交際費が800万円を超えたらどうなる?中小企業の交際費の上限を解説
経費精算システム
2023.06.12
2023.06.12
交際費は本来、全額損金不算入です。しかし、中小企業では例外的に「年800万円まで全額損金算入」とするか、「接待飲食費の50%を損金算入」とするかのどちらかを選択できます。 なお、上記特例は令和6年3月31日まで延長されたため、交際費に該当する支出は正しく処理しましょう。 本記事では中小企業と大企業それぞれの交際費特例、損金不算入とは何か、交際費に該当する支出と、特例措置の期限を解説します。
中小企業の交際費には800万円と5,000円の2つ基準がある
交際費は原則として全額損金不算入です。しかし、資本金1億円以下の中小企業では特例が適用され、「800万円」または「接待飲食費の50%」(5,000円が上限)の2枠の選択適用により損金への算入が可能です。それぞれ、基準や上限を解説します。
法人税の交際費の上限基準は800万円
資本金1億円以下の中小企業では、1事業年度に発生した交際費のうち、800万円までは法人税の損金(全額経費)に算入できます。 言い換えると、800万円を超えた部分については、法人税の損金に算入できないため、法人税の課税対象となります。
交際費が800万円までしか使えない訳ではない
なお、交際費の800万円の上限基準は、あくまでも法人税で損金に算入できる上限の基準です。「中小企業は800万円までしか交際費を使ってはいけない」という規制ではないため注意しましょう。 たとえば、交際費が500万円であれば全額損金算入できます。しかし、1,000万円であれば800万円までは損金に計上できるものの、残りの200万円は法人税の課税対象となります。
交際費の5,000円基準
一人あたり5,000円以下の飲食代は、交際費ではなく会議費として処理し、全額損金に算入できます。ただし、会議の実態のない飲食代に関してはこの限りではありません。 なお、5,000円以下であっても取引先に物品(飲料や食べ物を含む)などを贈与したときは交際費に計上が必要です。 交際費の5,000円基準は、中小企業だけでなく、大企業にも適用されます。
条件を満たす5,000円以下の飲食代は全額損金算入
顧客との飲食代(接待飲食費)は通常、交際費として扱います。しかし、例外的に一人あたりの飲食代が5,000円以下であれば、接待交際費から除外され、会議費として処理し全額損金に算入できます。さらに会議費には交際費のような上限もありません。 たとえば、以下のケースでは交際費ではなく、会議費として処理します。
(例1) 飲食費が5人で合計19,000円(税込)であった。 19,000円÷5人=3,800円
一人分の飲食費が5,000円以下のため、全額損金に算入できます。
5,000円以下の飲食代を損金に算入できる要件
5,000円以下の飲食代は会議費として損金に算入できるとはいえ、会議費である事実を客観的に証明できる内容が記載された書類の保管が必要です。
具体的には以下のとおりです。(※1)
- 飲食などをした年月日
- 飲食などに参加した得意先などの氏名または名称と関係
- 飲食などに参加した者の数
- その飲食などに要した費用の額と飲食店などの名称および所在地 ※店舗がないなどの理由で名称や所在地が明らかでないときは、領収書などに記載された支払先の氏名または名称、住所など
- そのほか飲食などに要した費用を明らかにするのに必要な事項
(※1)国税庁|No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算
5,000円以上の飲食代は交際費として50%を損金に算入できる
なお、飲食費が1人あたり5,000円を超えるときは、そのうち50%を交際費として損金に算入できます。これを「交際費課税の特例」といいます。
(例2) 接待目的の飲食費が5人で合計30,000円(税込)であった。 30,000円÷5人=6,000円 6,000÷2=3,000円×5人=15,000円
一人分の飲食費が6,000円のため、15,000円は交際費に計上できます。
大企業は原則として交際費は全額損金不算入
大企業は原則として、交際費は全額損金不算入ではあるものの、資本金の規模により例外があります。 先に、資本金などの額が100億円以上の大企業では、特例が適用されないため交際費は全額損金不算入です。
一方、資本金などの額が100億円以下の大企業は、先述の「交際費課税の特例」が適用されるため、接待飲食費の50%を損金に算入できます。
交際費の損金算入条件まとめ
事業規模別の交際費の損金算入条件をまとめると以下となります。とくに、中小企業は2つのうち有利な条件を選択可能です。
対象企業 |
選択できる特例措置 |
|
中小企業 (資本金額1億円以下) |
以下のいずれかを選択
|
|
大企業 (資本金などが100億円以下) |
接待飲食費の50%を損金算入 |
|
大企業 (資本金などが100億円以上) |
全額損金算入不可 |
そもそも交際費とは取引先のために支出する費用のこと
交際費の上限を考えるうえでは、そもそも交際費とはどのような費用か、理解する必要があります。
国税庁によると、交際費とは以下に該当する費用を指します。
交際費等とは、交際費、接待費、機密費そのほかの費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答そのほかこれらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するものをいいます。
(※1)国税庁|No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算
このため、接待のために支出した費用は飲食費だけでなく、ゴルフ場代や旅行代、贈答品の代金なども交際費に含まれます。
従業員を対象にした飲食の提供の場合
交際費で注意すべき点に「その他事業に関係のある者」の範囲があります。これは、取引先だけでなく、会社の株主と役員、従業員も含まれます。そのため、これらの者に食事を提供した場合は「社内飲食費」として全額交際費に計上しなければいけません。50%の飲食接待費の特例は適用されないため注意しましょう。
しかし、忘年会のように従業員の慰安を目的として提供される飲食であれば「福利厚生費」、社内会議の合間に提供される飲食で5000円を超えない部分は「会議費」として損金に算入できます。 従業員を対象とした飲食の提供では、交際費以外の勘定科目で処理できるケースも多いため、事前に要件を確認しましょう。
交際費の損金不算入とは
会計上の収益と経費、法人税法上の益金(収益)と損金(経費)は、全てがイコールになる訳ではありません。損金不算入とは、会計上の費用を税法上の損金から除外する処理を指します。 交際費も会計上は全て費用として計上するものの、同様にそのすべてが税法上の損金に該当する訳ではありません。
そのため、資本金1億円以下の中小企業では交際費が800万円を超える部分、または、接待飲食費の50%を超える部分については損金不算入の処理が必要です。
中小企業の交際費の損金不算入は令和6年3月31日まで延長
交際費課税の特例措置は、当初2020年(令和2年)3月31日までとされていました。その後、2022年(令和4年)3月31日まで2年延長されました。 今回、さらに2024年(令和6年)3月31日までの再延長が発表されました。(※2)
理由としては、法人企業の営業活動の活性化や、新型コロナウイルスの拡大により打撃を受けた経済の早期回復及び、飲食業界全体の回復が目的です。
(※2)財務省| 令和4年度 税制改 正(租税特 別措置 )要望事項
中小企業は「交際費の特例」を活用しよう
交際費は原則として損金に算入できません。しかし、資本金1億円以下の企業であれば、年額800万円、または接待飲食費の50%を損金に算入できます。なお、接待飲食費の50%の特例は資本金などの額が100億円以下の大企業でも認められます。
交際費の特例措置は、令和6年3月31日まで延長されます。それまでの間は損金に算入できる費用か否かを見極めて、正しく会計処理しましょう。
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