ものづくり補助金の事業化状況報告書の書き方やマニュアルを解説
補助金・助成金
2023.10.11
2023.10.11
ものづくり補助金では、補助金受給後も一定期間は事業化状況報告をおこなわければなりません。事業化状況報告を適切に実施しないと、不正受給とみなされるなど、補助金の返還が求められる可能性もあります。 当記事では、ものづくり補助金の事業化状況報告書の書き方のマニュアルを解説します。また、ものづくり補助金での収益納付制度や返還条件などについても紹介します。
ものづくり補助金では事業化状況報告が必要
ものづくり補助金では、補助事業を完了して補助金を受け取ったら、定期的に事業化状況報告をおこなう必要があります。 補助事業者は、前回の事業化状況報告以降の事業化や付加価値額向上、賃金引上げなどの状況について、「事業化状況報告書」「知的財産権等報告書」を作成して、事務局に報告する義務があります。
なお、初回の報告をおこなうときは、交付決定日以降の内容について報告することになります。 事業化状況報告の期間は、補助金の全額の交付を受けた日から数えて、最初の4月1日から60日以内の日を初回とし、以降5年間です。初回を含めると合計6回おこなう必要があります。事業化状況報告書は毎年4月に依頼され、提出期限はいずれもその年の5月31日です。
ものづくり補助金の採択後の流れ!報告書の書き方や圧縮記帳も解説
ものづくり補助金では応募申請により採択結果が通知されます。採択後は遂行状況報告書や実績報告書、事業化状況報告書を提出したり、中間監査や確定監査がおこなわれたりするなど、さまざまな手続きが必要になります。 当記事では、ものづくり補助金の採択後の流れをわかりやすく解説します。また、ものづくり補助金で圧縮記帳を活用する方法やメリットについても紹介します。
ものづくり補助金には収益納付制度がある
ここでは、ものづくり補助金における収益納付制度について詳しく紹介します。
収益納付とは
収益納付とは、補助事業により収益が発生した場合に、補助金交付額を上限に指定された額を国庫に返納することです。ものづくり補助金に限らず、あらゆる補助金について収益納付をおこなわければならない可能性があります。
補助金適正化法の第7条(補助金等の交付の条件)の第2項に、下記の記載があります。
各省各庁の長は、補助事業等の完了により当該補助事業者等に相当の収益が生ずると認められる場合においては、当該補助金等の交付の目的に反しない場合に限り、その交付した補助金等の全部又は一部に相当する金額を国に納付すべき旨の条件を附することができる
収益納付の対象となる基準
ものづくり補助金での収益納付の基準として、「補助事業の手引き」より下記が挙げられます。
事業化状況の報告から、本事業の成果の事業化又は知的財産権の譲渡又は実施権設定及びその他当該事業の実施結果の他への供与により収益が得られたと認められる場合には、受領した補助金の額を上限として収益納付しなければなりません
また、補助金で購入した財産を処分するときは、原則として事前に事務局の承認を受ける必要があります。財産処分により収益があった場合も、収益納付と同様で補助金交付額を限度に国庫に返納しなければなりません。
収益納付が免除される場合
ものづくり補助金では収益納付の基準を満たしていても、下記のような場合には収益納付が免除されます。
- 事業化状況等報告の該当年度の決算が赤字
- 年率平均3%以上給与支給総額を増加させた
- 最低賃金を地域別最低賃金+90円以上の水準にした
このように、十分な賃上げをおこなうことで、公益に貢献した場合は収益納付が免除されることもあります。
ものづくり補助金では返還が求められる場合もある
ものづくり補助金では、収益納付ではなくとも、下記に該当する場合は補助金の返還が求められることもあります。
- 給与支給総額の増加目標が未達の場合(事業計画終了後に一度のみ確認)
- 事業場内最低賃金の増加目標が未達の場合(毎年3月の賃金台帳で確認)
回復型賃上げ・雇用拡大枠で申請をおこなっている場合、「給与支給総額」と「事業場内最低賃金」それぞれの増加目標のうち、どちらか一方でも達成できていないことが確認された場合には、補助金の全額返還が要求されます。
ただし、これらの補助金の返還要件に該当したとしても、天災などのやむを得ない事情がある場合や、補助事業者が再生事業者である場合は、返還が免除されることもあります。
事業化状況報告には事業化状況・知的財産権等報告システムを利用
事業化状況報告をおこなうには、「事業化状況・知的財産権等報告システム」を利用します。事業化状況・知的財産権等報告システムのログイン画面へは、ものづくり補助金の公式サイトの「補助事業の手引き」から移動することが可能です。
システムにログインするには、gBizIDプライムアカウント(ID・パスワード)が必要になります。事業化状況報告ではシステムを使って、下記の内容を報告します。
- 事業化状況
- 知的財産権等
- 給与支給総額
- 事業所内最低賃金
- 炭素生産性向上計画および温室効果ガス排出削減の取組状況(グリーン枠のみ)
事業化状況報告書の書き方
ここでは、事業化状況報告書の書き方について詳しく紹介します。 なお、「事業化状況・知的財産権等報告システム」で入力すれば事業化状況報告書の提出は不要ですが、システムの不具合などで「紙」での提出が必要になることもあります。紙での書き方を理解することで、システムで入力する際の参考にもなるでしょう。
事業化状況を記載
まずは「補助事業の実施成果の事業化」「知的財産権等の譲渡又は実施権の設定」の有無を確認して、「有」もしくは「無」をそれぞれ記載します。 その後、下記の項目欄の内容を記載します。
- 補助事業に要した経費
- 補助金確定額
- 補助事業に係る本年度売上額
- 補助事業に係る本年度収益額
- 控除額
- 本年度までの補助事業に係る支出額
- 基準納付額
- 前年度までの補助事業に係る全国中央会への累積納付額
- 本年度納付額
- 備考
知的財産権の取得状況を記載
まずは知的財産権などの取得件数について「出願中」「取得済み」に区分して記載します。なお、補助事業の交付決定から報告対象年度の終了時点までの期間におけるすべての件数を記載する必要があります。
次には、取得した知的財産権などの内容について、出願中・取得済みに関係なく、1件ずつ記載します。記載する項目は、下記の通りです。
- 種類
- 出願日
- 出願番号
- 出願人
- 審査請求日
- 登録番号
- 技術内容
- 備考
給与総取得状況を記載
給与支給総額については、事業計画終了後に報告します。 まずは、下記の項目を単位に気を付けて記載します。
- 公募申請時の給与支給総額(千円):a
- 事業計画終了時点の給与支給総額(千円) :b
- 事業計画年数(年):c
年率平均の増加を確認するために、上記の数値を「〔( b - a )÷ a ×100 〕÷ c」の式に代入します。計算された比率が1.5%以上であれば問題はありません。 一方、1.5%未満の場合、補助金の返還が必要になります。この場合は「返還計算シート」を用いて、補助金の返還額を算出します。
なお、「給与支給総額増加率」の代わりに「一人当たり賃金の年率平均増加率」を用いる場合は、特別な事情について具体的かつ明確に内容を記載しなければなりません。
事業場内最低賃金の報告
事業場内最低賃金については、毎年3月末時点で報告します。 まずは、最低賃金の増加について確認するために、下記の内容を記載します。
- 毎3月末時点での地域別最低賃金(円):ア
- 事業場内最低賃金計画(円):イ
- 本報告時における事業場内最低賃金(円):ウ
「ア」では、いつの年の3月末時点かについても記載する必要があります。「イ」では基本要件を満たしているかを把握するために、「ア」より「+30円以上」かどうかが確認されます。
「イ」と「ウ」を比較して、「ウ」の値が「イ」の値と同等かそれ以上であれば、問題はありません。一方、「ウ」の値が「イ」の値よりも小さい場合は、「返還計算シート」を用いて補助金の返還額を計算し、返還しなければなりません。
事業化状況等の実態把握調査票
事業化状況等の実態把握調査票では、現在の取組状況や継続試作開発の状況、事業化に関する状況を記載します。 現在の取組状況については、「補助金交付申請時」「補助事業実施年度末」「現在」の3つに区分して、資本金や従業員数、総売上高、営業利益、経常利益など、経営・財務状況を記載します。
また、現在までの事業化に関する状況について、「有」または「無」を記載し、「有」の場合は5段階のうちどの段階に当てはまるのかチェックを入れます。 継続試作開発の状況については、成果や事業化の見通しについて自由記述欄に記載します。
また、補助事業に関係する試作開発等の所要経費の推移を確認するために「総事業費」「自己負担額」「補助金額」それぞれを補助事業年度とそれからの5年間について記載します。 業化に関する状況については、下記の項目に該当するかどうか「有」もしくは「無」で記載します。
- 補助事業の成果に基づく製品の販売又は譲渡
- 補助事業の成果に基づき取得した知的財産権等(特許権、実用新案権、商標権若しくは意匠権)の譲渡又は実施権の設定
「有」と回答した項目については、注釈にしたがって下記の表の項目を記載する必要があります。
- 製品の名称
- 販売金額(売上額)
- 1個当たり原価
- 販売数量(売上数量)
- 販売原価
- 補助事業に係る本年度収益額
原価算出表を記入
原価算出表では、下記のような経費ごとに「当該事業の原価」「原価総額」「当該事業の原価算出根拠」を記載し、最終的に「総原価」「総製造数量」「一個当たり原価」を算出します。
- 原材料費
- 外注加工費
- 労務費
- 工場経費
ものづくり補助金受給後5年間は事業化状況報告を忘れずにおこなおう
ものづくり補助金では、補助金の交付を受けてから約5年間にわたって事業化状況報告をおこなう必要があります。事業化状況報告は「事業化状況・知的財産権等報告システム」を利用して実施します。
事業化状況報告において「給与支給総額」「事業場内最低賃金」などの条件を満たしていない場合や、収益納付の基準を満たした場合は、補助金の返還が求められることもあります。事業化状況報告書の書き方・マニュアルを正しく把握して、スムーズに手続きをおこないましょう。
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