所得税の計算方法と3つの手順をわかりやすく解説
給与計算ソフト
2023.06.20
2023.06.20
所得税は「所得金額」「課税所得金額」「所得税額」の順に算出できます。それぞれの金額の意味や計算方法は例を用いて解説するため、所得税についてわからない方でも理解できるように解説しています。年末調整や確定申告をする際、必要になるため正しく理解しましょう。
1. 所得税とはなにか
所得税の計算方法を知る前に、所得税の内容について確認をしていきましょう。
所得税とは、1月から12月の1年間で得た収入や給料から所得控除を差し引き、一定の税率をかけて算出された税金です。
所得税の税率は「超過累進税率」を用い、所得が多ければ多いほど多くの税金を納めるシステムになっています。
1-1. 源泉所得税について
源泉所得税とは、事業者が従業員の給与から所得税を算出した源泉徴収を、本人の代わりに事業者が毎月10日に納付する税のことです。
12月に行われる年末調整で多く支払っていた場合には従業員に還付を行い、不足していた場合には追徴(ついちょう)を行います。
1-2. 所得の種類
一言で所得といってもさまざまな種類があります。ここでは所得の種類と、それぞれの課税方法を紹介します。
所得の種類 | 概要 | 課税方法 |
事業所得(営業など・農業) |
商・工業や漁業、農業、自由職業などの自営業から生ずる所得 |
総合 |
事業規模で行う、株式等を譲渡したことによる所得や先物取引に係る所得 | 申告分離 | |
不動産所得 |
土地や建物、船舶や航空機などの貸付けから生ずる所得 |
総合 |
利子所得 | 公社債や預貯金の利子などの所得 | 源泉分離 |
国外で支払われる預金等の利子などの所得 | 総合 | |
配当所得 | 法人から受ける剰余金の配当、公募株式等証券投資信託の収益の分配などの所得 |
総合 |
上場株式等に係る配当等、公募株式等証券投資信託の収益の分配などで申告分離課税を選択したものの所得 | 申告分離 | |
特定目的信託の社債的受益権の収益の分配などの所得 |
源泉分離 |
|
給与所得 | 俸給や給料、賃金、賞与、歳費などの所得 | 総合 |
雑所得(公的年金等) |
国民年金、厚生年金、確定給付企業年金、確定拠出企業年金、恩給、一定の外国年金などの所得 |
総合 |
雑所得(その他) |
原稿料や講演料、生命保険の年金など他の所得に当てはまらない所得 |
総合 |
業(事業規模を除く)として行う、株式等を譲渡したことによる所得や先物取引に係る所得 |
申告分離 | |
公社債の償還差益のうち、一定の割引債の償還差益などの所得 | 源泉分離 | |
譲渡所得 |
ゴルフ会員権や金地金、機械などを譲渡したことによる所得 |
総合 |
土地や建物、借地権、株式等を譲渡したことによる所得 |
申告分離 |
|
一時所得 |
生命保険の一時金、賞金や懸賞当せん金などの所得 |
総合 |
保険・共済期間が5年以下の一定の一時払養老保険や一時払損害保険の所得など |
源泉分離 |
|
山林所得 |
所有期間が5年を超える山林(立木)を伐採して譲渡したことなどによる所得 |
申告分離 |
退職所得 |
退職金、一時恩給、確定給付企業年金法及び確定拠出年金法による一時払の老齢給付金などの所得 |
申告分離 |
1-3. 所得金額によって税率は変動する
所得税は、収入に応じて変動する「超過累進税率」を採用しているため、収入が増えれば増えるほど支払う所得税も上がります。
税率は5%~45%の7段階に分けられ、「課税所得金額」「税率」「控除額」の3つに分けて表にまとめました。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0 |
195万円超330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
参照:所得税の税率|国税庁
たとえば一年間の所得が200万円だった場合、「200万円×10%-97,500円」で求められ所得税は102,500円と算出されます。
上記の表は、後に紹介する計算手順でも使用します。
2. 所得税の控除の種類
所得控除の名称 | 控除対象 | 控除額 | |
1 | 社会保険料の控除 | 納税者本人や配偶者、扶養親族等が負担した健康保険料、国民健康保険料、国民年金保険料などの保険料負担額 | 負担した保険料の全額 |
2 | 小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済、確定拠出年金などの掛金負担額 | 掛金負担額の全額 |
3 | 生命保険料控除 | 保険契約に基づき支払った生命保険料、介護保険料、個人年金保険料 | 一定の計算により算出された金額 最高12万円 |
4 | 地震保険料控除 | 保険契約に基づき支払った地震等の災害に対する地震保険料、損害保険料 | 一定の計算により算出された金額 最高5万円 |
5 | 寡婦控除 | 離婚、死別等を原因として配偶者がおらず、かつ一定の要件に該当する方 | 27万円 (特別寡婦の場合は35万円) |
6 | ひとり親控除 | 離婚、死別、未婚等を原因として配偶者がおらず生計を一にする子供がおち、かつ一定の条件に該当する方 | 35万円 |
7 | 勤労学生控除 | 給与所得があり、かつ合計所得金額が75万円以下(給与所得については10万以下)である学生 | 27万円 |
8 | 障害者控除 | 納税者本人や配偶者、扶養親族(年少扶養含む)のうち、障害者として一定要件に該当する方 | 27万円 (特別障害者の場合は40万円) ※同居特別障害者は75万円 |
9 | 配偶者控除 | 配偶者のうち一定要件に該当する方 | 38万円 |
10 | 配偶者特別控除 | 配偶者控除を受けていない配偶者で一定要件に該当する方 | 38万円 |
11 | 扶養控除 | 扶養親族のうち一定要件に該当する方 | 38万円 |
12 | 基礎控除 | 合計所得金額2,500万円以下の場合 | 16万円~48万円 |
2-1. 年末調整で受けることができる控除・できない控除
年末調整で受けることができる控除は以下のとおりです。
項目 | 概要、控除額など |
基礎控除 | 16万円~48万円(所得による変動あり) |
配偶者控除 | 38万円など(所得による変動あり) |
配偶者特別控除 | 1万円~38万円(所得による変動あり) |
扶養控除 | 38万円~63万円(親族の年齢や同居の有無などによる変動あり) |
生命保険料控除 | 最大控除額12万円 |
地震保険料 | 最大控除額5万円 |
小規模企業共済等掛金控除 | 該当する掛金全額が控除額となる |
社会保険料控除 | 該当する社会保険料全額が控除額となる |
障害者控除 | 27万円~75万円(障害の程度や同居有無による変動あり) |
ひとり親控除、寡婦控除 | 寡婦:27万円 ひとり親:35万円 |
勤労学生控除 | 一律27万円 |
なお、年末調整で受けられない控除には以下のようなものがあります。
- 寄附金控除
- 医療費控除
- 雑損控除
寄付金控除はふるさと納税なども対象となります。また、住宅ローン控除は初年度のみ確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整による控除が可能です。
3. 所得税の計算方法は3ステップ
所得税を算出するためには「所得金額」「課税所得金額」「所得税額」の順を追って算出しなければいけません。
税率や控除額は金額によって異なるため、以下で解説する手順に沿って算出しましょう。
3-1. 所得金額を計算する
1月から12月まで得た給与を合計します。このときに、交通費や児童手当、育児休業給付金は非課税の対象のため、除外しましょう。
合計した給与から、収入に応じた給与所得控除を引くことで所得金額が算出されます。
各収入に対する給与所得控除額は以下のとおりです。
収入額 | 給与所得控除額 |
1,625,000円以下 | 550,000円 |
1,625,000円超~1,800,000円以下 | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,000円超~3,600,000円以下 | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,000円超~6,600,000円以下 | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,000円超~8,500,000円以下 | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,000円超 | 1,950,000円(上限) |
参照:給与所得控除|国税庁
上記の表を参照に、収入が4,000,000円の場合の所得金額計算例を記載します。
【収入4,000,000円の所得金額算出例】
給与所得金額:4,000,000円×20%+440,000円=1,240,000円
所得金額:4,000,000円-1,240,000円=2,760,000円
給与以外に所得がある方は、給与所得控除後の所得金額に合算します。
*上記の算出例の2,760,000円に合算
3-2. 課税所得金額を計算する
所得金額をもとに、各種控除を差し引いた金額が課税所得金額です。
所得税の控除の種類の部分で解説した控除を計算し、所得金額から差し引きます。
計算例は以下の通りです。
【所得金額が2,760,000円、かつ配偶者の合計金額が1,000,000円の場合】
この場合、受けられる控除は以下の2つ
- 配偶者特別控除:480,000円
- 基礎控除:480,000円
課税所得金額:2,760,000円-480,000円-480,000円=1,800,000円
*その他にも受けられる控除があれば、控除額に合算
このように所得金額から該当する所得控除を差し引くことで、課税所得金額が算出されます。
3-3. 所得税額を計算する
算出した課税所得金額を元に、所得税の税率をかけて所得税を割り出します。
課税所得金額は、所得が多くなれば税率も高くなる「超過累進税率」を採用し、税率は5%~45%の7段階に分けられます。
「課税所得金額」「税率」「控除額」の3つに分け、表にまとめました。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0 |
195万円超330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
参照:所得税の税率|国税庁
上記の計算例で求めた課税所得金額1,800,000円をもとに計算すると、195万円以下のため控除額は0円。
所得税額は1,800,000×5%=90,000円です。
3-4. 毎月の源泉所得税の算出方法
源泉所得税は一般的に、事業者が従業員の給与から天引きして納税するものです。毎月の所得税は概算の税率をもとに算出しています。
そのため、実際の所得税と天引きしている所得税にずれが生じます。このずれを調整するのが年末調整です。
年末調整により、本来の額より所得税を多く天引きしていた場合は還付金として、少ない場合は追加で徴収して徴収額の過不足を調整しています。
4. 所得税を削減する方法とは
所得税は、収入によって大きく変動するため、できるだけ所得税を抑えたいのが本音です。
少しでも抑えるためには、上記での控除一覧で紹介した控除をうまく活用することが重要。
たとえば、自分や家族が1年間で合計100,000円以上の医療費を支払った場合は「年間に支払った医療費-保険金などの各種補填金-100,000円」が控除されます。
ほかにも生命保険では最大12万円、地震保険は最大5万円の所得控除が可能です。
このように控除を有効活用すれば、所得税を削減できます。
5. 所得税は国税庁の表をもとに正確に算出しよう
今回は所得税の計算方法を3ステップで紹介しました。
最初に「所得金額」「課税所得金額」「所得税額」の順に算出することで所得税を計算できます。
計算をする際に、国税庁が提供する表をもとに計算をすることで、正しい値をだせます。
所得税をおさえるためには、16種類の控除を有効活用することが重要です。
自身に当てはまる控除がないかを確認し、正しい所得税を算出しましょう。

【監修者】涌井好文(社会保険労務士)

涌井社会保険労務士事務所代表。就職氷河期に大学を卒業し、非正規を経験したことで、労働者を取り巻く雇用環境に興味を持ち、社会保険労務士の資格を取得。 その後、平成26年に社会保険労務士として開業登録し、現在は従来の社会保険労務士の業務だけでなく、インターネット上でも活発に活動を行っている。
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