社会保険の加入手続き方法は?対象者や必要書類を徹底解説
給与計算ソフト
2023.06.14
2023.06.14
健康保険、厚生年金保険、介護保険などの社会保険は、加入条件に該当する従業員がいる場合、必ず加入手続きをしなくてはいけません。正社員だけでなくパートやアルバイト従業員も条件を満たす場合、加入義務があるため注意しましょう。手続き方法と必要書類を解説します。
1. 社会保険の種類
社会保険には広義と狭義の区分があり、会社員が加入するものでは、以下の5種類を「広義の社会保険」と呼んでいます。
- 健康保険
病気や怪我に備え、従業員とその家族が加入する公的医療保証制度です。 - 厚生年金保険
会社員が加入する公的年金制度で、加齢だけでなく被保険者の障害や死亡に備える役割もあります。 - 介護保険
介護が必要になったときにさまざまなサービスを受けられます。介護を社会全体で支える目的により設立した保険制度です。 - 労災保険
業務上または、通勤中の負傷や障害・死亡などに対し、被保険者本人や遺族に対し支給される保険制度です。 - 雇用保険
失業時の給付や教育訓練などにより、労働者の雇用と生活の安定を守る保険制度です。
「狭義の社会保険」では、上記のうち、健康保険、厚生年金保険、介護保険のみを指します。また、労災保険と雇用保険は「労働保険」と呼ばれ区別されます。
本記事では、狭義の社会保険を前提に、加入手続きや対象者を解説します。
2. 社会保険への加入手続きが必要となる従業員
社会保険は適用範囲の拡大により、条件を満たした短時間労働者も加入が必要です。それぞれ、加入条件を解説します。
2-1. 健康保険と厚生年金保険の加入条件
健康保険と厚生年金保険は、以下の条件のいずれかに該当する従業員で加入が必要です。
- 正社員、法人の代表者、役員
- フルタイムで働く従業員
- 週所定労働時間と月所定労働日数がフルタイムの4分の3以上の従業員
フルタイムや同等の条件で働く従業員は、正社員でなくても問題ありません。
なお、厚生年金は国民年金と異なり、加入に年齢の条件がないため、20歳未満の従業員であっても条件に該当すれば加入手続きが必要です。
また、健康保険は75歳の、厚生年金保険は70歳の、それぞれ誕生日の前日までが加入上限です。ただし、厚生年金は条件により任意加入が可能なため、70歳以上の従業員がいるときは事前に確認しましょう。
2-2. 短時間労働者の健康保険と厚生年金保険の加入条件
健康保険と厚生年金保険は、正社員やフルタイム勤務の従業員でなくとも、以下のすべての条件に当てはまる従業員は加入が必要です。(従業員数101人以上の事業所の場合)
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2カ月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
なお、法改正により上記が適用される事業所の規模は、2024年10月からは51人以上に変更されるため注意しましょう。
2-3. 介護保険の加入条件
介護保険は健康保険に加入する従業員が40歳になったときに、強制的に加入します。健康保険料とあわせて納付し、加入手続きは協会けんぽなどの加入する保険者で行われるため、会社が別途手続きをする必要はありません。
なお、以下のように年齢で被保険者の適用が異なり、保険料の納付方法も変わるため、該当する従業員には事前に案内しましょう。
- 第1号被保険者:
40歳から65歳未満の者です。保険料は給与より天引きされます。 - 第2号被保険者:
65歳以上の者です。保険料は原則、年金から天引きされます。
3. 社会保険の加入手続き方法
社会保険の加入条件に当てはまる従業員を雇用したときは、発生から5日以内に必要書類を揃え、管轄の年金事務所(または事務センター)にて手続きを行います。
申請方法は窓口への持参や郵送、または電子媒体による申請、電子申請も可能です。
なお、従業員本人の手続きだけでなく、配偶者など扶養親族がいる場合はあわせて会社で手続きが必要なため注意しましょう。必要書類は従業員の状態により異なるため、次項で詳しく解説します。
4. 社会保険の加入手続きに必要な書類
ここでは、社会保険の加入時に必要な書類を解説します。
4-1. 従業員を雇用したとき
従業員を雇用したときは以下の書類により手続きが必要です。
- 被保険者資格取得届
- 従業員の基礎年金番号通知書、またはマイナンバーカード
なお、基礎年金番号通知書などを添付する必要はなく、被保険者資格取得届に番号を記載すれば問題ありません。
従業員が初めて公的年金制度に加入したときは基礎年金番号通知書が発行され、従業員本人宛に郵送されるため案内しましょう。また、事業所宛に健康保険証が届いたら従業員本人に交付します。
4-2. 雇用した従業員の家族を被扶養者にするとき
新たに雇用した従業員の家族に被扶養者がいる場合、事業所が協会けんぽに加入しているか否かで、必要書類が異なります。先に、協会けんぽに加入する事業所で必要な書類を解説します。
① 協会けんぽの手続きで必要な書類
協会けんぽに加入する事業所では以下の書類が必要です。
- 健康保険被扶養者(異動)届 国民年金第3号被保険者関係届
- 住民票の写し(被保険者が世帯主で、被扶養者と同一世帯であるもの)
- 被扶養者の収入が確認できる書類
被扶養者の認定には世帯条件(同居の有無)と収入条件があるため、それらを確認できる書類を準備します。
なお、配偶者や子など被保険者と同居が必要のない親族と、姪甥などの同居が必須の者では、必要書類が異なります。詳しくは日本年金機構のホームページを確認しましょう。
② 協会けんぽ以外の必要書類
事業所が協会けんぽ以外の保険組合に加入しているときは、国民年金第3号関係者届のみ年金事務所に提出すれば問題ありません。
なお、従業員の家族を健康保険の被扶養者にする手続き方法は、別途、加入する保険組合へ確認が必要です。
4-3. 従業員が2カ所以上に勤めているとき
雇用した従業員、またはすでに雇用している従業員が2カ所以上の事業所で社会保険の加入条件を満たすときは、以下の届け出を提出し、どちらの事業所で社会保険に加入するか選択しなければいけません。
- 健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届
なお、上記は「被保険者資格取得届」を提出して、その事業所が加入する社会保険の被保険者となる場合に必要です。
手続きは事実発生から10日以内に、従業員自身で行う必要があるため案内しましょう。
4-4. 定年再雇用の場合
60歳以上の従業員が定年退職後、1日もまもなく再雇用する場合は以下の書類が必要です。
- 被保険者資格取得届
- 「退職日」及び「再雇用された日」に関する事業主の証明書
事業主の証明書がないときは、退職日の確認できる就業規則と退職辞令の写し、継続再雇用とわかる雇用契約書の写しの双方を用意しなければいけません。
なお、上記手続き以外に資格喪失届の手続きも必要なため、注意しましょう。
4-5. 70歳以上の従業員を雇用するとき
過去に厚生年金保険の被保険者期間のある、70歳以上の従業員を雇用したときは、被保険者資格取得届が必要です。なお、添付書類はとくにありません。
5. 従業員が社会保険の加入条件を満たしたら速やかに手続きしよう
社会保険は公的保険制度のため、従業員が加入条件に該当すれば強制的に加入手続きをしなければいけません。とくに、短時間労働者の加入条件は、法改正により緩和が進んでいるため加入漏れのないように注意が必要です。
人事・労務担当者は従業員の労働時間や月額賃金などを把握し、手続き漏れのないように進めましょう。
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