所得税の累進課税制度とは?年収別の税率表・計算方法を一から解説!
給与計算ソフト
2023.06.20
2023.06.20
所得税に課税される税金の計算には累進課税制度が採用されています。累進課税制度は、所得や資産が多い人ほど多くの税金が課せられるシステムになっています。累進課税制度の仕組みや具体的な課税内容、メリットやデメリットをチェックしていきましょう。
1. 所得税の累進課税制度とは?
「累進」という言葉には、数が増えていくことに伴い比率が増えていくという意味があります。所得税の累進課税とは、「課税対象額が大きくなるほど税率が高くなる」という制度のことをいいます。つまりこの制度では、所得が低い層の課税率は低く調整され、高所得層ほど課税率が高くなるのです。
累進課税には「単純累進課税」と「超過累進課税」という2つの種類があります。このうち、日本国内で現在採用されているのは超過累進課税です。
超過累進課税とは、定められた一定金額を超過したタイミングで課税額がアップするというシステムです。
1-1. 令和5年(2023年現在)の所得税累進課税の税率とは
令和5年(2023年現在)の所得税累進課税の税率は、以下の7段階に分かれています。
- 課税される所得金額が194万9,000円までのとき、税率は5%、控除額は0円
- 課税される所得金額が195万円から329万9,000円のとき、税率は10%、控除額は9万7,500円
- 課税される所得金額が330万円から694万9,000円のとき、税率は20%、控除額は42万7,500円
- 課税される所得金額が695万円から899万9,000円のとき、税率は23%、控除額は63万6,000円
- 課税される所得金額が900万円から1,799万9,000円のとき、税率は33%、控除額は153万6,000円
- 課税される所得金額が1,800万円から3,999万9,000円のとき、税率は40%、控除額は279万6,000円
- 課税される所得金額が4,000万円以上のとき、税率は45%、控除額は479万6,000円
なお、所得税の計算の際には1,000円以下の端数を切り捨てることになっています。
1-2. 所得税・住民税の累進税率推移表
所得税・住民税の累進税率推移表を確認すると、住民税は一律ですが、所得税の階層は7段階に増えていることがわかります。また所得税と住民税は、平成27年以降変化していません。
2. 累進課税の対象となるもの・ならないもの
累進課税の対象になる税金・ならない税金は以下のように分類されます。
- 累進課税の対象:個人の所得税(給与、事業で得た所得、不動産所得、雑所得)、贈与税、相続税
- 累進課税の対象外:不動産売却・株式売却で得た譲渡所得、退職金の所得など
累進課税制度の対象となるものは、個人の所得税と贈与税、相続税です。
「所得税」とは個人の所得に対して課税される税金のことです。日々の仕事で得た給与や事業で得た所得のほか、不動産所得や雑所得などが累進課税の対象となっています。
一方で、不動産売却や株式売却で得た譲渡所得、退職金の所得などは累進課税の対象外となります。これらの所得は、譲渡したタイミングや退職したタイミングなどで得られる一度きりのものです。また、これらの所得には金額が高額になりやすいという特質もあります。
譲渡所得や退職所得に課税してしまうと、その年の税額だけが大きく高まってしまうため、対象から外されているのです。
また、相続税や贈与税も累進課税の対象となります。相続税とは、亡くなった人の財産を相続する際にかかる税金のことです。また、贈与税とは個人から財産を贈与される際に課税される税金です。相続税と贈与税にはそれぞれ8段階の税率が設定されています。
なお、これ以外の税金には累進課税の制度が適用されていません。
3. 累進課税制度のメリット・デメリットについて
累進課税制度には、メリットとなる側面もあれば、デメリットとして捉えられる側面も存在します。ここからは累進課税制度の代表的なメリットとデメリットについて解説します。
3-1. メリット:所得が低い人の負担が和らぐ
累進課税制度でないケースでは、すべての人が一律の税金を負担することになります。
例えば税額が一律で100万円だった場合、年収が3,000万円の人は税負担が年収の30分の1で済みます。一方で年収300万円の人は年収の3分の1を税金として納める必要が生じ、大きな負担を抱えることになってしまいます。
このように累進課税制度を採用すると、所得が少ない人の負担を和らげることができるという大きなメリットがあります。
3-2. デメリット: 高所得者にとって負担が大きい
先述した通り、累進課税制度は所得が多い人にとって大きな負担となる制度です。せっかく収入をアップさせても、それに比例して納税額がどんどん増えていく累進課税制度には、働けば働くほど負担が増えるという側面があります。高所得者の労働意欲が減退してしまうことも懸念されるでしょう。
高所得者の中には、税負担が大きいことを理由に海外移住に踏み切る人も存在していることからも、大きなデメリットといえるでしょう。
4. 所得税の累進課税の計算例
ここからは、所得税の累進課税の計算例を紹介します。
従業員の所得税の計算をミスなくおこなうためにも、以下の計算例を確認してみましょう。
年収から非課税所得を引いた金額(課税所得額)が300万円の人は、所得税率10%に該当するため、控除額は97,500円となります。
一方で課税所得額が1000万円の人は、所得税率が40%となるため、控除額は2,796,000円となります。
上記の計算例からも累進課税制度によって、所得に応じて所得税額は大幅に異なることがわかります。
5. 所得税の累進課税制度を理解して正しく控除・納税をおこなおう
所得税の累進課税制度とは、所得が高まるほどに税率が高くなるという仕組みのことです。累進課税制度を導入すると、低所得者の税負担を軽減するというメリットがあります。一方で、高所得層の負担がかかりやすいというデメリットがあります。
累進課税制度への理解を深め、正しい控除額を従業員の所得から差し引き、納めるようにしましょう。
企業のみなさまへ
あなたもDXログにサービスを掲載しませんか?
あなたもDXログに
サービスを掲載しませんか?