採用後の入社手続き完全マニュアル|必要書類や手順について徹底解説
労務管理システム
2023.06.19
2023.06.19
人材採用後の入社手続きには、必要書類から届出の提出まで複数の手順が存在するため、マニュアルを作成することをおすすめします。作成が必要な書類や届出方法について知識をもっておくと、マニュアルに沿った正確な入社手続きの遂行に役立ちます。本記事では、入社手続きに求められるスキル、必要な書類の解説、手続き手順をわかりやすく解説します。
1. 入社手続きをおこなうために必要なスキル
入社手続きを円滑に進めて、採用者に早く会社に慣れてもらうためにも、人事・総務担当者がもっておくべきスキルについて、ここでは2つご紹介します。
1-1. スケジュール管理
入社手続きに関する書類にも数多くの種類があることから、滞りなく手続きをおこなうためにもスケジュール管理のスキルが求められます。
採用者に入社手続きの書類を送付したり、作成してもらった書類を回収したり、各行政機関に提出する書類を期日までに作成し提出したりと、入社手続きにはさまざまな業務が伴います。
効率良く入社手続きを進めるためにも、期日を決めてスケジュール管理できる能力が必要です。
1-2. 書類管理
採用者から回収した書類には、本人や家族の大切な個人情報が記載されています。
回収した書類をうっかり紛失したり、部外者の目につくような場所に放置したりすることが無いよう、情報漏洩リスクの意識をもって正しく書類管理をおこなうことも必要です。
書類の管理場所や管理方法など事前に社内でルール化しておき、各担当者に周知・徹底させることも大切でしょう。
2. 新入社員の入社手続きに必要な書類一覧
ここからは、新入社員の入社手続きに必要となる書類について解説します。
入社手続きに必要な書類は、大きく分けて「入社前に作成・送付が必要な書類」「入社後に提出してもらう書類」「各機関へ届け出るもの」の3種類に分類して把握しておくとよいでしょう。それぞれに該当する書類について解説します。
2-1. 入社前に作成・送付が必要な書類
- 採用(内定)通知書
企業が採用者に対して雇用の承諾を伝えるための書類です。会社によっては書面ではなく、口頭やメールで通知する場合もあるようです。
- 入社承諾書
入社の意思確認をおこなうための書類です。採用(内定)通知書と一緒に送付し、入社承諾書のみ署名・捺印の上提出してもらいます。
- 労働条件通知書、雇用契約書
労働条件通知書は、労働基準法によって交付が義務付けられている書類です。記載事項に関しては法律で定められた事項を記載する必要があります。
一方で、雇用契約書は会社側と従業員側で雇用契約が締結されたことを証明する契約書で、法律上、作成の義務はありません。会社によっては「労働条件通知書兼雇用契約書」として1通にまとめている所もあります。
2-2. 入社後に提出してもらう書類
- 年金手帳
厚生年金の手続きに必要となります。会社保管でなく本人保管になる場合は、基礎年金番号のページをコピーして返却します。なお、法改正により2022年4月1日から年金手帳の発行が廃止となり、基礎年金番号通知書が発行されます。そのため、年金手帳ではなくマイナンバーの提出でことが足りるようになりました。
- マイナンバー
雇用保険や健康保険、厚生年金の加入手続き、年末調整に必要となります。カード又は通知カードの写しが必要です。
- 扶養控除等申告書
所得税や住民税など各種税金の手続きの際に必要となる書類です。扶養家族の有無に関わらず、全員提出してもらわなくてはいけません。
- 健康診断書
労働安全衛生法によって雇い入れ時の健康診断が義務付けられています。入社前3カ月以内に健康診断書の提出がなかった場合、入社後の3カ月以内を目安に健康診断を受けてもらう必要があります。
- 誓約書・身元保証書
誓約書は、就業規則や秘密保持など企業のルールを遵守することを誓約したことの証です。
また、身元保証書は従業員が企業に大きな損害を加えた際の連帯保証人を定めた書類です。
- 住民票記載事項証明書
住民票と違い、住民票記載事項証明書は申請者が必要とする事項のみを抜き出した証明書です。個人情報保護の観点から、住民票ではなく住民票記載事項証明書を提出してもらうのが一般的です。
労働者名簿の作成など、会社が必要とする事項を事前に伝えておくとよいでしょう。
- 雇用保険被保険者証
雇用保険の手続きに必要な書類で、中途採用者のみ提出が必要です。退職前の会社から発行されている書類を提出してもらいましょう。
- 源泉徴収票
年末調整をおこなう際に必要となる書類です。新卒であっても、アルバイトで前職があり、前職の退職年と入社年が同年になる場合は提出してもらう必要があります。入社が年をまたぐ際は、提出の必要はありません。
- 健康保険被扶養届、国民年金第3号被保険者資格取得届
扶養家族がいる場合に提出してもらう書類です。
- 卒業証明書
新卒採用の場合は、履歴書の学歴に偽りがないか確認をするために提出してもらう場合があります。
2-3. 各機関への届出
提出してもらった書類は内容に不備がないか、各機関へ届出をおこなう前にチェックをおこないます。書類に問題がないようであれば、各機関へ届出をおこないます。具体的には次に紹介する手続きに従って届出をおこないます。
社会保険の加入手続き
社会保険の加入手続きは、従業員が入社した日から5日以内におこなわなくてはいけません。
社会保険は、フルタイムの正社員は基本的に全員が加入対象であり、パート・アルバイトなど短時間労働者の場合は、以下の条件を満たす場合に加入が義務付けられている保険です。
- 従業員数が101名以上の企業に所属している(2024年10月からは51名以上の企業に改正予定)
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 給与が月額88,000円以上
- 雇用契約期間が2か月超である
- 学生でない
社会保険はの届出は「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を作成の上、日本年金機構(管轄年金事務所)へ提出します。
なお、扶養家族の加入申請もおこなう場合は「健康保険被扶養届」を、扶養している配偶者については「国民年金第3号被保険者資格取得届」も合わせて提出します。
雇用保険の加入手続き
雇用保険の加入手続きについては、管轄の公共職業安定所長に提出しておこないます。入社した月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を作成して提出します。
加入手続きが必要となる従業員は、原則として「同一の事業主で引き続き31日以上働く見込みがある」「所定労働時間が週20時間以上」である場合が対象となります。
税金の手続き
住民税の手続きに関しては、入社前の納付方法が「普通徴収」または「特別徴収」であったかにより手続きが異なります。
普通徴収から特別徴収に切り替える場合には、「特別徴収への切替申請書」を、未使用の住民税納付書または領収書と一緒に従業員が居住する市町村に所定の期日までに提出します(期日は市町村によって異なりますので各自ご確認ください)。
前職より続けて特別徴収にする場合は、「特別徴収にかかる給与所得者異動届出書」を提出します。なお、新卒のように前年の所得が無い場合は、手続きは不要となります。
3. 企業側でおこなう入社手続きの手順
ここからは、会社側が新しい人材を採用した際に、取り組むべき業務フローを解説します。
入社手続きに向けて、マニュアル通りに業務がこなせるようおおまかな流れについて把握しておくとよいでしょう。
3-1. 必要書類を提出してもらう
前述した通り、入社手続きには従業員から回収する書類が複数存在します。特に、社会保険の手続きは期限が非常に短いため、漏れなく対応してもらう必要があります。
そのためはやめに連携をおこない、前もって準備をしてもらうことが重要です。
3-2. 法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)を作成する
従業員の基本情報や、給与の支払い状況、労働状況を正しく把握するためにも、法定三帳簿を記録することは重要な手続きです。
法定三帳簿の内容は、以下の通りです。
- 労働者名簿:労働者の氏名、生年月日、住所、雇い入れ日などの個人情報を記載しているもの
- 賃金台帳:給与の支払い状況を記載しているもの
- 出勤簿:労働日数、出勤退勤時刻などの勤務状況を記載しているもの
「労働者名簿」と「賃金台帳」は作成義務が義務付けられており、適正に記録・管理ができていない場合法律違反に該当し、罰金が科される可能性もあるため注意しましょう。
一方で「出勤簿」に関しては、作成の義務はありません。ただし従業員の勤怠の記録・保管は義務付けられているため、手段の一つとして出勤簿に記録することが一般的とされています。
3-3. 社会保険・雇用保険の加入手続きをする
前述の通り、従業員が入社した後は社会保険と雇用保険の手続きが必要となります。従業員から提出してもらった書類をもとに、雇用保険と社会保険の資格取得届を作成し、期日までにそれぞれハローワークと年金事務所に提出しましょう。
3-4. 給与・住民税の申告をする
従業員が入社した後は、所得税と住民税の対応が必要になります。
所得税に関しては、扶養控除等申告書と前職がある場合に源泉徴収票が必要となるため、回収した後は年末調整の時期まで大切に保管しておきましょう。所得税に関しては、入社手続きの段階で特に届出は発生しません。
一方住民税に関しては、前職から特別徴収を続ける場合と、普通徴収から特別徴収に切り替える場合に届出が必要となるため、新入社員に対象者がいないかをあらかじめ確認しておきましょう。
4. 公的機関への書類提出が遅れてしまう場合どうなるか
入社手続きにおける各機関への届出に遅れが生じてしまうことは、避けるべき事態です。
社会保険と雇用保険の時効期間は2年とされており、万一遅れてしまっても届出の受理はしてもらえますが、それぞれの期日から60日を超過すると、一般的には追加で出勤簿(もしくはタイムカード)、賃金台帳(もしくは給与明細書の控え)を追加で提出する必要が生じます。
また遅延が6ヵ月以上にのぼった際には「遅延理由書」を提出する必要があるため、注意しましょう。
5. マニュアル作成には入社手続きに必要な書類を把握することが重要
入社手続きを滞りなく進めていくには、スケジュール管理や適正に書類管理するスキルを身につけておくと大変役立ちます。入社手続きに必要となる書類は多岐にわたり、年金事務所や市町村など各機関へ提出が必要なものもあります。入社手続きマニュアルを作成するにあたっては、必要となる書類や提出先について把握しておいた方が良いでしょう。
入社手続きを効率良く進めるにも、入社手続きマニュアルがあると重宝します。本記事で紹介した内容を参考に、入社手続きマニュアルの作成を進めていきましょう。

【監修者】小島章彦(社会保険労務士)

大学卒業後、某信用金庫にて営業と融資の窓口業務に関わる。 現在は、某システム開発会社に勤務。 会社員として働きながら、法律系WEBライターとして人事労務関係や社会保険関係のライティングを4年半以上行っている。 また、金融知識を生かした金融関係のライティングも含め、多数の執筆案件を経験している。 その他保有している資格は、行政書士、日商簿記3級など。
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