雇用保険料とは?計算方法や控除するタイミング・手続きを徹底解説!
給与計算ソフト
2023.06.09
2023.06.09
雇用保険料は労働保険料の一つで、毎年1回必ず納めるものです。間違いのない計算でスムーズに納付するには、基本や計算方法を十分に理解しなくてはいけません。本記事では、雇用保険料の概要から加入条件、計算方法や納付方法、知っておきたい注意点についてわかりやすく解説していきます。
雇用保険料は雇用保険に加入するすべての従業員から徴収し、事業主側も支払うものです。
正しい計算方法や加入条件を知って、間違いなく納めなくてはいけません。
本記事では雇用保険料の扱い方や計算方法などを解説しています。間違いやすい注意点もお伝えしますので、ぜひご活用ください。
雇用保険料とは?
まずは雇用保険料の基本から知っておきましょう。雇用保険料は、労働保険料として労災保険とまとめて取り扱われることが多いですが、こちらでは雇用保険料についてのみ解説します。
雇用保険料は雇用保険の掛け金
雇用保険料は、名前のとおり雇用保険の掛け金のことです。
雇用保険に加入しなければ当然発生しませんが、その場合は失業給付や育児休業給付など、さまざまな給付を受けられません。
雇用保険料は従業員と雇用主が分けて負担するもので、それぞれの負担割合は厚生労働省から発表されます。
同じ労働保険の労災保険は全額雇用主負担であるため、混同しないように注意しましょう。
雇用保険料の控除タイミング・納付の仕組みについて
雇用保険料の控除は、毎月の給与支給のタイミングにおこなわれます。そのため例えば月末に締め・支払いが翌月の20日の場合、4月1日に入社した社員は翌月の給与で4月1日~4月30日までの保険料が控除されます。
2022年の雇用保険料率改定・引き上げについて
2022年には、雇用保険法の改正がありました。
4月には事業主負担の保険料率、10月には労働者負担・事業主負担の保険料率と2段階で引き上げが実施されました。
令和5年度の雇用保険料の早見表は以下の通りです。

雇用保険の加入対象者・加入条件について
雇用保険の加入対象者は、基本的に以下の条件を満たすすべての従業員です。
- 31日以上の雇用をする見込みがある
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 学生ではない(ただし、夜間や定時制などの場合は加入対象)
ただし、雇用形態によって少しずつ条件が異なる部分があります。
正社員
企業や事業所で常時雇用されている正社員は、前述した3つの基本的な条件をすべて満たしていることがほとんどであるため、加入対象者になります。勤務体制や給与形態は関係ありません。
被保険者区分は「一般被保険者」です。
パート・アルバイト従業員
パートやアルバイト従業員のような、非正規雇用の従業員も雇用保険の加入対象者です。加入条件は正社員と同様に、基本的な3つの条件を満たす必要があります。
被保険者区分も正社員と同じ「一般被保険者」です。
契約期間を定めている従業員で、雇用期間が31日未満になる場合は雇用保険の加入対象から外れてしまいます。
高齢の従業員
65歳以上の高齢従業員も、条件を満たす場合は雇用保険の加入対象者に該当します。
被保険者区分は「高年齢被保険者」です。
加入条件も基本的な3つの条件のみですが、高年齢被保険者に区分されるには、保険年度が始まる4月1日時点で満64歳を迎えている必要があります。
この条件を満たしていない場合は、一般被保険者として加入します。
季節労働者
特定の季節のみや、条件を満たす期間にのみ雇用される人が季節労働者に該当します。
短期労働者として扱われるため、以下の条件を満たす人が加入対象者です。
- 雇用契約期間が4ヵ月以上1年未満
- 週の所定労働時間が30時間以上
この条件を満たす場合は「短期雇用特例被保険者」として加入できます。
雇用期間が1年を超えたり、雇用期間中に65歳を迎えたりする場合は、保険区分が変化します。
日雇い労働者
日雇い契約で労働する人や、30日以内の雇用契約で労働する人は、日雇い労働者に該当します。以下の条件を満たす場合は、雇用保険の加入対象者です。
- 適用区域内に居住している
- 適用事業に雇用されている
- 事業場が適用区域内にある
- 上記条件に該当しない場合で、ハローワークの認可を受けている
これらの条件を満たす場合は「日雇労働被保険者」として雇用保険に加入できます。
日雇労働被保険者の保険料の取り扱いは、他の区分とは大きくことなるため、雇用する際は再確認しましょう。
雇用保険料の計算方法・納付方法とは
雇用保険料の計算には、従業員の給与額と雇用保険料率が必要です。雇用保険料率と雇用保険料の計算式を解説します。
雇用保険料率を確認する
雇用保険料率とは、厚生労働省から毎年発表されるもので、雇用保険料を計算する際に使う率です。
保険料に対する給付が均等になるよう「一般事業」「農林水産・清酒製造の事業」「建設の事業」の3つに分けて、それぞれ料率が決められています。また失業手当の受給人数や実質賃金などを参考にして決定されるため、年度によっては変更される場合があります。。
雇用保険料を計算する際は、常に最新の雇用保険料率を把握できるようにしておきましょう。雇用保険料率は、厚生労働省のホームページから確認できます。
雇用保険料の勘定科目とは
雇用保険を納付する際の勘定科目は、給与から天引きした際と同様の勘定科目に振り分けられます。勘定科目には「法定福利費」か「立替金」が記載できます。
法定福利費とは、企業が福利厚生として従業員のために支払う費用のうち、法律で義務付けられているものを指します。
立替金とは、従業員や取引先などが負担すべき支出を、一時的に立て替えるものを指します。
一般的には、「法定福利費」として勘定科目に振り分けることが多いです。
雇用保険料の計算式
雇用保険料を算出する際の計算式はとてもシンプルです。
額面給与額(または賞与額)×保険料率 = 雇用保険料 |
労働者と事業主では負担の割合が異なるため、雇用保険料を算出する際はそれぞれの保険料率を使って計算します。
以下の条件を設定して、実際に計算してみましょう。
業種 | 商社(一般の事業) |
額面給与額 | 35万円 |
賞与額 | 60万円 |
労働者の保険料率 | 5/1,000 |
事業主の保険料率 | 8.5/1,000 |
[給与にかかる雇用保険料]
従業員:35万円 × 0.5% = 1,750円
事業主:35万円 × 0.85% = 2,975円
[賞与にかかる雇用保険料]
従業員:60万円 × 0.5% = 3,000円
事業主:60万円 × 0.85% = 5,100円
[合計の雇用保険料]
従業員:1,750円 + 3,000円 = 4,750円
事業主:2,975円 + 5,100円 = 8,075円
このように計算できます。
ポイントは従業員と事業主で保険料率が違うことと、給与と賞与それぞれに雇用保険料がかかるという点です。
雇用保険料の納付する
雇用保険は公的な労働保険制度の一つであるため、事業所がある地域を管轄する労働基準監督署に納付します。納付は原則として1年に1回です。
前年度の4月1日~3月31日までに発生した賃金を元に計算したうえで、6月1日~7月10日(10日が土曜日の場合は12日、日曜日の場合は11日)までに手続きをおこなわなくてはいけません。
年末調整をする
年末調整では、その年に支払った社会保険料を課税対象となる金額から控除する必要があります。
年末調整にて雇用保険料を含む社会保険料の控除をおこなうには、企業側は以下の書類が必要となるため準備しましょう。
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿
- 源泉徴収票
上記3つの書類に関する詳細やテンプレートは、以下の国税庁公式サイトからご確認いただけます。
参考:[手続名]給与所得者の保険料控除の申告|国税庁
参考:[手続名]給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿の作成|国税庁
参考:[手続名]給与所得の源泉徴収票(同合計表)|国税庁
雇用保険料を計算するときの注意点
雇用保険料の計算自体は難しいものではありませんが、手計算の場合はミスが生じやすいでしょう。雇用保険料の計算時には、以下の点には十分に注意しましょう。
入社した社員に雇用保険料が発生するタイミング
雇用保険料が発生し、従業員の給与から徴収するタイミングは、基本的に「給与を支払う都度」です。
例えば、6月の勤務から雇用保険の加入条件を満たした従業員がいたとしましょう。
給与の締日が月末で、支払日が翌月の10日である場合は、7月10日に支払う給与から雇用保険料を徴収することになります。
賞与・通勤手当(交通費)なども対象になる
「雇用保険料の計算方法」でも触れた部分ですが、賞与も雇用保険料がかかる対象に含まれます。
賞与の金額は毎回異なるため、雇用保険料も毎回変動する点を十分に考慮しましょう。アナログで計算をしている場合は、賞与が発生する月は業務量が大きく増えることになります。
従業員数が多いと作業量も膨大になってしまうため、業務効率化を目指すなら給与管理システムを導入するとよいでしょう。
端数の処理はルールを守る
雇用保険料を賃金から天引きする際は、厚生労働省が定めたルールに則って端数を処理しなくてはいけません。
● 被保険者負担分の端数が50銭以下の場合は切り捨て
● 50銭1厘以上の場合は切り上げ
この2点は必ず守るようにしましょう。
ただし、労使協定を始めとした会社のルールで切り捨てや切り上げが決まっている場合は、そのルールを優先できます。
雇用保険料に関してよくある質問
ここからは、雇用保険料に関してよく生じる疑問について紹介します。雇用保険料率の早見表についてや、 雇用保険料を変更させるタイミング、退職した従業員からの雇用保険料の徴収について解説していきます。
雇用保険料を変更させるタイミングとは?
雇用保険料率の変更が生じた際には、改定後の料率はいつの給与計算から反映してよいのでしょうか。
例えば2022年10月の雇用保険料の引き上げ時には、「10月1日以降で最もはやい締め日で支払われる給与」となります。
賃金締切日(締め日)を基準に変更対応をするように、覚えておくとよいでしょう。
退職した従業員から雇用保険料はいつまで徴収する?
退職した従業員からは、雇用保険料はいつまで徴収すべきなのでしょうか。
雇用保険料の控除は、「退職者の最終給与支払い日まで」となります。そのため、従業員がやめた後に支払う給与からも控除する必要があるため、ご注意ください。
雇用保険料は加入対象や計算方法を理解して正しく納付しよう
雇用保険は加入対象者が拡大され、より多くの従業員が加入するようになりました。
計算する際は最新の雇用保険料率をしっかりと把握し、間違いのないように注意しましょう。
従業員数が多い場合は、給与管理システムを導入するとまとめて雇用保険料を計算できます。従業員と事業主で分けて計算したり、賞与分を追加で計算したりする手間も大きく省けるため、検討するのも手段の一つでしょう。

【監修者】涌井好文(社会保険労務士)

涌井社会保険労務士事務所代表。就職氷河期に大学を卒業し、非正規を経験したことで、労働者を取り巻く雇用環境に興味を持ち、社会保険労務士の資格を取得。 その後、平成26年に社会保険労務士として開業登録し、現在は従来の社会保険労務士の業務だけでなく、インターネット上でも活発に活動を行っている。
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