所得税はいくらから課税される?パート・学生も目安となる年収基準を解説!
給与計算ソフト
2023.06.15
2023.06.15
企業の給与計算担当者は、所得税はいくらから課税されるのかを把握しておく必要があります。この記事では所得税はいくらからかかるのかを具体的に解説します。給与計算担当者が押さえておくべき4つの年収基準も解説します。
1. 所得税はいくらから課税される?
所得税は、一定以上の年収などの条件を満たすと課税所得額に応じた税率で納める必要があります。
ここからは、所得税とはいくらから課税されるのか、具体的な金額や状況について解説します。
1-1. 年収が103万円を超えると所得税がかかる
所得税は、年収が103万円を超えると課税されます。給与が88,000円以上の月があった場合は、その月は源泉所得税が差し引かれます。ただし、所得税は1年間の所得に対して課税されるため、年末調整時に年収が103万円以下であれば、納めた分が還付されます。
所得税の課税基準が103万円といわれる理由は、控除額が大きく関係しています。所得税は、給与収入から給与所得控除や所得控除を差し引いた金額に、所得税率を乗じて計算されるものです。給与収入額が162万5,000円以下であれば、55万円が給与所得控除として差し引かれます。
所得控除は個人によって対象となる控除が異なりますが、「基礎控除」は誰もが対象です。基礎控除額は、課税される所得金額が2,400万円以下であれば、一律48万円と決まっています。
給与所得控除額が55万円、基礎控除額が48万円だとすると、合計は103万円になります。つまり、103万円までは控除額を引くと課税対象となる所得が0円になるため、所得税がかからないのです。103万円を超えると課税対象となる所得が発生するため、所得税の支払いが生じます。
参考:給与所得控除|国税庁
参考:基礎控除|国税庁
参考:配偶者控除|国税庁
1-2. パート・学生の場合
本人の夫もしくは妻が配偶者控除を受けている場合は、妻の所得が48万円(給与収入103万円-給与所得控除55万円)を超えた時点で控除が受けられなくなります。
例えばパートの従業員が夫の扶養に入っているケースも多いですが、所得が48万円を超過してしまうと、その分夫の所得税が高くなるため、覚えておきましょう。
また学生でも給与所得控除や基礎控除は適用されます。加えて、ある一定の条件を満たせば、「勤労学生控除」が適用されます。控除額は27万円です。すべての控除額を合算すると、103万円までは所得税がかからない計算になります。
就労学生控除が適用されるのは、以下の条件を満たした場合のみです。
- 勤労による所得(給与所得)があること
- 所得金額の合計が75万円以下、そのうち勤労以外の所得が10万円以下であること
- 学校教育法に規定する学校などの学生・生徒であること
なお、学生である従業員本人は年収130万円以下まで所得税の負担はありませんが、103万円を超えると親の扶養から外れる形になります。扶養控除がなくなるため、親の所得税が上がるのです。
このように、家族の所得税額が変動する場合もあるため、給与計算をご担当の方は課税される仕組みについてよく理解しておく必要があります。
参考:勤労学生控除|国税庁
2. 所得税に関する4つの年収基準
所得税に関して、年収103万円以外にも押さえておくべき一定の年収額があります。ここからは、所得税額に大きく関係がある4つの年収基準を解説します。
2-1. 年収106万円超え:社会保険料の加入義務が発生する場合がある
年金法の改正により、令和4年10月から従業員数101〜500人の企業を対象に、パート・アルバイトで働く人も社会保険料の加入が義務化されました。ここでいう従業員数は、現状の厚生年金の被保険者数です。
もし勤務先が対象企業にあてはまる場合は、年収106万円を超えると、社会保険料の支払いが発生します。また、以下項目のすべてがあてはまる場合も加入対象者です。
- 所定労働時間が週20時間以上30時間未満である
- 月々の賃金が8万8,000円以上である
- 雇用見込みが2ヵ月を超える
- 学生以外である
支払った社会保険料は所得控除の対象のため、人によっては所得税がかからない可能性があります。
2-2. 年収130万円超え:社会保険料の扶養から外れ自己負担になる
2-1の対象者以外の方が年収130万円を超えると、社会保険料の扶養から外れます。配偶者の社会保険に加入していた方も、勤務先の社会保険に加入しなければなりません。
先述した通り、社会保険料の支払い分は所得控除の対象です。その分所得税額が変化する可能性があるため、よく確認しながら給与計算をおこなう必要があります。
2-3. 年収150万円超え:配偶者特別控除額が減額される
配偶者特別控除とは、配偶者の年収が103万円を超えた場合でも受けられる所得控除のことです。控除を受ける納税者の合計所得金額と配偶者の合計所得金額に応じて、控除額が決まります。
なお、控除を受ける納税者の合計所得額が1,000万円を超えていたり、配偶者と生計を一にしていなかったりすると、配偶者特別控除は適用されません。
具体的な控除額は以下のとおりです。
引用:No.1195 配偶者特別控除|国税庁
納税を受ける納税者本人の合計所得金額 配偶者の合計所得金額 900万円以下 900万円超950万円以下 900万円超1,000万円以下 48万円超 95万円以下 38万円 26万円 13万円 95万円超 100万円以下 36万円 24万円 12万円 100万円超 105万円以下 31万円 21万円 11万円 105万円超 110万円以下 26万円 18万円 9万円 110万円超 115万円以下 21万円 14万円 7万円 115万円超 120万円以下 16万円 11万円 6万円 120万円超 125万円以下 11万円 8万円 4万円 125万円超 130万円以下 6万円 4万円 2万円 130万円超 133万円以下 3万円 2万円 1万円
このように配偶者の合計所得額が95万円(給与収入が150万円)を超えたタイミングから、控除額が徐々に減額していきます。配偶者の年収が上がった給与所得者がいる場合、所得税額が変動すると覚えておきましょう。
2-4. 年収201万円以上:配偶者特別控除が適用外になり、所得税が上がる
前述のとおり、配偶者特別控除は配偶者の合計所得金額に応じて変動します。配偶者の合計所得金額が133万円(給与収入が201万円)を超えたタイミングで控除が適用外になるため、所得税が上がります。
3. 「 所得税はいくらから?」に関連する質問
ここからは、「 所得税はいくらから?」といった疑問に関連する質問について解説していきます。扶養控除等(異動)申告書を提出していない場合の所得税や、副業している従業員の所得税について確認します。
3-1. 従業員が扶養控除等(異動)申告書を提出していない場合、所得税はどうなる?
「扶養控除等(異動)申告書」を従業員から受け取っていない場合、月収が8万8,000円未満であっても給与から所得税を天引きする必要があります。
また扶養親族の人数は考慮しない対応となります。扶養控除等(異動)申告書が提出されない場合は、給与所得の源泉徴収税額表の「乙欄」に該当する金額が源泉徴収されます。
3-2. 副業している従業員の場合、所得税はどうなる?
従業員が副業をして収益化するケースも存在するでしょう。その場合、所得税に関しては所得が年間20万円に収まっていれば、確定申告は不要です。
ただし住民税に関しては、別に申告する必要があるためご注意ください。
4. 所得税は年収103万円を超すと課税されるのが基本
所得税は、年収が103万円を超えると課税されます。また、勤労学生控除が適用されている学生の場合は、年収が130万円を超えると課税されます。ただし、これはあくまで目安です。ほかの控除が適用される場合は、103万円もしくは130万円を超えても所得税がかからないことがあります。
所得税に関する4つの年収基準や、副業の所得税がいくらから課税されるかについてもあわせて、日々の給与計算業務のご参考になさってください。

【監修者】小島章彦(社会保険労務士)

大学卒業後、某信用金庫にて営業と融資の窓口業務に関わる。 現在は、某システム開発会社に勤務。 会社員として働きながら、法律系WEBライターとして人事労務関係や社会保険関係のライティングを4年半以上行っている。 また、金融知識を生かした金融関係のライティングも含め、多数の執筆案件を経験している。 その他保有している資格は、行政書士、日商簿記3級など。
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