インボイス制度廃止や延期の可能性は?問題点や対応期限を解説
請求書発行システム
2023.12.04
2023.12.04
インボイス制度は事前の適格請求書発行事業者登録の期日が2023年9月末まで延期されました。インボイス制度は中小企業や個人事業主の事務手続きの負担により廃止や延期を求める声が聞かれます。本記事ではインボイス制度の廃止や延期の可能性はあるのか、企業がどのように対応するべきかを解説していきます。
▼インボイス制度にどう対応すべき?ルールBOOK
【企業担当者向け】インボイス制度対応ルールBOOK
2023(令和5)年10月からインボイス制度が開始されるにあたって、企業が対応すべきことは多くあります。この資料では、企業の担当者向けに、インボイス制度の概要と対応すべき内容をわかりやすく解説します。
そもそもインボイス制度とは?
インボイス制度とは、仕入税額控除を受けるにあたって、適格請求書(インボイス)の保存を義務化する制度です。
インボイス制度の導入の背景としては、2019年の軽減税率導入があります。8%と10%の請求書が混在することで消費税納税額の煩雑化し、計算ミスや不正が起こりやすくなりました。
そのため、一般的な請求書に記載された項目に加えて「登録番号」「適用税率」の必須項目を記載した適格請求書でしか仕入税額控除を認めないことになりました。この適格請求書を発行するためにはインボイス制度が開始される前に、適格請求書発行事業者への登録を済ませる必要があります。
しかし、適格請求書発行事業者になるためには、消費税の免税事業者から課税事業者になる必要があるため、これまで免税事業者だった事業者は適格請求書発行事業者の登録によって納税による減収や納税に伴う事務作業の発生で負担が増えることが指摘されています。
一方で、適格請求書発行事業者にならず適格請求書を発行できない場合には、仕入税額控除を受けられなくなるという理由から、取引先から取引をしてもらえなくなる可能性があるため、免税事業は対応を迫られています。
関連記事:インボイス制度とは?何のため?対象や影響をわかりやすく解説!
インボイス制度廃止や延期の可能性は?
先述の理由から、2023年10月から導入が予定されているインボイス制度は、反対意見や問題点を指摘する声も多くあります。今後、廃止や延期がおこなわれる可能性があるのか考えていきます。
インボイス制度廃止の可能性は極めて低い
2023年3月の現時点では、インボイス制度が廃止になる可能性は極めて低いといえます。
多くの企業はすでにインボイス制度への対応を進めており、手続きもおこなわれています。 また、2019年の消費税引き上げの時点で、インボイス制度の導入は予定されており、インボイス制度に対応するための経過措置制度(10年間)もスタートしているため、この点からも廃止や中止は考えにくいと予想されています。
インボイス制度は延期になった?対応期限は?
インボイス制度は2016年当初、2021年4月から導入される予定でしたが、消費税増税に伴って一度導入時期が見送られました。
また、インボイス制度の開始までに適格請求書発行事業者としての登録を間に合わせるには、原則2023年3月31日までに申請する必要があるとされていました。
しかし、未登録の事業者が多く残っていることを理由に、2023年1月16日に事業者登録の受け付けを2023年9月30日までに延長することが発表され、事実上延長されることになりました。
ただし、上記の締め切り時期の延長は、あくまで「適格請求書発行事業者登録の期限の延長」であり、インボイス制度自体の導入の延期ではないため注意しましょう。
インボイス制度の問題点を指摘する声は多い
先述の通り、インボイス制度の廃止等の可能性は低いものの、立憲民主党から廃止法案が提出されたり、団体が反対声明を発表したりと、インボイス制度に反対する声は少なくありません。
このような反対意見が存在する背景には、インボイス制度におけるさまざまな影響や課題があります。インボイス制度の開始前に、この制度の概要や対策について理解し、必要な準備をおこなう必要があります。
インボイス制度総まとめルールBOOK
2023(令和5)年10月に開始するインボイス制度。企業は自社の状況に応じた対応が急務となっています。この資料では、インボイス制度の概要と、課税事業者・免税事業者の対応事項や手順を総まとめします。
2023(令和5)年10月に開始するインボイス制度。企業は自社の状況に応じた対応が急務となっています。この資料では、インボイス制度の概要と、課税事業者・免税事業者の対応事項や手順を総まとめします。
インボイス制度の問題点
インボイス制度は課税事業者と免税事業者どちらにも大きな変化が生まれます。そのため、さまざまな問題点が指摘されていますが、なかでもとくに大きい3つの問題を知っておきましょう。
免税事業者の負担が大幅に増える
インボイス制度が導入されると、、課税事業者は適格請求書がなければ仕入税額控除を受けられません。
そのため、適格請求書に対応していない事業者から仕入れをおこなうと、仕入れに金額に対する消費税の負担が増えてしまいます。そのため、適格請求書の発行に対応しない事業者は、適格請求書を必要とする買手からの取引の停止や、消費税分の値引き交渉をされる可能性があります。
取引の停止を求められることが増えれば、廃業に追い込まれる可能性もでてくるでしょう。 仕事が減るリスクを回避するには、適格請求書を発行することができる適格請求書発行事業者になるしかありません。
しかし、適格請求書発行事業者になるには課税事業者になる必要があるため、消費税を納税する義務が生じます。 免税事業者のままでいる場合も、課税事業者になる場合も、負担が増えることになります。免税事業者が多い個人事業主や零細企業は、ギリギリのラインで資金繰りをしていることも多く、これらの事業者がインボイス制度による負担増により、追い込まれる可能性があるという点が問題視されています。
適格請求書発行事業者になると情報が公開される
国税庁の適格請求書発行事業者公表サイト(※1)では、適格請求書発行事業者に登録した際の氏名や法人名、登録年月日などが公開されます。 漫画家など、ペンネームや芸名を使って仕事をしている人が本名を調査されるリスクが高まることから、波紋を呼んでいる状態です。
加えて、任意で登録することができる住所や屋号、個人の場合は旧姓なども公開され、これらの情報はWeb上で自由にダウンロードすることができます。
商用利用も可能とされているため、プライバシーが侵害される問題は無視できないでしょう。
請求書発行・受領の業務負担が増える
インボイス制度が導入されると、課税事業者は適格請求書を発行するシステムを整え、取引先から届く請求書を処理する体制を整えなくてはいけません。
とくに取引先に課税事業者と免税事業者が混在している場合は、請求書の仕訳と処理の煩雑な業務が増え、今よりも業務負担が増えるとされています。
加えて、インボイス制度導入前までに、取引のある免税事業者との打ち合わせも必須です。状況に応じて、取引内容や仕入先の再検討が必要となる可能性もあります。
こうした業務の増加により、人員を追加する場合は人件費も必要になります。
インボイス制度対応は負担を軽減する対応もある
インボイス制度では事業者の負担が増えることが懸念されていますが、緩和策も整備されています。
納税額が減額される経過措置
インボイス制度実施にあたっての急激な変化を緩和・軽減するために、一定期間は仕入税額控除によって納税額を軽減する措置が設けられています。
インボイス制度が実施されてから3年間の令和8年10月(2026年)までは免税事業者からの仕入れであっても80%の控除が認められ、令和8年10月から令和11年の10月(2029年)までは50%の控除が認められます。
令和11年10月以降は全額控除不可となりますが、免税事業者は経過措置の期間で事務負担や業務上のリスク等を考えながら対応を見極めることができます。
少額取引でのインボイス発行の免除
1万円未満の課税仕入れはインボイスなしでの仕入れ税額控除が認められる見通しとなっています。
ただし、少額取引のインボイス免除の対象となる事業者は下記の条件のいずれかに該当する事業者のみです。
- 2年前(基準期間)における課税売上が1億円以下である
- 1年前の上半期の課税売上が5,000万円以下である
また、値引きや返品についてもその都度返還インボイスを発行する必要があり手間がかかることが懸念されていました。
これについても令和5年度の税制大綱では1万円未満の返還インボイスの対応においては事務処理が煩雑になるため不要となる見通しであることが発表されています。
インボイス制度の対応に使える補助金がある
インボイス制度に対応を目的として会計ソフトや請求書の受発注システムなどを導入する場合に使える補助金や助成金もあります。
たとえば、IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠はインボイス制度対応を想定している補助金です。
パソコンやタブレット、POSレジ等のハードウェアの購入も補助対象になり、最大350万円の補助を受けることができます。
インボイス制度への対応で使える補助金とは申請方法や対象経費なども解説
インボイス制度に対応しようとすると、レジや会計ソフトなどのシステム導入や経理業務のフロー変更など、コストの負担が増える可能性もあります。そこで、インボイス制度には、さまざまな補助金制度が設けられています。 当記事では、IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金、ものづくり補助金といったインボイス制度で使用できる補助金についてわかりやすく解説します。
インボイス制度の注意点
インボイス制度に対応する際は、3つの点に注意しましょう。
免税事業者・課税事業者いずれも対応が必要
インボイス制度は免税事業者への影響が大きいといえます。 しかし、課税事業者も無関係ではなく、対応をしておかないと仕入税額控除を受けられなくなる可能性があります。
とくに免税事業者との取引がある場合は要注意です。取引先が適格請求書発行事業者登録をおこなっているか、2023年10月移行、適格請求書の発行をうけられるのかどうかを事前に確認しておく必要があります。
課税事業者・免税事業者ともに、自社にどのような影響があるのかを事前に確認し、制度開始までに準備をしておくことが重要です。
適格請求書の発行には事前登録が必要
インボイス制度に対応した適格請求書の発行には、適格請求書発行事業者の登録申請手続(※2)をする必要があります。
事前登録の受付の締め切り期日は2023年9月末まで延長されましたが、登録には国税庁による審査が必要で、審査期間は3週間~1カ月半ほどかかります。
なお、申請書の記載に誤りがあった場合にはさらに時間がかかる恐れもあるため、適格請求書発行事業者に登録する場合は早めに手続きをしましょう。
免税事業者が適格請求書発行事業者になる場合はよく検討する
免税事業者が適格請求書発行事業者になるには、課税事業者になる必要があります。 課税事業者になるデメリットよりも適格請求書に対応することのメリットの方が大きければ、適格請求書発行事業者として登録するほうが望ましいでしょう。
課税事業者になることのデメリットが大きい場合、適格請求書発行事業者になるべきか否かは、慎重に検討する必要があります。 免税事業者が適格請求書発行事業者になると消費税を納税する義務が発生するためです。 取引先の対応を確認し、必要性がある場合は手続きを進めてください。
インボイス制度の廃止や延期、見直しの可能性は低い
インボイス制度の廃止及び延期の可能性は現時点では低いといえますが、廃止や反対の声がある背景には、インボイス制度に対応するうえでの懸念点や課題があります。 インボイス制度はさまざまな事業者に影響のある制度であり、事前の対応も必要になるため、制度について正しく理解し、早めの準備をしておきましょう。
▼インボイス制度で必要な対応を知りたい方はこちら!
【企業担当者向け】インボイス制度対応ルールBOOK
2023(令和5)年10月からインボイス制度が開始されるにあたって、企業が対応すべきことは多くあります。この資料では、企業の担当者向けに、インボイス制度の概要と対応すべき内容をわかりやすく解説します。
2023(令和5)年10月からインボイス制度が開始されるにあたって、企業が対応すべきことは多くあります。この資料では、企業の担当者向けに、インボイス制度の概要と対応すべき内容をわかりやすく解説します。
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