要件です。また、それらのITツールの活用に必要なハードウェアの導入費用に対しても補助を申請できます。なお、デジタル化基盤導入枠では賃上げ要件はありません。
ITツールの要件
補助額 |
5万から50万円以下の部分 |
50万超350万円以下の部分 |
補助率 |
3/4以内 |
2/3以内 |
機能要件 |
会計、受発注、決済、ECソフトのうち、1機能以上 |
会計、受発注、決済、ECソフトのうち、2機能以上 |
ハードウェアの要件
対象ハードウェア |
PC、タブレット、プリンターなどの複合機器 |
レジ、券売機など |
補助金の限度額 |
上限額10万円 |
上限額20万円 |
補助率 |
1/2以内 |
1/2以内 |
申請要件は対象ハードウェア関係なく、デジタル化基盤導入枠の対象となるITツールの使用に資するものです。
IT導入補助金の対象業者
IT導入補助金の対象業者は、中小企業と小規模事業者ですが、業種業態により資本金額や従業員数など対象業者の条件が異なります。ここでは、通常の法人事業所とそのほかの法人、小規模事業者に分けて対象業者を解説します。
通常の法人(個人事業を含む)
以下の表中の業種に該当する法人や個人事業では、資本金か従業員規模のどちらかが指定された数以下でなければいけません。
業種 |
資本金(資本の額又は 出資の総額) |
従業員数(常勤) |
製造業、建設業、運輸業 |
3億円以下 |
300人以下 |
卸売業 |
1億円以下 |
100人以下 |
小売業 |
5,000万円 |
50人以下 |
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業以外) |
5,000万円 |
100人以下 |
ソフトウェア業、情報処理サービス業 |
3億円以下 |
300人以下 |
旅館業 |
5,000万円以下 |
200人以下 |
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業、工業用ベルト製造業以外) |
3億円以下 |
900人以下 |
上記以外のその他の業種 |
3億円以下 |
300人以下 |
そのほかの法人
そのほかの法人では資本金の要件はなく、従業員数が表中の数字以下であれば申請が可能です。
法人の種類 |
従業員数(常勤) |
医療法人、社会福祉法人、学校法人 |
300人以下 |
商工会、都道府県商工会連合会、商工会議所 |
100人以下 |
中小企業団体(中小企業支援法第2条第1項第4号により規定) |
主たる業種に記載の従業員規模 |
特別の法律によって設立された組合またはその連合会 |
主たる業種に記載の従業員規模 |
一般財団法人、公益財団法人、一般社団法人、公益社団法人 |
主たる業種に記載の従業員規模 |
特定非営利活動法人 |
主たる業種に記載の従業員規模 |
小規模事業者
小規模事業者も、申請要件は従業員数のみです。なお、業種分類により人数の条件は異なります。
業種分類 |
従業員数(常勤) |
商業、サービス業(宿泊業、娯楽業以外) |
5人以下 |
サービス業のうち宿泊業、娯楽業 |
20人以下 |
製造業その他 |
20人以下 |
IT導入補助金の申請要件における賃上げ目標とは?
IT導入補助金の類型のなかには、従業員の賃金の引き上げが必須条件となっている類型と、審査上の加点要素になる類型があります。ここでは、賃上げ目標とは具体的に何をすべきなのか、必須条件と加点項目の違いを解説します。
賃上げ目標の内容
賃上げ目標では、以下の要件を満たす3年事業計画を策定し、従業員に対し書面などで表明することが求められます。なお、給与水準については年率1.5%以上の増加のため、3年では4.5%以上の増加が必要です。
- 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる
- 事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする
任意適用に取り組むときの例外
なお、例外として被用者保険の適用拡大の対象事業所で、制度改革よりも先に任意適用に取り組んだ場合、給与支給総額の年率平均が1.5%以上から1.0%以上の増加に緩和されます。短時間労働者を制度改革よりも先に厚生年金に加入させるときは、交付申請時に所定の欄にチェックしましょう。
賃上げ目標が加点項目となる類型
通常枠A類型では、賃上げ目標が加点項目として設定されています。IT導入補助金は助成金と異なり、条件に該当すれば必ず支給されるものではありません。補助を受けるためには審査に通過し採択される必要があり、賃上げへの取り組みは審査時の加点要素として扱われます。賃上げが加点項目の場合、実施により審査の通過率を高めることができます。なお、未達成であっても、助成金の返還は求められません。
賃上げ目標が必須要件となる類型
通常枠B類型では、賃上げ目標の設定と達成が必須となっています。なお、必須条件の枠では、未達成の場合は助成金の一部、または全部の返還が必要なため注意しましょう。
賃上げ目標の達成の例外
賃上げ目標の達成が必須条件であっても、自然災害などの被害により未達成となった場合は返還を求められません。また、給与支給総額率での判定が適切ではないと求められた場合や、付加価値額の年率増加率が一定水準を超える場合は、返還を求められないケースもあるため確認しましょう。
IT導入補助金は申請する類型の要件をよく確認しよう
中小企業の業務効率化やIT化に役立つIT導入補助金ですが、申請には一定の要件があり、どの類型に応募するかによっても条件が異なります。とくに、賃上げ要件の達成が必須の類型では、未達成の場合、助成金の一部または全部の返還も必要になるため注意してください。新規開業にあたって開業前にIT導入補助金の申請を考える人もいるかもしれません。しかし、申請時に必要な書類が揃えられないため、申請はおこなえません。開業してから1年未満でも、申請に必要な書類が用意できる場合は申請が可能です。自社に適した助成金を活用して、業務効率化を進めましょう。
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