交際費とは?定義や損金不算入の要件をわかりやすく解説
経費精算システム
2023.06.26
2023.06.26
交際費は事業を進めていくうえで必要な経費の一つです。交際費の取り扱い方は、大企業・中小企業・個人といった事業規模の大きさによって変わってきます。 当記事では、交際費の定義・範囲・要件、交際費と類似の勘定科目の違い、交際費の損金算入限度額の規定をわかりやすく解説します。交際費とは何か具体的に知りたい方や、経理処理を効率化させたいと考えている方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
交際費とは何か(定義)
ここでは、交際費とは何か、定義や要件について詳しく紹介します。
交際費とは
交際費とは、ビジネス上の付き合いや人間関係を構築するために発生する費用を指します。国税庁によると交際費は、下記の通り定義されています。
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するものをいいます。
交際費と接待交際費の違い
接待交際費とは、交際費と同様の費用に対する俗称です。交際費と接待交際費は勘定科目上の名称が異なるだけで、基本的に経理では同様の扱い方をします。 そのため、接待交際費を勘定科目として用いている場合にも、交際費と同じように損金算入をおこなう必要があります。
交際費が経費として認められる範囲・要件
国税庁の定義に含まれているものであれば、基本的に交際費として計上することができます。たとえば、下記が挙げられます。
- ビジネスパートナーとの会食費用
- 接待ゴルフに要する費用
- 得意先に送るお歳暮・お中元費用
一方、次に当てはまる費用は、交際費として計上できないので注意が必要です。
- 従業員の慰安のため使われる費用
- 社外飲食費のうち1人あたり5,000円以下になる費用
- 物品贈与のためにかかる費用
- 会議の際に飲食物を提供するために要する費用
- 記事収集や取材のために必要な費用
交際費と類似の勘定科目の違い
ここでは、交際費と類似の勘定科目の違いについて詳しく紹介します。
会議費
会議費とは、ビジネスにおいて社内外の会議や打ち合わせで必要になる費用を指します。社外飲食費のうち1人あたり5,000円以下になる費用は、交際費から除かれると先述しました。この費用は一般的に会議費として処理します。 ただし、この費用を会議費として計上する際には、下記の項目を記載した書類の管理が必要になるため注意が必要です。
- 飲食等のあった年月日
- 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係
- 飲食等に参加した者の数
- その飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称および所在地(店舗がない等の理由で名称または所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名または名称、住所等)
- その他飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項
福利厚生費
福利厚生費とは、給与・賞与以外に、会社が従業員のために支出する費用を指します。国税庁によると、下記の費用は福利厚生費の扱いになります。
- 創立記念日、国民の祝日、新社屋の落成式などに際し、従業員におおむね一律に、社内において供与される通常の飲食に要する費用
- 従業員等(従業員等であった者を含みます。)またはその親族等のお祝いやご不幸などに際して、一定の基準に従って支給される金品に要する費用(例えば、結婚祝、出産祝、香典、病気見舞いなどがこれに当たります。)
交際費は取引先や仕入先といった社外の人のための支出であるのに対して、福利厚生費は従業員などの社内の人のための支出という違いがあります。
寄附金
寄付金とは、社会貢献や地域発展などを目的として自発的に寄付する金銭や物品を指します。たとえば、下記のような事業に直接関係しない費用は、寄附金として認められます。
- 社会事業団体、政治団体に対する拠金
- 神社の祭礼等の寄贈金
なお、「寄附金」「拠出金」「見舞金」といった名目でも、交際費や福利厚生費などに該当するものは寄附金として扱うことができません。 また、寄附金の一定以上の金額は、原則として損金に算入できない決まりになっています。
寄附金を計上する場合、支出先などによって損金算入額の上限は異なるため、事前にきちんと計算方法を確認しておくことが大切です。
交際費の損金算入限度額の規定
ここでは、交際費の損金算入限度額の規定について詳しく紹介します。 なお、平成26年度の税制改正により損金不算入制度は見直しがおこなわれました。また、令和4年度の税制改正では、交際費の損金不算入制度について現行のまま適用期限を2年延長すると発表しています。
資本金1億円超えの大企業
資本金が1億円を超える大企業の場合、原則として接待飲食費のうち50%を損金として計上することができます。 ただし、期末資本金額もしくは出資金額が100億円を超える場合、すべての交際費は損金不算入になります。
資本金1億円以下の中小企業
資本金が1億円以下の中小企業の場合、次のいずれかから損金算入の上限額を選択することが可能です。
- 接待飲食費のうち50%
- 800万円(定額控除限度額)
個人事業主・フリーランス
個人事業主・フリーランスの場合、法人の場合のように損金不算入制度は適用されないため、交際費の損金算入額の上限はありません。 ただし、交際費を計上できるのはビジネスに関係のあるものであり、プライベートの食事会は対象にならないので注意が必要です。
交際費の仕訳例
得意先と会食をおこなった場合を考えてみましょう。なお、支出金額の合計は40,000円、人数は5人、支出した会社は資本金5億円の大企業とします。この場合、飲食費用は1人あたり8,000円になるので、交際費に該当します。
現金で支払った際の仕訳は下記の通りです。
日付 |
借方科目 |
借方金額 |
貸方 |
貸方金額 |
〇/〇 |
交際費 |
40,000 |
現金 |
40,000 |
接待飲食費の50%(20,000円)は損金算入ができます。この場合、会計処理とは別に税務処理の際に加算調整をおこなう必要があります。 この場合で、人数が10人だったと仮定して考えてみましょう。飲食費用は1人あたり4,000円になるので交際費から除かれます。現金で支払った際の仕訳は下記の通りです。
日付 |
借方科目 |
借方金額 |
貸方 |
貸方金額 |
〇/〇 |
会議費 |
40,000 |
現金 |
40,000 |
会議費の場合、全額損金算入することができます。そのため、加算調整は不要になります。
交際費の経費計上におけるポイント
ここでは、交際費の経費計上におけるポイントについて詳しく紹介します。
勘定科目を明確にする
勘定科目を明確にしていない場合、経理処理は煩雑になる可能性があります。 たとえば、「交際費」と「接待交際費」などを統一せず管理していると、後から損金不算入額を計算するときに時間や手間がかかります。
また、「会議費」「福利厚生費」は全額損金算入できますが、「交際費」「寄附金」は損金算入できない場合があります。そのため、勘定科目がきちんと整理できていないと、申告書の作成の際にミスが生じる恐れもあります。 このように、勘定科目を明確に設定することで、スムーズな経理処理につなげることが可能です。
税込経理と税抜経理のどちらを採用しているか確認する
飲食接待費は「交際費」と「会議費」のどちらで計上するかで経営に異なる影響を与えることになります。 勘定科目を決めるうえで大切になる接待飲食費の金額基準「5,000円/人」は、税込経理と税抜経理のどちらを採用しているかで変わってきます。
大企業で接待飲食費が1人あたり税込5100円(消費税率:8%)になる場合を考えてみましょう。 税込経理を採用している場合は税込金額で判定するので、一般的に「交際費」として取り扱うことになります。 一方、税抜経理を採用している場合は税抜金額で判定するため、接待飲食費は1人あたり税抜4,723円(5100円/1.08)になります。この場合、「交際費」ではない勘定科目で扱うことになります。
このように、税込経理と税抜経理のどちらを採用しているかで勘定科目が変わることもあるので、経理処理をおこなう際は事前に確認しておきましょう。
消費税の扱い方を把握しておく
軽減税率制度の実施により、現在の消費税率は標準税率10%と軽減税率8%の複数税率となっています。 税込・税抜経理の関係で税込・税抜金額を計算しなければならない場合、消費税率の適用方法を正しく理解していないと、間違った計算方法で金額を算出してしまう可能性があります。 交際費を正確に経費計上するためにも、消費税の扱い方に関する知識をきちんと深めておくことが重要です。
証明書類をきちんと管理する
証明書類を管理していないと、適切に経費計上できない恐れがあります。 接待飲食費の金額基準を判定する際には、必要事項の記載された書類が必要になります。また、電子帳簿保存法によりメールにてPDFファイルで送付される場合のように、電子上で提供された領収書は、電子データのまま保管しなければなりません。
証明書類をきちんと保存できていないと、税務調査が入った際などに十分な証拠を提供できず、加算税の罰則といったペナルティを受ける可能性があります。そのため、法律に従って社内規定を整備し、証明書類をきちんと管理することが大切です。
交際費の経理処理を効率化する方法
交際費の経理処理は損金不算入制度などの影響により、煩雑になりやすく経理担当者の業務負担の増加を招くことにつながりかねません。そこで、交際費の経理処理に対応した経費精算システムや会計ソフトの導入を検討してみるのがおすすめです。 経費精算システムを導入すれば、人数を入力するだけで1人あたりの単価を算出し、「交際費」と「会議費」を自動判定することができます。
また、会計ソフトを導入することで、仕訳や集計、転記を自動化でき、ミスを防止して業務負担を軽減することが可能です。 ただし、機能や料金、サポートなどは、採用するシステムによって異なるので、自社の課題や目的を明確にしてニーズにあったシステムを導入することが重要です。
交際費を正しく理解して適切な経費計上をおこなおう
交際費には損金不算入制度があり、資本金額などによって損金計上できる金額が変わってきます。また、「交際費」は、「会議費」「福利厚生費」「寄附金」といった勘定科目と区別しにくい部分もあります。 間違った金額入力や仕訳をおこなうと、経営に悪影響を及ぼす恐れもあります。経理処理を効率化させたいと考えている場合は、経費精算システムや会計ソフトといったシステムの導入を検討してみましょう。
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