電子契約に関する法律とは?わかりやすく解説!
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2023.03.13
2023.03.13
電子契約とは、契約締結を電子上でできる仕組みです。電子文書は改ざんが容易であるため、電子契約が広く浸透するには、締結された契約書に証拠能力があるかの基準を明らかにする必要性が出てきました。このような背景から、電子署名法やe-文書法などの整備により、電子契約の方法や法的根拠が規定されています。この記事では、電子契約にかかわる法律について、網羅的に紹介していきます。
電子契約に関する法律とは
従来では、紙で印刷した契約書に署名・捺印することで、契約の正当性を担保してきました。しかし、デジタル化が推進され、従来の紙での契約をインターネットなどの文書の電子化が進んだことによって、電子契約をおこなうための法整備が必要となりました。電子契約に関連する法律には、電子署名法やe-文書法などさまざまな法律が存在します。
電子契約を定義している法律
以下の法律では、電子契約の法的根拠や具体的な手続きの方法を定義しています。そのため、電子化を進める際にまず確認したい法律といえます。
- 電子署名法
- 電子帳簿保存法
- IT書面一括法
- e-文書法
電子契約を導入する際には、これらの法律を十分に理解したうえで運用を開始することが重要です。ここでは、それぞれの法律の概要について解説します。
1. 電子署名法
電子署名法とは、手書きの署名や捺印と同様の法的効力を、電子署名にも通用させるための法律です。正式名称は「電子署名及び認証業務に関する法律」といいます。(※1)
とくに、業務では第3条の「電磁的記録(電子文書等)は、本人による一定の電子署名がおこなわれているときは、真正に成立したものと推定する。」という条文が重要です。要件を満たした電子署名には同条文を根拠として、手書き署名と同等の法的効力が認められます。
なお、同法では電子証明書の発行元である承認局の要件や義務も定められています。
(※1)電子署名及び認証業務に関する法律|e-Gov法令検索
2. 電子帳簿保存法
電子帳簿保存法とは、国税関係書類の電子保存を認めた法律で、正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」です。(※2)
従来、決算関係書類や取引関係書類は、紙による7年間の保存が義務付けられていました。
しかし、一定の条件を満たすことで、同法を根拠に電子的方法による保存が認められています。なお、2022年1月の法改正により、事前承認制度やタイムスタンプ要件が緩和されています。
(※2)電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律|e-Gov法令検索
3. IT書面一括法
IT書面一括法とは、従来書面での交付や手続きが必要だった書類を、一定の条件下ではメールのような電子的方法を取ることを認めるための法律です。正式名称は「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律」で、押印廃止やペーパーレス化の推進が目的の一つです。
同法の施行により、金融庁、総務省、財務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省が管轄する法令を一斉に変更し、デジタル化を推進しています。なお、電子化が認められていない例外も存在し、不動産売買に関する契約の一部は、従来どおり書面での手続きが必要です。
4. e-文書法
e-文書法とは、従来紙での保存が義務付けられていた法定保存文書を一定の要件を満たすことで、データなどによる保存を認めた法律です。具体的には、国税関係書類、建築図書、人事関係書類、医療情報などが該当します。
なお、e-文書法は正式名称ではなく「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」及び「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」を合わせたものの呼び方です。
電子契約の有効性に関連する法律
契約とは簡単にいうと、合意した2人以上の当事者間に法的効力が生じる約束事です。契約に関する規定は、おもに民法で定められています。
また、契約不履行時の訴訟などについては、民事訴訟法に規定されています。電子契約も契約の一つであるため、これらの法律では契約についてどのように定められているのかということを理解しておくことが大切です。
民法
民法第522条第1項では以下のように定めています。
「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。」
引用:民法|e-Gov法令検索
これにより、当事者間に法的な権利と義務が生じます。もし、契約が守られなかったときは、契約の履行や損害賠償の請求が可能となります。
自身が守らなかったときは、相手方から訴訟を起こされる可能性もあります。また、同条第2項ではこのようにも書かれています。
「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。」
引用:民法|e-Gov法令検索
そのため、本来、契約の成立には契約書による手続きは必要なく、口約束でも問題はありません。そのため、電子契約であっても民法上は契約として認められます。
なお、「法令に特別の定めがある場合」とある通り、一部の契約は現在でも書面での交付が義務付けられているものの、法改正により要件の緩和も進んでいます。
民事訴訟法
以上のように、電子契約も民法上契約の成立とみなさるものの、訴訟があった際の証拠として機能するか否かは民事訴訟法で確認しなければいけません。
民事訴訟法第228条第1項では、契約書が証拠として機能するかについて以下のように書かれています。
「文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。」
引用:民事訴訟法|e-Gov法令検索
なお、契約書の押印が証拠として機能する理由は同法第228条第4項の「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」という「二段の推定」が根拠となります。
通常、印鑑は本人が管理しており、押印があれば本人の意思により契約が成立したものとみなされます。以上が書面による契約が証拠として機能する根拠です。
次に、電子契約で上記と同じ理屈が通じるか確認します。
電子署名法第3条では、「電磁的記録であって情報を表すために作成されたものは、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名が行われているときは、真正に成立したものと推定する。」としています。
これは、民事訴訟法第228条第4項をあてはめたもののため、電子契約であっても上記に則っている場合、契約の証拠として利用できます。
なお、民事訴訟法ではビデオテープ、そのほかの情報を表すために作成されたものも証拠として認められるため、電子文書も証拠として機能すると考えられます。
書面での契約を定めている法律
電子契約を導入するうえで注意しなければいけないのが、現在でも書面での締結が必要な契約がある点です。多くの契約が電子化されたものの、なかには契約者の同意がなければ電子化できないものもあります。
また「事業用定期借地契約」に関しては公正証書が必要なため書面での締結が必要です。下請法、宅建業法、借地借家法、特定商取引法の4つの法律を紹介します。
下請法
下請代金支払遅延防止法(下請法)3条では、発注者が下請事業者に対して請負契約書(3条書面)を書面で交付するよう義務付けています。(※3)
なお、例外として、下請事業者が3条書面の電磁的交付を事前に承諾していれば、電磁的方法による交付も可能です。ただし、方法は以下のとおり限定的で、注意点も存在します。
- 電子メールなどで交付する場合は、送信しただけでは不十分で下請け業者がメールを受信できなければいけない。
- ホームページなどに公開して閲覧させる場合、下請け業者が閲覧しただけでは不十分で、ダウンロードさせファイルに記録させなければいけない。
- 必要事項を記録したCD-ROMなどの交付する。
なお、事前承諾では書面での交付も選択できることや、通信費などの費用負担についても説明しなければいけません。
(※3)下請代金支払遅延等防止法|公正取引委員会
宅建業法
不動産取引の重要事項説明書は書面での交付を義務づけています。(※4)
しかし、法改正により、2022年5月18日からは、条件を満たす場合、重要事項説明書や賃貸借契約書も電子交付(電子メール、Webページのダウンロード、CD-ROMなど)が可能です。
なお、電子交付をする場合、相手の通信環境が適正に処理できる状態かの事前確認が求められます。また、電子メールなどで重要事項説明書等の電子書面を提供した後は、相手に対して電話などで送信したことを連絡し、文面を見ることができるかどうかを確認することが必要です。
(※4)不動産取引時の書面が電子書面で提供できるようになります。~宅地建物取引業法施行規則の一部改正等を行いました~|国土交通省
借地借家法
借地借家法では下記契約書は書面での交付が義務付けられています。
- 一般定期借地借契約
- 事業用定期借地契約
- 定期建物賃貸借契約
- 取壊し予定建物の賃貸借契約
しかし、2022年5月18日からは「事業用定期借地契約」以外は、電磁的方法による契約締結や交付が可能となります。電子交付の際は、あらかじめ賃借人の承諾が必要です。
なお、事業用定期借地契約は、公正証書による締結が必要なため改正法施行以降も書面による契約が必要です。
特定商取引法
通信販売や電話勧誘販売など7種類の取引は、契約内容とクーリング・オフに関する内容を書面で交付し、所定の期間内であれば解約できることが義務付けられています。(※5)
なお、特定商取引法も2022年6月1日から電磁的記録によるクーリング・オフが認められます。契約内容の送付方法は電子メールや、自社ウェブサイトにクーリング・オフ専用フォームを設ける、記録媒体による交付などが可能です。
また、クーリング・オフ自体も電磁的方法でおこなえるようになるため、依頼を受けたときは、消費者に対し受け付けを電子メールなどで連絡するのが望ましいとしています。
電子契約は関連法を理解し運用しよう
電子契約は従来の書面による契約と違い、電子文書上に電子的な署名を施すため、改ざんが容易におこなえます。そこで、電子契約に関する各法律では、電子契約が成立する根拠や、そのためにはどのような方法を取ればよいかを定めています。
電子契約を導入する際は、これらの法律に反しないよう運用しましょう。また、契約のなかには、現在でも書面での締結が必要なものもあるため、間違いのない手続きが必要です。
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