年末調整の書き方をわかりやすく!扶養やパートなどケースに応じて解説
労務管理システム
2023.12.04
2023.12.04
年末調整の書き方は、従業員の事情によって異なるため、正しい記載方法がわからず、時間や手間がかかることもあります。提出が遅れてしまうと、会社側の業務負担が増加する恐れもあります。当記事では、印鑑の必要性などを含め、年末調整の書き方について徹底解説します。また、パートやひとり親、育休中の従業員、iDeCo(イデコ)の場合の年末調整における書き方のポイントや注意点も紹介します。
▼年末調整の書き方を知りたい方はこちらもチェック!

【社員向け】年末調整の書き方ガイド
この資料では、一般の社員向けに、年末調整で必要な書類や書き方などをわかりやすく解説しています。2023(令和5)年の年末調整の書き方のガイドとしてご活用ください。
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年末調整とは?
年末調整とは、毎月(毎日)の給料や賞与などを支払う際に源泉徴収をおこなった税額の総計と、その年の本来納めるべき税額(年税額)を比較して、その過不足額を精算する手続きのことです。
過不足額が生じる理由はいくつかあります。まず、源泉徴収税額の計算をおこなう際に使用する税額表は、毎月の給与に変動はないとして作成されていることが理由として挙げられます。また、その年の途中で扶養親族の人数が変化した場合にも、控除金額が変わるため、過不足額が生じます。さらに、毎月の源泉徴収税額を計算するときに、生命保険料控除や地震保険料控除などの控除は考慮されていないため、これらの控除を適用する場合にも過不足額が発生します。
このように、従業員によるさまざまな理由により、その年に源泉徴収をおこなった税額と、本来納めなければならない税額に差が生まれることがあるため、年末調整により精算をおこなう必要があります。また、従業員は基本的に年末調整を受ければ、確定申告の負担がなくなります。しかし、年末調整の書類に不備があると、年末調整の手続きが遅れてしまい、従業員自身で確定申告をおこなわなければならない場合もあります。

年末調整とは何か?対象者や必要書類、スケジュールをわかりやすく解説!
年末調整は、人事労務担当者だけではなく、一般の従業員にとっても、所得税(復興特別所得税を含む)の納税額を確定させるための重要な業務の一つです。当記事では、年末調整とは何なのかについてわかりやすく解説します。年末調整の理由や対象者、スケジュール・流れなど、基本的な知識を深めたい人は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
年末調整の書き方
ここでは、年末調整の書き方について詳しく紹介します。
年末調整に必要な書類
年末調整の対象者に該当する従業員は、年末調整を受けるために、下記の書類を記載して、勤務先に提出する必要があります。なお、従業員によっては、提出が不要な書類もあります。
- 扶養控除等(異動)申告書
- 基礎控除申告書
- 配偶者控除等申告書
- 所得金額調整控除申告書
- 保険料控除申告書
- 住宅借入金等特別控除申告書
「扶養控除等(異動)申告書」「基礎控除申告書」「配偶者控除等申告書」は、「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」として1枚にまとめられています。また、適用する保険料控除によっては、控除証明書を添付しなければならないため、きちんと管理しておくことが大切です。また、就職・転職などで中途で入社した人で、年末調整を受けるには、前職の源泉徴収票を現職に提出する必要があります。
年末調整に印鑑は必要?
2021年度の税制改正により、2021年4月1日以降、実印の押印または印鑑証明書の添付が必要な書類などを除き、押印は不要になりました。
たとえば、国税に関する法令に基づき税務署長等に提出する税務関係書類などの申告書については、原則として押印が不要です。また、「扶養控除等(異動)申告書」には、従来押印のマークがありましたが、現在では廃止されています。
基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」は、基礎控除や配偶者(特別)控除、所得金額調整控除を受けるために記載する申告書です。(※1)
「基礎控除申告書」の部分には、給与明細などを参考に、合計所得金額の見積額を記載します。なお、給与所得以外の所得がある場合には、その合計額も記載します。
そして、合計所得金額の見積額を基に、「判定」欄の該当箇所にチェックを入れて、判定結果に対応する控除額を「基礎控除の額」欄に記載します。なお、配偶者控除または配偶者特別控除を受ける場合には、「区分Ⅰ」欄に、「判定」欄の判定結果に対応する記号(A~C)を記載します。
「配偶者控除等申告書」の部分には、配偶者の情報や合計所得金額の見積額を記載します。なお、夫婦ともに配偶者控除(配偶者特別控除)を受けられないため注意が必要です。配偶者の合計所得金額の見積額を基に、「判定」欄の該当箇所にチェックを入れて、判定結果に対応する数字を「区分Ⅱ」欄に記載します。「区分Ⅰ」欄と「区分Ⅱ」欄に記載した内容より、控除額を計算・記入しましょう。
「所得金額調整控除申告書」の部分には、該当する要件がある場合にチェックを入れます。なお、複数の項目に該当する場合、一つの項目にチェックを入れていれば問題はありません。「要件」欄において、「同一生計配偶者が特別障害者」「扶養親族が特別障害者」「扶養親族が年齢23歳未満」の項目にチェックを入れた場合、その要件に該当する同一生計配偶者または扶養親族の情報を記載します。また、「特別障害者に該当する事実」欄には、障害の状態または交付を受けている手帳の情報などの特別障害者に該当する事実を記載します。
(※1)[手続名]給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告|国税庁
扶養控除等(異動)申告書
「扶養控除等(異動)申告書」は、扶養控除や障害者控除、勤労学生控除、ひとり親控除などの控除を適用するために記載する申告書です。(※2)なお、この申告書は、その年の最初に給与を受け取る日の前日(年の途中に入社した場合には、最初に給与を受け取る日の前日)までに提出する必要があります。
扶養控除等(異動)申告書には、控除を受けるために、該当者がいれば源泉控除対象配偶者や控除対象扶養親族を記載します。また、「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」「住民税に関する事項」の欄にも、該当者がいれば適切に記載しましょう。
(※2)[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告|国税庁
保険料控除申告書
「保険料控除申告書」は、生命保険料控除や地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除の控除を受けるために記載する申告書です。(※3)
「保険料控除申告書」は、基本的に保険会社などから送付された証明書類を参考に記載します。
生命保険料控除では、「一般の生命保険料(新契約・旧契約)」「個人年金保険料(新契約・旧契約)」「介護医療保険料」の控除を受けられます。該当する保険の種類は、発行された証明書類で確認可能です。なお、新契約と旧契約で控除できる最大金額は異なるため、注意する必要があります。
地震保険料控除の地震保険料に係る控除額は最大で5万円です。また、旧長期損害保険料に係る控除額は最大で1万5,000円です。社会保険料控除と小規模企業共済等掛金控除では、自分が直接支払った保険料などについて、その全額を控除できます。なお、社会保険料控除や小規模企業共済掛金控除について記載する部分では、給与から差し引かれず自分が直接支払った保険料を記載します。

【社員向け】年末調整の書き方ガイド
この資料では、一般の社員向けに、年末調整で必要な書類や書き方などをわかりやすく解説しています。2023(令和5)年の年末調整の書き方のガイドとしてご活用ください。
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年末調整の書き方のポイント・注意点
ここでは、年末調整の書き方のポイントや注意点について詳しく紹介します。
パートの場合
パートの場合、複数掛け持ちしている人も少なくないでしょう。「扶養控除等(異動)申告書」は、1社だけにしか提出できなません。そのため、1カ所の会社でしか年末調整は受けられないので注意が必要です。複数の会社で年末調整を受けてしまったら、その事実を勤務先に説明して本業のみの会社で年末調整を受けられるよう、取り消し依頼をおこないましょう。また、年に途中でパートを辞めた場合には、給与総額が103万円以下であれば年末調整の対象になります。
なお、給与所得者の場合には、年収103万円以下は所得税がかからないため、源泉徴収がおこなわれていなければ、確定申告をする必要はありません。源泉徴収されている場合や、住民税の課税対象になる場合、医療費控除や寄付金控除といった年末調整を受けられない控除を適用したい場合などは、確定申告をおこなうのがおすすめです。

年収103万円以下のパートの年末調整とは?必要書類や書き方も紹介
パートタイマーで働く人も原則として年末調整の対象になります。しかし、パートを掛け持ちしている場合や、年収103万円以下という条件を満たして扶養内で働いている場合などは、年末調整の手続きは複雑になることもあります。 当記事では、パートの人の年末調整の必要性や、書類と書き方などをわかりやすく解説します。
ひとり親の場合
ひとり親控除では、納税者がひとり親であるときに、一定の金額の所得控除を受けられます。なお、ひとり親控除は2020年分の所得税から適用されています。ひとり親控除を受けるには、下記の条件をすべて満たす必要があるため、注意が必要です。
- その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいない
- 生計を一にする子がいる
- 合計所得金額が500万円以下
なお、生計を一にする子は、その年分の総所得金額などが48万円以下で、ほかの人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない場合に限られます。年末調整の手続きでは、ひとり親控除を適用するために「扶養控除等(異動)申告書」の「ひとり親」にチェックを入れましょう。

年末調整のひとり親控除を徹底解説!対象者や書き方、寡婦控除との違いも
会社勤めをしているひとり親の人は、年末調整でひとり親控除を受けることができます。ひとり親控除には、所定の手続きが必要なため、要件や書類の書き方などをしっかりチェックしておきましょう。今回は、年末調整のひとり親控除の対象者や申請方法、寡婦控除との違いなどについてわかりやすく説明します。
育休中の場合
勤務先は、対象者に該当する従業員すべての年末調整をおこなわなければなりません。育休中の従業員は「1年を通じて勤務している人」に該当し、年末調整を受けられます。育休中の従業員の年末調整の書き方は、ほかの従業員と同様のやり方で問題ありません。また、配偶者に課税所得がある場合には、配偶者の年末調整で、扶養控除や配偶者控除(配偶者特別控除)などを受けられる可能性があるため、忘れずに記載しましょう。
なお、出産育児一時金や出産手当金、育児休業給付金は非課税であるため、年末調整の対象になる収入には含まれません。
iDeCo(イデコ)を利用している場合
iDeCo(イデコ)の制度を利用している人の場合、年末調整で小規模企業共済等掛金控除を適用することができます。
iDeCo(イデコ)を主催している国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が送付されます。「保険料控除申告書」に、この証明書を参考に「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」と「合計(控除額)」の欄に合計金額を記載します。なお、支払った掛金の金額に関係なく、支払ったことの証明書類を提出または提示する必要があります。
年末調整の書き方がわからない場合はどうする?
年末調整の書類の書き方は、複雑になることもあり、わからない場合の対処方法について知りたい人もいるかもしれません。
その場合は、国税庁のサイトや手引きを参考にするのがおすすめです。動画も提供されているため、文字だけでは理解できない箇所も正しく把握できるでしょう。また、さまざまな控除を受けたい場合や、中途で入社した場合などで、年末調整の書き方がわからないときは、専門家に相談してみるのも一つの手です。
年末調整を忘れた場合はどうなる?
年末調整を忘れてしまった場合には、再調整もしくは確定申告で対応することになります。会社の年末調整の期限に遅れたとしても、実際の年末調整の手続きに間に合う可能性もあります。その場合には、再調整で対応しましょう。
再調整で対応できない場合には、従業員が自分で確定申告しなければなりません。確定申告の期間は原則として毎年2月16日から3月15日までです。確定申告の期限を過ぎると、延滞税や無申告加算税といったペナルティを課される恐れもあるので注意が必要です。

年末調整を忘れた場合や書類の抜け漏れがあった場合のリスクと対処方法とは?
年末調整を忘れた場合、控除を受けられなかったり、還付金を受け取れなかったりするリスクがあります。年末調整の抜け漏れが生じる可能性があるのは、従業員が「扶養控除等(異動)申告書」などの必要書類を期限までに提出しなかったケースや、控除の金額確定などの手続きにミスがあったケースです。この記事では、年末調整を忘れてしまった場合のリスクと再調整や確定申告、還付申告などでの対処法を紹介します。
年末調整の書き方を理解して適切に申告しよう!
年末調整ではさまざまな控除を受けられるため、書き方が複雑になることもあります。また、税制改正により、年末調整の書き方が変更される場合もあるため、最新の情報をきちんと収集することが大切です。年末調整の書き方に不明点や疑問点があり、なかなか解決しない場合には、国税庁のサイトや手引きを参考にしたり、専門家に相談したりするのがおすすめです。
▼年末調整の書き方について知りたい方はこちらもチェック!

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