在庫管理の基礎的な考え方

ここでは、在庫管理の基礎的な考え方について詳しく紹介します。

在庫管理の目的

在庫管理をおこなう目的は、適正な在庫数を保持することです。在庫管理とは、自社で保管している在庫を生産や販売の現場のニーズにあわせて、最適な数量・状態で供給できるようにしておくことを意味します。 在庫が多く、保存期間が長期化すると品質が落ちてしまう可能性があります。場合によっては、生産・販売に利用できないため、廃棄することとなり無駄なコストがかかります。

一方、在庫が不足すると、機会損失につながり、顧客満足度の低下や売上の減少を招く恐れがあります。 このような事態を回避するためにも在庫管理を実施し、適正在庫を保つことで、欠品や余剰在庫を減らし、コストの削減や生産性の向上が期待できます。

在庫管理の3S/5S

3Sや5Sとは、適切な在庫管理を実施するための前提となる具体的な行動や意識・方針を指します。 3Sは「整理」「整頓」「清掃」の3つの具体的な行動を表します。それぞれの具体的な意味は下記の通りです。

•  整理：必要なものと不要なものを区別し、ものを片付けること
• 整頓：必要なものを使いやすい場所にわかりやすく配置すること（3定管理）
• 清掃：作業場の掃除・メンテナンスをおこない、綺麗な状態にすること 

なお、3定とは「定位」「定品」「定量」の3つの用語を指し、整頓の方針を示します。 「整理」により、不要なものを処分することで、スペースを縮小することができます。また、「整頓」により、どこに何が配置されているかがわかりやすくなり、作業の効率を上げることが可能です。さらに、「清掃」により、品質を維持したり、機械の故障を防いだりするなど、さまざまなリスクを回避することができます。 一方、5Sは上記の3つの用語と「清潔」「しつけ（躾）」を加えた5つの活動を指します。

•  清潔：3Sを実行後、その綺麗な状態を保つこと
• しつけ（躾）：3Sと「清潔」を継続できるようにルール・規律として習慣づけること 

3Sを実行するだけではなく、「清潔」「しつけ（躾）」を普段から意識することで、生産性や安全性の向上が期待できます。

在庫管理のよくある課題

ここでは、在庫管理におけるよくある課題について詳しく紹介します。

在庫管理の業務フローが徹底されていない

在庫管理の業務フローが確立されていないと、在庫管理の業務の進め方は属人化してしまう可能性があります。 たとえば、担当者によって在庫管理のやり方が異なると、既にカウント済みの商品を別の従業員が再度カウントしてしまうなど、在庫数の数え間違いが生じる恐れがあります。また、品質管理についても担当者の基準によって異なるので、同じ商品でも品質にばらつきが出てしまうこともあります。

ヒューマンエラーが発生する

在庫管理の業務において人の手に依存していると、ヒューマンエラーが発生してしまうことがよくある課題として挙げられます。 たとえば、エクセルやスプレッドシートなどを使用した在庫管理表で管理をおこなっている場合、手入力によるミスや関数の崩れが発生し、在庫データと実在庫の数にズレが生じる可能性もあります。また、目視によって在庫数をカウントしたり、品質を確認したりしていると、見落としが発生するなど、人的ミスが起きることも少なくありません。

在庫管理でミスが発生すると、適正在庫を保つことが難しくなり、生産性の低下やコストの増加を招いてしまうかもしれません。

在庫管理のコツ

ここでは、在庫管理のコツについて詳しく紹介します。

棚管理の徹底

在庫を保管している倉庫棚などで適切な棚管理をおこなっていないと、在庫状況が正しく把握しづらくなります。 たとえば、一つの商品のみを管理している棚に別の商品が紛れ込んでいると、在庫数の数え間違えにつながります。また、その別の商品を出庫するときに、探し出すのに時間がかかり、業務負担が増加して人件費が大きくなる可能性もあります。

さらに、間違った商品を出庫してしまい、返品処理をおこなわなければならないこともあるかもしれません。棚管理を徹底することで、無駄な業務を省き、作業効率は上がります。棚管理を徹底するためにも、在庫管理の業務フローを明確にすることが大切です。また、担当者によって在庫管理のやり方が変わらないようにルール・マニュアルを用意するのもおすすめです。

リードタイムを把握し短縮する

リードタイムとは、一般的には商品・サービスの発注してから納品されるまでの時間や日数を指します。広義の意味でのリードタイムとは、各工程における始まりから終わりまでに要する時間のことです。 在庫管理をおこなう際には、主に下記の3つのリードタイムに区分して考えます。

•  発注リードタイム：発注してから納品されるまでの所要時間
• 製造リードタイム：製造を開始してから完了するまでの所要時間
• 納品リードタイム ：受注してから納品するまでの所要時間 

それぞれのリードタイムを正しく把握することで、適切なタイミングで仕入や製造開始、受注などをおこなえるようになります。また、リードタイムを短縮できれば、在庫の回転率が高まり、効率よく在庫管理ができるようになります。 発注リードタイムを短縮するには自社の対応だけでは難しく、取引先の協力が必要になることもあります。自社の発注スケジュールを事前に共有しておくと、取引先も発注の準備がしやすくなるかもしれません。

製造リードタイムを短縮するには、工程の無駄がないかを見直し、前工程や後工程との情報共有をきちんとおこなえる環境を整備することが大切です。納品リードタイムは、受注してから出荷指示をおこなうまでの時間、出荷商品の用意にかかる時間、配送にかかる日数などに切り分けて確認し、効率化できる部分がないかを確認することで短縮できるかもしれません。

管理場所を適正化する

在庫の管理する場所のルールを決めると、在庫管理の効率化が高まります。主に管理方法には「固定ロケーション」と「フリーロケーション」の2種類があります。 固定ロケーションは、商品ごとに保管場所を固定する方法で、保管場所が明確になるというメリットがあります。ただし、商品の在庫数が少なくなっても、その場所は開けておく必要があるので、在庫スペースに余裕がない場合には向いていません。

一方、フリーロケーションは、商品の保管場所を定めず、空いている場所に入れていく方法です。空きスペースを有効活用できるというメリットがあります。しかし、出庫する商品を探すのに時間がかかる可能性もあります。 固定ロケーションとフリーロケーションを組み合わせる方法もあり、自社の商品や規模などにあった管理方法を採用することが大切です。

棚卸の頻度を増やす

棚卸には時間や手間がかかりますが、棚卸の頻度を増やすことで、在庫管理を効率化できる場合もあります。 棚卸をおこなうことで、在庫管理表などのデータと実在庫の数が一致しているかを確認することが可能です。棚卸を実施する間隔を短くすることで、欠品などが生じる前に数のズレを早期に発見し、原因を突き止めて対策をおこなうことができます。

データを取る

在庫数を適正化させるためには、販売個数や発注頻度など各種数値データをもとに、受発注の傾向を分析する方法が有効です。 たとえば、出入庫記録を基にリードタイムを測定することで、適切なタイミングで受発注ができます。また、過去の売上・在庫状況の推移を分析し、客観的に将来の需要予測をおこなうことで、季節や市場などの変化に応じて適正な在庫数を設定することが可能です。

在庫管理をシステム化するとできること

在庫管理をシステム化することで、業務の一部を自動化することができます。また、目視や手入力での在庫管理方法から、バーコードやQRコードをハンディターミナルで読み取って在庫管理をおこなう方法に変更すれば、人的ミスを減らし、業務を効率化することが可能です。 在庫管理システムを利用すれば、在庫情報をデータ化してリアルタイムで管理できるので、データを一元管理し、情報共有をスピーディにおこなうことができます。

また、在庫管理システムには、在庫分析機能が搭載されているものもあります。現状の在庫データや過去の入庫・出庫データを基に、さまざまな手法で分析をおこなうことで、今後の受発注に役立てることが可能です。

在庫管理の効率化にはシステム導入がおすすめ

在庫管理は欠品や余剰在庫を生じないようにするために重要な業務の一つです。在庫管理を効率よくおこなうには、管理方法や棚卸頻度、リードタイムなどを見直し、改善することがコツです。 手作業で在庫管理をおこなっている場合、人的ミスが生じるなど、在庫管理を効率化するにも限界があるかもしれません。在庫管理システムを導入すれば、業務を自動化し、在庫情報をデータ化して管理することができます。