在宅勤務の手当とは?支給する必要性の有無や相場について事例も交えて解説
労務管理システム
2023.07.01
2023.07.01
在宅勤務手当は必ず支給しなければいけないのでしょうか?在宅勤務手当は、従業員の負担を減らす意味合いがありますが、企業にとってもメリットのあるものです。本記事では、在宅勤務手当の相場、支給を行っている企業の事例に関して解説します。在宅勤務を導入する場合は、同時に手当を設定するかどうかも検討しましょう。
1. 在宅勤務手当とは
在宅勤務手当とは、在宅勤務をする従業員の負担を減らし、労働環境の整備をするなどの目的で支給する手当のことです。働き方改革の施行と新型コロナウイルス蔓延の影響で、在宅勤務を導入する企業が増え、それと同時に在宅勤務手当を支給する企業も増えてきています。本章では、在宅勤務手当について詳しく解説します。
1-1. 在宅勤務手当の定義と課税の有無
在宅勤務手当は、在宅勤務をおこなう従業員に対して支給される手当です。使い道は従業員次第ですが、基本的には在宅勤務でかかる費用を会社が負担するという意味合いがあります。在宅勤務手当とする場合もありますが、広義でリモートワーク手当とする企業もあります。
また、在宅勤務手当は課税対象となります。ただし、購入した備品などを経費とした場合、課税対象とはなりません。
毎月一定額支給して、使わなかった分の返還を求めない形の在宅勤務手当は給与とみなされ、課税対象となるので注意しましょう。
1-2. 在宅勤務手当が必要といわれる背景
在宅勤務をおこなうということは、従業員が自宅にネットワーク環境を導入したり、パソコンなどのデバイスを用意したり、デスク・椅子などを購入してオフィスと同じように働ける環境を作ったりする必要があります。
また、自宅で仕事をするので、今までよりも光熱費が必要になり、通信費も発生します。これらの負担を従業員に負担させないため、在宅勤務をスタートする初期投資や、自宅で働き続けるための費用の補填措置として、在宅勤務手当の支給を検討する企業が増えました。
2. 在宅勤務手当が企業にもたらすメリット
在宅勤務手当の支給は、企業側にも大きなメリットをもたらします。在宅勤務の導入を検討している場合、どのようなメリットがあるのか知っておきましょう。
2-1. 働き方改革を推進できる
新型コロナウイルスの感染拡大を機に、在宅勤務を臨時的な措置として取り入れる企業が増えました。現在は、働き方改革などの影響で柔軟な働き方が重視され始めたことによって在宅勤務を導入する企業も増えています。在宅勤務を促進して、働きやすい環境整備をおこなうためには、長期的に在宅勤務できる仕組みづくりが大切です。
在宅勤務をすることで、通勤時間を削減して時間の有効活用をすることができます。また、在宅勤務で時間に余裕ができることで、従業員の生活が豊かになったり、モチベーションが向上したりすることにつながるでしょう。
2-2. 経費削減ができる
在宅勤務をする従業員が増えれば、2つの観点で経費削減をすることができます。
1つ目は、多くの従業員が在宅勤務になることで、オフィス環境が不要になり、オフィスの一部もしくは全部を売却したり、賃貸借契約を解除したりできることによる経費削減です。
2つ目は、従業員の交通費にかかる経費削減です。今まで従業員一人に対して1ヵ月1万円の交通費を支給していたとすると、年間でひとりあたり12万円の経費が削減できます。実際はそれより多い交通費を支給しているケースもあり、従業員の人数が多ければ多いほど、経費削減が見込めます。
ただし、これには注意点があり、在宅勤務に切り替えたからといって交通費の支給が不要になるわけではなく、交通費の支給をやめるには、就業規則を変更するなどの手順を踏まなければなりません。
また、在宅勤務で交通費が削減できたとしても、在宅勤務手当を支給する場合は、大きく経費削減できるとは限らないため、導入は慎重におこないましょう。
2-3. 従業員のモチベーションを維持できる
在宅勤務手当を支給し、在宅勤務の労働環境整備を会社がおこなうことで従業員が快適に働くことができるなど、モチベーション維持にもつながります。また、在宅勤務の場合、光熱費や通信費が普段よりもかかってしまうため、手当があることで安心する従業員もいます。経済的な不安がない状態であれば、自宅であってもしっかり仕事に専念できるでしょう。
3. 在宅勤務手当なしは違法になる?
在宅勤務手当を支給する企業が増えていますが、在宅勤務手当を支給しないことが違法になるわけではありません。労働基準法では、労働の対価として基本給や残業代を支払うことを義務付けていますが、労働のための準備にかかる費用はこれに該当しないため、支払っていないからといってただちに違法にはなりません。
ただし、在宅勤務をおこなうことによって発生する環境整備にかかる費用は、業務に必要な費用として考えられます。業務に必要な費用を従業員に負担させる場合は、その旨を就業規則に記載しなければなりません。これは労働基準法で定められているため、明確に記載しなければ違法になります。
支給しなくても違法ではないのに、在宅勤務手当を出している企業が増えているのは、従業員の不満をなくし、モチベーションを維持するためといえるでしょう。
業務で必要な費用を負担させられては、従業員から不満が出てしまうのは当然です。優秀な人材を逃してしまう可能性もあり、今後人材の確保をする上でも在宅勤務手当を全く支給しないのは、デメリットが大きいといえます。
4. 在宅勤務手当を支給する場合の相場
企業によって在宅勤務手当の金額は異なりますが、在宅勤務手当を支給する場合、月額で3,000〜5,000円程度が相場です。ただし、在宅勤務を導入する初期投資としての手当の場合は、数万円を支給したり、パソコンやオフィス家具などの現物支給をしたりする場合もあります。
必要な設備さえ整えば、維持費として必要になる光熱費や通信費は日額100〜150円と考えられるため、3,000〜5,000円程度の手当が妥当といえるでしょう。
在宅勤務手当を高くしすぎると、在宅勤務をしたいのにできない業務をしている他の従業員から不満が出る可能性もあります。公平性のある金額に設定することが大切です。
5. 在宅勤務手当の支給例を紹介
本章では、在宅勤務手当の支給例を紹介します。例を参考にした上で、自社の在宅勤務手当の支給額や内容を検討してみてください。
5-1. 支給例①
支給額:5,000円 / 月
支給目的:環境整備費用補助
通勤手当:出社した場合のみ実費精算
5-2. 支給例②
支給額:3,000円 / 月
支給目的:毎月の通信費用補助
通勤手当:記載なし
備考:在宅勤務導入時に臨時特別手当10,000円、臨時通信手当3,500円を支給
5-3. 支給例③
支給額:3,000円 / 月
支給目的:在宅勤務にかかる通信費・光熱費、出勤時のマスクなどの費用補助
通勤手当:出社した場合のみ実費精算
備考:パソコンやルーター、オフィス家具購入費用の補助は別途あり
5-4. 支給例④
支給額:50,000円(一括で一度のみ支給)
支給目的:環境整備費用
通勤手当:記載なし
5-5. 支給例⑤
支給額:250円 / 日
支給目的:通信費・光熱費補助
通勤手当:定期代の支給を停止し、出勤時は実費精算で支給
6. 従業員の負担を考慮して在宅勤務手当を検討しよう
在宅勤務手当は必ず支給しなければならないものではありません。しかし、在宅勤務手当の支給は、従業員の労働環境整備につながり、結果的に生産性が向上するなど、企業として大きなメリットをもたらします。
在宅勤務の導入によって発生する従業員の負担や、削減できる交通費との兼ね合いも考えながら、在宅勤務手当を検討してみましょう。

【監修者】涌井好文(社会保険労務士)

涌井社会保険労務士事務所代表。就職氷河期に大学を卒業し、非正規を経験したことで、労働者を取り巻く雇用環境に興味を持ち、社会保険労務士の資格を取得。 その後、平成26年に社会保険労務士として開業登録し、現在は従来の社会保険労務士の業務だけでなく、インターネット上でも活発に活動を行っている。
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