給与計算のやり方は?初心者でも簡単な給与計算方法・ルールを解説!
給与計算ソフト
2023.06.20
2023.06.20
給与計算とは、初心者でも基本的な流れや注意点を理解することでミスなくおこなうことが可能です。とはいえ人為的ミスを防ぐには、無料ソフトやエクセル、クラウドシステム等のツールを使用すると良いでしょう。本記事では、給与計算の仕方、初心者が注意すべき点、効率的なツールについて解説します。
1. 給与計算とは
給与計算は、従業員の勤怠情報を集計して給与を計算し、従業員や関係機関などに支払いをおこなうまでの一連の業務のことです。
基本給が毎月固定の場合でも、残業代は月ごとに異なりますし、欠勤時のマイナス分の計算もおこなわなければなりません。また社会保険料や税金など国に納めるお金も計算して差し引き、手取り額を計算して振り込みます。
1-1. 給与計算はミスが許されない業務
どの業務でもミスがないように細心の注意を払うべきですが、給与計算はとくにミスが許されない業務です。単純な業務に思われがちですが、毎月従業員ごとに計算をおこなわなければなりません。事業主と従業員は労働契約を結んでいますが、給与は従業員が提供する労働の対価です。正しい金額の給与を支給しなければ、契約不履行になってしまいます。
また、従業員にとって給与は生活していくために欠かせないものです。そのため、支給額が間違っていたり、支払いが遅れたりすると、会社は信用を失ってしまいます。またミスの訂正には時間も手間もかかりますから、他の業務へ支障が出てしまうでしょう。
給与計算は従業員に支給する給与を計算するだけでなく、従業員に代わって国に社会保険料や税金を払うことでもあります。社会保険料は間違えていると通知があるため、早い時点でミスに気付きやすいのですが、税金が不足していると最悪の場合追徴課税を課されて、企業のコンプライアンスが問題となってしまいます。
1-2. 初心者が知っておくべき給与計算の基本ルール
給与計算をおこなう際には、以下の3つの前提知識をあらかじめ理解しておくことが重要です。
- 給与は基本給や割増賃金を求めたあと、控除が発生する
- 給与の計算ツール・管理方法は企業によって異なる
- 給与計算の初心者である場合は、間違いやすいポイントを必ず確認する
従業員に支給する給与額や、徴収税額等にミスが生じることのないよう、事前に基本的なルールを確認しましょう。
1-3. 給与計算で準備・用意しておくもの
給与計算をするうえで必要となる準備は、下記のとおりです。
- 就業規則の給与規定を作成する(10人以上の事業場では必須)
- 5つの社会保険に加入する(健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険)
- 従業員情報を管理・更新する(役職、基本給、諸手当、通勤手当等の変更を反映)
- 従業員の勤怠データを記録・管理する(客観的な打刻方法で記録する)
2. 給与計算の基本的な流れ・計算方法
では給与計算をおこなう際の基本的な流れについて解説します。抜けがないようにしっかりチェックしておきましょう。
2-1. 勤務時間の集計
給与計算をおこなうためには、勤怠システムやタイムカードからデータを収集し、勤務時間の集計をおこないます。残業時間も確認しますが、所定労働時間と残業時間を含めて1日の勤務時間が8時間以内・週の労働時間が40時間以内の場合は残業分は法定時間内残業です。
法定時間内残業の場合は、割増賃金が発生しません。1日8時間・週の労働時間が40時間を超えて勤務した場合の残業は、法定時間外残業となり、残業代が割増になります。このように、法定時間内残業と法定時間外残業とでは、残業代の計算方法が異なるため、注意が必要です。
また、休日出勤に関しても注意が必要です。就業規則で法定休日となっている日に出勤した場合、働いた時間は全て35%の割増賃金になります。企業が定めた所定休日に休日出勤した場合は、割増がつきません。ただ所定休日に出勤して法定労働時間を超えた場合は、超えた分に対して時間外労働の割増がつきます。
法定外残業、深夜労働、休日労働にあたる部分は割増計算が必要になるため、分けて集計しておきましょう。
2-2. 割増賃金の計算
労働時間を集計したら、割増賃金を計算します。割増賃金は「割増賃金算定基礎の対象となる月の賃金合計額 ÷ 1ヵ月の平均所定労働時間」で計算した1時間あたりの賃金に、就業規定で定められた割増賃金の割増率を掛けて計算します。
割増賃金は、法定外残業、法定休日の労働、深夜労働、法定外残業+深夜労働、法定休日の労働+深夜労働で、それぞれ最低の割増率が定められています。最低限の割増率は以下のとおりです。
- 法定外残業:25%以上
- 法定休日の労働:35%以上
- 深夜労働:25%以上
- 法定外残業+深夜労働:50%以上
- 法定休日の労働+深夜労働:60%以上
集計した労働時間からそれぞれ該当するものに割増率を掛け、割増賃金を計算します。
2-3. その他の手当の計算
基本給・割増賃金以外に、従業員には通勤手当・家族手当・皆勤手当・在宅勤務手当・資格手当など、さまざまな手当が支給されることがあります。
手当のうち、一定額までの通勤手当や転勤・出張における手当などは非課税になりますので、どの手当が課税対象・非課税対象なのかをきちんと確認しておきましょう。
2-4. 総支給額の計算
基本給と時間外手当、その他の手当を計算したら、全てを合算し総支給額を算出しましょう。
2-5. 社会保険料・税金・控除額などを算出
総支給額から社会保険料・税金・控除額などを差し引く必要があります。社会保険料は健康保険・厚生年金・雇用保険、税金は住民税・所得税です。40歳以上65歳未満の従業員は、社会保険料に介護保険料も含まれます。
社会保険料は日本年金機構が計算して「社会保険料の納入告知書」を送ってくれますので、これをもとに差し引きます。住民税も各自治体が計算して通知してくれるので、そのまま差し引きましょう。所得税は毎月の給与から税額を計算し、年度末に年末調整をおこないます。これ以外に社宅利用費や親睦会費など、就業規則で示されている控除すべきものがあれば、その額も差し引きましょう。
2-6. 支給額の決定
総支給額から社会保険料・税金・控除額の全てを差し引いた金額が、支給額になります。
2-7. 台帳作成などの事務処理
全従業員の手取り額は賃金台帳に記載します。また従業員ごとに給与明細を作成する作業も必要です。定期監督や申告監督がおこなわれる際、賃金台帳の提出を求められる場合がありますので必ず賃金台帳は作成しましょう。
2-8. 従業員への給与支給と社会保険料・税金の納付
就業規則で定められた給与支払日に支払えるように、金融機関などで手続きをおこないます。税金は給与を支払った次の月の10日までに税務署への納付が必要です。社会保険料は、納入通知書に従って支払いをおこないます。
3. アルバイト・パートの給与計算方法とは
アルバイトやパートの給与計算方法は、月給制の正社員とは異なり一般的には時給制であることが多いでしょう。そのため給与の計算方法としては、勤務時間と時給を掛け算することで、簡単に総支給額が算出できます。
ただし月の勤務時間を合計するだけでなく、出勤回数ごとに時間外労働が生じていないか確認をする必要があります。
例えば、時間外労働(1日8時間・週40時間超)や、深夜労働(22時~5時までの間)が発生していた場合は、時給の25%の割増賃金を追加で支給する必要があります。また休日労働(法定休日での労働)が生じた場合は、35%の割増賃金を支給することが求められます。
4. 給与計算の方法・ツールの種類とは
給与計算をおこなうにあたって、使用するツールは各企業によってさまざまです。ここからは、一般的によく用いられている給与の計算ツールに関して紹介します。
4-1. 無料ソフトを活用する
社員数が10人以下などの企業においては、手計算によるミスを防ぐために無料ソフトを活用することも手段の一つでしょう。
ただし従業員が増えた場合、勤怠情報をソフトに入力する工数に時間がとられるほか、人為的ミスが発生しやすくなるため注意が必要です。
4-2. エクセルテンプレートで自動計算する
インターネットで配布されている、エクセルの無料テンプレートで給与計算をおこなうことも可能です。
コストをかけずに計算が可能となる反面、エラーが生じた際の対応や、法改正にまつわる情報を逃さず反映することなどが求められます。
4-3. 給与計算のクラウドシステムを導入する
クラウドシステムを自社に導入し、給与計算を自動でおこなうことも可能です。勤怠管理と連動した製品である場合、そのまま自動で全従業員の給与を算出できるため、大幅な工数削減につながります。
また法改正にも自動で対応し、運用にも手厚いサポートがついているものも存在するため、毎月の給与計算業務の負担を軽減できるでしょう。

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5. 給与計算で起こりやすい失敗3選
ここからは、給与計算でつい起こしてしまいやすいミスを3つ解説します。
特に給与計算が初心者の方は、人為的ミスを防ぐために以下の3パターンを把握しておくことが大切です。
5-1. 給与の手計算・手入力の際にミスをしてしまう
給与計算を手計算している場合、労働時間の集計ミスや割増賃金を適切に反映できていない等のミスが発生しやすいです。
また、エクセルで給与計算する場合も、労働時間の転記をする際に転記ミスが発生して給与額がずれたり、社会保険料率や税額の変更があった際、反映を失念して金額がずれることも考えられます。
給与計算は手動でおこなうことも可能ですが、従業員の人数に応じて業務が煩雑化しやすいです。従業員の労働時間に対して適切な賃金を支払わなかった場合、労働基準法違反に該当するため、罰則が科される可能性があります。
また従業員から起訴され、裁判になった際には遅延損害金を求められることもあるため、リスクのある手計算・手入力での給与計算には細心の注意が必要です。
5-2. 給与計算で扱う個人情報を漏洩してしまう
給与計算には、家族の扶養に関する情報や居住地などの個人情報が必要となります。個人情報が含まれたファイルを扱う際には、細心の注意を払いましょう。
5-3. 給与変更に伴う手続きを失念してしまう
従業員の昇格や移住地の変更などにより、給与が大幅に変更することがあります。このようなな場合、給与に応じて保険料も変動するため「標準報酬月額」の変更届の提出が求められます。
このような手続きを失念してしまった場合、追って手続きが必要となり、繰り返してしまうと企業の信用に関わるため必ず対応しましょう。
6. 給与計算をおこなう場合の注意点
給与計算をおこなう際は、何に注意して業務をすればいいのでしょうか。気をつけておきたいポイントを解説します。
6-1. 労働基準法の「賃金払いの5原則」を理解する
労働基準法で「賃金払いの5原則」が定められています。以下の原則を理解しておきましょう。
- 通貨払いの原則
- 直接払いの原則
- 全額払いの原則
- 毎月1回以上払いの原則
- 一定期日払いの原則
以上の5原則のうち、一つでも満たしていないと法律違反となるため、給与計算業務をおこなう際はしっかり理解しておきましょう。
6-2. 端数は労働基準法に則って処理する
労働基準法によって、時間外手当の端数をどのように扱うかが定められています。端数の処理は以下の規定に基づいて処理しましょう。
- 1時間あたりの割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げる
- 1ヵ月間における割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げる
6-3. 最低賃金を随時確認する
最低賃金は、地域や年度によって変動するため給与計算をおこなううえで随時確認をすることが重要です。
労働時間に応じた給与を支払えていない場合、退職後の場合においても従業員から起訴されるケースもあるため、毎月確認をすることが重要です。
6-4. 業務範囲を確認しておく
給与計算は一つの部署が一括で担当することもありますが、他の部署と連携をとって部分的に担当することもあります。どの部署でどの範囲を担当するのか確認しておきましょう。
7. 給与計算はミスなく効率的におこなおう
給与計算でミスをすると、従業員からの信頼や社会的信用を損ないかねません。給与計算は重要な業務ですから、ミスがないように細心の注意を払いながらおこなう必要があります。給与計算ツールを導入すれば、ミスを防ぎながら効率よく給与計算ができます。

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【監修者】小島章彦(社会保険労務士)

大学卒業後、某信用金庫にて営業と融資の窓口業務に関わる。 現在は、某システム開発会社に勤務。 会社員として働きながら、法律系WEBライターとして人事労務関係や社会保険関係のライティングを4年半以上行っている。 また、金融知識を生かした金融関係のライティングも含め、多数の執筆案件を経験している。 その他保有している資格は、行政書士、日商簿記3級など。
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