社会保険の随時改定とは?意味や月額変更届の書き方を解説
給与計算ソフト
2023.06.12
2023.06.12
固定的賃金に変動があり、標準報酬月額に2等級以上の差が出たときに随時改定を行い、現在の給与に合った社会保険料を適用します。随時改定では月額変更届を速やかに所管の年金事務所に届け出て手続きしましょう。随時改定とは何か、手続き方法や注意点を解説します。
社会保険の随時改定とは、固定的賃金に変動があり、標準報酬月額に2等級以上の差が出たときに、実際の給与と標準報酬月額を合わせるために行う手続きです。定時決定と異なり、随時変更は条件に該当すれば速やかに手続きしなければいけません。
本記事では、社会保険の随時改定とは何か、手続き方法と月額変更届の書き方、手続き時の注意点を解説します。
社会保険の随時改定とは?
社会保険(厚生年金・健康保険・介護保険)の保険料は実際の給与ではなく、標準報酬月額という給与額に応じた区分により保険料額を算出しています。
通常、標準報酬月額は年に1回、実際の給与額と乖離していないか届け出により見直されます。これを定時決定といい、毎年7月10日までに算定基礎届を提出して手続きをします。
しかし、従業員の給与は昇給などにより、固定賃金に大幅な変更が生じることがあります。社会保険の随時改定では、現在の給与と支払うべき社会保険料額に大きな差が生じたとき、次の定時決定を待たずに標準報酬月額の改定をする手続きのことです。
随時改定の条件
随時改定は以下の3つの条件をすべて満たすときに行います。
- 昇給または降給などにより固定的賃金に変動があったとき
- 賃金の変動以降3カ月間に支給された報酬の平均月額に該当する標準報酬月額と、これまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じたとき
- 3カ月とも支払基礎日数が17日以上であるとき
① 固定的賃金に変動があったとき
固定的賃金とは基本給や各種手当など、支給額などが決まっているものです。このため、残業手当のように変動する賃金は該当しません。
② 2等級以上の差が生じたとき
2標準報酬月額に2等級以上の差があるときは、たとえば、現在、厚生年金保険料の14等級(標準報酬月額20万円)の従業員が、16等級(標準報酬月額24万円)になったときなどです。[注1]
[注1]令和5年度保険料額表(令和4年5月分から)|全国健康保険協会
③ 支払基礎日数が17日以上あるとき
支払い基礎日数は月給の従業員の場合、欠勤がない月は暦日数です。欠勤のある月はその月の所定労働日数から欠勤日数を引いた日数になります。
日給や時給の場合は、出勤日数で計算します。
随時改定後の保険料率の適用時期
随時改定では、変動後の報酬を受け取った月から数えて、4カ月目の標準報酬月額から改定されます。
随時改定時の手続き書類と提出時期
「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届 厚生年金保険70歳以上被用者月額変更届」(以下、月額変更届)により届け出ます。
提出期限は「速やかに」とあるため、随時改定に該当する従業員がいれば、迅速に手続きしましょう。
提出先は管轄の年金事務所、または事務センターです。
提出方法は郵送または、窓口持参、電子媒体、電子申請です。
社会保険の随時改定の手続き方法
社会保険の随時改定は時期が定められている手続きではないため、都度、該当する従業員の確認が必要です。ここでは、随時改定の手順や手続きの方法を解説します。
固定的賃金に変動があるか確認する
まずは、従業員に固定額や固定率で支払う賃金や手当に変動があるか確認します。人事異動があったときなどは注意して確認が必要です。また、通勤手当も固定的賃金に該当するため、引越しにともない変動するケースもあるため留意しましょう。
従前の標準報酬月額との差が2等級以上か確認する
固定的賃金に変動のあった従業員は、当月から3カ月分の給与の平均額を確認します。この額が、従前の標準報酬月額と2等級の差があったときは手続きが必要です。
なお、確認の際は給与の支払い月を元とします。たとえば、賃金が当月末締め15日払いであり、昇給が7月にあったとき(8月15日の賃金から変動)は、8月15日、9月15日、10月15日の3カ月に支払った賃金の平均を確認します。
なお、ここで比較する給与額の平均は、残業代などの変動賃金も合わせた総額である点に注意しましょう。
支払基礎日数を確認する
支払い基礎日数が17日以上あるか確認しましょう。月給制であれば多くの場合17日を上回るでしょう。
短時間労働者の場合、11日以上あることが条件です。
月額変更届を作成し提出する
上記のすべての条件に該当する従業員がいた場合、変動後の賃金が支払われた4カ月目に手続きを行います。
月額変更届を作成した後は、速やかに所管の年金事務所、または事務センターに届け出ましょう。
社会保険の随時改定における月額変更届の書き方
月額変更届は項目名に記載される①~⑱項目の必要事項を記載します。ここでは、間違いやすい項目の書き方を解説します。
参照:被保険者報酬月額変更届 70歳以上被用者月額変更届|日本年金機構
④改定年月日:
固定的賃金に変更があった月から4カ月目を記載します。賃金自体を変更した月ではなく、標準報酬月額が変更になる月のため注意しましょう。
⑤従前の標準報酬月額:
現在の標準報酬月額を記入します。
⑥従前改定月:
現在の標準報酬月額が適用された年月を記入します。
⑦昇(降)給:
昇給や降給のあった月の給与の支払い月を記入します。また、昇給・降給、どちらに該当するか丸をつけます。
⑨給与支給月:
変動後の賃金を支払った月から3カ月分記入します。
⑩給与計算の基礎日数:
⑨のそれぞれの月の算定基礎日数を記入します。
⑪通貨によるものの額:
労働の対価として、金銭で支払ったものの合計をそれぞれの月ごとに記入します。
⑫現物によるものの額:
定期券や食事など、金銭以外で支払ったものの合計を、それぞれの月ごとに記入します。金額は厚生労働大臣によって定められた額により算出します。
⑬合計(⑪+⑫):
通貨で支給したものの額と、現物を賃金に変換した額の合計額を記入します。
⑭総額:
3カ月分の合計額を総計した額を記入します。
⑮平均額:
⑭を3で割った額を記入し、1円未満は切り捨てます。
以上が基本的な記入内容です。
社会保険の随時改定の注意点
固定的賃金に変動はあるものの、標準報酬月額に2等級以上の差が生じないときは社会保険の随時改定は必要ありません。また、月額変更届を出し忘れた場合、正しい社会保険料を納付できない点にも注意が必要です。
賃金の増減ではなく標準報酬月額の変動を確認する
固定的賃金が増加しても、その分残業代が減ったときなどは、標準報酬月額が2等級以上変動しないケースもあります。
賃金ではなく、標準報酬月額での確認が必要です。
月額変更届の手続きが漏れないようにする
随時改定の月額変更届は、明確な処理期限が定められていません。そのため、部署や担当者で期限を決め、届け出漏れのないように処理をすすめましょう。
提出が漏れていたことに後から気が付いたときは、速やかに所管の年金事務所に処理方法の確認が必要です。
定時決定と重複するときは随時改定が優先される
4月~6月の定時決定の時期に昇給があったときは、定時決定での変更を待たずに、随時改定を行います。
優先順位としては、随時改定、定時決定の順です。
3つの条件に該当するときは速やかに随時改定を行おう
社会保険の随時改定とは、定時決定を待たずに3つの条件に該当したとき、都度、標準報酬月額の変更をする処理のことです。随時改定の手続きに明確な期限は設けられていないものの、手続きが漏れれば正確な社会保険料を納付できなくなります。
毎月処理日を設けるなどして、随時改定の手続き漏れがないように注意しましょう。
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