管理会計システムとは?導入メリットや活用方法を詳しく解説
管理会計システム
2023.03.09
2023.03.09
管理会計は、企業の現在の経営状況を具体的に見える状態にする重要な役割を持っています。財務会計とは異なり作成が責務とはされていませんが、変化に対してリアルタイムでの対応が求められる昨今において、管理会計が重視されています。本記事では、近年重要視されている管理会計システムについて、導入メリットや活用方法、自社にベストなシステムの選び方などを踏まえてより詳しく解説します。
管理会計システムを理解するうえで知っておきたい管理会計の重要性
管理会計は企業の未来を左右する重要な役割を持っていますが、一方で法的規制は定められていません。基本的には、管理会計における具体的なルールや形式などがないのです。そのため、その企業に相応しい最適なルールを自ら作成、あるいは選び出す必要があります。管理会計をおこなうためには、企業の経営状況を表したデータを適切に把握しなければなりません。
経営者は、管理会計をとおして企業の現状を以下4つのポイントで分析します。
- 安全性:長い目で見た際に安定して続けられる計画かどうか
- 生産性:1人の従業員に対して労働生産性が基準値に届いているか
- 収益性:生産性を踏まえて十分といえる利益が作り出せているか
- 成長性:将来ますます成長していけるかどうか
管理会計と混同されがちな財務会計との違いについて
管理会計と混同されがちなのが、財務会計です。どちらも企業の経営状況を見える状態にして公開する点で共通しており、2つ合わせて企業会計と呼ばれます。これらの違いは、公開する対象にあります。
管理会計は、企業の内部に向けて公開されます。自社の社員だけで共有できればいいため、前述のように明確なルールや形式は存在しません。
一方で、財務会計は企業の外部に向けて作成されます。企業の外部の関係者はステークホルダーとも呼ばれ、以下のような相手が該当します。
- 株主
- 債権者
- 取引先
- 仕入れ先
企業の外部に向けて公開されるため、統一して作成される財務諸表を参考とします。利害の一致するステークホルダーに向けてしっかりと経営状況を説明することで、お互いの関係性を良好な状態に保ちます。
管理会計システムの導入によってできる3つのこと
1. さまざまな視点で現在の経営状況が分析できる
管理会計システムでは、商品ごとや部門ごと、プロジェクトごと、期間ごと、地域ごとといったような細かなセグメントの設定が可能です。セグメントを設定しておくことで、さまざまな視点から現在の経営状況が分析できます。
管理会計において、セグメントを設定せずに組織全体というたった1つの視点のみで分析をおこなうことは、非常に困難です。多くの管理会計システムでは、独自のセグメント設定が可能であるため、企業に相応しい視点を取り入れましょう。
2. 今後の流れを見据えたシミュレーションを作成できる
もし、今の自分の判断で望ましくない結果が訪れるとわかっていたら、誰もがその選択を避けることでしょう。企業の経営において、もっとも有力とされるのは未来の情報です。しかし、自由に時間を行き来することはできません。そこで、過去の情報を参考にしながら未来を予測してみます。
管理会計システムは、現在の状況や過去の情報、今後の経営戦略を踏まえた未来のシミュレーションを作成できます。絶対とまでは言い切れないシミュレーションではありますが、企業の将来のために参考にするべき重要な情報のひとつだといえるでしょう。
3. 企業会計において重要な帳簿を自由に作成できる
管理会計にルールや形式はありません。その企業の経営状況が、よりわかりやすく把握できる帳簿の作成が求められます。管理会計システムには、使用しやすい帳簿のフォーマットがあらかじめ設定されています。ただし、固定のフォーマットでは使いづらかったり自社に適用しづらかったりといったこともあるでしょう。どのような場合でも、改めて独自のフォーマットを作成できます。
管理会計システムを導入する3つの大きなメリット
1. 手間のかかる管理会計を効率化できる
企業にしっかりとした効果をもたらせられるデータを集めるためには、管理会計をより詳細におこなう必要があります。企業の安全性や生産性、収益性、成長性といった観点で適切に分析するには、多様な視点を持たなければいけません。管理会計を適切に活かす前に、情報の収集に手こずってしまうと本末転倒です。
実際のところ、システムに頼らず人の手だけで管理会計に必要な情報を集めるのは、担当者にとって大きな負担となります。その結果、ほかの業務にも影響をきたしてしまうかもしれません。
そこで、効率的に管理会計がおこなえるシステムを導入することで、必要な手間を大幅にカットできます。財務会計システムのなかには、管理会計を合わせておこなえるものがあります。こういったシステムを採用することで、財務会計と管理会計を同時におこなえるので更なる効率化が期待できます。
2. 経営状況を効率よく共有することで現場も経営的視点が持てるようになる
管理会計システムを導入することで、経営層だけではなく現場の社員たちも経営的視点が持てるようになります。
たとえば、管理会計をおこなうためにそれぞれの部門において責任者は損益計算書(PL管理)が必要となります。部門ごとに自分たちのことばかりを考えるのではなく、会社全体での利益が意識できるでしょう。
そのほか、管理会計をおこなうために重要業績評価指標(KPI)が設定されます。KPIとは、Key Performance Indicatorを略したものです。これは、経営者が各部門における課せられた目標の達成率を計るために、定められた指標を指します。
たとえば、企業における営業部門では、達成率を計るために訪問件数や受注件数が設定されます。KPIのような目標とそれに対する達成率を数値化して共有することで、社員それぞれが広い視点を持てるようになるでしょう。
3. 企業が向かうべき方向を会社全体で把握できる
管理会計システムを導入することで、効率的に管理会計が進められるだけでなく、自社にとってもっとも最適とされる経営戦略や経営方針が定まってきます。経営を担う社員たちの間でこれらを明確にできたら、続いてそれぞれの部門ごとに目標や施策を具体的に提示します。
今、自分たちは何のために業務をこなしているのか、現場の一線にて仕事している従業員たちにとって、このような不安は全体の士気が下がる原因の1つです。管理会計システムの導入によってさまざまな視点で指標がわかるようになれば、自分たちが今あたっている業務にも大きな意味が見出せます。すなわち、管理会計システムの導入は、企業全体のモチベーション向上に役立てられるのです。
管理会計システムの導入にあたり把握しておきたい2つのデメリット
管理会計システムを導入すれば、財務会計だけでなく管理会計を企業に取り入れられます。大きなメリットが得られる一方で、見逃せない2つのデメリットが存在します。導入する前に、あらかじめ把握しておきましょう。
1. 導入にあたりコストや手間がかかる
管理会計システムを導入すれば、人の力だけで地道に管理会計をおこなうよりも大幅にコストをカットできます。一方で、導入するためにコストや手間がかかることを忘れてはいけません。管理会計システムを新しく導入するには、社内全体において会計に関するルールを改めて設ける必要があります。
それだけでなく、人件費やシステムの維持費などが発生します。また、最新の管理会計システムを導入しようとすれば、相応のコストがかかります。導入するにあたり、将来的な見方も踏まえながらコストや手間を考えて慎重に決断しましょう。
2. 情報漏洩やデータ消失といったリスクを抱えてしまう
管理会計システムでは、管理会計を紙媒体ではなくコンピュータを使用します。システム化しておけばデータを効率よくまとめられるだけでなく、多くの端末で同時に確認できます。一方で、システムゆえに情報漏洩やデータ消失といった深刻なリスクがある点は理解しておかなければなりません。
多くの管理会計システムには、データ消失や改ざんを防止するためにバックアップを保存しておく機能がそなわっています。だからといって安心はできません。安全性が確保されている保存先を用意しましょう。そのほか、情報漏洩といったリスクも見逃せません。100%安全と言い切るシステムはありませんが、セキュリティ対策を徹底しておくことが重要です。
管理会計システムを実際に用いた4つの活用シーン
1. 予算管理:現実的に見て相応しい予算を設定する
企業の経営において重要となるのが、計画的なお金の管理です。予算管理とは、来年度や中長期間にて予算を主軸に計画を組み上げていくことを指します。企業の経営を続けていくために、必要となる資源を把握するべくおこなわれます。
管理会計システムを導入して、これまでのデータを踏まえながらある程度の期間を定めて予算を組んでみましょう。加えて、期間内でどれだけ目標を達成できているかをチェックします。シミュレーションを合わせて活用することで、より適切な予算管理がおこなえるでしょう。
2. 月次決算:企業の決断力を左右する
企業の経営において、重大な決定が求められるシーンは何度も訪れるでしょう。そのような場面で意思決定に遅れを出すわけにはいきません。迷ってしまうのは、現在の経営状況を明確に把握できていないためです。
管理会計システムを導入して、月次決算をおこなうようにしてみましょう。1カ月ごとに、経費や営業成績といった状況を見えるかたちで明らかにします。現在の経営状況がリアルタイムで明確になるため、選択の度に迷ってしまうケースが少なくなるでしょう。
3. 原価管理:製造業に欠かせない管理会計
製造業において用いられるのが、原価管理です。人件費や設備費、原材料費といった原価をあらかじめ確認しておき、必要となるコストを見られる状態にします。
原価管理では、商品1つを作成するためにかかる費用に対して、あらかじめ目標を決めておき、実際にかかったコストを比較して分析します。分析を重ねることで、より適切な原価が見えてきます。原価管理をおこなうことで、本当に不要な減らすべき無駄がわかるでしょう。
4. 業績評価:正しくおこなって企業を導く
管理会計は、企業の業績を正しく把握するためにも用いられます。これが、業績評価です。管理会計における業績評価では、とくに限界利益が重視されます。企業の経営においてかかる費用は、固定費と変動費に分類できます。固定費とは売り上げに影響されることなく必ず発生する費用であり、変動費は売上高や販売数量の変化によって上下する費用です。
限界利益とは、その年の売上高から変動費を差し引いた数値です。たとえ経常利益や営業利益が黒字だったとしても、売上高が変動費を上回っていないのは、非常に問題のある状態だといえます。
企業は、固定費型と変動費型の2種類に分類できます。固定費型の企業の場合は、限界収益をあまり注目する必要がありません。ですが、変動費型の場合は、気をつけないと売上高が変動費を上回れない状況が出てくる恐れがあります。正しい業績評価を心がけましょう。
パッケージやシェア率だけではない!管理会計システム3つの選び方
1. 管理会計やレポートに関わる機能を重視した選び方
先述のとおり、管理会計にはルールや形式などは決められていません。そのため、企業に合わせて適切な管理会計をおこなう必要があります。データを集めやすく、内部に向けて見やすくてわかりやすい管理会計がおこなえるシステムを選びましょう。見やすくてわかりやすく見える状態にしてくれるレポート機能も、非常に重要です。
2. 柔軟に対応できる機能性に着目した選び方
もし、すでに管理会計システムを利用しているのであれば、柔軟に対応できる機能性が備わっているかに着目してみるのもよいでしょう。とくに、管理会計のうち予算管理では複数の部門が携わっているため、システムの移行に相応の労力が発生します。データ移行のしやすさは重要なポイントです。
3. クラウド型やパッケージ型など提供タイプによる選び方
管理会計システムは、データの取扱形式によって3つのタイプに分類できます。それぞれにメリットやデメリットがあるため、自社に相応しい提供タイプを選びましょう。
タイプ | メリット | デメリット |
---|---|---|
クラウド型 |
・導入の速さ ・常に最新バージョンが利用できる |
・セキュリティ面でリスクがある ・買い切りではない |
パッケージ型 |
・セキュリティ面のリスクが低い ・オフラインでも使用できる |
・手動でのバージョンアップ ・多彩すぎる機能がネック |
オンプレミス型 |
・セキュリティ面はとくに安全 ・高い機密性を誇る |
・導入費用が高い ・維持費が気になる |
管理会計システムを導入して企業が向かうべき方向を正しく見定めましょう
企業会計は企業の経営において非常に重要です。責務のある財務会計とは異なり、管理会計はおこなわなければならないものではありません。しかし、管理会計を導入して正しく分析することで、企業が向かうべき方向が明確になります。
管理会計を導入するには、相応のコストや手間がかかってしまうのがネックです。そこでおすすめなのが、管理会計システムです。企業に大きなメリットを与えてくれる管理会計システムを導入して、効率よく活用しましょう。
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