インボイス制度導入後の交際費への影響をわかりやすく解説
経費精算システム
2023.06.14
2023.06.14
2023年10月から開始するインボイス制度では、交際費の取り扱いも変化します。とくにインボイス制度登録事業者と、それ以外の事業者を併用する場合は気を付けなければいけません。 交際費に含まれる範囲や法人税との関係を正しく把握し、間違いのない仕訳ができるようにしましょう。 本記事では交際費の定義や課税対象と、インボイス制度開始後の変化を中心に解説します。
交際費とは
交際費とは、国税庁の規定では以下のように定められています。
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するものをいいます。
引用:国税庁|No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算
砕けた表現にすると、取引先や得意先など事業に関連する人に対して提供する、接待や贈り物などに使う費用です。基本的には社外の人間とのコミュニケーションに使う費用が、交際費として認められます。 そのため、自社の従業員同士のレクリエーションや、宣伝を目的として取引先に配布するノベルティなどの費用は交際費ではありません。
交際費に該当する具体的な例は以下のような費用です。
- 得意先を食事やゴルフに接待した際の費用
- 接待のために得意先の役員を送迎したタクシー代
- 取引先に送ったお中元やお歳暮の費用
- 株主総会の出席者に提供したお土産の費用
交際費の課税規定
前述したように、得意先や取引先に対して提供する飲食や贈り物は、交際費として計上できます。しかし、交際費には支払い時の消費税とは別に税金がかかります。 交際費の課税規定を知っておきましょう。
交際費には法人税が課税される
法人が交際費として支出した費用に対しては、その一部に法人税がかかります。(※1) 交際費に対して課税がされる理由は、交際費名目の冗費を防ぎ、会社の資金を増やして経営を安定化させるためです。
交際費の課税内容
交際費課税は、すべての交際費が対象になるわけではありません。一部の交際費は課税対象外になります。 課税対象になる交際費と、課税額を知っておきましょう。
課税対象になる交際費
交際費課税の対象になるのは、5,000円を超える社外飲食費や飲食費以外の交際費です。(※1)
飲食費には取引先を接待する際の飲食代のほか、テーブルチャージ料や会場の使用料、差し入れる飲食物の料金なども含まれます。 課税対象になる交際費の詳細は以下のとおりです。これらに該当しない費用は、会議費や福利厚生費などに仕訳ができ、課税対象外になります。
交際費の項目 | 概要 |
社外飲食費 |
社外の人間(取引先や得意先など)との飲食代で、一人あたりの費用が5,000円を超える場合は交際費課税の対象 |
社内飲食費 |
従業員同士や従業員や役員の親族に対する飲食費は、一人あたりの費用を問わず交際費課税の対象 |
飲食費以外の交際費 |
飲食費以外の費用は、すべて交際費課税の対象。得意先への贈答品や飲食を主目的にしない接待の費用などが該当する |
交際費課税の課税額
交際費課税の課税額は、法人の資本金額によって計算方法が異なります。資本金が1億円以下の中小法人とそれ以外の法人、それぞれの交際費課税の計算方法を解説します。
企業区分 | 計算方法のルール |
資本金が1億円以下の |
交際費等に該当する金額 - 800万円(定額控除限度額) または 交際費等に該当する金額 - 接待飲食費の50% このどちらかの式で計算した金額で、少ない金額に対して法人税が課税される |
資本金が1億円を超える |
交際費等に該当する金額 - 接待飲食費の50% この式で計算した金額に対して、法人税が課税される |
インボイス制導入後の交際費への影響
2023年10月から始まるインボイス制度では、交際費の取り扱いにも影響があります。どんな変化があるのかを知り、正しく取り扱いましょう。
店舗によって仕入税額控除額が変わる
インボイス制度導入後は、インボイス制度に登録している登録事業者と、それ以外の免税事業者とで仕入税額控除の取り扱いが変化します。 登録事業者を利用して交際費を支払った場合は、今までの処理と同じで問題ありません。
しかし、免税事業者に交際費を支払った場合は、仮払消費税等がないものとされるため、仕入税額相当額をすべて交際費にしなくてはいけません。 インボイス制度導入前は店舗を問わず同じ処理ができましたが、導入後は領収書を注意深く確認し、内容によって処理を変える必要があります。
5,000円基準にはとくに注意が必要
インボイス制度導入でとくに注意したいのは、交際費の5,000円基準です。飲食費は、社外の人間との食事で一人あたり5,000円を超えない場合、交際費に含まれません。 しかし、この5,000円がインボイス制度に対応する適格請求書発行事業者と免税事業者で計算方法が変化します。
仮に適格請求書発行事業者の店舗で飲食代を税込で5,500円支払ったとしましょう。この場合、消費税は500円で税抜本体価格は5,000円になります。 5,000円基準に従い、この飲食代は交際費から除外することが可能です。 しかし、免税事業者を利用した場合は、仮払消費税等がないものとされます。5,500円全額が飲食代になり、交際費に含まなければいけません。
また、インボイス制度の仕入税額控除には経過措置が設定されていますが、段階的に引き下げられていきます。免税事業者での飲食代を処理する際は、この経過措置期間の控除率にも気を付けなければいけません。 経過措置期間の消費税額控除の割合は、以下のとおり変化します。
期間 |
仕入税額控除の対象 |
令和5年10月1日~ 令和8年9月30日 |
仕入税額控除の80% |
令和8年10月1日~ 令和11年9月30日 |
仕入税額控除の50% |
令和11年10月1日~ |
なし |
交際費を正しく把握してインボイス制度にも対応しよう
交際費には接待での飲食代や、ゴルフ場の使用料、イベント会場のレンタル費用、贈答品の費用など、さまざまなものが含まれます。すべてを交際費として取り扱うと、法人税の負担が大きくなります。 会議費や福利厚生費などに含まれるものは除外し、正しく仕訳をしましょう。
また、インボイス制度開始後は登録事業者とそれ以外の事業者では、仮払消費税等の取り扱いが変化します。経過措置期間にも注意し、間違いのないように処理しましょう。
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