社会保険料の納付方法や納付期限について詳しく解説
給与計算ソフト
2023.06.15
2023.06.15
企業は社会保険料を取りまとめて日本年金機構に納付する必要があります。社会保険料納付には口座振替や電子納付等複数の方法があるので、最適な方法を選びましょう。社会保険料の納付期限を過ぎると延滞金やペナルティが課せられることがあるので注意が必要です。
1. 社会保険料の仕組み
そもそも「社会保険」とは、広義の意味では健康保険、厚生年金保険、40歳以上は介護保険、雇用保険、労災保険の総称として用いられています。
そして社会保険料は、対象従業員だけでなく、企業も支払う必要があります。
健康保険、厚生年金保険、介護保険の狭義の社会保険料は定時決定や随時改定にて算出した標準報酬月額をもとに、保険料が適用されます。
1-1. 社会保険料の納付先とは
社会保険料の納付先は日本年金機構です。一般的には同機構から毎月20日ごろに「保険料納入告知書」と呼ばれる書類が企業に届くため、期日までに金融機関の窓口で支払います。
ただし、金融機関に出向く以外にも指定口座からの振替、電子納付といった方法で納付可能です。また、電子納付のなかにも、インターネットバンキング、モバイルバンキング、テレフォンバンキングなどさまざまな納付方法があるため、自社に適した納付方法を選択しましょう。
1-2. 社会保険料の納付期限に関する考え方
狭義の社会保険料の支払いは毎月発生し、その納付期限は原則として該当する月の翌月末日となります。月末が土日祝日に該当するときには、金融機関の翌営業日が納付期限になります。
社会保険料の金額が確定するのは該当する月の翌月10日頃です。納入告知書は該当月の翌月中旬以降、20日前後に送付されます。20日頃に届いた書類を月末までに処理する必要があるためややタイトですが、確実に支払いを終えるようにしましょう。
書類は領収済み通知書と領収控え、納入告知書・領収証書の3枚綴りとなります。書類が届いたら速やかに支払いを済ませておきましょう。
なお、社会保険料は日割り計算されないという点には十分な注意が必要です。月の下旬に入社した従業員がいる場合、社会保険料は日割り計算で対処せず、初月も1カ月分を支払わなければなりません。
2. 社会保険料の納付方法
狭義の社会保険料の納付方法は大きく、窓口での手続きと口座振替、そして「Pay-easy」(ペイジー)の利用による電子納付に分けられます。電子納付にはさらに複数の方法があるので、最適な方法を選びましょう。
2-1. 金融機関窓口で納付する
社会保険料の納付通知書を金融機関窓口に持参すれば、支払いの手続きに対処してもらえます。
毎月郵送されてくる保険料納付告知書は領収済み通知書と領収控え、納入告知書 納付書・領収証書の3枚綴りになっています。納付の際にはこれらを切り離さずに金融機関窓口に提出しましょう。
ただし、毎月決まった時期に金融機関窓口を訪れ社会保険料を直接納付するのは大きな手間となってしまいます。手間を省きたい場合には口座振替や電子納付といった方法を検討しましょう。
2-2. 口座を指定し振替で納付する
あらかじめ銀行口座を指定すれば、振替という形で社会保険料を納付することが可能となります。
振替を選んだ場合には、納付期限がくると社会保険料が自動的に引き落とされます。月ごとの納付手続きが不要となるため、手間を省きたいのであれば口座振替を選ぶとよいでしょう。
口座振替を利用するためには、「健康保険厚生年金保険 保険料口座振替納付(変更)申出書」を年金事務所に提出する必要があります。書類には金融機関の確認印が必要となるので、書類を記入して金融機関窓口で手続きをしましょう。
2-3. 電子納付をする
社会保険料のスムーズな納付のために電子納付システム「Pay-easy」(ペイジー)を活用する企業も増加しつつあります。
電子納付には以下のような種類があるので、使いやすいものを選んでみましょう。なお、「Pay-easy」を使った納付では保険料納付告知書に記載されている収納機関番号や納付番号、確認番号が必要となります。
①インターネットバンキングで納付する
あらかじめ金融機関でインターネットバンキングの契約をしておけば、パソコンなどから社会保険料を納付することが可能となります。金融機関の営業時間を気にせずいつでも手続きができるので便利です。
②モバイルバンキングで納付する
携帯電話のモバイルバンキングを利用して社会保険料を納付する方法も考えられます。モバイルバンキングには、場所を選ばずどこからでも納付の手続きができるという良さがあります。
③テレフォンバンキングで納付する
電話の音声案内に従って納付の手続きを行うテレフォンバンキングというサービスもあります。テレフォンバンキングは専門スタッフが直接対応してくれるサービスです。インターネットバンキングを利用しているもののパソコン操作が苦手という場合には、テレフォンバンキングを使った納付を試してみましょう。
④ATMで納付する
「Pay-easy」のマークがある金融機関ATMを利用すれば、社会保険料の納付を行えます。ATM画面の表示に従って操作すれば、金融機関口座やキャッシュカード、現金などで支払いを済ませられます。
3. 社会保険料を納付する際の注意点
狭義の社会保険料の納付手続きをミスなく正確におこなうためにも、あらかじめ注意点を理解しておくことが重要です。
ここからは、社会保険の納付手続きにおける注意点を2つ解説します。
3-1. 電子納付には事前手続きが必要
社会保険料の納付は「Pay-easy」を活用した電子納付が便利です。しかし、電子納付は事前に金融機関で手続きしなければ活用できないので注意しましょう。
なお、電子納付の際には領収書が発行されません。領収書が発行されるのは窓口での納付に限られます。
3-2. 社会保険料の納付期限が過ぎないよう注意
社会保険の納付には期限が定められているので、必ず期限までに納付を行いたいものです。
納付期限を過ぎてしまった場合には、1週間程度で督促状が発行されます。督促状に記載された期限までに納付を行えばペナルティが課せられることはありません。
督促状の指定期限を過ぎても社会保険が納付されなかったときには延滞金がかかってしまいます。延滞金は延滞している日数に応じて増えていくため、早めに対処することが重要です。
納付期限以降3カ月が経過するまでの延滞金は年2.4%で計算されます。3カ月を過ぎた後には延滞金が年8.7%かかってしまうため注意しましょう。
4. 社会保険料の納付期限に関する考え方
社会保険料の支払いは毎月発生し、その納付期限は原則として該当する月の翌月末日となります。月末が土日祝日に該当するときには、金融機関の翌営業日が納付期限になります。
社会保険料の金額が確定するのは該当する月の翌月10日頃です。納入告知書は該当月の翌月中旬以降、20日前後に送付されます。20日頃に届いた書類を月末までに処理する必要があるためややタイトですが、確実に支払いを終えるようにしましょう。
書類は領収済み通知書と領収控え、納入告知書・領収証書の3枚綴りとなります。書類が届いたら速やかに支払いを済ませておきましょう。
なお、社会保険料は日割り計算されないという点には十分な注意が必要です。月の下旬に入社した従業員がいる場合、社会保険料は日割り計算で対処せず、初月も1カ月分を支払わなければなりません。
5. 社会保険料の納付に関してよくある質問
ここからは、社会保険料の納付について関連する質問を解説します。
社会保険料の納付書が届かない場合の対応方法や、賞与を社会保険料として納付する必要性について、確認していきましょう。
6. 社会保険料の納付書が届かない場合の対応方法は?
何らかの理由で社会保険料の納付書が届かないケースがあります。しかし、「届かないから」とそのままにしておいてはいけません。
納付書が届かない、あるいは紛失してしまった場合などは、早急に管轄の全国健康保険協会の都道府県支部へ連絡しましょう。納付書は月初めに送付されるので、その頃までに届かない場合は早めに問い合わせてみるとよいかもしれません。
6-1. 賞与は社会保険料として納付すべき?
賞与にも社会保険料はかかります。賞与で納付する社会保険の種類は以下の2つです。
- 健康保険料・介護保険料
- 厚生年金保険料
健康保険料は「標準賞与額 × 保険料率」で計算します。なお、今回は全国健康保険協会が運営する健康保険「協会けんぽ」で説明します。
標準賞与額は、税金額を差し引く前の賞与総額から千円未満の端数を切り捨てて求めます。健康保険料は年度の累計額573万円が上限となるので注意しましょう。
協会けんぽの保険料率は都道府県ごとに決定されますが、毎年10%となります。なお、40歳から64歳までの介護保険第2号被保険者の健康保険料率は、介護保険料率が加わったものです。介護保険料率については、年度ごとに見直しが行われています。
次に厚生年金保険料ですが、こちらも基本の計算式は「標準賞与額 × 保険料率」です。標準賞与額は、税金額を差し引く前の賞与総額から千円未満の端数を切り捨てた額で、厚生年金保険の上限は1ヵ月あたり150万円となります。なお、厚生年金保険料率は18.3%です。
健康保険料と厚生年金保険料は、企業と従業員で折半します。企業の保険料と従業員分の保険料を正しく計算し、従業員からの天引きと納付を忘れずに行いましょう。
7. 社会保険料の延滞が続いたときに考えられるリスク
社会保険料の延滞が続くなど悪質な場合には、年金事務所または労働局による財務調査が行われることもあります。財務調査とは、社会保険料納付のための資金を確保する資産が企業にあるかを確認するための調査です。
財務調査によって資産があると判断された場合、財産の差し押さえが執行されます。財産の差し押さえ処分が執行されてしまうと、事務所を使えなくなってしまい事業の継続ができなくなることがあります。
また、銀行の融資を受けられなくなり、銀行に預けた資金を自由に使えなくなるといった問題も起こります。
財務調査が入ったり財産の差し押さえが行われたりすると、企業の評判は大きく下がってしまいます。社会保険料を納めていないというマイナスイメージが定着すると、従業員の離職が起こりやすくなってしまいます。
また、取引先に「滞納が起きている企業は信頼できない」と思われてしまい、関係が断たれてしまうリスクも考えられます。もちろん、企業が世間に与えるイメージも低下しやすくなってしまうので十分に気をつけたいものです。
差し押さえ執行の前には予告通知が届くため、最悪のケースを回避するためにも差し押さえ前に社会保険料と延滞金を支払うことが大切です。
社会保険の納付が難しい場合には、管轄の年金事務所で納付に関する相談ができます。年金事務所では必要に応じて、無理のない納付計画を立てるなどの対処を行います。
8. 社会保険は期限までに確実に納付することが大切
社会保険料の支払いは、金融機関窓口での手続きに加え、口座振替や電子納付といった方法で行えます。期限までに納付できなかった場合には延滞金が課せられ、その後も延滞が続いた場合には財務調査が行われることになるので気をつけましょう。
社会保険料をスムーズに支払うためにはあらかじめ準備しておくことが大切です。口座振替や電子納付の手続きを済ませておけば、社会保険料の支払い手続きに関する負担を和らげられます。

【監修者】小島章彦(社会保険労務士)

大学卒業後、某信用金庫にて営業と融資の窓口業務に関わる。 現在は、某システム開発会社に勤務。 会社員として働きながら、法律系WEBライターとして人事労務関係や社会保険関係のライティングを4年半以上行っている。 また、金融知識を生かした金融関係のライティングも含め、多数の執筆案件を経験している。 その他保有している資格は、行政書士、日商簿記3級など。
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