所得税の配偶者控除を受けるための要件・年収の壁をあわせて徹底解説!
給与計算ソフト
2023.08.23
2023.08.23
所得税の配偶者控除とは、年収が一定額以下の配偶者がいる場合に、税金が安くなる制度のことです。扶養控除は配偶者以外の扶養家族が対象となるので、適用範囲が異なります。配偶者控除を受けるためには、年間所得が48万円以下の必要があるため注意してください。
1. 所得税の配偶者控除とは?
所得税の配偶者控除とは、年収が一定額以下の配偶者がいる場合に扶養する側の所得税が減額される制度のことです。配偶者の所得によって配偶者控除が受けられるかどうかは決まるのですが、控除の対象となるのは扶養側の所得です。配偶者に対して控除が適用されるわけではないので間違えないようにしてください。
当然ですが所得税は所得が多ければ多いほど税金が増えていきます。しかし、配偶者がいる場合は、全ての所得を自分のために使っているわけではありません。配偶者を養うために使っている所得も当然ですがあります。そういった状況において、配偶者がいない人と同じように課税をしてしまうと、結婚をするメリットがないということになりかねません。
そのため、配偶者控除によって税制上の優遇が受けられるようになっているのです。しかし、配偶者の所得次第では控除が適用されない場合があります。なぜなら、自分の所得を配偶者のために使っているからこそ、配偶者控除が存在しているからです。
配偶者自身に収入があり、扶養する側がお金を使わなくても生活が可能であれば、税金を安くする意味もありません。こういった理由から一定の所得制限を設けているのです。
1-1. 所得税の配偶者特別控除について
所得税には配偶者特別控除という制度もあります。これは配偶者控除が所得制限によって受けられない場合に適用される控除のことです。配偶者控除と同様に適用されるための要件はあるのですが、それさえ満たしていれば税金が安くなります。
配偶者控除が受けられなかった場合は、配偶者特別控除が適用されないか確認してみてください。
1-2. 住民税・所得税で配偶者控除額は違う?
一定の要件を満たす配偶者がいる方は配偶者控除または配偶者特別控除が適用されますが、控除額は所得税と住民税で異なります。[注1]
所得税 | 住民税 | |
配偶者控除 | 最高38万円(配偶者の年齢が70歳以上の場合は最高48万円) | 最高33万円(配偶者の年齢が70歳以上の場合は最高38万円) |
配偶者特別控除 | 最高38万円 | 最高33万円 |
所得税と住民税は、課税所得額にそれぞれの税率を乗じて計算しますので、控除額によって税額が変化します。
適正な控除額を用いて計算しないと、正しい所得税および住民税を算出できず、保険料に過不足が生じる可能性があります。
所得税と住民税を算出する際はそれぞれの控除額をよく確認してから計算を行うようにしましょう。
[注1]「所得控除に関する資料」|財務省
2. 所得税の配偶者控除を受けるための要件
所得税の配偶者控除を受けるためには、その年の12月31日の時点で次の要件を全て満たしていなくてはいけません。
- 民法の規定による配偶者であること
- 納税者と生計を一にしていること。
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること。
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者ではないこと。
ほとんどの場合は「年間の合計所得金額が48万円以下であること」以外の条件を満たしているでしょう。配偶者控除を受けるためには、所得の要件を満たすのが最も大切と考えてください。
また、民法の規定による配偶者という表現がわかりづらい方もいるでしょう。これは法律上で配偶者と認められていればいいという意味です。内縁関係の人は民法によって配偶者と定められているわけではないので、配偶者控除の要件を満たしません。
また、納税者と生計を一にしているというのは、同居しているかどうかは関係ありません。別居中の配偶者に生活費を支給しているような場合でも、納税者と生計を一にしていることになるので配偶者控除が適用されます。
そして年間の合計所得金額が48万円以下であるというのは、給与のことではありません。給与収入のみの場合は、給与所得控除額が適用された後の金額が48万円以下である必要があります。給与所得控除額は55万円であるため、年収が103万円以下であれば控除が適用されるのです。
所得と給与は似ていますが違うものです。混同しないように注意してください。
また、従業員の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、配偶者の所得に関わらず配偶者控除が適用されません。この点についても覚えておくようにしてください。
3. 所得税の配偶者控除を受けるには申告書の提出が必要
年末調整において所得税の配偶者控除を受けるためには「給与所得者の配偶者控除等申告書」という申告書を提出しなくてはいけません。これは給与所得者がその年の最後に給与などの支払いを受ける日の前日までに提出しなくてはいけないので注意してください。
従業員から申告書の提出があったら、会社側はその支払者の源泉所得税の納税ちの所轄税務署長に提出をしなくてはいけません。税務署長から提出を求められるまでに間は、提出を受けた給与の支払者が申告書を保存しておかなくてはいけないので注意してください。
また、確定申告の際に配偶者控除を受けることも可能です。会社に所属していないという方は、確定申告の際に控除を受けるようにしてください。
国税庁の公式サイトでは、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告書のテンプレートが公開されています。
必要に応じて、以下からご活用ください。
参考:[手続名]給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告
4. 配偶者の年収の壁をおさらい
配偶者の年収の壁は、複数の段階に分けられます。
まず1つ目は年収100万円の壁です。
住民税には45万円の非課税枠があるため、給与所得控除(最低55万円)を差し引いた残りの所得が45万円以下、つまり年収100万円までは住民税が非課税になります。[注1]
2つ目は年収103万円の壁です。
所得税は、給与所得控除に所得税の基礎控除(48万円)を加えた103万円までは非課税となりますが、それを超えると所得税が発生します。[注2]
また、年収が103万円を超えると所得額が48万円を超えるため、配偶者控除が受けられなくなります。[注3]
3つ目は年収106万円の壁です。
2022年10月以降、社会保険の適用が拡大され、パートやアルバイトでも以下の要件に該当する場合は社会保険への加入が義務づけられることになりました。[注4]
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 雇用期間が継続して2ヵ月を超えると見込まれる
- 賃金の月額が8.8万円以上
- 学生ではない
- 被保険者の総数が企業規模で常時501人以上の特定適用事業所に勤務している
8.8万円×12ヵ月=105.6万円となるため、年収が106万円を超えた場合は配偶者も社会保険に加入し、各種保険料を支払わなければならないことになります。
ただ、その他の要件に適さない場合、106万円の壁は適用されません。
なお、5については従業員数が500人以下の会社で働いていても、労使で合意している場合は社会保険に加入できます。
4つ目は年収130万円の壁です。
年収が130万円を超えると扶養を外れることになり、自身で健康保険や年金に加入する必要があります。[注5]
勤め先の健康保険や年金に加入している場合、保険料は事業主と折半になりますが、そうでない場合は国民健康保険と国民年金に加入することになります。
6つ目は年収201万円の壁です。
配偶者特別控除が適用されるのは合計所得額が133万円以下の場合までです。年収が201万円を超えると合計所得額が133万円を超えるため、控除を受けられなくなります。[注6]
[注1]「家族と税」|国税庁
[注2]「パート収入はいくらまで所得税がかからないか」|国税庁
[注3]「配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか」|国税庁
[注4]「平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大)」|厚生労働省
[注5]「税・社会保障制度等について」p2|厚生労働省
[注6]「配偶者特別控除」|国税庁
5. 2018年の制度改正による変更点2つ
ここからは、2018年1月1日の税制改正にて生じた以下2つの変更点について、解説します。
・納税者の年収が1,220万円を超えると控除対象外
・配偶者の年収上限が150万円に引き上げ
一つずつ、詳しく確認していきましょう。
5-1. 納税者の年収が1,220万円を超えると控除額は0円になる(対象外)
平成29年分以前は、給与所得者本人の合計所得金額にかかわらず、年収103万円以下の控除対象配偶者がいた場合は、配偶者控除を受けることが可能でした。
しかし、平成30年分以後は、給与所得者本人の合計所得金額が1,000万円を超えた場合、配偶者控除の適用を受けられなくなりました。[注7]
合計所得金額1,000万円は、給与所得のみの場合の収入1,220万円に相当するため、年収が1,220万円を超えた場合は配偶者控除を受けられないことに注意が必要です。
[注7]「配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しに関するFAQ」p9|国税庁
5-2. 配偶者の年収上限が150万円に引き上げられた
配偶者控除の対象となるのは、合計所得金額が900万円以下の給与所得者と生計を一にする配偶者で、合計所得金額が85万円以下の人です。
合計所得金額85万円は、給与収入のみの場合、年収150万円に相当します。[注7]
配偶者の年収が150万円を超えてしまうと配偶者控除の対象外となるので注意しましょう。
なお、年収201万までなら、配偶者特別控除の適用対象となります。
[注7]「配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しに関するFAQ」p12|国税庁
6. 所得税の配偶者控除と扶養控除の違い
所得税には配偶者控除のほかに、扶養控除という制度があります。どちらも税金が安くなる制度なのですが、内容が大きく異なるので理解しておいてください。
まず先ほども説明しているように配偶者控除というのは、要件を満たした配偶者がいる場合に税金が安くなる制度のことです。それに対して扶養控除というのは、要件を満たした配偶者以外の扶養家族がいる場合に税金が安くなる制度のことです。つまり、適用される範囲が違います。
言葉の意味だけを考えると、自身で生計を立てることができない配偶者は扶養家族になります。しかし、配偶者が扶養家族だとしても扶養控除の適用対象にはなりません。扶養控除を扶養家族に対して適用される控除と考えていると、配偶者も適用対象になると思い込んでしまうので注意してください。
納税者側の立場になって考えると、配偶者控除と扶養控除の両方が適用される場合はあります。例えば、配偶者とその子供の3人で暮らしているようなケースです。配偶者も子供も自分のお金で養っているような場合は、配偶者控除と扶養控除の両方が適用されます。
このように状況次第ではかなり税金面での優遇を受けることができるので、これらの制度を積極的に活用するようにしてください。
7. 配偶者控除を受けるための要件をチェック
配偶者控除が適用されると税金がかなり安くなります。知らないだけで実は配偶者控除の適用対象となっている人がいるかもしれません。所得税などの税金に悩んでいる方は、配偶者控除や扶養控除が適用されないか確認してみてください。

【監修者】金子賢司

東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はジャザサイズ。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信。【保有資格】CFP、住宅ローンアドバイザー、生命保険協会認定FP
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