年末調整は退職者にも必要?途中退職の対応や退職金の取り扱いを解説!
労務管理システム
2023.09.21
2023.09.21
年末調整とは、給与所得者に支払われた一年間の給与や賞与などから源泉徴収した所得税について、給与の支払者が年末に再計算し、過不足金額を精算する手続きのことです。退職者の年末調整をすべきかどうかは、従業員の事情や退職日などによって異なります。当記事では、退職者の年末調整について徹底解説します。
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年末調整ガイドブック|複雑な手続きをわかりやすく図解!
この資料では、年末調整の必要書類や書き方、源泉徴収の計算方法、年末調整後におこなうべき対応など、年末調整の手続きについて解説しています。2023(令和5)年の年末調整に向けての準備にご活用ください。
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基本的に退職者の年末調整は不要
年末調整は、原則として、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出している従業員について、雇用主が実施する義務があります。
そして、年末調整の対象者の基準には、「1年を通じて勤務している人」という該当条件があります。そのため、12月31日時点で在籍していない退職者については、基本的に年末調整の対象になりません。ただし、退職者でも年末調整の対象になる場合もあるため、年末調査業務をおこなう担当者はあらかじめどのような人が年末調整の対象者となるのかを把握しておくことが大切です。
年末調整は不要だが、源泉徴収票を発行する必要はある
退職者がその後別の会社に就職し、退職した年と同じ年に新たに給与や報酬を受ける場合は、基本的に退職した会社が年末調整をおこなう必要はありません。退職者は新たに就職した会社で、退職した会社の給与を含めた年末調整をおこないます。
ただし、新たに就職した会社での年末調整や消費税法の定めによって、源泉徴収票は必要となるため、退職者が出た会社側は退職後1カ月以内には源泉徴収票を発行しましょう。
また、退職や就職の時期によっては、新たな就職先での年末調整に間に合わないこともあり得ます。その場合は、退職者自身が確定申告を行うことになります。
参考:国税庁「No.2674 中途就職者の年末調整」
退職者の年末調整が必要になる場合
前述のとおり、通常は12月31日時点で在籍していない退職者は年末調整の対象外となります。しかし、場合によっては年末調整が必要です。ここでは、退職者のうち、年末調整が必要になる場合について詳しく紹介します。
死亡により退職した人
死亡により退職した方は、再就職の可能性はないため、年末調整をおこなう必要があります。なお、死亡や退職に関係なく、海外の支店などに転勤し、非居住者に該当する従業員に対しても、その年に確定した支払うべき給与については、出国するまでに年末調整をおこなう必要があります。
著しい心身の障害のために退職した人(年中に再就職の見込みがない場合)
著しい心身の障害のために退職した方については、その退職時期を考慮し、年内に再就職の見込みがあるかどうかの観点から、年末調整の対象者かを判断します。そのため、退職者が年内に再就職できないと明確に判断できる場合には、年末調整をおこなう必要があります。
12月の給与の支払いを受けた後に退職した人
12月中に給与の支払いを受けた後に退職した方は、年末調整の対象者に該当するため、年末調整を実施する必要があります。
たとえば、12月20日が給与の支給日であり、その給与を受け取り、12月31日までに退職した方がこの条件に該当します。12月31日時点では、会社に在籍していませんが、年内にほかの勤務先で新たに給与を受け取ることは考えにくいため、年末調整を実施する必要があります。
なお、この場合は、再就職をするかどうかに関係なく、ほかの一般的な従業員と同様のタイミングで年末調整を実施することになります。
その年中に支払いを受ける給与の総額が103万円以下の人
退職者のうち、その年中に支払いを受ける給与総額が103万円以下の方は、年末調整の対象者に該当するため、年末調整をおこなう必要があります。とくに、アルバイトやパートとして働いている方は対象になる可能性が高いです。
ただし、退職後、その年にほかの勤務先から給与の支払いを受ける見込みのある方は、年末調整の対象外となります。
12月末退職で給与が12月支給の場合の年末調整は?
この場合は、先述したように、「12月の給与の支払いを受けた後に退職した人」に該当するため、退職する会社での年末調整の対象となります。
12月31日時点で会社に在籍していないことになりますが、退職後に再就職できたとしても、給与が支払われることが考えにくいため、退職者でも年末調整の対象になります。そのため、退職者が再就職したかどうかに関係なく、ほかの一般的な従業員と同様に年末調整を実施する必要があります。
会社側としては、従業員が年末調整の書類を記載し、提出してもらわなければ年末調整を実施することができません。そのため、12月に給与の支払いを受け、12月末に退職する方に対しても、年末調整の書類について記載・提出するように、周知することが大切です。
12月退職で給与が1月支給の場合の年末調整
毎月1日から末日までの勤務実績をもとに、翌月に給与を支給している会社もあるでしょう。その場合、12月に退職し、12月分の給与が1月に支給される方は、年末調整の対象者かどうか気になる方は少なくないでしょう。
年末調整では、その年に支払いの確定した給与について、精算をおこないます。また、収入の確定日は、契約もしくは慣習により、支給日が定められている場合にはその支給日、支給日が定められていない場合にはその支給を受けた日を指します。
そのため、1月に支給される給与については、収入の確定日の観点から、その年の年末調整の対象とはなりません。
そして、12月退職の場合、12月中に給与を受け取って退職するかどうかで、年末調整をおこなうかどうかは異なります。12月中に給与を受け取った後に退職する場合、その年に新たに給与を受け取ることは考えにくいため、年末調整の対象になります。

年末調整ガイドブック|複雑な手続きをわかりやすく図解!
この資料では、年末調整の必要書類や書き方、源泉徴収の計算方法、年末調整後におこなうべき対応など、年末調整の手続きについて解説しています。2023(令和5)年の年末調整に向けての準備にご活用ください。
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年末調整の際に退職者がすべきこと
年末調整は、1年を通して同じ会社で働いている人だけではなく、その年の途中で退職して、同じ年内に新しい会社で年末まで働いている人も対象です。前述のとおり、退職した年と同じ年に新しい会社に転職した場合は、新しい転職先で年末調整を受けることになります。
退職者が年末調整を受けるためにおこなうことは、新しい会社で働き始める前に、その年のうちに退職した会社から支給された給与の金額や、その給与から徴収された所得税額などを確認することです。
確認方法は、退職した会社から交付された「給与所得の源泉徴収票」でおこなえます。「給与所得の源泉徴収票」は、その1年間に勤務先から支払われた給与や賞与などの金額と、自分が支払った所得税額が記載された書類です。この確認ができない場合は年末調整もできません。
また、退職した会社に「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出し、給与の支払を受けたことがある人は、退職した会社から支払いを受けた給与を含めて年末調整をしなければいけません。「給与所得者の扶養控除等申告書」とは、給与の支払いを受ける人(給与所得者)が、その給与に関する扶養控除といった各種の控除を受けるために提出が必要な書類のことです。
なお、年末調整をおこなう際、扶養控除や基礎控除など、給与所得から控除する所得控除は勤務期間に合わせて月数で割る必要はありません。たとえば、3月に退職をし、9月から新しい会社で働きはじめる人の場合、給与所得から控除する扶養控除や基礎控除といった所得控除が全額認められることとなっています。
退職後に確定申告が必要になる場合
ここでは、退職後に確定申告をしなければならない(したほうがよい)ケースについて詳しく紹介します。
退職後、年内は無職となる(再就職しない)場合
年の途中で会社を退職して、年内は無職となる(再就職しない)場合は、確定申告をしたほうがよいケースもあります。
給与所得者は、毎月(毎日)の給与や賞与などから所得税が源泉徴収されます。年の途中で退職して再就職しない場合、要件を満たさなければ年末調整を受けることはできません。
そのため、所得税を納め過ぎている可能性があります。また、副業などをおこなっていた場合には、納めるべき所得税が不足しているという可能性もあるでしょう。
そこで、自分で確定申告をおこなうことで、正確な所得税の納付がおこなえます。また、所得税を納め過ぎていた場合には、還付金を受け取ることも可能です。
「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合
「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない方は、確定申告をおこなう必要があります。
退職金を受け取るまでに「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、源泉徴収のみで所得税の課税関係が完了するため、原則として確定申告をする必要はありません。
ただし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない方は、退職金の収入金額から一律の税率で所得税が源泉徴収されるため、確定申告で精算する必要があります。

年末調整は自分でできる?確定申告との違い、確定申告が必要なケースを解説!
年末調整は、一年の給与に対する所得税額(復興特別所得税を含む)を確定するための重要な手続きです。また、年末調整では、さまざまな控除を受けられるため、納税額を軽減できます。そのため、自分で正しい情報を収集することも大切です。 当記事では、年末調整は自分でできるのかどうかや、年末調整と確定申告の違いについてわかりやすく解説します。
年末調整について退職者からよくある問い合わせ
ここでは、年末調整に関する退職者からよくある問い合わせについて紹介します。
転職先に提出するため、源泉徴収票を発行してほしい
年の途中で退職した場合、年末調整は退職前の会社では原則としておこなわず、転職先の会社が実施します。そのときに、転職先だけではなく、転職前の勤務先の給与金額と納税額を合算して、年末調整を実施しなければなりません。そのため、前職の源泉徴収票が必要になります。
なお、会社には、従業員が退職した後、1カ月以内に「退職所得の源泉徴収票等」を交付する義務が定められています。
また、源泉徴収票を紛失してしまい、再発行してほしいという依頼を受ける可能性があります。退職者は、前職の源泉徴収票がなければ、原則として転職先では年末調整を受けられません。そのため、このような問い合わせがあったら、トラブルがない場合には、再交付の手続きをおこないましょう。
1月に転職するので年末調整をしてほしい
たとえば9月に退職した従業員から「年明けの1月に転職するので年末調整をしてほしい」と言われた場合はどのような対応をとるべきでしょうか。
ポイントは、次の2点です。
- その年の12月時点での勤務先であるか
- 12月分の給与を支払っているか
12月に退職をし、12月分の給与を12月に支払っている場合は年末調整をする必要がありますが、12月より前に退職していて、12月時点で無職の場合は退職した会社が年末調整をする必要があります。
このような場合は、退職時に発行した源泉徴収票のデータを使用して、退職者本人に翌年の2月16日から3月15日まで(場合によっては延長になることもあり)に確定申告をおこなうように伝えましょう。
源泉徴収票が届かない
多くの場合、退職者が在職していた会社は、郵送で源泉徴収票の送付をおこないます。しかし、退職者が転居届を出していなかったり、実際には届いているのに自宅内で紛失しているなどの理由から「源泉徴収票が届かない」といった問い合わせが入ることがあります。
このような場合には、次の点を確認してみましょう。
- 退職者が転居している場合、転居届けを出しているか
- 退職者の転居先を把握していた場合、転居先に郵送したかどうか
- 退職者への発行・郵送を忘れていないか
消費税法では、会社は従業員の退職後1ヵ月以内に源泉徴収票を交付することが義務付けられています。退職者が出た場合は速やかに発行し、簡易書留など記録の残る方法で郵送をしましょう。
源泉徴収票を再発行してほしい
年末調整の一連の作業では、一連の計算が完了した段階で各種の「法定調書」を報告書として作成し、「給与所得の源泉徴収等の法定調書合計表」と併せて翌年の1月31日までに所轄の税務署へ提出する必要があります。
この「法定調書」には「給与所得の源泉徴収票」も含まれており、源泉徴収票には、給与金額や納税額、扶養控除、配偶者控除、生命保険等の控除の金額も記載されています。そして、源泉徴収票は所轄の税務署だけではなく市区町村にも提出しなければいけません。これは、住民税が関係しているためです。さらに、源泉徴収票は翌年の1月31日までに従業員にも発行する義務があります。
従業員が年の途中で退職し、年内にほかの会社に転職した場合は新しく転職した会社で年末調整をおこなうことになります。さらに、転職した会社は自社での源泉徴収票だけではなく、転職前の勤務先の給与金額と納税額を合算し、年末調整をする必要があります。
このようなことから、退職者が出た会社は、退職から1ヵ月以内にその年の1月1日から退職時までの期間に関して年末調整前の概算で源泉徴収し、納付した税額の記載された源泉徴収を作成・発行しなければなりません。
源泉徴収票は重要な書類ですが、書類の小ささから紛失しやすく、さらに重要な書類であることの認識が比較的浅いため、紛失してしまうケースは珍しくありません。
結論からいうと、源泉徴収票をすでに発行しているのであれば、法的には再交付の義務はなく、「すでに発行しているため再発行はしません」と答えることは可能といえます。
しかし、源泉徴収票がなければ、退職者はその年の年末調整ができません。退職した会社が頑なに再発行を拒む場合、退職者が「源泉徴収票不交付の届出書」を税務署に届け出をする可能性があります。この届け出があった場合、退職した会社へは税務署から「なぜ再発行できないのか」や、税務調査が入るといった可能性もあります。
源泉徴収票を再発行する義務はないものの、税務調査が入るような事態となれば通常の業務にも支障が出かねないため、可能な限り再発行に応じるべきでしょう。
心身の不調で再就職の見込みがないため、年末調整をしてほしい
心身の不調で会社を退職した後に、スムーズに再就職できないといったケースは少なくありません。国税庁のホームページには、年の中途でおこなう年末調整の対象者のなかには、下記が挙げられています。
著しい心身の障害のために退職した人(退職した後に再就職をし給与を受け取る見込みのある人は除きます。)
退職するときに医療機関などで疾患として認められていれば、「著しい心身障害」として客観的な判断基準になる可能性があります。この場合は年の中途であっても年末調整をおこなうことができます。ただし、その年に再就職して給与の受け取りが見込まれる場合、年末調整の対象にはなりません。この場合は原則、退職者が確定申告をおこなうことで修正の対応をすることになるでしょう。
扶養控除等申告書を返却してほしい
12月時点で在籍しておらず、別の企業に転職した「扶養控除等申告書」は、その年の年末調整をおこなうためには必ず必要となる書類であるため、年末調整よりも前に提出を促す企業は少なくありません。そのため、提出をしたものの、その後年内に退職することになったため扶養控除等申告書を返却してほしいという退職者も中には存在します。
扶養控除等申告書は企業に対して7年間の保存が義務付けられています。そのため、基本的に返却はできないと答えて問題はありません。ただし、扶養控除等申告書に添付された保険控除の証明書類や源泉徴収票は、確定申告や新たな就職先での年末調整に必要になる可能性があります。そのため、退職者には各種証明書類を返却し、源泉徴収票を発行しましょう。
退職者の年末調整を理解して正しい手続きをおこなおう!
退職者に関しては、基本的に年末調整をおこなう必要がありません。ただし、再就職が見込めず著しい心身の障害のために退職した方や、その年に支払いを受ける給与総額が103万円以下の方などには、退職者であってもも年末調整が必要になります。
また、退職するタイミングによっても、年末調整の必要性が異なることがあります。退職者の年末調整に関する正しい知識を身に付けて、トラブルが生じないように正しい手続きをおこないましょう。
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