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給与前払いサービスは労働基準法的に問題なし?

給与前払いサービス

2023.06.15

2023.06.15

給与前払いサービスについては、従業員の定着に役立つ、導入コストが低く費用で会社の事務負担もほとんどない、といった話をよく聞きます。しかし、労働基準法との関係などで給与前払いサービスは本当に問題がないのでしょうか。 本記事では労働基準法において、給与前払いサービスを利用しても問題がないことや注意点を説明します。また、自社に適したサービスを選ぶためのポイントと、おすすめサービスも紹介します。

本記事は、社会保険労務士の玉上氏に執筆いただきました。専門家の目線から、給与前払いサービスについて解説しています。

玉上 信明(たまがみ のぶあき)

社会保険労務士。三井住友信託銀行にて年金信託や法務、コンプライアンスなどを担当。定年退職後、社会保険労務士として開業。執筆やセミナーを中心に活動中。人事労務問題を専門とし、企業法務全般や時事問題にも取り組んでいる。【保有資格】社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー

労働基準法において給与前払いの定めがある

給与は労働基準法では「賃金」と呼ばれています。賃金の支払いについては、次の5つの原則があります。

  1. 通貨払い原則
  2. 直接払い原則
  3. 全額払い原則
  4. 毎月1回以上一定期日払い原則
  5. 非常時払い

「毎月1回以上一定期日払い原則」により、給与は定められた月給日にまとめて支払われますが、「非常時払い」も原則として定められているのです。 労働基準法で定められている給与前払いについて確認していきましょう。

賃金支払い5原則の一つが「非常時払い」という給与の前払い

一般的に、会社では就業規則などで給料日が明確に定められています。たとえば5月分の給与は、給料日である6月25日に支払う、といったことです。

しかし、労働基準法では「非常時払い」についても明記されています。従業員本人や家族などの出産、疾病、災害、やむを得ない場合の帰郷、ご家族の結婚、死亡などの費用に充てるために必要な場合、給料日前でも、従業員はその日までに働いた分の給与を前払いしてもらうことができます。

なお、会社はこのような給与前払いを拒むことはできません。これが労働基準法で定める給与前払いの典型的なパターンです。 非常時の給与前払いは、従業員に対して便宜を図るものではなく、労働基準法第25条で定められた会社の義務です。 違反した場合には30万円以下の罰金が科されます(労働基準法第120条)。(※1)

※1:労働基準法|e-Gov

非常時払いの事由に該当しなくても給与の前払いは可能

では、非常時払いに類するような事情で、従業員から「前払いしてほしい」と依頼された場合、会社はどう考えれば良いのでしょうか。 会社が「それなら給与前払いに応じてあげよう」と考えるなら、前払いはできます。 たとえ就業規則で「こんな場合に給与前払いします」といった規定がなくても、従業員と会社が個別に合意すれば、就業規則にかかわらず従業員の有利に扱うことは何ら問題ありません。

とはいえ、取り扱いは平等にすべきですから、本来は就業規則などで取り扱いを明確にすべきでしょう。

給与前払いは認められるが給与の前借りには規制がある

注意すべきは、以上は給与の「前払い」についてであり、「前借り」ではないということです。 「すでに働いている分の給与を給料日よりも前に払う」というのが給与の前払いです。従業員側ではすでに労働を提供しています。会社がその分の給与を給料日よりも前に払う、ということです。

これに対して、まだ働いていない分の給与を前借りするのは、従業員が会社から借金することです。 前借りについては、労働基準法第17条に明記されています。会社が従業員に給与の前借りを認めても、その分を給与で相殺することはできないのです。(※2)

戦前には、前借金をもらって労働し、その給金で前借金を返済する、年季奉公などの仕組みがありました。このような不当な人身拘束を防ぐために設けられた制度です。 この前借りという借金について、給与との相殺で回収することは認められていません。会社は給与全額を従業員に払わなければならないのです。

※2:労働基準法|e-Gov

そもそも給与前払いサービスの仕組みとは

給与前払いは、労働基準法で認められており、とりわけ「非常時払い」は労働基準法上の会社の義務です。 しかし、実際に会社が取り組むには事務的な煩雑さがつきまといます。当該従業員の勤怠データに基づいて労働した分の給与を計算し、税金や社会保険料などの控除額も考えて前払いできる額を計算する必要があるためです。

このような会社の事務の煩雑さを肩代わりし、従業員のニーズに応じて給与前払いをするのが給与前払いサービスです。給与前払いサービスは、主に預託金型と立替型の2つの形態に分けられます。

企業があらかじめ前払いサービス事業者に預けておく預託金型

導入企業は、あらかじめ準備金を指定された銀行口座などに預けておきます。 前払いサービス事業者は、その準備金から従業員の前払い申請に応じて給与前払いをおこないます。

後日導入企業から前払いサービス事業者に支払う立替型

前払いサービス事業者は、従業員の前払い申請に応じて給与前払いをおこないます。 導入企業に代わって給与前払い金を立て替えるものです。後日、導入企業から前払いサービス事業者に、立て替え分の給与前払金相当額を支払って精算することになります。

給与前払いで労働基準法などの法令上問題になりうるケース

給与前払いは、労働基準法において認められている制度ではありますが、場合によっては法令上問題となる可能性があります。 とくに、前借りに該当する場合や非常時払いであるのに手数料が発生する場合、必要以上に前払いを利用しすぎている場合、給与ファクタリングとみなされる場合などには注意が必要です。

前払いでなく「前借り」の場合

労働基準法上で問題がないのは、「給与前払い」すなわち、従業員がすでにおこなった労働に見合う給与を給料日より前に払う、というパターンだけです。まだ働いていない将来分の給与を従業員が受け取るのは「前借り」です。 仮に前借り分を給料日の給与から控除して従業員に払うとすれば、労働基準法第17条(前借金相殺の禁止)に違反します。(※3)

※3:労働基準法|e-Gov

従業員が手数料を負担する場合

給与前払いに当たって従業員が手数料を負担する場合、これが労働基準法上の非常時払いに該当する事態であれば、問題になり得ます。 非常時払い、すなわち労働者やご家族などの出産、疾病、災害、やむを得ない場合の帰郷、ご家族の結婚、死亡などの費用に充てるための給料前払いは会社の義務です。

賃金全額払いの原則から考えれば、非常時払いであるのにもかかわらず従業員に手数料を負担させるのは、労働基準法違反になりかねません。仮に、システム上従業員が手数料を一旦負担せざるを得ないとしても、その分は会社が給与を払うときに補填する、といったことを検討すべきと思われます。

また、そもそも、給与前払いから給料日まではごく短期間のはずです。一見少額な手数料と思えても、年率に換算すれば相当の高利になることもあり得るでしょう。そのため、利息制限法や出資法の問題を生じかねません。 利息制限法とは、一般の貸付金について上限金利の規制を設けたものです。この上限金利を超過する部分は無効になります。(※4)

さらに、貸金業法の認可を受けた貸金業者であっても、出資法の上限金利以上の利息を取ると刑事罰が科されます。(※5) 利息制限法と出資法の間の金利が、いわゆる「グレーゾーン」金利と呼ばれていたものです。現在では下の図の通り、貸金業者であっても利息制限法を超える金利は無効となり、行政処分の対象とされています。

※4:利息制限法第1条|e-Gov ※5:貸金業法のキホン|金融庁
上限金利の引き下げ

引用:出資法と利息制限法|金融庁

従業員の生活の安定を脅かす場合

給与前払いサービスは便利なものですが、従業員が頻繁に使うとかえって生活の困窮をもたらす場合もあります。 以下の金融庁の注意喚起も踏まえて、会社として従業員の状況に十分配慮してサービス利用のルールを定めておくべきと思われます。

本サービス(給与前払いサービス)を利用する従業員の中には、すでに相応の債務を抱えている者がいる場合もあり得る。 そうした場合、そのような者が手数料を負担すると、本来の給料日に受け取る賃金よりも低い金額しか受け取れなくなるため、賃金の先取りによって、流動性を確保することによる経済的生活の安定を図ろうとするも、経済的生活がかえって悪化する可能性がある。したがって、導入企業及び当該事業者は、本サービスの開始にあたっては、多重債務問題につながらないよう、従業員の利益の保護の観点から、本サービスの利用による従業員への影響に十分に配慮いただきたい。

引用:確認の求めに対する回答の内容の公表(平成30年12月20日)|金融庁

給与ファクタリングに該当する場合

給与債権を買い取る「給与ファクタリング」というサービスは貸金業に該当します。

給与債権を買い取るといっても、前述の賃金直接払いの原則により、会社が業者に対して給与相当額を払うことはできません。業者が給与債権譲渡をした従業員に対して、厳しい取立てをして資金を回収するのです。実質的には貸金業であり、貸金業者としての登録や金利の規制に従わなければなりません。 このような規制を無視して高額な手数料を取ることは、高利貸しやヤミ金融に該当します。金融庁からも厳しい注意喚起がおこなわれています。(※6)

なお、この問題がはっきりとしたのは後述のPayme(ペイミー)が金融庁に照会したことがきっかけです。本来の給与前払いサービスが給与ファクタリングと異なることは、金融庁から認められています。

※6:給与の買取りをうたった違法なヤミ金融にご注意ください!|金融庁

給与前払いサービスを選ぶときのポイント

給与前払いサービスの選び方には、コストやセキュリティ面、サービスの仕組み、使い勝手の良さなどさまざまな視点があります。 導入企業の立場では、次に紹介する視点で、法令上やセキュリティ上の問題がないか、無計画な前払いで従業員の生活が困窮することがないか、などをしっかり見極めておきましょう。

1. 料金体系はリーズナブルか

料金体系は、前払いサービスごとに異なります。たとえば、導入費用が安いもしくは無料などとうたいながら運営費用が高ければ、結局負担は重くなってしまいます。しっかり料金体系を理解できるまで説明を求めるべきです。 とりわけ、従業員の手数料負担については、年率換算して不当に高くないかを確認する必要があります。

2. セキュリティ上の問題がないか

給与前払いサービスを利用する際には、サービスに対して、自社の勤怠管理システムのデータを提供する必要があります。給与前払いサービスのセキュリティ体制やサービス導入企業などを確認し、より安心できるサービスを選びましょう。

3. 仕組みが明確になっているか

資金の流れが明確に示されているかどうかも大切です。預託型や立替型などの流れがパンフレット資料で明確に示されているか、勤怠管理システムとの連動について明確な説明があるかなどを確認しましょう。

4. 会社や従業員にとっての使い勝手はどうか

会社としては勤怠管理システムと連携しやすく、前払い時や給料日の精算などに不要な手間がかからないことは必須です。従業員にとっては、利用限度額がすぐに見極められたうえで、無理ない範囲での利用が簡単にできるかが重要です。 また、給与前払いを使いすぎることのないよう、利用限度額の設定などのルールも検討すべきでしょう。

5. いざというときにサービス終了や撤退ができるか

給与前払いサービスの内容に問題があったり、情報セキュリティ上の問題などが発生した場合などに、サービスを終了して安全に撤退できるかどうかも説明を受けて見極めておくべきでしょう。

自社に適した給与の前払いサービスを見極めましょう

給与の前払いのなかでも、非常時払いは労働基準法によって認められている制度であり、従業員から求めがあった場合には従業員に負担のないかたちで応じる必要があります。 給与の前払い制度の導入を検討している場合は、手続きを簡略化できる給与前払いサービスの利用がおすすめです。仕組みやコスト、セキュリティなどはサービスによって異なるので、比較検討のうえ、自社にあったサービスを選びましょう。

以下の関連記事では、今回紹介したもの以外にさまざまな給与前払いサービスを紹介しています。ぜひチェックしてみてください。

 

給与前払いサービスを導入するメリットとは?選ぶ際の注意点と機能を徹底紹介!

 

給与前払いサービス 2022.12.12

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